2023年10月31日、声優の鈴木達央氏が所属事務所アイムエンタープライズから退所。今後はフリーとして活動することを発表した。
鈴木達央氏は、「Free!シリーズ」、「うたの☆プリンスさまっ♪シリーズ」など人気アニメ、「ファイナルファンタジーXV」などの人気ゲームに多数出演。
私は純粋に気になっていた。
なぜ、鈴木達央氏はフリーの道を選んだのか──。
発表から数日後の企画会議で、「鈴木達央さんの取材をしたい」と編集長に提案。諸々の調整が終わり、ついに取材が実現へと至った。
今回、鈴木達央氏は事務所を退所して初の単独インタビューとなる。
そういった意味でも、“今の鈴木達央のリアル”について、メディアを通して伝えたいと思う。
取材場所に現れた鈴木達央氏は、非常に穏やかで自然体。
自由を謳歌しているようであり、これから改めて前を向いてファンの気持ちに応えていきたいと決意に溢れているようだった。
“声の人”鈴木達央氏が新しい道を選んだ理由とは何か。その胸中に迫る。
「僕からすれば、もう本当に『何もかも無くなっただろうな』と思っていたんです。ただ……」
──2023年11月1日に所属事務所(アイムエンタープライズ)を離れ、フリーの道を歩み始めました。約2ヶ月が経った今の率直な気持ちを教えてください。
鈴木達央さん(以下、鈴木さん):
事務所に所属していたことで、得られたものがたくさんありました。
一方で、フリーだからできることもあると感じています。
もうこれに関しては一長一短ですね。
ただ、フリーになってからは、毎日嬉しいこともトラブルもたくさん起こってます(笑)。
最初は「こんな風になるんだ」ってちょっと面食らったけど、今はそれがめちゃくちゃ楽しいかな。
──独立って簡単な選択じゃないですし、いろんな方からのアドバイスなどもあったかと思います。
鈴木さん:
会社を出る時にいろんな方にお言葉をいただきました。
何度も釘を刺されたのは、「お前は大きな会社に所属する意味を本当に理解しているのか?」「フリーは甘くないぞ」ということでした。
──なるほど。
鈴木さん:
リスクは分かるんですけどね。ただ、以前の所属事務所と僕の希望や今後の活動について話し合いを続けている時に、大きな事務所だと実現しづらいこともたくさんあって。
だったら、「一人でやる方がいいんじゃないか?」と考えるようになりました。
事務所から離れるのは今の僕だとマイナスしかないって思う気持ちも理解はしていたんですけどね。
──事務所から離れることが、逆境につながるのであれば、そのままの方がいいと。
鈴木さん:
ただ、自分の責任で逆境が続いていましたから。
──いろいろな報道や誹謗中傷もありました。逆境が当たり前になるくらいの状況だったかと思います。
鈴木さん:
そうですね。でも、どん底を経験して分かったこともあります。
逆境の中でも楽しめることがある。ここから考えることもできるんだって。
実際、フリーの道を選択してみると、とても心強いスタッフに恵まれています。
各企業さんからも、今の自分と「何か一緒にしたい」とありがたいオファーも届いています。
今は、そういう人たちの気持ちに応えていきたいという気持ちですね。
すごく時間がかかるかもしれないけど、恩返しがしたい。
結果的に、鈴木達央と仕事をしたら「面白い」って思っていただきたいですし、待っていてくださる皆様にも楽しい気持ちになって欲しい。
独立してから数ヶ月ですが、今はそんな気持ちです。
──「待っていてくださる皆様」という言葉がありましたが、鈴木さんを応援しているファンの方へ今後、どのようなものを見せていきたいとお考えですか?
鈴木さん:
そうですね……。実は、自分のことをそれでも応援してくれる、待っていてくれている人たちが居るということは小さく聞いていましたし、直接言葉をくださった方もいました。
それがすごく嬉しかった。
たとえば、街中で「応援しています」と言って下さる方がいたり。
食事に行った時、お会計を済ましたタイミングで「ありがとうございました」の後に少しだけそういった言葉を添えてくれたり。
──日常の中で応援、激励の言葉があった、と。
鈴木さん:
はい。僕からすればもう本当に「何もかも無くなっただろうな」と思っていたんです。
ただ、そうした言葉のおかげで「もしかしたら、少しでも待っていてくれている人が居るかもしれない」と、気のせいじゃなく思えたんです。
──なるほど。ちなみに事務所を退所される際に印象に残っていることはありましたか?
鈴木さん:
退所するタイミングで事務所のスタッフにお願いして、所属している役者にメールを送らせていただきました。
──差し支えなければ内容をお聞きしてもよろしいですか?
鈴木さん:
先輩には「僕のような生意気な人間を後輩として扱って下さってありがとうございます」
後輩には「たくさん指摘したり厳しいことを言ったのに、先輩として扱ってくれてありがとう」と伝えさせていただきました。
返信を転送してもらったりしたのですが、改めて頑張っている後輩の役者がたくさんいるんだなぁ、と痛感しましたね。