筆者はずっと、1日が24時間しかないのはマジで短いと思っていた。ゲームをプレイしていると、24時間じゃ全然足りない。足りなくないですか?

なのに最近、激烈な時間泥棒が登場して困っている。時間どころか、寿命すら足りないとすら感じている。何を大袈裟な、と思うかもしれない。でも本当なのだ。
そう、約13年ぶりの完全新作となる『トモダチコレクション わくわく生活』は……圧倒的なボリュームを引っ提げてプレイヤーの時間を奪いにかかる、モンスター級の時間泥棒だ。

本作は控えめに言っても、ただの続編ではない。
Miiたちの自由気ままな生活を観察するという基本コンセプトはそのままに、人間の多様性を凝縮した「Mii」の作成。島どころか世界そのものを構築する「島作り」。勝手に巻き起こるMiiたちの予測不能なメロドラマの数々──ぜんぶの要素が、「沼」なので、プレイヤーの時間を本気で奪いにきている。
しかも、Switchごと、どこにでも持ち運べちゃうという、悪魔的な誘惑のおまけつき。
本作をガチで遊び尽くすつもりなら、仕事どころか、人間をやめた方がいいかもしれない。
例えば、推定寿命が150〜200年と言われる「ガラパゴスゾウガメ」にでも生まれ変わらなければ、この世界を遊び尽くすことはできないのではないか。そんな気すらしてしまう……それが、本作である。

その底知れぬボリュームとは裏腹に、本作のプレイ感はあくまでも軽い。いや、気軽を通り越して、どこかの栓がぶっ壊れたかのような、常軌を逸したユルさに満ちている。
今回はそんな、ボリューム満点なのにユルユルな『トモコレ』らしさに肩まで浸かって、その魅力を探っていきたい。
いや、探るとはいえ、やることはシンプル。まずは、サクッとMiiを作ることから始めていこう。
1分で作れる、昼ドラマも顔負けの主人公たち

『トモダチコレクションわくわく生活』……そもそもジャンルが謎だ。筆者が調べたところ、一部オンラインサイトなどでは「そっくりトモダチコミュニケーション」と表記されていた。字面からはどんなゲームなのかさっぱりだが、実はその通りのゲームである。
本作では、自分の分身や友人、家族などを模した似顔絵キャラクターの「Mii」を作成して島に住まわせ、その暮らしを観察して楽しむゲームだ。
プレイヤーはMiiの困り事を解決したり、衣食住を提供したりして彼らの生活に介入できる。逆に、完全に放ったらかしにしておくことも可能。Miiたちは霞でも食べているのか、餓死することもない。

Miiの作成は簡単で、輪郭や髪型、目、鼻、口などをモンタージュのように組み立てる。さらに本作からは、いくつかの質問に答えるだけで自動的にMiiが作成される、超絶お手軽な方法も用意された。1分もあれば、あっという間にMiiが完成する。
こだわりたいプレイヤー向けの新機能「フェイスペイント」では、顔にスタンプを押したりペンで描き込むこともできる。プレイヤーのアイデア次第で、それこそ無限にMiiが作れてしまう。筆者は試しに犬に似た「イッヌ」と、猫に似た「ヌッコ」のMiiを作成してみた。


本作が特徴的なのは、外見だけでなく内面のカスタマイズも深化している点だ。歩き方や食べ方といった日常の些細な動きを設定できる「プチ個性」や独自の「口ぐせ」を付与できる。
性別にくわえて、Miiの恋愛対象も設定できる。「男」「女」はもちろん、「その他」まである……多様性も表現した、現代的なアップデートだ。
本作は、こうして作成したMiiたちを島に住まわせて、適当と偶然によって繰り広げられるMii同士の関係性を観察するゲームなのである。

しかし、そこで繰り広げられるドラマは、予測不能そのものだ。
Miiたちは自由気ままに、仲良くなったり喧嘩したり、恋をして一緒に住んで、結婚して家族ができたり、旅行に行ったり……。これらの出来事が複雑に絡み合い、お昼のメロドラマさながらのドロドロの修羅場が日常茶飯事として発生する。
マジで、Miiたちの勝手気ままな様子を眺めているだけでも、湯水のごとく時間が溶けていく。
しかし本作には、もっとヤバい時間泥棒がいる。
それは「島作り」だ。
時間を溶かす「島作り」と「アイテム工房」

前作までのシリーズは、基本的にMiiが住むマンションが舞台だった。本作では、それがドーンと拡大して島だ。しかも、単なる島ではない。本作で導入された「島作り」機能を使って、モリモリ拡大していく島なのだ。
この「島作り」の自由度があまりにも高い。
まるで、どこかの「村長」かよとツッコミたくなるくらい、島全体を自在にカスタマイズできる。もう、一度手を付けるとこだわりが止まらなくなって、やりだしたらキリがない。もちろん人にもよるが、筆者の場合、放っておいたら100時間でも200時間でも、あーでもない、こーでもないと島をこねくり回していると思う。
単に家やお店といった建物の配置を変えられるだけではなくて、歩きやすいように道を敷いたり、街並みのアクセントとしてベンチや植物を置いたりするのはもちろん、島の地形そのものを自由自在に変更することも可能だ。
感覚としては島というより、Miiたちの住む世界をいじり倒している感覚に近いのだ。

実は「アイテム工房」の要素も更にヤバい。これはプレイヤーが自由に絵を描いて、オリジナルアイテムが作れる機能で、食べ物や服、島に飾るオブジェ、Miiと一緒に生活する「ペット」や、島に配置できる「立体的な建物」までも自作できる。
筆者も作ってみたんですが、どうでしょう。

絵心はお察しの通りなのだが……これ、得意な人の手にかかれば、想像すらつかない島を作ってくれそうな機能だ。
自分で描いたオリジナルの生物がペットとして島を歩き回り、奇抜なデザインの自作の建物が島の風景の一部として建ち並ぶ。こだわりプレイヤーが歓喜する声が聞こえてきそうだ。身近なモノや好きなモノを世界に取り入れて、プレイヤーの創造力で無限に広がる世界。
もうここまで来たら、軽く身の危険を感じるレベルの時間泥棒だ。いや、もはや時間泥棒が束になって襲いかかってきているレベルなので、「時間盗賊」といっていい。
だから、本作をガチでやり込むには、人間の寿命は少なすぎるのだ。推定寿命が400年以上の「ニシオンデンザメ」に転生しなければ、マジで無理──いやいや、実は、そんなこともない。
本作はガチのやり込みなんてしなくても、ゆるーく、まったりと楽しむことができるのだ!
「攻略」という言葉が似合わないユルさ。だから心地いい

そもそも、Miiに「ガチさ」はぜんぜんない。
本作の大きな魅力は、ユルすぎる島で、ユルすぎる住人と送るユルユル生活が、鬼のように心地いいことだ。ガチじゃないシステムだからこそ、ついプレイしたくなっちゃう中毒性がたまらない。

本作は意図的にユルいデザインが貫かれている。ゲーム内には、いきなり実写が差し込まれたり、絶妙に雑に切り抜かれた画像が登場したり、シュールな演出が随所に散りばめられている。
島で突発的に起こるイベントも、シュールとしか言いようがない。なぜか巨大なケーキが背後から襲ってきたり、くしゃみと同時に口から羽が出てきたり……もはや、深く考えたほうが負けなほど、シュールさに彩られている。
Miiが死ぬなんてこともないので、ゲームとしての難易度はかなり低い。そんな、「ただこの世界を楽しむこと」に特化したユルい世界観がたまらない。
本作は、個人的に世界一「攻略」という言葉が似合わないゲームだと感じた。やることは山ほど用意されているが、どれを取ってもそれは、プレイヤーの頭上を流れる雲のように一瞬の出会いであって、決して攻略するものではないのだ。
据え置き機のパワーをフル活用した『トモコレ』が楽しめる

いまさらだが、本作は、Nintendo Switchでリリースされる。
これまで、携帯機でしか発売されてこなかった『トモコレ』シリーズが、ついに据え置き機に来た……つまり、据え置き機のパワーをフル活用した『トモコレ』が楽しめるということだ。大量のオブジェクトを、バチクソに拡張できちゃう島の上に自由に配置して、超個性的で多様性に富んだMiiを、最大70人まで住まわせられる。


本作は、どこにでも持ち運べるプレイスタイルのユルさも魅力のひとつ。ほっといたらずっとやっちゃうタイプのゲームであり、会議中でも、デート中でも、ストリートファイト中でもプレイできる手軽さがある。
友達と本体を持ち寄ってローカル通信を行えば、自分が作ったMiiや「アイテム工房」で作成したオリジナルアイテムを、近くの友達と共有することもできる。
インターネットではなく、実際に顔を合わせないといけないアナログ感も、本作においてはありだと思う。絶対、「うちのMiiがさー」なんて会話に花が咲くはずだ。本作のジャンルは「そっくりトモダチ”コミュニケーション”」なのだから。


しかも本作、すでに配布は終了してしまっているものの、「2本でお得 ニンテンドーカタログチケット」の引き換え対象ソフト。コスパが凄すぎませんか?
人間の寿命では到底足りない圧倒的なボリュームと、誰でも気軽に遊べるユルい手軽さが融合した、最高のハイブリッドゲームに筆者の人間の肉体が耐えられるのか……いまから嬉しい悲鳴がでっぱなしだ。
