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『ポケモン』タイトルを作りながら、美少女ゲームを作ってました……ってどういうこと!? ゲームフリーク大森滋は、なぜ『ポケモン』シリーズではない新作『雨のちハレ女』を作ったのか──そこに託した、大森滋の「夢と希望」とは

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ゲーム開発で予算が膨れ上がる「あるところ」を工夫して、普通じゃありえないスケジュールで完成した……?

──ここまでのお話を聞いていると、今作にはかなり大森さんの趣味が詰め込まれているように感じます。やはり、オリジナルとして作るにあたって、「好きなものを詰め込もう」という意識はあったのでしょうか。

大森氏:
「自分の好みを出そう」という気持ちは、けっこうありました。

ただ、それだけだと商売にならないというか……プロジェクトとしてまとまらないので、ゲームフリークの遊びに関する考え方だったり、どんなふうにキャラクターの魅力を作っていくかは、かなり戦略的に考えています。でも、趣味で作ったようなゲームでもあります。

──なるほど(笑)。ただ、ゲームとしては、やはり「大森さんの好きなもの」と、市場におけるニーズの折衷点を探る必要があると思うのですが、そこはどのように考えられていたのでしょう。

大森氏:
やっぱり会社で作る以上、開発費用は決まっていますし、その費用内での「この期間までに作らないと超過してしまう」というリミットもあります。そのうえで、「自分のやりたいこと」を全部やろうとすると、どうやってもそれを超過するわけです。

ただ、その「やりたいこと」の本質的な部分はなんなのか。切り捨ててもいいものはあるのか。リソースは使い回せるのか……そういった、「ここを表現する必要はないんじゃないか」という演出的な使い回しや端折り方は、ここまでの長い経験でけっこう持っていました。

つまり、「ここは力を入れなくても伝わるだろう」「リソースを使い回せるだろう」という部分をだいぶ工夫していて……じつは、かなり圧縮したスケジュールで完成させてはいるんですよね。

そこは、コンシューマーでの開発の経験が、非常に生きていると思います。きっと、ほかの開発者からしたら、驚かれるような作り方をしていると思います。ストレートに作ってはいないです。

『雨のちハレ女』大森滋インタビュー:『ポケモン』タイトルを作りながら、美少女ゲーム作ってました…ってどういうこと!?_032

──この規模感のタイトルとしては、かなり短めの期間で作られているということなのでしょうか。

大森氏:
どちらかというと、「効率がいい」という感じだと思います。開発会社であるクロノゲートさんがこのゲームの面白さを理解してくださったこともあり、とても協力的で、迷いもなくストレートにバーン!と開発を進めています。

やっぱり、ゲーム開発の予算が膨れ上がるところは、開発しながら迷ったりするからなんだと思います。本当は、使い回しを考えながら作ると、非常に効率的に作れたりするんですけど……細かい部分まで、1点ずつちゃんと作ってしまったりもする。

そうすると、どうやっても開発効率が悪くなるので、「プレイヤーにはわからないように、うまく使い回す」という工夫は、すごく意識しています。

──その「効率化している部分」は、具体的に言うとどんなところなのでしょう。

大森氏:
まず、そもそもの発想として、「着せ替えによって魔法少女(ハレ女)がいろいろな姿を見せる」という部分は、毎回キャラクターをイチから作ることに比べると、だいぶ効率的に作れるんです。「衣装替え」ですから。

ただ、「衣装替え」とだけ言うと、チープな印象になってしまうじゃないですか。これを設定や世界観の力で補い、「ハレ姿になる!」というと、それは「ひとつのキャラクター」に見えるんです。これは「言葉遊び」や「デザインの力」だと思うんですけど……そういう意味で、『ハレ女』はデザインの力をものすごく借りています。

──「デザインの力」というのは、純粋なビジュアル面での魅力ということでしょうか。

大森氏:
ビジュアル的なデザインと、設定などのデザインを含めての、「デザインの力」だと思います。

そもそも「服」って、ただの服だと言ってしまったら、「服」でしかないじゃないですか。でも、3Dのモデルとして、服をひとつ作るのは大変なんですよ。そこのモデルはちゃんと作りつつ、その「服」にどれだけの価値を込められるかは、世界観とマッチしていたり、そもそものデザインがすごくいいものである必要があったりする。

リソースの工夫も考えつつ、力を入れるべきところは入れる……そういう考え方で、ものを作ってはいますね。

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『ハレ女』は、大森滋の夢と希望を詰め込んだゲーム

──そもそも、今作は「(現状は)国内だけで展開する」というのも、なかなかすごい判断だと思うんです。むしろゲーム業界としては「世界展開を前提に作ろう」という流れがあるなかで、国内だけで最先端の美少女ゲームを作る……素朴に、「なんでこれが成立したんだろう?」と。

大森氏:
それは、うちの会社としては「あぁ、なんかおもしろいことをやろうとしてるんだな」で通った……というだけで(笑)。

たとえば、『ポケットモンスター 赤・緑』も、ゲームボーイの末期に登場しているんですよね。世間ではプレイステーションなどでものすごい3D表現のゲームなどが出るなかで、うちは白黒のゲームを出していた。しかも、そのときは世界展開をするわけでもなかった。

だから、ゲームフリークは「まず日本でおもしろいものを作ったらいいんじゃない?」という経営判断がある会社なんです。そもそも、「おもしろいものを出す」ことがいちばん大事で、その広げ方はあとから考えればいい。最初から「広げ方」ありきで考えるのではなく、「まずおもしろいものを作ってみようよ」というところからスタートします。

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大森氏:
そこの「天気データを使って、洗濯したりしながら戦うゲーム」は、見たことがないゲームだし、まずおもしろいものになっている……社内でもそう判断してもらい、意外とそんなに壁もなく進んでいきました。

──なんだか、ゲームフリークらしいエピソードですね。「そこはいいんだ」というか。

大森氏:
なにも言われなかったですね。
自分自身としても、「こういうものを通せる会社なんだ」と、改めて感じたところではありました。

ただ、美少女のガワの部分は「お前の趣味だろ」と思われていたはずなんですが……(笑)。ゲームのロジックやギミックとしては、かなりしっかりしたものになっていましたからね。

──実際、ユーザー的には「ゲームフリークからスマホの美少女ゲームが出てくる」というだけでもけっこうなインパクトがあると思います。

大森氏:
そうですね(笑)。

でも、その出来事がおもしろいじゃないですか。まさにそこを狙ってはいて、「うちがこういうものを出したら、それだけでおもしろいし、ウケるよね」とは思っています。「普通じゃないぞ」ということが伝わるといいなと。

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──『ハレ女』は、みんなのなかにある「スマホの美少女ゲーム」という共通認識をうまく使っているような印象も受けます。ちょっと「こういう美少女ゲームのパロディっぽい」と言いますか。

大森氏:
そこは、「スマホで作る」と決めたときから、すごく意識していましたね。だから、ゲームフリークのデザインとしても、ほかと比べるとだいぶキャラの頭身が高かったりするんですが……「その層に向けたゲームにしよう」と決めていたからですね。

自分としても「いろんな美少女ゲームが出ているな」とは思っていたので、そのなかで埋もれないように、「どうやってウチのデザインのよさを取り入れていくか」ということは、じつはかなり考えていました。そこで、「美少女だけだとダメだな」と思ったんですね。

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大森氏:
そこで、「クモリン」と呼ばれるマスコットキャラクターを考えました。あれは、ゲームフリークのデザイナーの絶対的な強みだと思います。その「マスコット」要素を取り入れて、必ず「ハレ女」とセットで出す。そうすれば、美少女ゲームとして埋もれないんじゃないかと。

「クモリン」も、1匹ずつデザインの違いを出したり、特徴づけをしたり……設定もしっかり考えているので、そこのノウハウはすごく詰まっています。

──さきほど「キャラデザは1年くらいかけて考えていた」といったお話がありましたが、やはりそこの「美少女としてどう埋もれないようにするか」と考える期間が長かったのでしょうか?

大森氏:
そこは南野(あき)さんとずっとやっていて……魔法少女ではない、普通の美少女を描いてもらっていた時期もあったんです。ただ、「なんか違うな」という感覚がありました。

なんとなく、「南野さんの絵をうまくプロデュースできていない」という感覚があって、「南野さんの絵で出すなら、もっと明るいテーマじゃないとダメだな」と思ったんです。そこの「もっと明るいテーマでやるにはどうすればいいんだ」と悩んでいたことも発想のキッカケになって、「ハレ女」のような晴れやかなものがすごく似合うんじゃないかと考えました。

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南野氏による、キャラの設定画。

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大森氏:
それとは別に、マスコットキャラもずっと描いてもらっていて、「この美少女とマスコットをいかに融合させるか」ということも調整を重ねていました。

これは「変身すると、耳と尻尾がつく」という魔法少女モノのお約束ではあるのですが……その「耳と尻尾」のデザインが、キャラクターごとに全部違うようにデザインしたかったんですよね。

だから、「耳と尻尾」はゲームフリーク側でデザインし、総合的に「耳と尻尾だけで全部の特徴が出るようにキャラクターを構成する」という要件でデザインすることで、なんとかうまくやっていましたね。

──「南野さんにキャラデザをお願いする」ということは、最初から決められていたのでしょうか?

大森氏:
そうですね。

まさにプロジェクトの最初に、「この人の絵でゲームを作ろう」と決めたところからスタートしています。それこそ初期の段階は、自分と南野さんのふたりで話しながら、「こんなキャラはどうだろう」と調整を進めていました。

──南野さんには、大森さんから直接声をかけられた形なのでしょうか。

大森氏:
もともと、南野さんとはずっと前から知り合いだったんですよね。自分もネットで絵を描いたりはしていたので、だいぶ昔から知っている人ではありました。だから、友だち感覚でやっていましたね(笑)。

ほかにも、今作に参加してもらっているデザイナーの人が数名います。

──みなさんに『ハレ女』をお見せしたときの反応はどういったものだったのでしょう。

大森氏:
「やりたいことやってるね」という感じでした。
自分がそっち方面の人間だと知っているので、「ついに……満を持してやりますか」みたいな。

一同:
(笑)。

大森氏:
会社の人からは「何やってんの?」って感じの反応でしたけどね(笑)。

──まさに、大森さんの夢と希望を詰め込んだタイトルということですね。

大森氏:
それは……嘘ではないですね!

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日常って、本当はもうちょっと遊べる。『ハレ女』で大森滋が見せたかった、「遊び」の姿とは

──何度か、『ハレ女』を通して「ゲームフリークは開発本部長がこれくらいやってもいいという姿勢を見せたかった」といったお話が出ていますが、大森さん自身として、田尻さんや増田(順一)さんのような先輩からなにを受け継ぎ、なにを伝えていこうと考えられているのでしょうか。

大森氏:
すごく難しいのですが……「型にはまる必要はない」ということですかね。

開発チームとしては、『ポケモン』シリーズも「ずっと変化し続けよう」という意思はあるのですが、やっぱりなかなか難しいところもあります。「『ポケモン』シリーズを知って、『ポケモン』シリーズタイトルを作っている人」が増えるのもいいことではあるのですが、やっぱり「見たことのないもの」が生まれづらい感じがあるとは思っています。

本当は、そこにオリジナリティのある驚きを作るのがゲームフリークだと思うんですよね。その「驚き」をちゃんと作るというか……実際にそれを示すことが、自分の役割だなと思っていました。

……そういうかっこいいことを言っても、「いや、趣味でやりたかったんでしょ」と思われる気もするんですが(笑)。もちろん、それもあるんですけど。

──そこの責任感というか、使命感のようなものがあったんですね。

大森氏:
やっぱり『ポケモン』シリーズの存在は非常に大きいですし、世界中の人の期待もあるから、開発もなかなか大変なんですよね。それでも、自分はぜんぜん楽しみながら作れてはいるのですが……そういうプレッシャーを感じたことで、凝り固まってしまったり、守りに入ってしまうのがよくはないなと思っています。

そうなると、手堅いものはできるかもしれないけど、新しいものにはならない……だから今後も新しくしていくべきではあるし、その気持ちは自分のなかにもあります。

そこで、「まずなにか別の形で作ってみる」といったことをするだけでも、新しい発想としてなにか還元できるものがあるんじゃないか……そして、自分だけではなく、ほかの人にも「ここまでやっていいんだ」と思ってもらえる。それを示すためでもあるし、「これからの若い人たちにいいゲームを作ってもらうために、自分はどういうことをやるべきか」と考えながら、いろんなものを作っています。

とにかく、「凝り固まるな」ということを伝えたいなと。

──すごくいい話だと思いつつ、実際に出てきたのが『ハレ女』なところに味わい深さを感じますね。

大森氏:
そう、結果として出てきたものは「お前の趣味でしょ」と。
全部言い訳にしか聞こえない(笑)。

一同:
(笑)。

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大森氏:
それで言うと、日本のゲームはけっこう行き詰まっていると思うんですよね。
いろんなところで「息苦しさ」がある感じがしていて……そういうところに、なにか『ハレ女』で一石を投じてみたいなと思います。もっと、日本のゲームに元気になってほしい気持ちはあります。

──その「息苦しさ」は、どんなところで感じられているのでしょう?

大森氏:
やっぱり、新しく出るゲームが少なくなってきていますよね。ひとつのゲームを作るコストも非常に上がってきているので、まず新作にはチャレンジがしづらい。そうなると、続編的なものも増えてくる。

世界的には、アメリカや中国などのゲームがすごいことになってきているなかで、「どうすれば日本の自由な発想で生まれたゲームが受け入れられるか」と考えると、ビジネスとして折り合いをつけるのがなかなか難しいんだろうなと。

もうちょっと自由な発想でゲームが作れたら、おもしろいゲームもたくさん出るんだろうなとは思うんですが……昔に比べると、いまはなかなか挑戦しづらい環境なんだろうなとは思いますね。

──日本のゲームという意味では、これまで「アニメ的なものは日本のゲームだよね」と思われていたものが、中国などからも出てきていますよね。

大森氏:
ああいうのが日本のゲームの良さだったりもしたのですが……やっぱり技術的なものや巨額の投資で、あっという間に塗り替えられてしまった。

ただ、ある意味では日本のゲームも「フォーマット化」して作っていってしまったのが、結果としていまこうなっている気がします。

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──ただ、大森さんが話されていた「記号化」のような考え方が、日本独自の作り方として、勝ち残っていくような感じもしているんです。

大森氏:
自分も、そこがやはり日本のゲームにとっての、「守るべき最後の砦」というか……日本の風土や文化から生まれてきているものがなにかあり、それをゲームとして形にすることが、自分の思う「ゲームの作り方」なんです。

そこを「日本のゲームの武器」と言うと変かもしれないのですが、それをベースに新しい世界観や発想が生まれることが、すごく大事なのかなと。これは、技術とはちょっと違うものな気がしていますね。

──なにか、明確に教えていけるものではないですよね。大森さんがその考え方を受け継いでいるのは、やはりゲームフリークの企業文化や、先輩とのやり取りの経験が大きかったりするのでしょうか。

大森氏:
先輩たちとの会話は、たしかに影響としてありますね。

これはゲームデザインだけではなく、「そのゲームデザインにどう理由をつけるか」という技術だと思います。「記号化」の話にも近いのですが、やっている動詞は全部同じでも、そこに対する「ひとつの言葉でどうまとめるか」ということの重要性は、すごく先輩から学んでいると思います。

それは、何においてもそうだと思います。
ゲームデザインも、キャラクターデザインも、音楽もそうです。まず「意味がないものを作ってはいけない」という考え方がすごくあって、すべてに意味をちゃんと入れて、なんとなく作らない……そういう文化がゲームフリークにはあります。

──やっぱり、そこは会社的な考え方なんですね。

大森氏:
それこそ、自分も若い人にはずっとそれを伝えていて……「ここの草が邪魔」「なぜここに草を置いているのか」「その木をここに置く理由がわからない」といったように、ひとつひとつの細かいデータにどれだけ意味を持たせられるのかが大事です。

もし考え抜いた結果として、その数値になるならいいけど……なんとなくその数値を置いているんだったら、それは意味がないからやめたほうがいい。その「すべてに意味を持たせる」というのは、やっぱりゲームフリークの文化ではあると思います。

──それはなにか育成をされていたりするのでしょうか。

大森氏:
ちゃんと育成として、それを伝えてはいますね。

たとえば、ゲームデザインのプランナーとして育てるために、「理由をきちんと説明できるようにしなければならない」「絶対になんとなく作ってはダメ」ということは、しっかり伝えています。

──以前のインタビューで、大森さんは「その時代の人間がどんなふうにゲームを楽しむのか」をすごく大事にしているとおっしゃられていました。『雨のちハレ女』は、どんな風に時代を捉えて、どう遊んでもらおうと考えられているのでしょう。

大森氏:
自分は、いま世の中がいろんなものに溢れすぎていて、さまざまなことが「おっくう」になっている時代だなとは思うんです。情報も非常に多いし、エンタメも選ぼうと思えば、いくらでも選べる。だから、なにをするのも億劫なんですよね。

だけど、ゲームが「一時的な刺激」では終わってほしくはない。
激しく攻撃的なもの、瞬発的なもの、すごく暗いもの……そういう一時的な刺激によって高揚感を得るものがあることはわかるのですが、いまはそういうものがすごく溢れちゃっているなと思うんです。

自分はそういう遊びではなく、「遊んだことによって人生が豊かになるもの」……これで人と出会えたり、日常生活がちょっと楽しく過ごせるようになったり、そういうものであってほしい。そんな風に、ゲームを遊んでもらえたらなと。

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大森氏:
それこそ、「日常って、本当はもうちょっと遊べるよね」ということに気づいてもらえるというか……雨の日に「今日はおっくうだな」という気分だったけど、ゲームで「じゃあこのキャラが使えるじゃん」と思えると、少し前向きに天気を捉えられるようになる。

そうなると、普段の生活も多少は豊かになるんじゃないかなと。そういう体験を、長くしてほしい……そんな思いで『ハレ女』を作ったので、少しでも、ゲームで人生を豊かに過ごしてもらえたらうれしいですね。

──日本各地のことを学べたりするのも含め、「プレイヤーに豊かになってほしい」という思いがこめられているんですね。

大森氏:
お勉強だと、なにも学べないじゃないですか。
やっぱり人間は遊びのなかでいろんなことを学ぶと思うので、「全部を楽しくしていく」ことが大事かなと思っています。

自分も『ハレ女』を作り始めるまで、洗濯にはぜんぜん詳しくなくて……服に洗濯記号が書かれていても、「このマークがなんだかぜんぜんわからない」と思っていたんです。でも、ゲームにしたらわかるんじゃないかと思って(笑)。

一同:
(笑)。

大森氏:
だから、ゲーム内のすべての「ハレ着」に、洗濯タグがついているんです。「これはアイロンがけしてはダメ」という記号から、「ポリエステルでできている」といった素材まで全部書いてあったりします。

そんなところから、「ゲームで洗濯のやり方が学べるようになるとおもしろいかな」と思いながら作ったりはしていました。(了)


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大森さんの趣味で作ったゲームでありながらも、プレイヤーには豊かになってもらい、ゲームフリーク……ひいてはゲーム業界全体に、「ハレ」の空気を作りたい。

「晴れ」という言葉に複数の意味が内包されているところからゲームが生まれたように、『ハレ女』という作品自体もまた、複数の意味と役割を背負っているタイトルなのだろう。

また、実際にインタビューをするなかで、これは大森さんにとっての「集大成」のようなゲームなのではないか……とも感じた。これまでの経験で築き上げた技術、ゲームフリークの偉大な先達から受け継いできた考え方や思想、そして大森さん自身の趣味。

それが結実して、『雨のちハレ女』というタイトルが完成した。
この「研ぎ澄まされたゲームロジック」と「本人の趣味」が同時に内包されている感じ……いや、じつにゲームフリークらしい! これこそゲームフリークだ!!

大森さんは、「この作品こそが、“ゲームフリークらしさ”だ」という象徴のような作品を、生み出したかったのかもしれない。そんな、ひとりの作り手としての「大森滋」の熱量を、ひしひしと感じる取材現場だった。

そんな『雨のちハレ女』は、今冬に配信予定。
この作品が、ゲーム業界に……そして私たちの生活にもたらす「ハレ」が、きっと豊かなものになっていると信じて、正式リリースを心待ちにしてほしい。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、「第四境界」プロデューサー。 ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長を経て、KADOKAWA&ドワンゴにて「電ファミニコゲーマー」を立ち上げ、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、サイトの設計など運営全般に携わる。2019年に株式会社マレを創業し独立。 独立以降は、編集業務のかたわら、ゲームの企画&プロデュースなどにも従事しており、SNSミステリー企画『Project;COLD』ではプロデューサーを務める。また近年では、ARG(代替現実ゲーム)専門の制作スタジオ「第四境界」を立ちあげ、「人の財布」「かがみの特殊少年更生施設」の企画/宣伝などにも関わっている。
Twitter:@TAITAI999
ライター
ライターとか、いろいろやってます。 名前の表記ブレは気にしないでください。
Twitter:@yomooog
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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