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“圧倒的好評”パズルゲー『Öoo』の、「私って天才かも」と思わせてくれる約2時間の濃密なパズル体験は、超シビアな”削ぎ落とし”で作られていた!作り込んだ高難度ステージも、ルート丸ごと1個すらも、バッサリ【開発陣インタビュー】

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『Öoo』をクリアしたとき、不思議な万能感が全身を包んだ。

なんだこの、「自分って天才なんじゃない?」みたいな喜びは……!

本作は「イモムシが鳥の体内からの脱出を目指す」という、極めてシンプルな設定のパズルゲームだ。主人公は、ふたつの爆弾を生成できるだけの、奇妙で無力なイモムシである。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
ピンクの物体が、主人公のイモムシ。(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

プレイヤーはこの「爆弾」だけを駆使して道を切り拓いていく。

怪しい壁を爆破して隠し通路を見つけたり、爆風の反動を利用して段差を飛び越えたり、時には爆弾を頭の上に乗せて運んだり。本作には、「爆弾を爆発させる」以外のアクションは一切、本当に一切含まれていない。プレイ時間も2時間程度で、なんならエンドロールまで文字すら登場しない

とにかく徹底して、ミニマルな作りだ。

そんな本作を、クリアしたプレイヤーたちは敬意を込めて「知識メトロイドヴァニア」と呼ぶ。通常、メトロイドヴァニアで増えていくのは「新しいアイテム」だ。これを手に入れることで、探索範囲を広げていく。

しかし、本作で増えていくのは、レイヤーの頭の中に蓄積される「知識」と「ひらめき」だけだ。ゲーム内で要素が増えることは一度もない。

なのに、ただの行き止まりにしか見えなかった地形が、新しいテクニックをひとつ知るだけで、瞬時に「進める道」へと姿を変える。レベルアップしたのは画面の中のキャラクターではなく、コントローラーを握るプレイヤー自身なのだ。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

クリアまで、たった約2時間のプレイに詰まった濃密なパズル体験は、一体どのようにして生み出されたのか。

300個ものアイデアを出し、必要があれば「ルートをまるまるひとつ」すら切り捨てる。そんな、ストイックに「パズル」を追求したからこそ生まれた本作の開発の裏側について、チームの3人に話を訊いた。

※本記事では、『Öoo』のエンディング演出について記載しています。本作は2〜3時間でクリアが可能なので、情報を入れずに楽しみたい方はプレイ後に本記事をお楽しみいただけますと幸いです。

文・聞き手/anymo

プロフィール

生高橋氏:
企画、レベルデザイン、プログラムを担当。

はちのす氏:
アート、デザインを担当。

つよみー氏:
サウンドを担当。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
写真左から、はちのす氏、生高橋氏、つよみー氏。

タイトルの読み方は決めていない。ファンの方に決めてほしい!

──本日はよろしくお願いいたします。Steamでは「圧倒的好評」を獲得するなど、本作はすごく高い評価を受けていますよね。さまざまなアワードでノミネートもされていますし、『SIREN』で知られる外山圭一郎氏がINDIE Live Expo Awardsに推薦するなど……開発チームから見ていかがですか?

生高橋氏:
開発チーム全員、いまの評価がよくわからない状態で……(笑)。こんなに評価されるとは、予想外でした。

発売前の最後のテストプレイのときには、「クリアできる人いないのでは?」とビビって、攻略動画までアップしてしまいました……。

はちのす氏:
ここまで評価されるとは思っていなかったんです。すごくニッチで、わかる人だけにわかる、コアなゲームだと思っていました。

──Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox Series X|Sでの発売も決定し、さらに広がっていきそうですね。

生高橋氏:
そうですね。リリースされたあとは、データを見て「こんなにクリア率が高いんだ!」と知って自信がつきました。前作『ElecHead』【※】より簡単だと感じた方が多いのも、意外でしたね。

※『ElecHead』…生高橋氏による前作。触れるだけですべてに電気を流してしまう主人公・Elecを操作して、さまざまなギミックに「通電」させながら進むパズルアクションゲーム。

──海外での反響はいかがですか?本作は設定画面まで含めて、徹底して言語や文字を使っていないゲームですので、ローカライズの必要もないですよね。

生高橋氏:
圧倒的に、海外のプレイヤーの方が多いですね。もちろん、海外の市場の方が大きいというのはありますが。

中でも中国がいちばん多くて、次に北米、日本は3割くらい、という感じです。

──ちなみに『Öoo』って、なんて読むのでしょうか?どういった経緯でこの名前に?

生高橋氏:
じつは、僕らは読み方を決めていません。

前作で影響を受けた『VVVVVV(シックスブイズ)』のように、ファンの方々に読み方を決めてほしいんです。今は「ウー」や「爆弾イモムシ」と呼んでくれる方が多いですね。

はちのす氏:
発表会などで、我々がタイトルをどうしても発音しなければならないときは、「爆弾イモムシのゲーム」などと呼んでいます。

生高橋氏:
決めたくはないので、誤魔化し誤魔化し呼んでいます(笑)。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
『Öoo』の文字自体が、主人公の爆弾イモムシを表している。(画像はSteam『Öoo』より)

「知識メトロイドヴァニア」だからこそ、「知識」を忘れる前にクリアしてほしい。2時間の短編という戦略

──本作は「知識メトロイドヴァニア」と呼ばれていますよね。「画面の中のキャラクターがアイテムを獲得することで、行ける場所が増える」のではなく、「プレイヤーがパズルの解き方(ステージの進み方)という“知識”を獲得することで、行ける場所が増える」。非常に濃密なパズル体験ですが、どのようなコンセプトで開発を進めたのでしょうか?

生高橋氏:
最初のコンセプトの時点で、「プレイ時間は2時間程度の短編」にしようと決めていました。

本作はプレイヤー自身が「パズルの解き方」という知識を獲得し、それを活用して進むゲームです。

ですが、ゲームが長くなると、プレイヤーはせっかく獲得した知識を忘れてしまいます。

プレイヤーにストレスなく進んでもらうためには、獲得した解き方(知識)を思い出すための復習ステージを配置する必要がありますが……ゲームが長くなればなるほど、必要な復習ステージの数は増え、ゲームの規模が際限なく膨らんでしまいます。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる

──なるほど。プレイヤーが忘れかけた知識を、ステージ構成によってスムーズに引っ張り出す必要があると。

生高橋氏:
実際、リリース前のテストプレイでは、ゲームが長すぎることでプレイヤーが知識を忘れてしまい、終盤で詰まってしまうという課題が見えてきました。

そこで、復習ステージでの記憶の刺激も駆使して「獲得した知識を忘れる前にクリアできるもの」を目指し、要素を徹底的に削ぎ落とした結果、このミニマルな体験に辿り着いたのだと思います 。

──過去に獲得した知識を完全に忘れる前に、走り抜けることができる設計ということですね。では、プレイ時間を「2時間くらい」と決めたのはなぜでしょうか?短編としても、かなり短い方ですよね。

生高橋氏:
プレイ時間を短くすることで、体験の密度を極限まで高められるからです

私自身、職業柄多くのゲームを遊ぶ時間を確保するのが難しいため、「短くて濃い体験」を好むという個人的な嗜好もあります。

あとは、メジャータイトルに対するコンプレックスもあって……。

──というと?

生高橋氏:
大手の作品にボリュームでは勝てませんから、そこで勝負するのではなくインディーだからこそできる「一撃の濃い体験」で勝負したかったんです。

さらに、「生高橋の作るゲームは短くて濃い」というイメージを定着させることで、自分自身のブランド化にも繋がると考えました。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

──なるほど、明確なビジョンを持って始まったのですね。では、具体的にどのような経緯でプロジェクトが始動したのでしょうか。

生高橋氏:
前作『ElecHead』を「メトロイドヴァニアとパズルの融合」を目指して制作しましたが、なかなかうまくできなくて……。最終的には、一本道のパズル要素が強いものになってしまったんです。

その悔しさを晴らすべく、今度こそ両者が真に組み合わさったゲームを作りたいと考えたのが、プロジェクトの始まりです。

サウンドのつよみーさんは前作からの縁でお声がけし、アートのはちのすさんはX(旧Twitter)でのやり取りがきっかけです。私が「誰かデザインを担当してくれないか」とポストしたところ、はちのすさんが「やるよ」とリプライをくれました。

「ノリ」でチームが決まったんです(笑) 。

──まさかの、ノリで……!

生高橋氏:
実ははちのすさんとは専門学校時代の同級生で、過去にチームを組んだ経験もありました。だからこそ、こうしたノリでチームを結成できたのだと思います。

ふたりとも別のプロジェクトを掛け持ちしていたこともあり、メンバー全員が動ける時間を繋ぎ合わせながら進めていった結果、完成まで2年という期間を要しました。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる

──おふたりは、他プロジェクトも掛け持ちされていたのですね。

はちのす氏:
最初は「半年で作る」と言っていましたよね(笑) 。

生高橋氏:
結局、半年で完成させるなんて到底無理でした。リリースの延期も何度繰り返したか分かりません。メンバーの二人には「ごめん、また伸びる」と4回ほど謝り倒して、かなり期間を延長させてもらいました。

しかも、散々延ばしてきたのに、最後は急に「この日に出すから」と決めてしまって。もう二人からは信用されていないかもしれません……。

はちのす氏:
インディーゲームの開発現場では、よくあることです(笑)

結成当初は「ひと山当ててやろう」というような気負った熱意があったわけではなく、「面白い短編を作るんだな」くらいの軽いノリで参加したんです。おそらく、つよみーさんも同じ気持ちだったと思います。

生高橋氏:
振り返ってみると、かなり無茶苦茶なスケジュールと進め方でしたね。

──そんな「ノリ」で集まったチームとのことですが、今回の制作で目指すゲーム体験をどのように擦り合わせていったのでしょうか?

生高橋氏:
最初にふたりにコンセプトを伝えたとき、特に否定されることもなかったので、そのまま進むことになりました。「うん、これで行こう」という、ごく自然な流れでしたね。

つよみー氏:
僕、生高橋さんに対しては「イエスマン」なんです(笑)。生高橋さんが考えること、ぜんぶいいなって思うんですよ。

はちのす氏:
前作『ElecHead』というしっかりした土台があり、今作はその延長線上のプロジェクトでしたから、目指すべき場所は見えていました。

生高橋氏:
ですので、細かな擦り合わせに時間をかけることはありませんでした。「このコンセプトでいく」と宣言し、それを受け入れてもらってからは、最後まで一気に走り抜けたという感覚です。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

300個のアイデアを「ロジカルに逆算」して配置する。迷わせないための緻密な誘導とマップ表現

──コンセプトの次は、具体的な制作手法についても聞かせてください。どのようにパズルを作り上げていくのでしょうか?

生高橋氏:
私は制作において、「ネタ」を何よりも重要視しています。

ここで言う「ネタ」とは、プレイヤーにさせたい体験や遊び、つまりゲームを構成するための具体的なアイデアのことです。

──さらに具体的に教えていただけますか?

生高橋氏:
例えば本作であれば、

「時間経過で落下する足場に爆弾を設置する」→「落下位置で待ち伏せして、自分の頭の上に爆弾を乗せる」

……といったような一連のアクションの連なりのことです。ゲームを作る際は、まず最初にこの「ネタ」を大量に出すところから始めます。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

──「こういうアクションをすれば、こういう結果になる」というパズルの解き方、つまり本作においてプレイヤーが獲得していく「知識」そのもののことですね。その「ネタ」は、どのくらいの数を出されるのでしょうか?

生高橋氏:
300個ほど、ネタ出しをしました。

前作『ElecHead』でも同様にアイデアを出したので、300個ほど「ネタ」が揃えばゲームとして完成させられる、という肌感覚があったんです。

──300個!すごい数です。その「ネタ」はどのように生まれるのでしょうか。

生高橋氏:
じつは、このネタ出しの段階では、まだロジカルな作り方はしていません。

突飛な発想を試したり、適当に動かしてみたりしながら、遊びながらアイデアを膨らませていくんです。そこから、偶然生まれたものも含めてプレイヤーに体験してほしい「ネタ」を厳選して、配置を決めていきます。

はちのす氏:
まず最初に、出てきた「ネタ」を詰め込んだステージを試しに作ってみるんです。その中でネタの取捨選択を行い、登場させる順番を練っていく。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

──なるほど。「ネタ出し」は遊びを作り出す、クリエイティブなフェーズということですね。パズルゲームはロジカルな思考のみで構築されるイメージでしたが、偶然の力も活用されているのは意外です。

生高橋氏:
ネタを厳選してからは、ロジカルな逆算の作業に入ります。

特定のネタへプレイヤーを誘導するためには、どうしても緻密な計算とロジックが必要になります。ステージ制作の本質は、「プレイヤーに体験してほしいネタに向けて、いかに無理なくプレイヤーを誘導するか」という点にあります。

──偶然や突飛な発想から生まれたネタに対し、辿り着くまでの道筋をロジカルに構築していくのですね。配置のルールなどはあるのでしょうか?

はちのす氏:
コンセプトのお話でも話題に出ていましたが、「復習用のステージ」がそのひとつです。

例えば「爆弾を頭に乗せる」というギミックを、私がテストプレイで忘れて詰まってしまったことがありました。それを見た生高橋さんが、最終ステージの直前にそのギミックを復習しないと先に進めないステージを急遽追加したんです。このように、配置を最適化していきました。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる

──プレイヤーをパズルの解き方に誘導するべく、常に適切なタイミングで復習が挟まれているのですね。

はちのす氏:
本作は当初のコンセプトに「答えに気づいた瞬間の気持ちよさ」を掲げていました。

生高橋さん自身がネタ出しをするときに、「こんな解き方もできるのか!」と自ら驚き、喜んだ瞬間があります。その感情をプレイヤーにも同じように味わってもらうために、緻密に導線を設計しているんです。

──「詰まり」を解消するために、工程を増やす(復習させる)ことで、体験をスムーズにしていったのですね。こうした丁寧な誘導を支えるために、ステージの構成で意識されたことはありますか?

生高橋氏:
自由に動き回れるようにルートを追加するのではなく、むしろ選択肢を極限まで削ることで、進むべき道を明確にしました。その「迷わせないための工夫」のひとつが、本作独自のマップ表現です。

一般的なメトロイドヴァニア作品のマップは、エリア同士の繋がりを示すのみで、ステージの地形は簡略化されて表示されていることが多いですよね。

しかし本作は、「地形そのものがパズルのテクニックと密接に連動」しています。特定の段差を特定のアクションで飛び越える必要があるなど、地形自体が解法のヒントになっているんです。

そのため、マップ上ではあえて詳細な段差の形やギミックの位置まで、簡略化せずに明確に表示するようにしました。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
爆風を使って平行にジャンプする、基礎的なテクニック。上部に「コブ」のように飛び出ている箇所があり、通常のジャンプでは高さが足りず飛び越えられないことがわかる。(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

──地形がそのまま「知識」や「ヒント」としてマップに記されているからこそ、プレイヤーが獲得した知識をスムーズに引き出せると。

生高橋氏:
そうです。マップを見れば「あそこの段差はあのスキルで越えられそうだ」と目星がつくので、広い世界でも迷わずに目的地へ向かうことができます。

「削る」という方向性を徹底したことで、むしろ作り手の意図がプレイヤーにダイレクトに伝わり、ゴールへ向かうための強力な推進力になったと感じています。

──プレイヤーも制作者の意図するところへ、迷いなく進んでいけるのですね。

生高橋氏:
ゲーム制作は一方通行のようでいて、じつは濃密なコミュニケーションなんです。私の意図がプレイヤーに伝わり、それを察知したプレイヤーが試行錯誤してくれる。提供する体験を信頼してもらえているような、確かな手応えを感じています。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

予想できない「偶然」への喜び。100キロ歩く旅と『Celeste』B面が繋がっている?

──先ほどのお話で、生高橋さんは制作過程で起きる「偶然」をとても大切にされているように感じました。

生高橋氏:
私は「ゴールだけ決めて、そこまで100キロ歩く」という謎の旅をライフワークにしているのですが、それが大きく影響しているかもしれません。

──え?100キロを……徒歩で?な、なんでですか?

生高橋氏:
一般的な旅行はあらかじめ予定が決まっていて、起きることが予測できてしまいますよね。予定通りに事が進むのは、私にとってはあまり面白くないんです。

その点、100キロ歩行はゴール以外は何もわかりません。移動中に起きるトラブルや偶然、道中で自分でも予想外のものが見つかる瞬間が、楽しいんです。

あらかじめ立てた計画を遂行する「旅行」よりも、何が起こるかわからない「冒険」の方が、僕は好きなんです

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる

──あえて不安定な状況に自ら飛び込んで、降ってくる偶然を摂取しているんですね……。なぜそこまで「偶然」を求めるのでしょうか。

生高橋氏:
アクションゲーム『セレステ(Celeste)【※】の「B面(高難度の裏ステージ)【※】」をプレイした体験が大きいです。解き方が非常に意外で、まったく予測ができなかったんです。

そこで「予測できないものの方が面白いじゃないか!」と強く感じ、予想の外からやってくる意外性のある体験に価値を感じるようになりました。

※『セレステ(Celeste)』…
過酷な雪山を登る少女マデリンの物語を描いた、高難易度な2Dアクションゲーム。ゲームオーバーになっても即座に復活できる、高難度でも挑戦したくなるテンポの良さが特徴。

※B面…
各ステージに隠されたカセットテープを入手することで解放される高難度な裏ステージ。本編のギミックをさらに発展させた非常にシビアな操作を要求される。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はSteam『Celeste』より)

──その予測不能な面白さへの喜びは、ご自身の制作スタイルにも通じているのでしょうか。

生高橋氏:
そうですね。『セレステ』のB面のような、あからさまに高難度なステージは、おそらく制作途中で見つけた「意外で面白い体験」なんだと思います。これは想像なのですが、面白いけれどメインルートに入れるには難しすぎる、だから裏ステージとして残したのではないかと思うんです

「導線には乗らないけれど、これ自体がめちゃくちゃ面白いから絶対に入れたい!」という発見は、ゲーム作りにおいてよくあることなんです。

本作でも、最初に頭で考えた遊びより、手を動かす中で偶然見つかった「予想外の面白い体験」の方が、本編への採用率が高いんです。自分の予測の外からやってくるものの方が圧倒的に打率が高く、プレイヤーの方々にも喜んでもらえています。

たとえば、本作の「頭の上に爆弾を乗せる」というギミックも、偶然見つけたものなんです。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

──あらかじめ脳内で予想した仕様よりも、手を動かす中で見つかったものの方が、「いい」確率が高いということですね。だからこそ、偶然から体験を拾い上げようとしていると。

生高橋氏:
ゲーム作りも一種の「冒険」だからこそ、やり続けられたのだと思います。

ディレクターである自分自身ですら、開発中に何が起こるか、最終的にどう着地するかわからない。もし開発の予定がすべて決まっていたら、それはただの「作業」になってしまいます。偶然を見つけるための余白がなくなってしまったら、私にとってゲーム作りは全く面白くないものになってしまうでしょうね。

──「偶然」を摂取する手段である、知らない場所へ予想できないルートで向かっていくこと自体にも、喜びを見出しているのですね。

「爆弾3個」のルートを、丸ごと捨てた

──本作のエンディングについても、伺いたいことがあるんです。本作はステージ、つまり鳥の体内を進んでいき、最終的に鳥の心臓部に辿り着きますよね。そうして、これまでパズルを解くことに使っていた爆弾を使って鳥の心臓に致命傷を与え、そして最後は「口から」脱出する──。本作のポップな作風から、てっきり「お尻から」出ていくものと予想していたので、少し意外でした。何か意図があったのでしょうか?

生高橋氏:
それには経緯がありまして……。

実は、爆弾の数と密接に関係しているんです。リリース版では爆弾は最大2個ですが、もともとは3個まで獲得できる仕様を予定していました

当初はマルチエンディングを想定していて、爆弾2個でクリアした際の通常エンドとして「口から脱出」、爆弾3個を駆使して到達する真エンドとして「お尻から脱出」をそれぞれ用意していました。

ですが、開発を進めるうちに「ボリューム的にも、難易度的にも爆弾3個はしんどい」という話になって……ルートごと切り捨てることにしました

──ルートを丸々ひとつ切り捨てたということは、それに伴う遊びも、ステージも、関係する仕様すべてを切り捨てたということですよね……?

生高橋氏:
はい。泣く泣く削って残ったのが、今の口から脱出するエンディングなんです。

はちのす氏:
開発チームでも、「このままだと完成しないね」という話になりました。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

──プレイヤーの体験こそが、強い指針になっているのですね。

生高橋氏:
それから、爆弾2個の時点ですごく気持ちいいエンディングを作ることができてしまったんです。

要素が多い爆弾3個のエンディングはさらなる苦難の先に待っているものですから、この気持ちよさを超えなければなりません。出し続ければいつかアイディアも出るとは思ったのですが、そうするとリリースが1年ぐらい伸びると直感していました。

だったら、爆弾は2個のまま畳んだ方が美しいと思い、爆弾3個のルートはまるまる切り捨てる決断をしました。

──それほどの制作物を手放すことに、作り手としての迷いはありませんでしたか?

生高橋氏:
僕自身も、ルートを丸々切り捨てることについてはすごく迷いました。

決断する前、「1ヵ月ください」と言って、ひとりでレベルデザインに打ち込んだ期間があったんです。レベルデザインというのは僕にとってゲームでいちばん重要なコアの部分、譲れない部分なので、おふたりを待たせながらも、ずっとこのことに向き合っていました。

その結果、「やっぱり爆弾3個のルートは切り捨てるべきだ」と確信できたんです。もし最初から爆弾2個に絞っていれば、開発は1年半で終わっていたかもしれません(笑)。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる
(画像はÖoo – 公式攻略動画より)

はちのす氏:
爆弾3個のルートを切り捨てた理由として、爆弾2個だけでも遊びのバリエーション……先ほど生高橋さんがおっしゃっていた「ネタ」が驚くほど豊富に作れた、というのもありますね。

生高橋氏:
そうですね。爆弾が1個ですら、思ったよりも、プレイヤーに体験してほしい「ネタ」が作れたんです。

──爆弾1個でも十分な遊びが作れたという発見が、捨てる決断を後押ししたのですね。

生高橋氏:
じつは、チームを組む段階でふたりには「制作の過程で、作ってもらったリソースを捨てるかもしれません」とあらかじめ伝えていたんです。

僕の制作スタイルとして、切り捨てて完成させる可能性があったため、あえて事前に宣言して組んだのですが……それでも、いざその時が来るとやはり申し訳なさが勝ってしまい、すごく迷いました。

──その迷いは、作品としての判断への迷いではなく、仲間への申し訳なさだったんですね。

生高橋氏:
そうです。作品として「切ったほうが絶対に面白くなる」という判断自体は、ひとりで作っていれば一瞬で下せるんです。でも、ふたりが時間をかけて作ってくれたものを没にするのは本当に心苦しくて……。宣言をしていなければ、申し訳なさが勝って切り捨てられなかったかもしれません。

私はパブリッシャーを通さず個人で活動してきましたが、それはどうしても人の顔色を伺って気を使ってしまう性格だから、というのもあるんです。

『Öoo』開発陣インタビュー:削ぐ勇気が、脳汁を強制分泌させる

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編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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