物語の終わりは、リリース前から決まっていた──。
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』のメインストーリーが、完結に向かっている。2020年9月のサービス開始から6年、各ユニットの物語は最終局面に入りつつあり、当初想定していたプロットはすべて描ききられるという。完結の時期は、2028年頭が目途とされている。
前例がないわけではないが、運営型のゲームで物語にひと区切りをつけるのは珍しい。好調なうちは物語を続けたほうが、ビジネスとしては理にかなっているからだ。
そもそも運営型ゲームの物語に幕が下りるのは、多くの場合、サービス終了のときだろう。人気があるうちに幕を引けるタイトルは、ひと握りにすぎない。
ユーザーが減り、更新が細っていった末の、どこか打ち切りのような終わりかた。運営型ゲームの「最終回」に、そんなイメージを抱いている人も少なくないのではないだろうか。
『プロセカ』が選んだのは、その逆だった。
コンテンツの元気がなくなってから完結に向かおうとすれば、最後にやれることは圧倒的に少なくなる。だからこそ、いちばん脂が乗っているときに、きちんと綺麗に終わらせる。
本作のプロデューサー兼ディレクターを務めるColorful Palette代表取締役社長の近藤裕一郎氏は、「最初からそういう前提で作ってきた」と語る。
とはいえ、物語の区切りが近づくにつれ、「この先どうなってしまうのか」と気になっているプレイヤーも多いはずだ。
そこで6周年の節目に、近藤氏に加え、セガで本作のプロデューサーを務める小菅慎吾氏、クリプトン・フューチャー・メディアで「初音ミク」の責任者である佐々木渉氏の3名に、この決断の真意と、区切りのあとの『プロセカ』について話を聞いた。

運営体制もアップデート頻度も変わらない。月3回のストーリー更新も続く。そう明言したうえで近藤氏は、次のプロットはいまのところ作っていないとも明かした。
3周年のころから「ストーリーは終わる」と言い続けてきたのも、変に期待を持たせず、一度本当に終わるという事実を正しく伝えるためだったという。
ただし、物語を描ききることと、コンテンツを続けることは、まったく別の話。物語には区切りをつけても、『プロセカ』そのものが終わるわけではないのだ。
「後悔が残らないよう全力を尽くす」
インタビューを締めくくったのは、そんな力強い宣言だった。
※本インタビューは、9月24日の「プロセカ放送局 6周年スペシャル」配信前に実施しました。
※この記事は『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の魅力をもっと知ってもらいたいセガさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
物語をきちんと綺麗に終わらせる。コンテンツが健全で、やりたいことをやれるうちに
──9月24日に配信された公式生放送「プロセカ放送局 6周年スペシャル」で、2028年頭を目途に各ユニットのメインストーリーが一度完結することが発表されました。あらためて、この決断に至った理由を近藤さんからお聞かせいただけますか。
近藤氏:
なにか新しい決断をしたというより、「最初からそういう前提で作ってきた」というのが正直なところです。途中で方針が変わったわけではありません。
実際、3周年のインタビューでは「折り返し地点です」とお話ししましたし、生放送でも「当初は6年くらいで完結する予定が、いろいろ詰め込んだ結果、7周年を超えそうだ」とお伝えしてきたと思います。
──なるほど。では、なぜ最初から「完結」を見据えて作られているのでしょうか。
近藤氏:
理由は大きくふたつあります。
ひとつは、人気だからといって引き延ばされてしまった漫画を、個人的にはあまりおもしろいと感じられず、勿体ないと思ってしまうからです。
もうひとつはもっと明確で、コンテンツの元気がなくなってから完結に向かおうとすると、最後にやれることが圧倒的に少なくなってしまうからなんですよね。
──運営型のライブサービスである以上、いつか終わりはくるものですからね。
近藤氏:
ええ。絶頂期のまま終われることはまずなく、現実には「ユーザーが少なくなってきたからサービス終了」という形になります。僕たちの使命は、いつか必ずくるその日をいかに遠ざけるか、そしていかに楽しんでもらえるようにするかだと思っています。それでも、いつかは終わるわけです。
ユーザーが少なくなれば、売り上げも開発人員も減ります。そのため、どのゲームでもサービス終了が近づくほどコンテンツの更新は減っていきますし、その状態になってから「最後に一発、大きな花火を打ち上げよう!」と思っても、現実的にはかなり難しくなってしまうものです。
だからこそ、コンテンツが健全で、やりたいと思ったことをやれる状況のうちに……いちばん脂が乗っているときに、きちんと綺麗に終わらせる。それがユーザー体験としてはいちばんいいだろう、ということですね。
【重要なお知らせ】
— プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク【プロセカ】 (@pj_sekai) September 24, 2026
2028年頭を目途に、各ユニットのメインストーリーが一度完結します。
その後、ストーリーは終了せず、2つの軸の物語を展開いたします。
【アフターストーリー】
進級・卒業に向けてユニットごとの物語を描くストーリー
【アナザーストーリー】… pic.twitter.com/tDfndG2v3h
──いまの近藤さんのお話を受けて、佐々木さんはどのように感じられましたか?
佐々木氏:
近藤さんがおっしゃるように、ファンの方々に濃密な体験を届けるには、限られた時間のなかで物語をしっかり描ききることが大切なんだと思います。
一方で、「初音ミク」という存在そのものには、明確な終わりがありません。将来どれだけ環境が変わっても、ミクはおそらく残り続けていく。
だからこそ、『プロセカ』のなかでミクが関わる物語に、濃密なままひとつの区切りがつくというのは、僕にとっても初めての経験なんです。『初音ミク -Project DIVA-』のころにもなかったことで、とても不思議な感覚があります。
──不思議な感覚、というのは?
佐々木氏:
初音ミクは年を重ねない存在でもあります。では、ゲームのなかで時間が進んだとき、ミクの年齢をどう考えればいいのか。じつは僕自身にも決まった答えはありません。プログラムとして考えれば、年を取らないとも言えますよね。
そういう答えをひとつに決めきらない余白を持った初音ミクが、『プロセカ』のように時間が進み、人間関係が変化していく濃密な物語のなかにいる。その組み合わせがファンの皆さんにどう届くのかは、僕にとってもスリリングでおもしろい体験です。近藤さん、ありがとう……これでいかがでしょう?(笑)
一同:
(笑)。
──小菅さんはいかがでしょうか。
小菅氏:
正直なところ、けっこう悩みました。運営型のサービスでシナリオに明確な区切りをつけるというのは、かなり思い切った決断ですから。もちろんサービス自体が終わるわけではなく、あくまで物語の区切りではあるのですが。
アプリやオンラインゲームには、なかなか「エンディング」がないんですよね。ですから、プレイヤーがあとから振り返ったときに「形として残るもの」が、どうしても少なくなりがちなんです。
──遊び終えたあとに手元に残る感覚は、買い切りの作品とはたしかに違いますよね。
小菅氏:
そうですね。僕は昔、家庭用ゲームを作っていたので、「ひとつの作品として完結させて、次へ行く」という作りかたをずっと続けてきました。
だからこそ、終わりのない運営型ゲームとのあいだで、葛藤のようなものも感じていて。今回の決断は、そこに対する新しいアプローチなのだと受け止めています。近藤さんたちが、運営型のゲームで「ひとつのエンディングの形」を作ろうとしているんだな、と。
それでも、いまだに「この先どうなっていくんだろう……」という不安はあります。ありますが、ひとつの「作品作り」としては、これが正しいアプローチなのかもしれないとも思っています。
物語は描ききる。コンテンツは続ける。そのほうが、長く愛されるはずだから
──リリース前から物語の完結を前提に設計していた運営型ゲームは、あまり聞いたことがありません。なぜその設計が通ったのでしょうか。
小菅氏:
それはもう、近藤さんが「そうしたい」と言ったから、というのがいちばんですね。
近藤氏:
メインストーリーを見ていただければわかるとおり、各ユニットはそれぞれが抱えている課題に向き合っています。
それがすべて解決したあとに、さらに次のお話を考えていくこともできなくはありません。ただ、環境もなにも変わらないままそれをするのは難しいですし、ひとりのユーザーとして想像したときに「微妙だな」と思ったんです。
それに、リリース前の段階では、売れるかどうかなんて誰にもわかりません。サービスを継続できるかどうかもわからないからこそ、出し惜しみせず、最初から全力でやるしかないんですよね。
──出し惜しみしない、というのは勇気がいりますよね。先のために取っておきたくなるネタもあったのでは?
近藤氏:
もちろん「この構想は3年経ってからのほうが、いい形で出せるかも」と考えることもあります。でも、そもそも出せなかったらなんの意味もない。だから、最初はとにかく全力を尽くしました。
そうやって作っていくと、必然的に「ストーリーの終わり」が見えてきます。ただ、「物語をちゃんと描ききること」と「コンテンツを続けること」は、まったく別の話なんです。
物語の区切りは描くけれど、コンテンツは続ける。むしろ、長くコンテンツを続けていくためにこそ、一度「感情の置き所」としての区切りを作らなければいけないと思っています。
ユーザーさんにも、一度しっかり感情を落ち着ける場所が必要で、それを経てから次へ行くべきだと。長期的に見れば、そのほうがコンテンツとして長く愛されるのではないかと思っています。
──それは、近藤さんが「こうしたい」と希望を出して、そのまま通ったということなのでしょうか。
近藤氏:
いえ、小菅さんとは「本当にそれでいいのか」という議論を重ねました。
ただ、僕のなかではすごくシンプルな話だと思っていて。たとえば「ニーゴ(25時、ナイトコードで。)」なら、彼女たちが最初から抱えている問題をズルズルと引き延ばして、売り上げもユーザーも10分の1に減ってしまったときにエンディングを迎えるのか。
それとも、いまの熱量があるうちに濃密に駆け抜けて、たくさんのプレイヤーに見届けてもらったあと、また新しいことを始めるのか。どちらがいいかという、2択しかないと。
──そう並べられると、答えはひとつしかないように思えますね……。
近藤氏:
そう考えたら、絶対に後者のほうがいいよなと。小菅さんも最終的には「それしかないか」と納得してくれたんだと思います。
小菅氏:
「ずっとその作品に触れていたい」というお客さんもいますから、長年続いているコンテンツならではの「ずっと続くよさ」があるのもわかるんです。
両方のよさがわかるからこそ、すごく迷いました。ただ、「ひとつの作品としての矜持」を考えたときには、やはり近藤さんの言うとおりにするべきだろう、と。
そして6周年を迎えるいま、これだけ多くのお客さんがついてきてくださっていることには、本当に驚いています。
勢いが落ちたなかでの区切りだったら、意味合いはまったく違っていたはずです。いまは、これだけのお客さんが残って楽しんでくださっている状態での決断ですから。
物語として必要ない引き延ばしはしたくない。振り返ったときに「いい体験だった」と思ってもらうために
──先ほども漫画のお話がありましたが、近藤さんのなかには、物語の引き延ばしや惰性で続けることを、ストーリーにおいて絶対にやってはいけないこととする美学があるように感じました。その考えに至ったきっかけはあるのでしょうか。
近藤氏:
自分自身が、さまざまな作品に触れてきたひとりのファンだからですかね。たとえば、僕は漫画も月に100冊くらい読むんですが、「あの漫画はよかったな」と心に残る名作って、無駄がなく最後まで駆け抜けていった作品が多くて。
逆に、明らかに途中で「大人の事情で引き延ばしが入ったな」と感じるものに出会ってしまうと、けっこう悲しくなります。
──たしかに……。
近藤氏:
必要なものを描いた結果として長くなるのは、いいと思うんです。ただ、「物語として必要じゃない」と自分たちでわかっているのに引き延ばすようなことは、したくない。ビジネス的な観点ではそれが正しいのかもしれませんが、長期的な目線で見たときに、絶対に蛇足になる。「それは本当にファンにとってうれしいことなのかな?」と思うんですよね。
──おっしゃるとおり、濃密に駆け抜けた作品のほうが、あとあとまで記憶に残る気がします。
近藤氏:
僕もそう思います。そのほうが、振り返ったときに「いい体験だった」と思えるプレイヤーは多いはずです。
──前例がないわけではありませんが、それでも運営型で物語を最後まで描ききるタイトルは限られますよね。
近藤氏:
そうですね。ただ、それは単純に、スマートフォンゲームの歴史において「物語を終わらせる」という判断ができる年月までサービスが続いたアプリ自体が、そもそも少なかったからだと思うんです。
ようやく業界全体がこれくらいのフェーズに達して、そういう事例が増えてきました。僕の判断が異端というよりは、時間が経つにつれて、本来あったはずの「ちゃんと終わらせるルート」を選びはじめるアプリが、少しずつ出てきたのかなと。
僕自身、ほかのタイトルの運営さんの話を実際に聞いているわけではありませんが、「ひと区切りを描く」判断に至る気持ちは、すごくわかります。そして、いちばん大事なのは「そこからもやめない」ということなんですよね。
──いちユーザーとしても、ここから先の展開にすごくワクワクしています。近藤さんご自身も、楽しみにされているのではないですか。
近藤氏:
どちらかというと、僕はそのワクワクに応えるほうですよね。これだけ啖呵を切ったわけですから、最後までちゃんと描ききらないと。
運営体制もアップデート頻度も変わらない。月3回のストーリー更新もこれまでどおり続く
──ユーザーのみなさんにとっては、「ひと区切りついたあと、この先どうなってしまうのか」が気になるところだと思います。安心できるような今後の展望について、お話しいただけることはありますか。
近藤氏:
運営体制はなにも変わらず続きますし、アップデートの頻度もまったく変わりません。「ひと区切りつくから開発チームを半分にします」といったこともなく、いまの体制のままです。これまでどおり、月に3回のストーリー更新も続けていきます。
具体的な中身については、まだお答えできません。あくまで「当初想定していた物語がひとつの結末を迎える」というだけで、コンテンツそのものが終わるわけではありません。
──なるほど。ストーリーの更新が止まるわけではないのですね。
近藤氏:
そうですね。でも、以前の「進級」のときのようなひと区切りとは、やはり違います。明確に「当初想定していたプロットをすべて描ききります」という話ですから。言ってしまえば、キーストーリー終了、メインストーリー完結ということです。
そこから先の展開については、いろいろな形があると思います。ただ、これまで紡いできたひとつの物語に関しては、プロットを書ききったので、完全に「やりきった」状態なんですよね。
サービスは間違いなく継続しますし、僕らの力の入れ方が変わることも絶対にないのですが、ただ同時に、明確にお伝えしておかなければいけないこともあります。
3周年のころから「ストーリーは終わるよ」と言い続けてきたのは、まやかしや聞こえのいい言葉でごまかすのではなく、「一度本当に終わるんだ」という事実を正しく伝えなければいけないと思っているからです。変に期待を持たせてしまうのもよくないですからね。
──「進級」のときも、1年前の2周年のタイミングで発表して、「心の準備期間」を設けていましたよね。とはいえ、やはりファンとしては寂しい気持ちもあって……。
近藤氏:
でも、たとえば「ニーゴ」のあの状況から、「売り上げがいいので、さらに4年引き延ばします」と言われたら、プレイヤーからしたら絶望でしかないと思うんです。いたずらに引き延ばされるのって、嫌じゃないですか。
だからこそ、いまの物語はきちんと最後まで描ききります。もちろん、終わったあとの展開を僕たちが放棄しているわけではなく、その先の話はまた別でしっかりやっていくつもりです。それが、いちばん誠実なやりかただと思っています。
──完結に向けて、そろそろ各ストーリーもクライマックスに向かうフェーズかと思います。現在のストーリーは全体としてどのような段階にあるのでしょうか。ユニットごとに進行度は異なるのでしょうか。
近藤氏:
いえ、おそらく9月24日の生放送でストーリーに関する発表をする時点では、すでに各ユニットが「最終局面」を迎えている状態になるかと思います。
「ワンダーランズ×ショウタイム」だけは、最終局面に少し入りかけているぐらいですが、基本的には、いまユーザーのみなさんに見えている展開がそのまま最終局面になりますね。










