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錦織敦史×CloverWorks×オリジナル3本立てのアニメ映画って……どういう企画!?『GROTESQQQUE-グロテスク-』制作陣に聞く、“グロテスク”だった独特すぎるアニメ作りの舞台裏

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11月5日(金)に劇場公開されるアニメ映画『GROTESQQQUE-グロテスク-』。本作はひとつの映画でありながら、それぞれ全く内容の違う「3本立て」を鑑賞する非常に“攻めた”作品だ。

今作の監督を務めるのは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』総作画監督や『天元突破グレンラガン』のキャラクターデザイン、また『THE IDOLM@STER』や『ダーリン・イン・ザ・フランキス』などの監督を務めた、錦織敦史氏。

そして錦織監督が、『ぼっち・ざ・ろっく!』や『SPY×FAMILY』でお馴染みのスタジオCloverWorksと手を組み、オリジナルアニメ映画を作り上げた……そんな本作は、錦織監督の「描きたい画を全部やっていいなら(監督やるよ)」という発言が発端で立ち上がった企画だという。

さらに、企画の構想時点では劇場公開かどうかすら決まっておらず「ひと言で言うと手探り」と監督が言い切るほど混沌とした経緯によって生まれている……オマケに、現場もある意味“グロテスク”だったらしい。そんな独特極まるアニメ映画は、どのような紆余曲折を経て、完成したのだろうか。

そんな今作の始まりから、錦織監督が培ってきたキャラクターデザインやビジュアル、個性豊かなキャスティングへのこだわり、そして監督自身が詰め込んだ“好き”などなど……「3本立て」らしく混沌とした今作の魅力を、錦織敦史監督と、プロデューサーを務めるCloverWorksの福島祐一氏にお聞きした。

『GROTESQQQUE-グロテスク-』錦織監督×福島P対談:“グロテスク”だった独特すぎるアニメ作りの舞台裏_001

聞き手/ジスロマ
文/ryoyuu
編集/柳本マリエ


CloverWorksだからこそ通った企画の始まり

──本日は、錦織監督とCloverWorksさんがどのように作品を作られてきたのかをおうかがいできればと思います。さっそくですが、『GROTESQQQUE-グロテスク-』の制作は、どのような経緯で始まったのでしょうか。

福島祐一氏(以下、福島氏):
『ダーリン・イン・ザ・フランキス』【※】(以下、ダリフラ)を終えて「つぎはどうしようか」と話し合う中で、すぐにシリーズなどに着手するのは難しい空気がありました。明確なテーマや大きなコンセプトを掲げるよりは、まずは「何か好きなことをやってみましょうか」というスタンスでスタートしました。

※ 『ダーリン・イン・ザ・フランキス』
TRIGGER・A-1 Pictures共同制作による2018年放送のオリジナルTVアニメ。錦織敦史氏が監督を務め、少年少女がロボット「フランクス」に乗り込み敵と戦う世界を描いた。

『GROTESQQQUE-グロテスク-』錦織監督×福島P対談:“グロテスク”だった独特すぎるアニメ作りの舞台裏_002

錦織敦史氏(以下、錦織氏):
ビジュアルに特化した、純粋に「自分が描きたい絵」をアウトプットする仕事であれば、今の状態でも形にできるかもしれないと考えました。『ダリフラ』終わった時点でもう疲れ果てていて…(笑)、ストーリー構築やテーマ性の追求など、作品として成立させることにエネルギーを相当使ってしまっていたんですよね。

そのため、これまでとはまったく違うアプローチの企画であればすぐに動けるのではないかと福島に提案しました。当時は劇場公開といった出口も決まっておらず、尺感も中編程度を想定していましたね。

福島氏:
僕自身、監督がキャラクターデザインに携われた『アイドルマスター』などの現場を共にしてきましたし、錦織さんが手がけられた『天元突破グレンラガン』【※】を含め、錦織さんの描くキャラクターや絵そのものが好きだったんです。だからこそ、錦織さんが描く「絵」を軸とした企画やアプローチにはぜひ挑戦してみたいと考えていました。

ちょうどお互いのタイミングと志向が合致し、「それなら正式に企画として動かしましょう」と動き出しました。

※『天元突破グレンラガン』
GAINAX制作による2007年放送のオリジナルTVアニメ。今石洋之氏が監督、中島かずき氏がシリーズ構成を務める。地下の村で暮らしていた少年が地上へ飛び出し、仲間とともにロボット「グレンラガン」で獣人や宇宙の脅威と戦う世界を描いた。錦織敦史氏はキャラクターデザイン・作画監督などで参加している。

──ということは『ダリフラ』が終わったあと、4、5年以上前から企画が動いているわけですね。

錦織氏:
そうですね。もちろんほかの仕事と並行しながらではありましたが、話し合い自体はそのころから始まっていました。ただ、当時の構想と現在の形とでは、まったく異なるものになっていますけれど。

──ちなみに、今作で錦織監督がCloverWorksさんと実際にご一緒されて、スタッフさんの仕事ぶりに対する印象があればお聞きしたいです。

錦織氏:
CloverWorks、そしてプロデューサーの福島の下だと、とにかく「甘やかされてるな」と感じています……(笑)。いまの時代、ゼロから完全オリジナルのアニメを作ることは本当に大変な事で、特に僕自身に監督として大きな看板があるわけでもありませんし、そこをどうにか「力技」で押し通してくれる福島だからこそ、実現できた企画だと思っています。

『GROTESQQQUE-グロテスク-』錦織監督×福島P対談:“グロテスク”だった独特すぎるアニメ作りの舞台裏_003

そういった意味でも、CloverWorks以外のスタジオでは絶対に生まれなかった作品ですね。その代わり、制作中「好き勝手にやらせてもらって申し訳ない」「明確な売りのポイントが見えづらい企画で作らせてもらって申し訳ない」という気持ちでいっぱいでしたが……(笑)。ただ同時に、この作品を完成させることが、アニプレックスやCloverWorksにとってもオリジナルの長編を作るノウハウや経験、今後またオリジナルを作って行くときの糧になってくれれば、という思いもありました。

福島もそうした未来の可能性を信じて、がんばって企画を通してくれたのだと思っています。制作現場としては、まさにスタジオに全幅の信頼を寄せて甘えさせてもらった形であり、CloverWorksだからやれることをやろうと思って立ち上げた企画です。

──福島さんは、いまのお話を受けてみていかがでしょう。

福島氏:
僕自身、錦織さんに手掛けてほしいことや錦織さんだからこそ生み出せる強みを理解したうえでご一緒しています。錦織さんもおっしゃっていた通り、今回は非常に難度の高い企画でした。

そもそもオリジナル作品自体、成立させるのが難しく、時間もかかるものです。そこに加えて「3本立て」という極めてチャレンジングな構成もあり、僕たちにとっても「これまでにない新しいものに挑戦したい」気持ちがありました。

単に作品を作るだけでなく、制作を通して得られるものが「作品にとっての価値」となり、「自分たちスタジオにとっても貴重な経験」として還元されていけばいいなと考えています。そうした意味でも、最後まで愚直にやり切り、なんとかひとつの作品(企画)として世の中に送り出したい一心で取り組んでいました。

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「1本にまとまらなかった」から生まれた3作

──「3本立てのオリジナルアニメ」となると、普通は通すのが難しい企画だと思います。それでも3本となった決定打や、通すこととなった理由は何でしょうか。

錦織氏:
それはもう……1本にまとまらなかったんです(笑)。

──なるほど(笑)

福島氏:
もともとは、40~60分くらいのものを想定していたんですよね。

錦織氏:
そうですね。伸びて70分くらいでしょう、と(笑)

中編くらいの尺で、この3本の要素を入れようと思っていたんですが……まぁ、まとまらない!

福島氏:
で、それぞれを分解してみて、「やっぱり3本立てにしよう」と(笑)。

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錦織氏:
まとまらないならいっそ分解してそれぞれでやってみる。絵作りを変えて、1作品1アイデアでシンプルに、いろんな人にも頼んで、ササッと作ってしまおうと楽観的に考えていました。これは、軽はずみな間違いでしたが……。

一同:
(笑)。

錦織氏:
また、昨今のアニメでは1本の映画でしっかり満足感のあるものがとても増えていて、よくできた映画は多いです。ですが逆に、短い尺でも映画的な満足があるもの、かつ、組み合わせによって生まれる「リズム」や「1本の映画をみたような感覚」ができあがるのではないかと考えました。それをひとつの挑戦として、自分がより得意な「短距離走」による「長距離走」をやってみたかったんです。

それがMVではなくちゃんとしたストーリー、映画の体裁をなす尺として、3本それぞれの今の長さにつながっていると思います。自分でも観る人の反応が読めない部分であり、挑戦でしたが、やりがいはありましたね。

──試写で見させていただいたときに、1本1本の「起承転結」がはっきりしていて、クライマックスもある。ひとつひとつが骨太でしっかりと作られている3本であると、実際に見て感じました。

錦織氏:
それぞれ違う監督が作るオムニバス形式のアニメは結構あると思いますが、それらが「お互いがお互いを必要としているか」は見えてこないこともあります。
そこで、それぞれ違う話でも3つでバランスが取れていて、すべてたいらげることでお腹いっぱいになる「コース料理」のようなものができないかと考えました。3本の順番や尺感は、福島と相談して進めていきました。

福島氏:
錦織さんから出てきた「ひとつでやろうとしたもの」を「3つ」に分けています。そこをそれぞれで形にしていく中で、やろうとすることをやっていくと、この順番、この尺感に変化していきました。

『GROTESQQQUE-グロテスク-』錦織監督×福島P対談:“グロテスク”だった独特すぎるアニメ作りの舞台裏_006

ただ、MVではないと言いつつも、大きな意味で「長編のMV」みたいな捉え方をしている側面もあります。尺の差配、音楽の使い方なども、引いて見るとそのコンセプトはありました。そういう要素が、3本をひとつにまとめていく雰囲気を出していると思います。

「勝算」より「絵の強さ」から始まった企画の原点

──3本立てという企画の「勝ち筋」は企画段階で考えていらっしゃったのでしょうか。

福島氏:
どんな作品でもそうですが、「勝算」よりは、まず “いいと思うもの”“やれていないこと” をやってみて世の中に出していく。それがどう受け入れられていくかは、世に作品が出ることで変容していく価値観の中で「勝負どころ」も生まれると思います。

錦織さんの映像ができあがっていく中で、これまでにない媒体や形式であるため、自分たちがおもしろいと感じている一方で「どう受け取られるのか」「どのような視聴感になるのか」という点においては、手探りの実験に近い部分がありました。しかし、原案やデザインを担当されていることもあり、錦織さんのキャラクターをはじめ、「絵の強さ」が際立っています。

そこでまず錦織さんにデザインを構成してもらい、コンセプトビジュアルを作ってもらいました。絵が企画のベースなので、そこの勝算はずっとあります。ですが、これがどう見られて、どう世に出ていくのかは不透明で……最初はそもそも「映画」でもなかったんです。

「できてから考えなきゃ」という気持ちはありましたが、「絵の強さをどのように活かすか」は、まず企画を通していくベースにありました。

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──では、おふたりの中で制作中にだんだんと方向性が固まっていったのでしょうか。

錦織氏:
そうですね。実際に形が見えてこないと、僕自身も人に説明ができません。頭の中で「ここをこう見せたい」「たぶんここが売りになるはずだ」と考えていても、ビジュアル化されないと、なかなか周囲には伝わらないんです。

ただ、福島さんとしては、ビジュアルや制作物(素材)があがってきた段階で「どう売っていくか」を判断する、いわばアドリブ感があったと思います。最初に決めすぎると、あてが外れたときに動けなくなるリスクがありますからね。

ですので、よりこの作品の空気感に合う「みんなへの届け方」は流れに合わせた変化があり、徐々にアイデアも思いついていきました。

福島氏:
僕らは最初、すごく小規模にふたりだけで話し合いながら進めていました。

でも、あがってきた絵を見た人たちが「いいですね、こういう企画にしたいんだ、じゃあやりましょう」と、次第に関わる仲間が増えていったんです。そうするとスタッフやキャストの皆さんからも、それぞれの作品やキャラクターに対してアイデアをもらったりしながら、今の形にいたりました。

そうした経緯を経て参加してくれる人が増え、関わる人が増えていくほど、僕らが当初考えていた以上に企画が大きく膨らんでいきました。最終的に映画へと広がっていったことも含め、まさに自分たちの手元からスタートして、いかに草の根で作品を作り上げ「世に届けていくか」という実感を強く抱いています。

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当初は「ちょっと同人的、自主制作的な企画」という意識だったものが、関わる人たちの手によってどんどん大きな存在へと育っていく。それを「ひとり歩きを始めてしまう」と表現すると、少しネガティブに聞こえるかもしれませんが。いずれは商業展開も含めた、より大きな枠組みへとなっていくのだと感じています。ある意味では、「企画が動いている体感」そのものが、制作と並行してリアルタイムに紡ぎ出されている感覚です。

錦織氏:
ひと言で言うと “手探り” なんですが(笑)。

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ライター
ライターとか、いろいろやってます。 名前の表記ブレは気にしないでください。
Twitter:@yomooog
編集者
小中学校では地元の友だちとDS・Wiiを遊び倒す。2014年頃から親に買ってもらったMinecraftにハマり、以降PCゲームが中心の生活に。2018~19年頃からSteamなどのゲームに触れる機会が増えた。コロナ禍以降は、Valorant、Rust、Apex、Tarkovなどの対戦系シューターに熱が入る。その他、No Man's Sky、Starfield、Destiny 2といったSF系タイトルがお気に入り。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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