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発売前から同接26万人を突破した、“ほぼすべて”を壊せるFPS『THE FINALS』はエイム以上に「想像力」が勝利へ導く。新マップ「ラスベガス」など正式版をひと足先に遊んできた

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『THE FINALS』開発者インタビュー

──まず、おふたりの自己紹介をお願いいたします。

ロブ・ルネソン氏(以下、ロブ氏):
私はEmbark Studiosの設立メンバーで、現在はアート、アニメーション、オーディオなど、『THE FINALS』の全てを総括するエグゼクティブ・プロデューサーを担当しています。

長年ゲーム業界に勤めており、今年で26年目のキャリアになります。

スヴェン・グランドバーグ氏(以下、スヴェン氏)
Embark Studiosではコミュニケーション・ディレクターを務めていて、私たちはスタジオを設立してから5年間一緒に仕事をしています。

『THE FINALS』正式版をひと足先に遊んだプレイレポート_025
左がスヴェン・グランドバーグ氏、右がロブ・ルネソン氏

──本作は、どういったコンセプトに基づいて開発されたのでしょうか?

スヴェン氏:
前提として、Embark StudiosのメンバーたちはFPSゲームの開発に長らく携わっていたスタッフが多く、私もこれまでに約20タイトル以上のFPSゲームを手掛けてきました。

しかし、スタジオを設立した段階で、FPSゲームは少し古いものになってきているように感じるようになりました。そこでEmbark Studiosでは新しいFPSを目指し、「楽しさ」と「競争の面白さ」を両立させた作品を作りたいと考えました。

同時に、プレイヤーたちが、自分のプレイスタイルを望むようにカスタマイズできる作品を作りたいと思っていたので、それが『THE FINALS』のコンセプトになっています。

──お金を奪い合って勝敗を決める形式は、どのようなきっかけで誕生したのでしょうか?

スヴェン氏:
先ほど述べたように、「プレイヤーたちが自分たちの体験をカスタマイズできるゲームを作る」という私たちの理想が開発の最初のきっかけとなっています。開発が2年ほど進んだ段階ではすでに骨子は定まっていました。

しかし、オブジェクトの破壊、ダイナミックなマップ、チームプレイ、戦略、アクションといった沢山の要素を楽しめるようになったとき、もう少し「動的な要素」「静的な要素」が融合した作風にしたいと考えはじめました。

そこで「お金を取る」というルールを思いついたのです。

──なるほど。お金のルールはあとから追加されたんですね。

スヴェン氏:
はい。私たちが作りたかったのは「なんでもできる世界」であり、「楽しさ」と「競争する面白さ」を共存させたゲームプレイでした。

その理想を考える中で「バーチャルゲームショウ」というコンセプトを思いつき、結果としてゲームをプレイしながら「なんでもできる作品」を作ることができたと考えています。

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「バーチャルゲームショウ」にちなんだ試合前の演出

──開発にあたって、何か影響を受けたものはありますか?

スヴェン氏:
いろいろな作品からインスピレーションを受けていますが、特に日本の皆さまに伝えたいのはEmbark Studiosのスタッフが伝統的なアーケードゲームの大ファンであるということです。

『THE FINALS』は、他のFPSゲームから影響はあまり受けておらず、実は『鉄拳』『ストリートファイター』といった格闘ゲームからの影響を多分に受けています。開発中には子供のころに遊んでいた「セガサターン」を開発室に持ち込んで、100時間以上さまざまな格闘ゲームをプレイし、システムを研究しました。

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(画像はストリートファイター | CAPCOMより)

つまり、影響を受けているゲームは日本で開発された作品が多く、なかでも日本のアーケードゲームからの影響が強いんです。なので、日本の皆さんにはこの場を借りて感謝を述べたいと思います。

──そうだったんですね。格闘ゲームから影響を受けていたのは意外でした。

スヴェン氏:
日本のゲームのほかにインスピレーションを受けた作品としては『イカゲーム』『Formula 1』『American Gladiators』などのテレビシリーズ、映画も挙げられます。

──これまでのクローズドベータテストやオープンベータテストにて、ユーザーからどのようなフィードバックを受けましたか?

スヴェン氏:
ベータテストでは小さいバグやバランス調整など、さまざまなフィードバックを得ることが出来ました。数百万時間分のプレイデータを頂いて、それを分析させていただいています。

具体的にはPC上のデータ、『THE FINALS』において重要な環境管理、移動を管理するサーバ上のデータに関するフィードバックも頂いており、そういった情報をもとに武器の操作に関する調整やマップの再制作など、たくさんの修正作業を行っています。

私たちはプレイヤーと共にゲームを開発していると考えているので、本作を一緒に作っていただき本当に感謝しています。

──本作では、年にどれくらいのシーズンが展開され、シーズン2以降ではどのようなコンテンツが提供されるのでしょうか?

スヴェン氏:
まだ正確にはお答えできないのですが、基本的に1シーズンは3か月程度、1年に4シーズンほど展開する予定です。

『THE FINALS』の各シーズンでは世界のさまざまなスポットを巡りたいと考えていて、現在では韓国、モナコ、アメリカのスカイウェイステーションが用意されています。具体的な時期は言えませんが、ぜひ日本も作中に登場させたいと考えており、構想は用意している段階です。

また、各シーズンを本当に特別なものにしたいと考えていて、シーズン中のイベントやバトルパスなども予定しています。シーズン2ではシーズン1とは異なるコンテンツを用意しているので、発表された暁には驚いてもらえると思っています。

ロブ氏:
ライブサービスのゲームは非常に難度が高く、私たちはコミュニティと共にライブサービスの“リズム”を作り、共にサービスを続けていくことが現段階での大きな課題であると考えています。

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──先ほど「カジュアル」でありながら「競争もできる」ゲームバランスを目指す、ということをお伺いしました。ゲームバランスはどのように調整していくのでしょうか?

スヴェン氏:
具体的に言えば『Counter-Strike』『VALORANT』のような競技性を作品に組み込みつつ、同時に「ビルを破壊する」といったカジュアルで楽しい要素を用意したいと思っています。楽しく遊べるのは勿論のこと、ハードコアなやりこみプレイも可能な作品にしたいです。

プレイするひとだけでなく、配信などでゲームプレイを見る人も楽しめる作品にもしていきたいですね。

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(画像はVALORANT | 無料でダウンロード&プレイ – Epic Games Storeより)

ひとつ付け加えたいのは、本作は先ほど挙げた『Counter-Strike』や『VALORANT』のようなマップを持つゲームではなく、同時に「射撃スキルが全てを決定する」ような作品でもないということです。

機転をきかせなければならない要素や、戦況を予想し辛い要素が多分に組み込まれており、周辺の環境を利用した「クリエイティブな戦い方」ができる作品であることを大事にしています。

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(画像は THE FINALS | Closed Beta | Mar 2023 – YouTubeより)

──『THE FINALS』をどのように遊んで欲しいのか、発展していって欲しいのか、開発側の展望があれば教えて頂きたいです。

スヴェン氏:
ユーザーの皆さんには、私たちがこのゲームを開発しているときと同じ気持ちになってほしいと思っています。

私たちがこのゲームを開発しているとき、大声を出して笑い、時々キーボードを壊しながらプレイしていて、クリスマスイブにプレゼントを貰った子供のような情熱を持って向き合ってきました。
つまり、ファンたちにも私たちと同じように、ハッピーで楽しく、愛を持って遊んでほしいと考えています。

今後、銃のチャームとして「壊れたキーボード」を実装する予定もあります(笑)。

一同:
(笑)。

スヴェン氏:
今後の展望に関しては、できれば10年ほど本作を長く、楽しくプレイして頂きたいですね。

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──オープンベータテストからコインダッシュが登場しました。これまでに公開されたトレーラーにおいても印象的な「コイン」は本作にとってどのような意味を持っていますか?

スヴェン氏:
本作において「コイン」が重要なモチーフとして描かれているのは、私たちのルーツである昔のアーケードゲームに対するオマージュだからです。

私たちは子供のころ、アーケードゲームをプレイすべく親の財布を狙っていろいろなことをしてきました(笑)。なので、「アーケード筐体にコインを入れたい」という子供の頃の気持ちに由来して「コイン」がゲームを象徴する役割を担っています。

もちろん『THE FINALS』がバーチャルゲームショウを描く作品であり、参加者たちが「お金」を求めて戦う設定も「コイン」がフィーチャーされる理由ですね。

──『THE FINALS』を機に初めてFPSをプレイする方へのメッセージや、『THE FINALS』の楽しんで欲しいポイントを教えて頂きたいです。

スヴェン氏:
私たちは、グローバルマーケットで人気がある作品を作りたいと考えていて、ハードコアなゲーマーだけでなく新規のプレイヤーにも楽しんで頂ける作品を作りたいと考えています。

たとえば本作では弾丸を撃たなくても、味方を回復したり、ビルを破壊したりといったアプローチでクリエイティブに楽しめます。

個人的なエピソードとなりますが、私の姉は『ゼルダの伝説』『スーパーマリオ』といった任天堂の作品を幼少期に遊んでいましたが、大人になってからはゲームで遊んでおらず、『THE FINALS』が最初の3Dゲームでした。

彼女は娘と共にベータ版をプレイした際、ずっと銃を撃たずに自分の娘を回復していたんです。それでも彼女たちは凄く楽しくプレイしてくれました。

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(画像は(462) THE FINALS | Closed Beta | Mar 2023 – YouTubeより)

なので、初めてのFPSとして『THE FINALS』をプレイする方は、あまり深く考えずとにかく遊んでみてください。そして、敵を射撃で倒すことのみならず、想像力を活用し、クリエイティブになって頂きたいです。

最後に言いたいことがあります。私の姉の一番幼い娘と話をしたとき、ゲームについてどう思っているかを聞くと「つまらない」と言っていました。

その理由を聞くと「私はパンダになってゲームで遊びたい」と言ったんです。なので『THE FINALS』にはパンダのスキンが存在し、結果としてベータテスト時のキーアートにもなっています。

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(画像はTHE FINALS | Closed Beta 2 | June 2023 – YouTubeより)

eスポーツのプロから小さな子供に至る全てのプレイヤーが私たちにとっては重要なので、プレイヤーたちのフィードバックはとても重要です。

私たちが世界で一番のゲームを作るために、ぜひさまざまな意見、フィードバックを伝えて頂けますと幸いです。(了)


バーチャルゲームショウという設定、ビジュアル表現による間口の広さ、破壊とカスタマイズ可能なスキル、そして「お金」によってクリエイティブな戦略性の双方を両立した『THE FINALS』。

開発者から実際にお話を伺うと、まさに「カジュアル層」「対戦ジャンキー」の双方を楽しませることを目指しており、実際にプレイして「開発者のイメージ通り」の作品になっていると感じることができた。

今後の展開も注視しつつ、晴れて正式リリースを迎えた『THE FINALS』の新鮮な自由度をぜひ実際に堪能しよう。

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ライター
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。
編集部
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちでレベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著「デブからの脱却」(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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