いま読まれている記事

完全新作『.hack//Z.E.R.O.』はサイバーコネクトツーの自社パブリッシングタイトル。どうやって許諾を得ることができたのか? 松山社長に設立からの30年を振り返ってもらいながら話を聞いた

article-thumbnail-260219q

2026年2月16日、サイバーコネクトツーが設立30周年を迎えた。

サイバーコネクトツーは1996年に「有限会社サイバーコネクト」としてスタート。創業当初の社員数は10人で、1998年には処女作となる『テイルコンチェルト』をリリース。2001年に松山洋氏が代表取締役となり、「有限会社サイバーコネクトツー」に社名変更。2002年に『.hack』を手がけたことで注目を集め始める。そして、2003年には株式会社に組織変更され、人気アニメ『NARUTO-ナルト-』を題材にしたアクションゲーム『ナルティメットヒーロー』の開発を担当。作品への愛情、クリエイティブへのこだわりなどが高く評価され、ゲーム業界でのポジションを確立。以降、『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』『ドラゴンボールZ KAKAROT』『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』など、数多くのヒット作を世に送り出している。

そんなサイバーコネクトツーは、30周年を記念して『.hack』シリーズ完全新作となる『.hack//Z.E.R.O.』の始動を発表。さらには、新規映像事業「CyberConnect2 FILM」の立ち上げと、全国47都道府県を巡る「サイバーコネクトツー展」、ならびに松山氏が直接参加するファンミーティングの開催などが発表された。

驚きだったのは、『.hack//Z.E.R.O.』が企画・開発・発売までを一貫してサイバーコネクトツーが担当する、自社パブリッシングタイトルとなっていること。これまでの『.hack』シリーズはバンダイナムコエンターテインメントより発売されてきたが、今回は同社の許諾を得たうえで、自社からリリースされる形となっている。

開発会社がIPの権利を持つというのは非常に稀な例である。どのようにしてIPの許諾を得ることができたのか? サイバーコネクトツー代表取締役、松山洋氏に設立30周年を振り返っていただきつつ、話をうかがった。

サイバーコネクトツー・松山洋氏インタビュー。完全新作『.hack//Z.E.R.O.』はどうやって許諾を得ることができたのか?_001

聞き手/豊田恵吾


足掻いた10年と飛躍の10年、そして新たな領域へ……30年の歩みを振り返る

──設立30周年おめでとうございます。

松山氏:
ありがとうございます!

──まず、この30年を振り返っての率直な感想をお聞かせください。

松山氏:
30年やってこれたというのは、我々のがんばりももちろんありますが(笑)、業界関係者含めてたくさんの方々に支えられてきたからこそです。そして、応援いただいているお客さまのおかげです。

ですので、まずはみなさんに感謝をお伝えしたいです。ありがとうございます。

サイバーコネクトツーの30年を振り返ってみると、最初の10年、つぎの10年、この10年、と3ブロックに分かれるのかなと。最初の10年がはじまったのは1996年。私自身、当時はまだ25歳の若造で、何者でもなかったわけです。

10人の若者が集まってできたのが有限会社サイバーコネクト。まあ当然ですけど、誰も期待していなかった。だから最初の10年というのは、もう本当に足掻いてる10年でしたね。「俺たちはここにいるよ」と言い続けた10年。

出来事としては、途中で社長がいなくなってサイバーコネクトという会社がサイバーコネクトツーになり、私が社長になったと。ある意味、ちょっとこう歯車が回り始めたのはそこからだったんですね。『.hack』という代表作が生まれ、週刊少年ジャンプの看板作品のひとつであるアニメ『NARUTO』のゲーム『ナルティメット』シリーズが誕生して……。

サイバーコネクトツーという会社が、実際に産声を上げたのはまさにそのタイミングなんですよね。それからやり方を変えたり、仲間を増やしていったり……。とにかく「自分たちのことを知ってほしい」というところに一生懸命だったのが最初の10年だったと思っています。

真ん中の10年(11年目〜20年目)については、最初の10年をさらに領域展開するためにはどうしたらいいのかってのをずっと考えていたこともあり、広がった飛躍の10年だったと捉えています。設立15周年を迎えたときには東京スタジオを作りました。

そこから『.hack』だけではなく、カプコンさんといっしょに『アスラズ ラース』を作ったり、さらには『ナルティメットストーム』という、現在の我々の本流となるタイトルや「超アニメ表現」を確立できたのがこの真ん中の10年でした。また、『ジョジョの奇妙な冒険』のゲーム開発も手がけることになり、ずっと『.hack』シリーズと『ナルティメット』シリーズの会社だとイメージされていた我々が、「サイバーコネクトツーという会社はすごいな」と世界中のゲーマーから注目されるようになった。

20周年を迎えたタイミングで「新しいことを広げよう」と意図的に決めたんですね。つまり、20年続いた会社が明日潰れることはないだろうと(笑)。それまでの20年、サイバーコネクトツーはデベロップメントを中心にやってきましたが、21年目からは自社開発とパブリッシングをスタートさせるべく、『戦場のフーガ』シリーズを展開しました。

そして、私自身がもともと得意としていた、マンガの領域展開。ゲーム業界を舞台にしたお仕事マンガ『チェイサーゲーム』の連載は現在もやっていますけども、ドラマ化となり、実写映画化となりました。

じつは、マンガやアニメ、映画のプロジェクトには、社内の300人のゲームクリエイターは一切稼働させていません。彼らは変わらずゲーム開発に集中し、私自身が外部のクリエイターやマンガ家の方々といっしょに展開を進めているものです。このやり方は自分のスピード感にも合っているんですよね。ゲームという本業を大切にしつつ、エンターテインメントとしてもっとおもしろいことを広げていきたいと考えています。その新たな一歩が、映画『チェイサーゲームW 水魚の交わり』という映画。

サイバーコネクトツー・松山洋氏インタビュー。完全新作『.hack//Z.E.R.O.』はどうやって許諾を得ることができたのか?_002

熱量の源泉は「ジャンプ」の名作たち

──松山さんが持つ熱量というか、新しいことを広げるという、その源泉はどういうところから生まれているのですか?

松山氏:
週刊少年ジャンプですね。1990年代に『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』『るろうに剣心』『幽遊白書』、『ジョジョの奇妙な冒険』などが同じ号に載っていた時期があるんですよ。そのころから言われていたのが「『ドラゴンボール』が終わったら誰もジャンプを読まなくなる」とか、「『SLAM DUNK』が終わったら誰もジャンプを読まない」とか。で、実際に読まなくなりましたか? 『ドラゴンボール』が終わっても『ONE PIECE』や『NARUTO』、『BLEACH』『銀魂』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』などがはじまった。けっきょく終わらないんですよ。週刊少年ジャンプには新しいヒーローがどんどん登場するんです。

つねに、新しいおもしろさというのは進化していくんですね。そして、過去に生まれたおもしろさは不変なんです。いまの新しい読者や新しいゲームユーザーに最新作を届けるのがクリエイターの役目。そのマインドがぶれることはないし、枯渇することも今後もないでしょうね。

──言葉を選ばずに言いますが、今回発表された新規映像事業「CyberConnect2 FILM」の立ち上げについても、ゲーム会社であるサイバーコネクトツーがわざわざやらなくてもいいことじゃないですか。でもそこにあえて行くというのは、どういった判断からなんですか?

松山氏:
それは私が映画が「好き」だからです。私は年間に映画を300本から350本ぐらい観るほど好き。もちろんいちばん好きなのはマンガなんだけど、つぎに好きなのが映画。だから映画もやることにしたというのが理由です。

サイバーコネクトツーはゲーム業界で30年やってきて、ほかがやらないようなことをやるとか、特別な目立ち方をしてるじゃないですか(笑)。どうすれば勝てるのかということを考えてやっているんですけども、出版業界、マンガ業界、アニメ業界、映画業界、これらの業界にも「うちが必要なんじゃないか」と考えるようになって……。

──それは何がきっかけだったのですか?

松山氏:
その業界じゃない私から見ると、変えていかなければならないことがたくさんあるように見えて……。100年以上の歴史がある業界だと、「なんでそんなルールで?」ということがいっぱいあるんですよ。「昔からこうやっていたから変えられない」とか、「なぜそうなっているのか誰も知らない」とか。それによって不幸な思いをしてる人たちがいたり、儲からないビジネススキームになっていたり。「これってあなたたちの利権を守るためだけにやってるってことじゃないの?」と思うようなことを変えていきたい。

たとえば、アニメーターの給与が問題になることがあるじゃないですか。いまはだいぶ良くなりましたよ。良くなったけども、いまだにそれは氷山の一角。だからもう業界のことを知れば知るほど、「まだそんなことをやってるのか」と怒りがふつふつと湧いてきて、「この業界にも俺が必要なのか」と思ってやっていると言いますか……。

──原動力は「怒り」なんですね。

松山氏:
そう、怒りです。なんだったらゲーム業界に対しても、まだ怒りがあるからね(笑)。まだ怒り足りない。

──(笑)。松山さん、その部分は本当に変わらないですよね。若いときからずっとそうですよね。

松山氏:
子どものころからずっとそう。それも週刊少年ジャンプから教わったことだと思うけど。

──週刊少年ジャンプで最初に触れたマンガはなんだったんですか?

松山氏:
最初は『リングにかけろ』。1977年の連載だから当時6歳くらい。そこから49年間、1号も欠かすことなく週刊少年ジャンプを全ページ読み続けてきているので、長く続けるとやがてこうなるわけですよ(笑)。

異例の自社パブリッシングタイトルの『.hack//Z.E.R.O.』は“総力戦”で全く新しいものに

──発表された『.hack//Z.E.R.O.』についてお聞きしたいのですが、バンダイナムコエンターテインメントからの許諾を得て、企画・開発・発売まで一貫してサイバーコネクトツーが行う自社パブリッシングタイトルということですが、これって異例中の異例のことですよね?

サイバーコネクトツー・松山洋氏インタビュー。完全新作『.hack//Z.E.R.O.』はどうやって許諾を得ることができたのか?_003

松山氏:
バンダイナムコエンターテインメントさんに圧倒的な感謝を。

30周年という節目に合わせて、じつはずいぶん前から動いていたんですね。その中で、バンダイナムコエンターテインメント(以下、BNE)さんに「30周年を迎えるから記念プロジェクトとして『.hack』を我々のパブリッシングでやらせてください」とストレートにお願いして……というところから始まって結果的に許諾をいただきました。

『.hack//Z.E.R.O.』はサイバーコネクトツーが100パーセントの自己資金で制作し、我々の判断で販売する、自社開発・自社パブリッシング(IP)タイトルになります。許諾をいただいているものなので、コピーライトにはBNEさんの名前も載っていますが、IPの権利は我々が有しています。

──なにをどうやったら権利を許諾してもらえるのか、お話できる範囲でもう少し詳しく教えてもらえますか?

松山氏:
これは「ふつう」じゃないことです。本当に特別なことになります。旧バンダイ時代から30年、我々はバンダイナムコグループに育てていただいたという強い恩義があります。今回の『.hack//Z.E.R.O.』は、我々からバンダイナムコグループに対する“恩返し”のつもりでもいます。30年間の関係値があったからこそ実現したもので、本当に特別なことになります。

サイバーコネクトツー・松山洋氏インタビュー。完全新作『.hack//Z.E.R.O.』はどうやって許諾を得ることができたのか?_004

──権利を持たれているということは、アニメ化やマンガ化、グッズ化などの判断やクオリティについても、サイバーコネクトツーで決められるということですよね。

松山氏:
そうです。我々で決定できるっていうことなんですよね。

──権利は『.hack//Z.E.R.O.』に対してのみで、これまでの『.hack』シリーズはいままでどおりBNEさんが所有されているということですよね?

松山氏:
はい、あくまでも『.hack//Z.E.R.O.』の権利をサイバーコネクトツーが許諾いただいた、というものとなります。

──お話しできる範囲で、『.hack//Z.E.R.O.』の魅力についてお聞かせください。

松山氏:
『.hack』は、2002年に生まれたタイトルです。プラットフォームはプレイステーション2で、サイバーコネクトツーは25人ぐらいしかいない会社でした。

30周年を迎える会社になり、世界中の方々を魅了する、さまざまな代表作が作れるようになりました。サイバーコネクトツーがいま持っている最新の技術とノウハウ、表現力を使って、誰も見たことがないまったく新しい『.hack』をお届けします。

多分、世界中の方々に振り向いてもらえるものになるだろうと……。言葉を選ばずに言うと、現場的に話してるのは、アトラスさんの『ペルソナ』シリーズが3作目から新しく生まれ変わったようなことをやろうと。

もちろん、これまでのファンを蔑ろにはしません。決して蔑ろにはしないんですけども「初めまして『.hack』です。これからいっしょに仲良くしてください」とやりたいんですね。だからゼロから始めるように、というプロジェクト的な意味合いもタイトルに込めていて……。「ゼロ」という言葉には物語的な意味合いもちゃんとありますので、もう少しお待たせすることになると思いますけども、プロジェクトの全容が明らかできるタイミングになりましたら、いろいろと詳細をお伝えさせていただきます。

サイバーコネクトツー・松山洋氏インタビュー。完全新作『.hack//Z.E.R.O.』はどうやって許諾を得ることができたのか?_005

──ちなみに『.hack』って、いろいろと早すぎたじゃないですか。そういったところを松山さんはどう受け止めていらっしゃるんですか?

松山氏:
それはもう結果論だと思っています。過去を振り返ってもしょうがないですし、あのころってやっぱり我々に力がなかったんですよ。いまであれば全世界同時発売が当たり前ですが、当時は日本版が出て、その1年後に北米で発売されて、さらにその1年後にヨーロッパ版が発売となった。それが我々の精一杯、実力だったんです。

もっと踏み込むべきだったんですよね、うん。もちろん、いまの我々は違います。現在のサイバーコネクトツーの総力戦といいますか、誰も見たことのないものをお届けできると思っています。「ゼロ」からはじめさせてもらいますので、ぜひ楽しみにしていてください。

──サイバーコネクトツーは福岡から広がっていった会社じゃないですか。福岡魂といいますか、福岡だからできること、というのはどういったところなのでしょうか?

松山氏:
福岡、東京、大阪と3拠点あるけれど、はじまりは福岡です。いま現在も福岡に本社を構えているのはクレバーな理由からで、効率がいいからなんですね。それはスタッフの効率で、東京に住むよりも生活水準は上がるし、長い通勤時間がないからその分、自分のために時間が使える。で、それがリフレッシュにつながって、仕事の効率とクオリティが上がる。エンタメに触れる機会が増えたり、家族と過ごす時間が増えたり、生活に余裕が生まれるとクリエイティブもよくなるんですよ。サイバーコネクトツーの強さの秘密のひとつは、そこにあると思っています。

──なるほど。お話を聞いていて、とても納得できました。

松山氏:
一方で東京スタジオも拡大し、フロアを増築します。3拠点合計でいまスタッフが320人ぐらい。これからの1〜2年で400人体制を考えています。

──なんというか、松山さんは熱量がすごいですよね。サイバーコネクトツー展も47都道府県で開催されるという発表を拝見して「本当に?」となりましたから。

松山氏:
30年続いた感謝を、支えてくれたお客様に伝えたかったんですね。よくあるのが「東京でイベントやるのでみんなきてね」というもの。でも、私がお客様の立場だったら「いや、地方でもやってよ」と(笑)。

そう思うわけですから、じゃあ47都道府県でやろうと。ただ、これ、めちゃくちゃたいへんなんですよ(笑)。本当に47都道府県すべてで開催するので、楽しみにしていてください。ファンミーティングも全国8都市で行いますから、皆さんいっしょに楽しもう!

──(笑)。

松山氏:
これからの10年で我々が目標とするのは、自分たちが生み出すコンテンツによる世界征服です。ものを作っている人の目標ってそれしかないと思うんですよ。『ドラゴンボール』や『NARUTO』のように知らない人がいない作品を我々の手で生み出したい。

それを成し遂げることがこれからの10年の我々の目標です。そのひとつが『.hack//Z.E.R.O.』であり、これからいろいろと順次発表させていただきます。

いまの我々のビジネスって10年、20年、30年で、だいぶ変わりましたよね。でも、ずっと変わらないものもあって、そのヒントはやっぱり週刊少年ジャンプが持っているんです。何にも似ていない、選ばれる理由があるもの。そういった本物を作れば、未来永劫ずっと売れる。誰もが振り向いてくれる普遍的で新しいものを作り続けていけば世界征服は実現できると思っています。(了)


副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ