突然ですが、私は『ファイナルファンタジータクティクス』が大好きです。
通称、『FFT』。知略、謀略、策略が坩堝のごとく蠢いている戦史モノの世界で、さまざまな葛藤を抱えたキャラクターたちが織りなすハードコアな物語……面白くないわけがないんですよ。
筆者は特に、『FFT』に登場する聖騎士アグリアスさんが印象的でした。彼女は陰謀が渦巻く戦史モノの世界で、正しいことを信じて行動する主人公に対し「今さら疑うものか！私はおまえを信じる！！」と即決で信じてしまうほど正義感の強いお人です。こういう世界だからこそ、彼女のまっすぐさが輝くんですよね。
願わくば、このような純粋なお方の魅力が一際輝くようなシナリオが体験できる戦略シミュレーションゲームがまた遊びたいな……はぁ～……（ため息）遊びたいッ！
と欲望を漏らしていても、「それ、『FFT』でよくね？」って言われ続け、もう20年くらい経ってしまった。
嗚呼……遊びたい………『FFT』ライクな戦略シミュレーションゲームが遊びたい……
ありました。
そのゲームのタイトルは『鈴蘭の剣:この平和な世界のために』です。
基本無料のタイトルであるにも関わらず、課金なしで買い切りシミュレーションRPGのように遊べるメインシナリオと、サブシナリオが明確に分けられている豪華仕様。多数の勢力を相手に、傭兵団の団長として渡り歩くマルチシナリオ式のゲームです。
90年代後半を彷彿とさせるドット絵に、楽曲は『FFT』や『タクティクスオウガ』などに携わっていた崎元仁氏が担当する戦史モノのSRPGって……もう、ほぼ“そう”じゃん！わしゃドンピシャだよ！！！
BGMがめっちゃそれっぽくて鳥肌たったよ！
本作の登場人物の中でも、まず最初に目についたのはやっぱりこの人。ブロンドの髪の銀の鎧、青を基調にした装備に身を包んだ聖騎士グロリアさん。しかも、戦闘中は剣と旗を掲げて戦うというジャンヌ・ダルクを彷彿とさせるようなビジュアルです。
さらに、グロリアさんの声優は奈須きのこ氏が手がける『Fate』シリーズではおなじみのキャラクター「セイバー」の声優も務めている川澄綾子さんが担当しています。もはや、いつ「問おう」って言ってきてもおかしくないぞ。
アグリアスさん、セイバー、ジャンヌ・ダルク……どこまでメジャーな“女騎士”要素をグロリアさんにぶちこむ気だ！
しかも彼女は、王女さまを守るために騎士の宣誓まで立てるというシーンもある。見ればみるほど、アグリアスさん要素が増していくじゃないか。知りたい！はやく彼女のことが知りたい！！！
こうして筆者は、グロリアさんのキャラクター性を探るため傭兵団「鈴蘭の剣」の団長となる決意をかためた。そして、欲を言えばイチャイチャしたい！
……しかし、この時の筆者は、まだ知らない。
『FFT』がそうであったように、戦史モノに清廉潔白な女騎士が出てくるということは、『鈴蘭の剣』にも彼女の純粋さが一際輝くほどに闇の深いシナリオが用意されているということを……。
※『鈴蘭の剣』のシナリオは、記憶を失った主人公が成り行きで傭兵団の団長となるストーリーが展開されます。グロリアさんを掘り下げることを目的としたメインストーリーではありません。筆者の妄想です。
※この記事は『鈴蘭の剣』をもっと知ってもらいたいXD Entertainmentさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
文／TsushimaHiro
編集／りつこ
※本記事には『鈴蘭の剣』の「運命の螺旋」一部シナリオに関するネタバレが含まれます。あらかじめご注意ください。
しかし、世界は甘くない。全然甘くない
とりあえず、結論から言うと……
主人公は開幕数分で死ぬ。
ゲーム開始直後、プレイヤーは主人公となるキャラクターの性別を選択する。
目覚めたのは暗い地下牢獄。囚われている状況から物語が始まるのは、RPGのお約束だ。
主人公は記憶を失っているのか、自分が誰かもわかっていない様子。
そこへ、囚人を殺害しにくる謎の襲撃者が現れる。もうすぐ主人公が襲われそうになる……その時、豪快に扉をけ破って登場したのは身の丈ほどもある大剣を構えた「強そうなお姉さん」だ。とりあえず、同行することに。
大剣を振り回して襲撃者を蹴散らす女戦士ラヴィアだが、主人公と彼女の子分をかばって弓矢をその身に受け死亡。
どう見ても「これからよろしくね」って感じの人なのに、死ぬのはやすぎるだろう。
その後、彼女の子分たちを連れて逃げようとするも、暴動に巻き込まれて主人公も死に直面する。ここまで、ゲーム開始からほぼ数分の出来事である。
……と、そこでゲームが終わるはずもなく。
主人公は謎の声に導かれ、宇宙空間のような所へと飛ばされる。そこには人語を話す黒猫ちゃんが一匹。どうやら、主人公はこの黒猫ちゃんに助けられてこの謎の空間にいるらしい。
名作RPG『クロノ・トリガー 』を遊んだことのある人であれば、“時の最果て”をイメージしていただけるとわかりやすいだろうか。
黒猫ちゃんはここを「楽園」と呼び、ここを超えた先にある「道標」にたどり着けば運命を変えるための手段があるという。
プレイヤーはここから、自らの死の運命を変えるべく奔走する。
シンプルながらも奥深い戦闘システム
『鈴蘭の剣』で遊べるコンテンツは大まかにわけて3つある。上記の画像のとおり、左から「交差する世界」、「愚者の旅路」、「運命の螺旋」だ。
中でも特徴的なのは、プレイヤーの選択や行動によって結末が変化するマルチエンディング式が採用されたシミュレーションRPGを無課金で楽しめる「運命の螺旋」だ。
「基本プレイ無料のタイトルなのに、無課金で遊べるってどういうこと？」って思うかもしれないけど、プレイした上で言えるのは「マジでマルチエンディング式のSRPGが無料で一本収録されている」ということ。よくわからないくらい無料。
本作のゲームシステムは、シンプルな昔ながらのSRPGを踏襲している。
戦闘開始時に所持しているユニットから出撃するメンバーを選択し、マスで分けられたフィールドのキャラクターを動かして敵と戦う、といったものだ。
それぞれのキャラクターには5つのロールが設定されている。ロールには相性があり、敵に与えるダメージや被ダメージに直接影響を及ぼす。
しかも、こういった戦略シミュレーションRPGではよくある手違いで「待った！今のナシ！」といったケースが発生してしまっても、本作には一回の戦闘に回数制限はあれど「巻き戻し」機能も搭載されているので安心だ。
また、フィールドに落ちている一部の物は自身の操作するユニットで攻撃すると転がして敵に攻撃することも可能だ。一例として、岩は敵に大ダメージを与え、火薬樽を破壊すれば周囲の敵にダメージを与えられる。草玉においては敵を弾きとばし、フィールド外に落として一撃死させるようなトリッキーな戦闘スタイルも実現できる。
さて、「運命の螺旋」ではガチャで引いたキャラクターも3体まで連れていくことができる。いっぽう、レベルや装備などは完全に別枠で、専用のステータスとなる。
そして、主にソシャゲ部分として遊ぶのがステージクリア型のコンテンツである「愚者の旅路」と、素材収集系クエストが集められた「交差する世界」だ。
まずは、本作のメインコンテンツとなる「運命の螺旋」にてグロリアさんに会いに行きたいと思う。
選べる3勢力。どこに協力するかでストーリーも大きく変化する
「運命の螺旋」は、序盤に主人公が死ななかった場合の世界線を辿れる。生き延びた主人公は、傭兵団「鈴蘭の剣」の団長として町と人々を守るため、戦乱の最中を約59週間過ごす。
広大なロディニア大陸を舞台に、権力闘争や他国からの干渉、深刻化していく宗教と民族の対立、反乱軍の発起など、戦史モノにふさわしい問題だらけの場所で生き抜くことになる。
最初はこまめに依頼を解決しつつ、徐々に仲間を増やしながら戦いを生き抜く。しかし、町を守るためには、いずれかの勢力を選択し、協力を要請する時が訪れる。
物語がどれくらい分岐するのかはチャートを見ると確認できる。序盤に協力を要請する勢力を選択することで、少なくとも3つ以上のルートに分岐するようだ。
協力を要請できる主な勢力は、豊富な資源を大国から狙われているイリヤ王国の「王国軍」、大陸における最も古い政治勢力であり宗教国「ロディニア法皇国」、そして、13の騎士団国からなる軍事強国「騎士連合」がイリヤに派遣した騎士団の3つだ。
イリヤ王国は王位継承権争いで泥沼化しており、イリヤの港湾都市ウェーブランでは「打倒王室」を掲げて暴徒が王国軍と衝突してしまう始末。主人公らも冒頭でその戦いに巻き込まれて死んでしまったが、前述したように「運命の螺旋」では主人公が生き残ったルートのストーリーを追える。
さて、主人公が住む鈴蘭の町を守るためには、暴徒、山賊、王国の反乱軍など、町に降りかかる火の粉をはらわなければならない。今回は、グロリアさんが所属している騎士団に協力を要請してみよう。
全ては、イリヤの平和（グロリアさんとのイチャイチャライフ）のために。
聖騎士グロリアさんの所属する騎士連合との共闘
グロリアは騎士団を率いて、見事に傭兵団「鈴蘭の剣」を救ってみせた。この恩を返すためにも、「鈴蘭の剣」は騎士団と同盟を結び、以降は騎士団に協力的なイリヤ王国の第二王子・ルトフィ王子も交え協力関係となる。
騎士団の一員であるグロリアとは、主人公が死んでしまった「ウェーブラン事件」の首謀者を追う物語が展開される。
前述したようにイリヤ王国ではウェーブラン事件を含め内乱が勃発しており、騎士連合はイリヤ王国を悪政から解放するためにやってきた、という体裁だ。
ルトフィ第二王子は、その騎士連合に合流して共に悪政からイリヤ王国を解放するという。
この、ルトフィ第二王子が実にキナ臭い人物なのだ。
調査の結果、どうもウェーブラン事件の裏にはイリヤ王国の第一王子であるダンタリオンが一枚嚙んでいるのではないか、ということが判明する。
しかし、そうだとすると違和感がある。なぜ、わざわざ自国内で内乱を起こさせる必要があったのか？
そんなことを考えていたら、ルトフィ殿下から「グロリアから調査の協力をしてほしいと申し出があるはずだが遅らせてほしい」と、ハチャメチャに怪しいお手紙が届く。いやぁ、怪しい……しかもこの王子、具体的になぜ遅らせなければいけないのかは明言せず、ただただ、綺麗ごとを並べるのだ。
ここは、グロリアの身を案じて調査の協力を申し出てみよう。
しばらくグロリアと行動を共にしていると、グロリアには優秀な先輩騎士のティードンが傍についていることがわかる。彼はグロリアの師であり、現在は副官を務めている人物だ。
ティードンはグロリアの父が最も信頼する戦友であり、彼女の父が亡くなったあとに世話役兼教育係として、本当の父親のようにグロリアを見守ってきたという経緯がある。
しかも、彼の音声はアニメ版『NARUTO』にて、はたけカカシ先生役を演じた井上和彦さんだ。
長年師匠キャラ演じてきているベテラン声優さんだけあって、ティードンの慈愛に満ちた落ち着いたボイスもピッタリと合う。合いすぎるッ
上記の理由からか、ティードンはグロリアにとって非常に大きな存在となっている。伝令を仰せつかった兵士が殉職した際に、ショックを受けるグロリアを傍で支えるのは、もちろんティードンだ。
彼はうなだれるグロリアに対し、「何か手が残っているはずだ、もう一度やり直そう。」と優しく声をかける。かっけぇ……安心感が半端ない。
『FFT』をプレイしている方ならガフガリオンというキャラクターがいたことを覚えていると思う。もしガフガリオンが暗黒騎士ではなく、主人公と共に義を重んじる者として立ち上がっていたら、こういう光のおじいちゃん騎士になっていたのかもしれない、と妄想してしまう。台詞の中に「ン」は入っていないが。
そんな素晴らしい人物のティードンなのだが、ルトフィ王子のお手紙でさらっと死亡が確認される。
オイオイオイ……重要人物っぽい感じで動いてたのに、こんなにあっさり死んでいいのかよ！！！
ルトフィ王子は騎士団内部の仕業に違いないと言うが、グロリアを妨害しようとする件もあって、どうも信用できない。何かチャラいし。
「持たざる者」のストーリーが秀逸
自分のことを娘のように育ててくれたティードンの死に、再びショックを隠しきれないグロリア。彼女が言うには、どうやらティードンはウェーブラン事件の犯人が使用していた爆薬について何か手がかりを得ていたようだ。
これは、事件に携わっていると思わしき第一王子ダンタリオンの仕掛けた暗殺と見ていいのだろうか？やはり、我々傭兵団は、いつの間にかイリヤ王国の王位継承権争いに巻き込まれてしまっているのではないだろうか……。
その後、冒頭で矢にうたれ死んでしまった“大剣を構えた「強そうなお姉さん」”ことラヴィア姐さんが、せっかく生き残ったのに今回はイリア王国の王女を庇って死んでしまう。さらに、イリア王国の王女を守護すると誓ったグロリアさんは行方知らずになってしまう。
好調に依頼を解決し、町にも活気が出始めていたはずが……さまざまな思惑に利用され、雲行きが怪しくなっていく傭兵団の面々。ある者は酒に溺れ、ある者は膝から崩れ落ち、咽び泣く。
まさに権力を「持たざる者」たちのストーリーがこれでもか、と描写される。
次々と命を落としていく傭兵団の屍を超えていき、主人公は自分の歩む道が正しいと信じ騎士団と戦い続ける。
そして、ウェーブラン事件の犯人は第一王子のダンタリオンと先遣騎士団団長のオーギュストであることが判明する。どうやら、ルトフィ第二王子はイリヤ王国と騎士連合をぶつけ合って、いい感じに第一王子を排除して王位に就任しようと画策しているらしい。
イリヤ王国では悪政で有名なダンタリオンということなので、こちらとしても異存はないのだが……おそらく、本作は別の陣営につくことでそれぞれの勢力の全く別の側面も見えてくるのだと思われる。
さて、第一王子との決戦が近づいてくるも、傭兵団は騎士団からまるで捨て駒のようにしんがりとして扱われてしまう。
その際に主人公が言い放つ「くそっ……傭兵は捨て駒だというのか？」って台詞が個人的には大好きですね。すごく『FFT』の味がする。
グロリアさんを掘り下げるはずが、なぜか王子とイチャイチャすることに
ルトフィ王子の増援もあり、主人公らはなんとか敵将を打破することに成功する。ルトフィは主人公のことを「最も信用する者で、私が頼れる唯一の力でもある」と称し、サシの飲み会を楽しむ。おかしい……そこまで気を許しているはずでは……。コンッ（乾杯の音）
王子は騎士連合を信用しておらず、王都の貴族たちを味方につけてダンタリオンを引きずりおろす計画を考えているようだ。残る王国軍はほぼ残党、無理やり殺すこともないと、主人公は逃げる兵士はなるべく見逃すように方針を変える。
ある程度、残党狩りが終わった後はルトフィ王子の父が将軍だった頃に使われていた荘園に招かれる。しかし、そこにも襲撃の火が回ってきたので、ルトフィ王子は幼少期に秘密基地として使っていた部屋に主人公を案内する。
幼き日々の思い出を語り、人生の終わりを悟るも主人公が傍にいたことを喜び、「私の戦友、私の同志、私のたった一人の友」とポエムを語り始める。狭い密室にろうそく一本の灯りの中で………おかしいな～～～
俺は王子とイチャイチャしたかった訳ではなかったはずだ……。
騎士連合とイリヤ王国の戦争は、ダンタリオン王子の捕縛によって終結した。しかし、ルトフィ王子はこれからが大変であるということを主人公に告げた。イリヤ王国に平和をもたらすためには、主人公が必要であるということも。
雨がどしゃぶりの中、このタイミングでグロリアが現れる。グロリアは王女の身を守るという騎士の誓いを守るため、今まで隠れていたのだ。
多くの戦史モノを見ている方であれば容易に想像がつくと思うが、王位継承を目指すルトフィ第二王子にとって、第一王子の次に邪魔になるのは、生き残っている王位継承者のイナンナ王女だ……。
主人公がルトフィ王子に利用され、戦いに明けくれている最中、グロリアはイナンナ王女を守り続けるために戦っていたのだ……。彼女は主人公にお別れを告げ、その場を去ってしまう。
・・・・・・・・・・・。
なんて悲しいお話だよ……。グロリアさんのことを知ろうとすればするほど事態が悪化するんだけど……。しかも、なぜかルトフィ王子の好感度（らしきもの）がグングン上昇し、生涯の友として扱われてしまう始末だ。どうしてこうなった……。
悲しすぎる結末
翌日、ウェーブラン事件の関係者である説が濃厚なオーギュストさんは「グロリアが騎士団を離反しました」と丁寧にお手紙を送ってくる。
一見、冒頭は丁寧な文面ではあるが、ようは「見つけ次第、絶対にぶっ殺してやるから覚悟しておけよ」という強い殺意のこもったメッセージであった。
翌日、ルトフィ王子は正式に王位を継承することが決定する。
イリヤ王国の広場では、ウェーブラン事件の関係者であると思わしきオーギュストの姿が。彼は、「イナンナ王女こそ事件の犯人である」と濡れ衣を着せ、彼女を処刑しようとしていた。
あろうことか、王子は妹であるイナンナ王女を排除させることで、自身の地位を確定させようとしているのだ。これはシャアもニッコリな謀りっぷりである。ルトフィ王子はテラスで優雅にワインを傾けながら、事態を見守る。
ルトフィ、謀ったな！ルトフィ！
「待て！」と、そこに現れたのは我らがグロリアさんだ。彼女は王女を救い出すため単身乗り込み、オーギュストに浴びせられるだけの罵声を浴びせまくって周囲の騎士たちに目を覚ませと鼓舞する。いかんなぁ～……このままではグロリアさんがサクッと殺されちまう。
「こりゃたまらん！」と飛び出そうとすると、なんとここでテラスで優雅にワインを傾けていたルトフィ王子が決死の覚悟で剣を抜き、主人公を止めに入る。彼は「今君が助けに行ったら、私たちがやってきたことは全部台無しになってしまう」として、必死の形相で何度も剣を打ち合わせる。
どうしても引かないルトフィ王子をやむを得ず刺し殺す主人公。王子は最後まで主人公のことを親友と称し、絶望の表情を浮かべて息絶える。その様子を目の当たりにして、主人公も何とも言えない感情が芽生えたのか、無言でうなだれる。
余談だが、このルトフィ王子の日本語版の音声を担当したのはアニメ『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』にて、友人の悲しい結末を見届けることになってしまう少年アルフレッド・イズルハの声優をつとめた浪川大輔さんだ。
作品は違えど、皮肉にも浪川大輔さんの演じた青年が、今回は無二の親友と思っていた人物の主人公に刺殺されてしまうことになった。
ここまで来たら、もはやグロリアさんと共に戦場で死ぬ覚悟だ。
急いでグロリアさんを助けに向かうも、さすがに多勢に無勢か、二人の正義は残酷に鎮圧されて終わる。その後、騎士連合の内紛という不祥事が公になり、オーギュストの天下は長くは続かなかった。
グロリアと主人公の正義を守るための勇姿は多くの騎士たちの信仰心を揺るがした。その一部はイリヤ王国に残り、傭兵団「鈴蘭の剣」と共に、イリヤの人々に交じりあらゆる不義不正と戦っているという……。
~The End~
………って、これ、どう見てもバッドエンドでは？
かなり甘く見積もってもバッド寄りのエンディングでは！？
ある意味、グロリアさんと最後の一瞬を遂げるという、舞台で考えたらかなり美味しい立ち位置はもらえたけど、本編のストーリーの6割がたは王子とのイチャイチャシーンでしたよ！？
満足できない結果でも何度でも挑める「運命の螺旋」
……しかし、そこは『鈴蘭の剣』です。「あの時、こうしていたら……」という選択を、物語の分岐点となる途中から、もしくは最初からやり直すことができます。
一周目での過ちを繰り返さないよう、二周目では騎士連合と協力関係になる時点からスタート。今度は、ルトフィ王子の要請をガン無視して全ての行動をグロリアさんの調査の協力に極振りしてみる。
すると、一周目では見られなかったグロリアさんに関連するイベントが発生する。主人公が住む鈴蘭の町ではお祭りが開催されることがあり、おもに「鈴蘭の餅」という名物お菓子が食べられている。
これは小麦粉が原材料として使われているお菓子だ。
グロリアさんはこのお菓子の原材料が、その名称からお花の「鈴蘭」だと勘違いする。結果としてグロリアさんが花の咲く丘でお花を摘むというなんともほんわかしたエピソードが見られた。こういうのでいいんだよ。
町の住民と一緒にお祭りを楽しむグロリアさん。一周目では戦場の中、ピリピリした雰囲気で話す場面がほとんどだったので非常に新鮮な気分だ。正義を貫く清廉潔白な女騎士さんも、多少は天然な部分があるということか。
その後、ラヴィア姐さんがイナンナ王女をかばって死んでしまう結果は変わらず、グロリアさんがイナンナ王女を守護るという騎士の誓いも滞りなく行われる。
そして、再びルトフィ王子から「グロリアの協力要請がきても遅らせるように」と連絡が入るが、今回はグロリアから火急の知らせが届く。どうやら、一周目とはまた違ったルートを辿っているようだ。さっそく手助けに向かう。
ティードンとグロリアの協力もあり、ウェーブラン事件の黒幕が第一王子ダンタリオンと先遣騎士団団長のオーギュストが黒幕であるという証拠の書簡が存在すると判明。
主人公は騎士連合を疑いつつも、ひとまずは王国軍を打ち負かすため騎士連合と共に戦争に加担する。
なんとか王国軍との戦いに勝利するも、犠牲者は多数出てしまった。まだ十六歳であった殉職者の墓前で悲しむグロリアは、ティードンに対し「どうしてイリヤ人を見殺しにしたのか」と問い詰める。
ティードンは、「これはイリヤ人の戦争であって、我々の戦争ではない」と語る。
暴政を打破したいのであれば、当事者であるイリヤ王国の国民が血を流し、犠牲になる覚悟を持つべきだと述べるのだ。そして騎士連合の人間として、グロリアと自分は騎士たちを無事に祖国に連れ帰る義務があると言う。
この人、徹底的に良い上司であろうとしているな……。身内への優しさと、よそ者への厳しさをあわせもったお方だ。しかしながら、ここらへんから主人公は、暗躍する者の潜む騎士連合に協力していて本当に平和が訪れるのか強い疑念を抱くようになる。信じられるのは、実直なグロリアさんのみなのか！？
今できることがあるとすれば、ウェーブラン事件の首謀者を突き止めるべく、決定的な証拠を見つける手助けをすることくらいだ。
そして、グロリアさんはついに決定打となる証拠を発見する。
ウェーブラン事件の首謀者が明かされるそのお手紙には、騎士連合を束ねる“騎士評議会”の印章が捺されていた。うろたえるグロリアだが、ウェーブラン事件の真相を伝える唯一の証拠だとして、これを公表するという。
ティードンは、この手紙が公になれば騎士連合の信仰は崩壊し、イリヤ王国含め全世界が混乱に陥り地獄のような戦争が繰り返されるので隠滅するべきだと説得する。
ここまで来て保身に走るかッ！ティードン！
それとも……グロリアの身を案じてか……ッ！（涙）
あくまで正義を貫き通すグロリア、これ以上の戦乱を望まないティードン、二人の想いは衝突し、騎士たちは「グロリアを拘束しろ」と命令するティードンの味方をする。
何故だ……何故なんだ……見たくなかったぞ、君たちの戦いだけは見たくなかった……まるで親子のように育ってきたはずなのに……
主人公はグロリアと落ち合うために港へ向かったが、そこは既に血みどろの修羅場であった。事態を飲み込む暇もなく襲撃してくる騎士連合。ついに主人公は、グロリアの味方として騎士連合とも敵対してしまうことになった。
この世界、正義を貫くのがハードモードすぎる。
さて、こうなってくると騎士連合の上層部の差し金であるオーギュスト的には、証拠を掴んで行方をくらましてしまったグロリアをなんとしてでも抹殺してしまいたい所だろう。
彼はグロリアと共に行動することの多かった主人公に目星をつけ、グロリアの居場所を聞いてくる。当然だが、ここは完全に白を切る。（たくさん脅されました）
夜に、鈴蘭をつんでいた丘で町を見下ろすグロリアのもとに、彼女を象徴する兵装“聖槍ロンギヌス”を持っていく。詳細な描写はなかったが、このシーンでティードンはグロリアの手で殺されてしまったことが明かされる。一体、どういうことなんだよ……ティードンはどんなに足掻いても悲しい死を迎えてしまう人物なのだろうか？
「私にとって父親のような人だったのに」と、悲しむグロリア。しかし、そんな悲しむ暇もないと言わんばかりに、今度は表面上はまだ同盟関係にあるはずの騎士連合が鈴蘭の町を襲撃する。もはや、なりふり構わんということか、オーギュストォォォ！！！
戦史モノは勢力争いで複雑なストーリーが絡んでしまう。
現在の状況をまとめると「騎士連合はイリヤ王国の内乱を意図的に引き起こした首謀者だが、表面上は解放者としてイリヤ王国と闘う“正義の騎士連合”とされている」状況だ。許せんッ！
そして、一周目と同じく喜々としてオーギュストはイナンナ王女とグロリアに罪をなすりつける腹づもりのようだ。次は絶対に助け出す！と意気込み、鈴蘭の剣一同はグロリアとイナンナ王女の救出へ向かう。
そして、正義を貫くべく王女のもとへ向かう傭兵団とグロリアたちを見守るかのように、一瞬だけ老騎士の亡霊が姿を表し、敬礼をしてみせる。彼は死してなお、グロリアのことが心配だったのだろう。ちなみに、筆者はこのシーンで思わずちょっと泣いた。
一周目では決定的な証拠を掴めず、凄まじい勢いでオーギュストを罵倒していたグロリアさんだが、今回は多大なる犠牲を払ってはいるが確固たる証拠を持っている。このお手紙を表に出すということは、騎士連合の上層部である評議会が首謀者であると判明したも同然だが……。
この事態を見て、最初に動き出したのはなんと騎士連合の騎士だ。その中の一人は、「騎士グロリア、私たちは君を信じる！」と、『FFT』のアグリアスさんを彷彿とさせる台詞を言ってのける。グロリアさんから漂うアグリアスさん感MAXな伏線を、このクライマックスシーンで、しかも名もなき騎士の台詞で回収するとは粋な演出だ。
唯一無二の親友を得ることができなかったルートのルトフィ王子は、オーギュストと共にグロリアと主人公に立ちはだかる。主人公は、傭兵仲間たちと協力しオーギュストたちを撃退する。
グロリアとの決闘シーンで、オーギュストもかつては正義を信じていたが、「この世界を決定するのは力と利益だけだ」と、哀しげな表情で語る。その口調は、先ほど争っていた時とは違い、まるで子供を諭す時の父親のようだった。
その後、剣を折られたオーギュストは騎士団の評議会に追い詰められ、すがるルトフィ王子を「知りすぎた」として刺殺する。ルトフィ王子……君もまた、死する運命の人なのか……。
抵抗することもなく、評議会に捕まるオーギュスト。あの手紙が真実であれば、この評議会こそが諸悪の根源となるのだが……。あっさりと引き下がる。これでは、まるでオーギュストが汚れ仕事を一身に引き受けたかのような結末だ。
その後、多少の混乱はあったものの騎士評議会内部の衝突は騎士連合の全面的な内戦に発展することはなかった。評議会はイリヤ王室唯一の生き残りとなってしまったイナンナ王女を支持し、新政権へ対する影響力を求めず、イリヤ王国は主権を保障された。
結果的にグロリアは、ウェーブラン事件の証拠を勝ち取ってイリヤに自由と独立を与えるという約束を守ってくれたのだ。……そして、やがて海の向こうからオーギュストが獄中で自殺したとの報せが届く。
グロリアは、“決定的な証拠”を手に、評議会の不正と対峙すべく単身で騎士連合へ期間することを決意し、引き留める主人公にお別れを告げる。だって……行ってほしくないじゃん！このままじゃアンタ、オーギュスト二世になっちゃうよ！しかしグロリアは自身の正義を信じ、その場を去った。
しばらくすると、騎士連合評議会内部で混乱が起きたという噂が流れてくる。イリヤの平和は幾年も続いたというが、野望の叶わなかった勢力が新たな動乱と戦争を引き起こそうと蠢き出す。その度に、グロリアさんの残した正義を貫く勇姿を見た者たちが立ち上がるのだろう。
=The End=
これが真のグッドエンドかと言われると、正直に言うとわからない。
それくらい、この戦いには色んな思惑が入り乱れる物語だと感じられた。
実際に、その後の評議会の不正が暴かれたかどうかは不明だし、できればグロリアさんの戦いについて行ってあげたかった……。ただ、ようやくグロリアさんの生存ルートを見ることが叶った。
さて、ここまで紹介した「運命の螺旋」のシナリオは、あくまでも極一部だ。本コンテンツには、言うまでもなくこれ以外のエンディングがめっちゃ用意されている。例えば、もし一周目でルトフィ王子のいうことに従っていたら、彼は死なずにすんだかもしれない。
また、ほかの勢力に属することでイリヤ王国で勃発する戦争をまた違った視点で見られるだろう。今回は騎士団のシナリオに焦点を当ててみたが、本作のシナリオが気になった方はぜひ実際にプレイしてみてほしい。何度も繰り返すようだが、これだけのボリュームがあるのにこのゲーム無料です。
無課金でも楽しめる「運命の螺旋」のゲームシステムを紹介
「運命の螺旋」は無料で遊べるということを繰り返し強調してきたが、次はこのコンテンツがどのようなゲームシステムで進行するのかを紹介したい。
このコンテンツは、前述したようにプレイヤーの選択によって変化するシナリオを楽しめるものだ。
ガチャで入手したキャラクターは開始時に3体だけ連れていけるが、レベルや能力は「運命の螺旋」専用のものにリセットされる。そのため、ソシャゲ部分とはほぼ完全に切り離されている状態で始められる。
基本的には、プレイヤーは鈴蘭の町を拠点に依頼を受けながら、傭兵団として生活するルーティンを送る。
一週間にできることは限られており、緊急で発生するイベントを除き依頼を一回受けられるほか、兵士を派遣して資金や資源を獲得したり、味方に訓練を受けさせてレベルアップや新たなスキルを覚えさせたり、鍛冶で装備を作成したりとさまざな指示を出せる。
仲間となる兵士は、酒場で雇い入れることができる。また、兵士は戦場に出撃すると体力が10減少してしまい、数値がマイナスになると出撃できなくなるため適度に休息させてあげなくてはならない。
この仕様から、本作では「同じキャラクターを何度も出撃させる」といったことは難しく設計されている。しかしながら、レア度の低いキャラクターでも多彩なスキルを習得したり、前線で活躍できるようになっている。主人公はこのルーティンを繰り返しながら、合計約59週間をここ鈴蘭の町で過ごすことになる。
ちなみに、「運命の螺旋」で使用できるスキルでおすすめなのは、戦場に出撃させる防御型のユニットを召喚して戦わせられる「ガードマン」だ。ユニットは敵に倒されてもロストすることはないが、やられてしまった場合は通常の戦闘よりも体力を大きく消耗してしまう。なので、消滅してもデメリットのない盾役が非常に有用になる。
主に回復役や魔法使い系のキャラが習得するので、ぜひ訓練させて覚えさせてみてほしい。
「運命の螺旋」のストーリーは章ごとに分けられており、先を読むためには「運命の鍵」というアイテムが必要になる。このアイテムを入手するためにはガチャを引くためのアイテム「希望の晶石」が必要となる。
とはいえ、「運命の鍵」はログインボーナスなどでも配布される。なので、よほど一度に「運命の螺旋」をコンプリートまで走り切りたいという方でなければ、課金せずとも「運命の螺旋」は楽しめるようにできている。
また、「運命の螺旋」は初めからスタートするとキャラクターのレベルも全てリセットされてしまうが、クリアした結果が全て無駄になるという訳ではない。
クリアした実績によって専用のポイントが手に入り、それを使用すると、次にはじめからスタートする際に有利な効果やボーナスを付与できる。
周回するごとに、資源が豊富な状態で開始可能で、一部は能力も強化できる。
「愚者の旅路」と「交差する世界」ではソシャゲ部分が楽しめる
さて、残るメインコンテンツは「愚者の旅路」と「交差する世界」だが、こちらは「運命の螺旋」とは切り離されたソーシャルゲーム部分のコンテンツだ。
「愚者の旅路」は、ストーリーを進行させることで加入するキャラクターのほか、配布されるキャラや、「希望の晶石」もしくは課金でひけるガチャにて仲間になるキャラクターを育成して挑むコンテンツだ。
ステージをクリアしたり、実績を解除することでプレイヤーレベルが上昇し、キャラクターの最大レベルはプレイヤーレベルの最大値に依存する。一例として、プレイヤーレベルが30であれば、キャラクターのレベルは30までしか上がらない仕様となっている。
「愚者の旅路」で進行するクエストのストーリーでは、人格のない敵を倒しつつ世界の歴史を辿り、区切りが良い所まで進むとスポットライトのあてられたキャラクターの独白シーンを見る形式で進む。勢力が異なる面子で攻略に挑むコンテンツとなるため、「運命の螺旋」とはまた違ったシナリオが楽しめるようだ。
いっぽうで、「交差する世界」は、育成素材を稼ぐことに特化したクエストが集約されているコンテンツだ。
本作のキャラクターはガチャで複数体同じキャラクターを引くことでキャラの「欠片」を入手し、★レベルを上昇させられるオーソドックスなスタイルを採用している。「交差する世界」では1日1回の回数制限はあれど、この「欠片」を稼げるクエストも用意されている。
つまり、1体でもキャラクターが引けていれば、時間をかければ最高レベルまで育成できる仕組みだ。しかも、入手できるのはキャラクターの欠片だけでなく、装備も含まれている。これを活用すればガチャを引かずとも、地道に時間をかければ武器防具を収集できる。
なお、キャラクターの★レベルは最大で5まで上昇させることが可能で、該当するキャラの「欠片」を合計300個入手することで最大レベルまで到達させられる。最高レア度のキャラクターにおいては★レベル5になると、専用のグラフィックが解放される。それぞれのキャラクターによって解放される立ち絵は異なるので、お気に入りのキャラが見つかった人は、ぜひ解放を目指してみてほしい。
そのほかにも、本作にはそれぞれのロールごとに能力を強化する「タレント」や、NPC相手にほかのプレイヤーのチームと対戦する「栄光の戦い」という要素も存在する。
「楽園」ではグロリアさんとのイチャイチャライフが待っていた
一歩、「運命の螺旋」から離れると、穏やかな景色の中で勢力の異なるキャラクターが一同に「楽園」に集い、暮らしている様子が見られる。
ここでは、戦乱に運命を翻弄されてしまったグロリアとティードンも落ち着いた環境でいられるようだ。
また、メインメニューから選択できる「心の絆」からはキャラクターの絆値を上げることができる。ここでキャラクターに与えることのできる経験値「心の力」は毎日ログインすることで500ずつ回復し、最大で3000まで蓄積することが可能だ。
絆レベルは最大で5まで上昇させられる。レベルが5になったら全能力値が5％ほど上昇し、キャラクター専用のアイコンを使用できるようになるほか、一部のキャラクターは名前を変更することもできる仕様だ。
さらに、一部のキャラクターは「運命の螺旋」で該当するシナリオをクリアすると、専用のストーリーも解放される。グロリアさんの場合は、美味しい小麦ジュースと焼き魚に舌鼓を打つほっこりシーンが確認できた。もう、ここでみんなで幸せに暮らそうよ……。
それぞれのキャラクターにイベントが用意されているようなので、お気に入りのキャラクターが見つかったら、ぜひ絆レベルを上げてみてほしい。
しかも、「楽園」には窓辺にある小部屋に家具や観葉植物を設置するハウジング要素も充実している。そして、この家具たち……日差しにあたると光と影の形も変化する。
その分だけ、グラフィックを用意しているということだろうか？だとしたら、このゲームのドッター、凄すぎる……
では『#鈴蘭の剣』で結末を変えてみては如何でしょうか👾🥳😎
— 鈴蘭の剣：この平和な世界のために【公式】 (@SuzuranKen) August 9, 2024
※実際のキャラクターではございません。 https://t.co/VfN1SisdP8 pic.twitter.com/jhZqHAcB0Q
ドット絵と言えば、『鈴蘭の剣』のキャラクターはフィールドで動く部分は全てドット絵で描かれている。その職人芸は公式SNSでも発揮されており、マフィア梶田氏のドット絵も即座に仕上げて公開してしまうほどだ。
ところでこのゲーム、モブキャラすらカッコいいんだが
ところで……『鈴蘭の剣』に登場する甲冑のキャラクター、カッコよすぎない？
素顔を見せず、重鎧を身にまとう勇姿。戦場では頼もしい姿を見せてくれる彼らがマジでかっこいい。
ちなみに本作、当然だがソーシャルゲーム部分では最高レアキャラクターの★レベルを上昇させるのは困難だ。前述したように、1体だけでもキャラクターを入手しておけば時間をかければ確実に育成できるが、比較的ガチャで出やすいSSR以下のキャラクターは速い段階で★レベルを上昇させられるため、十分に前線に立てる能力を確保できる。
一例として、上記のキャラクターは最高レベルまで★レベルを上昇させると、最大体力の30％分の物理シールドを獲得し、シールドが削りとられない限りブロック率が100％と鉄壁の防御力を誇るユニットとなる。しっかりと防具も強化してあげれば、前線に立たせることもできるだろう。
ストーリーで目覚ましい活躍を見せる名前付きのレジェンダリーキャラクター以外も育成しがいがあるため、個人的には嬉しい限りだ。名もなき英雄って、何かカッコイイじゃん？ちなみに、強さで言うとおすすめのSSRキャラは連続攻撃で敵を攪乱する「スティンガー」だ。
工場の娘が反乱軍のリーダーになる世界
モブキャラと言えば、本作には一般人でありながら暴徒をいさめ、反乱軍のリーダーとなった少女の「エダ」という女の子がストーリーに登場する。彼女は主人公が生き残ったルートで出会えるキャラクターで、難民たちを率いてウェーブラン事件の暴動から脱出することに成功してみせる勇気ある人物だ。
「運命の螺旋」では、正体を隠して鈴蘭の町に居候をしていた王女に接し、励ます素振りを見せる。
エダは、8月16日（金）より、ガチャにも実装されたキャラクターだ。
「元々、ストーリーでも一般人枠だったし。戦闘能力はさほど高くなさそう。まぁ、レア度も高くてSSRくらいかな～」とか油断してたら、まさかの最高レアクラスであるレジェンドキャラでした。
ま、まぁ……とは言え、さすがに？……元々、工場の娘ちゃんらしいし、バケモン揃いのレジェンドキャラクターの中で、そんなに強いってこともないんじゃないか？
どういうことなんだよ……
ちゃんと育成したら、ボス敵もほぼ一撃で仕留められるのかよ……。
弓をメインウェポンとするエダちゃんは、そのほかにも地形を変化させる箱を召喚したり、敵のいる場所に酒をばらまくといったトリッキーな戦い方を楽しむこともできる。さらには、味方の攻撃にあわせて援護射撃までしてくれる高性能っぷり。
彼女は救世主を待つのではなく、自ら武器を手に取って身を守るべきだと豪語していたが、それは確かな実力が伴っていたから言えたことだったのだ。エダは、持たざる者ではない……？
さて、ここまでプレイしてみて改めて思う。『鈴蘭の剣』、なんて『FFT』＆『タクティクスオウガ』愛に満ちたゲームなんだろう、と……。
それもそのはずで、2023年8月には『タクティクスオウガ』の生みの親である松野泰己氏と、『鈴蘭の剣』のディレクターである郭磊氏の対談企画も放送（※）されていた。
※2023年6月上旬頃に撮影された映像です。
郭磊氏は、自身も「タクティクスRPGのファンで、特に松野さんが制作した『タクティクスオウガ』が大好きです」と語り、『鈴蘭の剣』が『タクティクスオウガ』にリスペクトを示す作品であることを告げる。
松野氏は、『タクティクスオウガ』が中国でどのように評価されているのか気になり郭磊氏に質問するが、郭磊氏はニコニコと笑顔を見せて「神作です」と即答した。その後、郭磊氏は『鈴蘭の剣』に込められたプレイヤーの選択により変化するストーリーも、『タクティクスオウガ』から影響を受けて分岐システムを取り入れたという。
この映像をみればみるほど、郭磊氏からは『タクティクスオウガ』やSRPGへ対する愛情を感じられた。そして、その愛は確かに『鈴蘭の剣』という“現代のSRPG”として昇華されており、しかもシナリオは無料で遊べてしまうという状態。郭磊氏本人が語るように、本作は全てのSRPGファンへ対するラブレターのようなものだ。
筆者は幼少期に『FFT』を遊んで、アグリアスさんのようなまっすぐな人がいっそう輝く重厚なシナリオに魅力を感じて本作をプレイしたが、まず間違いない手応えであった。
もしこの記事を読んで、SRPGを遊んでみたい方、『タクティクスオウガ』や『FFT』を遊んで楽しかったと思えた方、ぜひ『鈴蘭の剣』を触ってみてほしい。特に、SRPGがもともと好きな人には今すぐ遊んでほしいです。
