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6周年を迎えた『プロセカ』は、なぜいま物語を完結させるのか? やりたいと思ったことをやれる状況のうちに、きちんと綺麗に終わらせる──完結をめぐる議論と区切りのあとの『プロセカ』を制作陣に聞く

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年を重ねるごとに濃くなる熱量。データにも、イベント会場の光景にも表れている

──ストーリーがひと区切りを迎えるなか、現実でも6年が経ちました。作品への関わりかたや意識で、変わったこと、変わらなかったことはありますか。まずは近藤さんから。

近藤氏:
そこに関しては、なにも変わっていないですね。メインストーリーが完結したあとにはなにかしらの変化があると思うのですが、そこに至るまでは同じかなと。意識も、やっていることもずっと変わりません。

──6年間ずっと変わらない熱量で関わり続けられているのは、すごいことですね。

近藤氏:
いやぁ、6年は長かったですけどね(笑)。これまでも全力で走り抜けてきましたし、まずはこの区切りまでしっかり走り終えよう、と。

とはいえ、「ストーリーが完結したら、お前はもう走らなくなるのか?」と言われたら、そんなことはありません。必要である限りはプロジェクトから抜けるつもりもまったくないです。

ただ、一度大きな区切りを迎えたら、やっぱりホッとするじゃないですか。その先の自分のメンタリティがどう変化するのかは、正直自分でもわからないんですよ。ですから、まずはいまの物語を最後まで走り抜ける。その意味で、スタンスは変わらないですね。

──佐々木さんはいかがですか。ミクを預かる立場としては、この6年はどうでしたか。

佐々木氏:
そうですね、基本的には僕も近藤さんと同じで、根本的なスタンスは変わっていません。

ただ、6年のあいだに『プロセカ』から生まれたものはかなり増えました。ゲームだけでなく、ライブや映画など展開の幅も広がって、僕たち自身も「どんな人が、どんなところを楽しんでくれているのか」が以前より具体的に見えるようになっています。関わり方の基本は変わっていませんが、見えている景色はかなり広がりました。

ボカロや初音ミク自体も、日本だけでなく海外まで含めて、ひとつの文化としてかなり広く根づいてきました。これからは、新しいものを生み出すだけでなく、これまで積み上がったもの同士をどうつなぎ、次の広がりにつなげていくかを考える段階だと思っています。

今日こうして振り返ってみると、『プロセカ』もボカロカルチャーも、本格的に次の成熟段階に入ってきたんだなとあらためて感じています。

──最後に小菅さん。セガさんの立場から見て、この6年はいかがでしたか。

小菅氏:
やはり年を重ねるごとに、お客さんの熱量がどんどん濃くなっているのを感じますね。決して安くないグッズをたくさん買って応援してくださったりと、我々が見ているデータや数字のうえでも、その熱量の積み上がりが如実に表れてきています。

もちろん新しいお客さんをお迎えすることも大切ですが、いまはどちらかというと、すでに熱量を持ってくれているファンの方々に、もっと深く向き合うことが重要になってきていて。ユーザーさんへの向き合いかたは、年々大きく変わってきていると感じます。

──その熱量は、数字以外の場面でも感じるものなのでしょうか。

小菅氏:
ええ、リアルイベントに顔を出した際の光景からも、ひしひしと感じます。お客さんがカバンにすごい数のバッジをつけて、応援してくれていたりして。

おそらく、イベントごとにファン同士で集まるんでしょうね。「マジカルミライ」の同窓会……というのとは少し違うかもしれませんが、お客さん同士で独自のコミュニティを作って交流している姿をよく見かけます。

そうやって『プロセカ』を生活の一部にしてくれているお客さんに、我々がどうしっかり向き合っていくか。それがいま、いちばん大事なことだと思っています。

日本から約1年遅れでも熱量は下がらない。海外版『プロセカ』はいまもお客さんが増え続けている

──以前のインタビューでも、海外展開のお話が出ましたが、日本と海外でユーザーの反応に違いはあるのでしょうか。

小菅氏:
それが、ユーザー層に関しては日本とそんなに変わらないんですよ。10代の方が中心で、女性ファンが多いという点も共通しています。

海外版は日本から約1年遅れで展開しているのですが、通常そういう状況だと熱量が下がりがちなんですよね。でも『プロセカ』に関してはまったくそんなことはなく、日本の展開を追いかけながら、いまもお客さんが増え続けています。

──約1年遅れでも熱量が下がらないというのは驚きです。逆に、日本との違いを感じる部分はありますか。

小菅氏:
違いを感じるのは、コスプレなどの楽しみかたですね。

「Anime Expo 2026」の写真を見せてもらったのですが、さまざまなスタイルのコスプレを皆さんが本当に楽しんでいて、笑顔で歩いている姿が印象的でした。

再現度を追求するだけでなく、とにかくこの作品に触れたい、純粋に楽しみたいという気持ちが伝わってきて、海外ならではの素敵な楽しみ方だなと感じました。

『プロセカ』制作陣インタビュー:6周年を迎えた『プロセカ』は、なぜいま物語を完結させるのか?_018

──再現度よりも「触れたい」が先にくるのは、たしかに海外ならではかもしれません。ほかに日本との違いを感じるところはありますか。

小菅氏:
あとは、やはり規模感です。「Anime Expo 2026」でのライブは約4000人の会場が埋まりましたし、パリのステージにも約3000人の方が集まってくれました。ヨーロッパでこれだけの人が集まるのは、本当に大変なことなんです。

僕自身、これまで長くゲームを作ってきましたが、日本らしいコンテンツをそのまま持っていって、世界中でこれだけ熱狂的に受け入れられる。そういう経験はなかなかないので、すごいことだなと感じています。

──『プロセカ』が海外でもこれほど受け入れられている要因は、どこにあるとお考えですか。キャラクターなのか、楽曲なのか。

近藤氏:
やはりいちばんの入口は、「初音ミク」という土壌があることですね。海外は日本ほどボカロのUGC文化が盛んなわけではありませんが、それでもベースとなる土壌があるのとないのとでは、ぜんぜん違います。

それに加えて、リズムゲームという直感的なゲーム性でありながら、膨大な楽曲数を兼ね備えていることも大きい。リズムゲームとして楽しむ限りは、課金しなくても遊び続けられるゲームモデルなんですよね。

基本無料で一定の品質を持つリズムゲームが遊べるというのは、グローバル市場において非常に強い広がりかたをしたと思います。

佐々木氏:
リズムゲームとして入りやすいことに加えて、海外のユーザーにとっては、新旧のボカロ曲にまとめて触れられる巨大なアーカイブとしても機能していると思います。『プロセカ』を遊んでいるだけで、年代も作家も違ういろいろな曲に出会える。その入口の広さは大きいのではないでしょうか。

『プロセカ』制作陣インタビュー:6周年を迎えた『プロセカ』は、なぜいま物語を完結させるのか?_019

──たしかに。歌詞の意味がわからなくても、次々といろいろな曲に出会えるというのは、音楽ゲームならではの強みですよね。

佐々木氏:
そうなんです。ただ、実際に曲が広がる経路を見ると、日本とは少し違います。最近はYouTubeで伸びたボカロ曲に海外のファンがDiscordなどで反応し、そのコミュニティで共有や解釈が進んで、さらに大きく広がるケースがあります。

たとえば「メズマライザー」(作詞・作曲:サツキ)のようなヒット曲が、海外で曲単体として広がりながら新しい解釈を生んだり、「少女A」(作詞・作曲:椎名もた)のように、日本とは違う文脈で発見されて話題になることもあります。

海外では、ボカロ曲特有の歌詞や世界観、少し独特な佇まいに強く反応する人たちがいて、そこからUGCというより、ネットミームに近い速度で一気に広がることがあります。

日本のボカロPさんたちが作ってきた、海外のポップスとは少し違う感触の音楽が、いま世界のいろいろな場所で新しく発見されているんだと思います。

──海外での運営体制は、どのようになっているのでしょうか。

近藤氏:
グローバル版は完全にセガさんにお任せしていて、中国や韓国などのアジア圏はByteDanceさんに担っていただいています。

海外版はいずれも日本から遅れてのリリースですが、ローカライズなどの対応があるなかで、各リージョンがいろいろな工夫をして、徐々にユーザーベースを積み上げてくれています。

最近は、日本の生放送を熱心に見てくれる海外ファンも本当に増えました。あまりにも海外の方が見に来てくださるので、じつは前回の生放送から、一部のスライドに英語のテキストを入れるようにしたんですよ。

ゲーム業界では、国内向けのものがグローバルへ向かっていくのは以前から当たり前の流れですが、『プロセカ』もいよいよそのフェーズに入ってきたなと。海外を意識して作る必要が出てくるほどになったのは、セガさんやByteDanceさんが長く真摯に運営を続けてくださったおかげです。

──小菅さんは、海外展開をどうご覧になっていますか。

小菅氏:
最初は決して順調なスタートではなかったんです。お客さんが定着してくれるか不安な時期もありましたが、諦めずに続けてきて本当によかったなと。

それに、パートナーであるByteDanceさんがめちゃくちゃ頑張ってくださっているんですよ。香港の街中に大々的な展示を出したり、韓国で交通広告を展開したり。日本のメーカーが得意としてきた、ファンのツボを押さえるやりかた。それを完全にものにしたうえで、非常にきめ細やかなプロモーションをやってくれています。

10年くらい前のアジア圏のプロモーションとは、もうレベルがぜんぜん違いますね。だからこそパートナーとして本当にありがたいですし、同時に我々日本のゲーム会社からすると脅威でもある、というのが正直なところです。

『プロセカ』制作陣インタビュー:6周年を迎えた『プロセカ』は、なぜいま物語を完結させるのか?_020

チーム一丸で最高のフィナーレへ。「後悔が残らないよう全力を尽くす」宣言

──3年前のインタビューでは、ストーリーをYouTubeで公開することで倍速再生のニーズには応えつつ、ボリュームが大きすぎる問題は「いずれ別途解決する必要がある」とお話しされていました。あれからさらに3年が経ち、6年分のストーリーが積み上がっています。なにか新たな施策はお考えでしょうか。

近藤氏:
そうですね……。結局のところ、ストーリーを正しく理解してもらうには、しっかり読んでもらうしかありません。ですから、これまでもいろいろな取り組みをしてきました。

ゲーム内で「完読ボーナス」のような仕組みを増やしたり、イベントストーリーの一気見配信をやったり、ショートアニメを作ったり。理想を言えばユニット毎にクールアニメを作るのがいちばんいいんでしょうけど、6年分となると現実的なボリュームではないですから。

そのうえで、今回新たにやろうと思っているのが、ゲーム内での「総集編イベント」です。

──総集編イベント、ですか。

近藤氏:
はい。「レオニ(Leo/need)」や「モモジャン(MORE MORE JUMP!)」など、各ユニットのこれまでの6年間の歩みを、いまのタイミングなら一気に追える。そういうイベントをやろうかなと。

これまでのストーリーをまとめるわけですから、いつもの8話構成では終わりません。どれだけ簡潔にしても20話というボリュームになります。

そういった新しい取り組みは、今後もやっていきます。ただ、これひとつやればすべて解決するという魔法のような施策はないので、地道にいろいろなアプローチを続けていくしかないと思っています。

──ありがとうございます。それでは最後に、読者のみなさんへ向けた締めのメッセージをお願いいたします。

小菅氏:
6周年を迎え、いよいよストーリーのクライマックスが近づいてきました。これからの展開を楽しみにされているお客さんがたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひその目でしっかり見届けて、楽しんでいただきたいです。

ゲーム外の展開としても、「セカイシンフォニー」や「プロセカ感謝祭」、「セカライ(プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE)」など、まだまだ盛りだくさんで続けていきます。これからも引き続き、よろしくお願いします。

佐々木氏:
これからの『プロセカ』の物語がどうなるのか、楽しみな一方で、寂しさや不安を感じている方も多いと思います。でも、そういう気持ちも含めて、いまこの時期をリアルタイムで見届けること自体が、あとから振り返ったときに忘れられない体験になると思うんです。

そして、いまの物語に大きな区切りがついたあとも、『プロセカ』そのものが終わるわけではありません。その先も、リアルタイムで新しい出来事を楽しめるコンテンツとして続いていきます。そこは3社でもしっかり話し合っていますので、安心していただければと思います。

これからもずっと『プロセカ』で遊び、親しんでいただけるように頑張りますので、末永くよろしくお願いいたします。

近藤氏:
まずは、この6年間『プロセカ』を遊んでいただいたみなさんに、心から感謝しています。本当にありがとうございます。

6年ものあいだ、ひとつのコンテンツをこれだけ元気な状態のまま続けられるというのは、業界的にも本当にめったにないことです。これはずっと『プロセカ』を支え続けてくださっているファンの方々のおかげだと、強く感じています。

ストーリーのひと区切りについては今回のインタビューでも散々語ってきましたが、いまの僕にできるのは、チーム一丸となって最高のフィナーレを迎えることに尽力することだけです。開発チームとして絶対に後悔が残るようなことはしないと、ここであらためて宣言して、自分自身にプレッシャーをかけておきます(笑)。

そしてもちろん、この区切りを迎えたからといって、コンテンツが投げ出されるわけではありません。そこはどうか安心してください。引き続き全力で頑張りますので、これからも『プロセカ』をよろしくお願いいたします。

『プロセカ』制作陣インタビュー:6周年を迎えた『プロセカ』は、なぜいま物語を完結させるのか?_021


「コンテンツが健全で、やりたいと思ったことをやれる状況のうちに……いちばん脂が乗っているときに、きちんと綺麗に終わらせる」

最初から完結を前提に作られてきた『プロセカ』の決断の真意を、近藤氏はそう語った。そのうえで、物語に区切りがついても運営体制もアップデートの頻度も変わらず、『プロセカ』そのものは続いていくとも明言している。

筆者はのんびりではあるが、この6年間、『プロセカ』のストーリーを追いかけてきた。とはいえ、すべてのストーリーを覚えているかと聞かれれば、正直なところ自信はない。6年分も積み上がれば、記憶が薄れているエピソードもある。

だからこそ、近藤氏が明かしてくれた「総集編イベント」はありがたい。各ユニットの6年間の歩みを一気に追えるのなら、完結を迎える前に、もう一度これまでの物語を振り返っておきたい。

2028年頭を目途に、メインストーリーは完結を迎える。6年のあいだに成長してきた登場キャラクターたちが、その先にどんな未来を見せてくれるのか。最後まで見届けたい。

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編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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