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名作ホラーゲーム開発者による特別座談会レポート。『サイレントヒル』外山圭一郎氏×『零』柴田誠氏×『クロックタワー』河野一二三氏×『アローン・イン・ザ・ダーク』フレデリック・レイナル氏……あまりにも豪華すぎるメンツがホラーゲームを語る

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「敵が出る時に鳴る音を、時々ランダムで鳴らす」プレイヤーを“恐怖”させるため、開発者が知恵を絞った手練手管

レイナル氏:
河野さんの話と、彼の作品『クロックタワー』のハサミの音の演出で、音楽について実装したアイデアを思い出しました。

名作ホラーゲーム開発者による特別座談会レポート『サイレントヒル』外山圭一郎氏『零』柴田誠氏らが集結_014
(画像は『クロックタワー・リワインド』より)

私がモンスターが現れるときに音楽が流れるようにしたところ、作曲家が「その音楽をときどきランダムに流したらどうか」と提案したんです。

これはプレイヤーを怖がらせるのに非常に効果的でした。音楽がランダムに鳴ることで、モンスターが来そうで来ない状況が生まれ、それが恐怖の要素のひとつになったのです。

──ランダムな音楽をはじめ、さまざまな「恐怖の要素」をゲーム内に用意されたわけですが、それらを効果的にプレイヤーへと伝えるためにどういったことを意識しましたか?

レイナル氏:
重要なのは、私が作ったものがゲームであるということです。『アローン・イン・ザ・ダーク』は、演出面で映画との共通点をよく指摘されますが、私は、映画を作ろうという野心を持ったことは一度もありません。

たとえば、開発の初期に、映画のやり方でカメラを置いてみたものの、まったくうまくいきませんでした。

キャラクターが部屋の中を動けるようになったとき、凝ったアングルのカメラが役に立たないと気づいたんです。ときどき特別なものを見せるために使うのはいいですが、ゲームではキャラクターを動かすので、カメラは快適で操作しやすくなければならないんです。

だから、カメラはたいてい高い位置にあります。行ける場所をできるだけ多く見せて、プレイヤーに探索の余地を理解してもらうためです。

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(画像はSteam版『Alone in the Dark』より)

つまりカメラは、映画のような効果を狙うより、ゲームプレイが効率的で使いやすいものになるようにするべきだと気が付いたんです。

当時は、それだけでも大変でした。アナログスティック操作もなく、3Dでキャラクターが動くのも初めてのことでしたから。今から見れば、あまり快適ではないでしょうね。それでも、プレイヤーが動き回って探索するのは楽しいところなので、頑張りました。

この楽しみはホラー映画の延長でもあります。人は「さあ、どうやって怖がらせてくれるんだ」と期待しながら映画を観るわけですが、ゲームの場合はさらにもう一段階進んで、自分から怖がらせてくるものを探しに行きます。

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(Credit | Alexander Degiorgio)

レイナル氏:
だから部屋の作りや歩き回るルートも、「何か起きそうだが、行ってみたい」と思えるように作る必要があります。

こうしたことがわかってからは、割と普通のゲーム制作でした。もちろん物語は語りますが、それはプレイヤーが体験する物語です。だから私は、物語ではなく「しくみ」から考え始めるのです。その次にしくみを組み合わせて進行ルートを考えます。

『アローン・イン・ザ・ダーク』であれば、館から脱出するゲームにしたかったので、屋根裏から始めるようにまず決めました。それでシナリオライターに、「屋根裏から始まる口実と理由を見つけてくれ」と頼みました。

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(画像はSteam版『Alone in the Dark』より)

そして屋根裏から始まるので、周囲の環境を見せるオープニングを入れました。これも、脱出の開始地点を、物語上で正当化するための導入です。似たような流れでは、地下墓地に降りてからまた上がるという場面もあります。

つまり、進行ルートや物語はすべて、謎解きとゲームの流れを組み立てた後に作られたものなのです。私を真に突き動かしているのは、ゲームプレイとその要素を作ることですから。

物語は、シナリオライターのユベール・シャルドが、しくみのすべてに口実を与えて、テキストを書いてくれたのです。

物語は、ラヴクラフト的なアイデアを加えながら、恐怖の層を増していきました。でもプレイヤーが実際にやることと比べたら、テキストの技巧は小手先のものです。繰り返しますが、軸はゲームプレイです。

本の一冊一冊にも存在理由がありました。どの本にも物語の断片とパズルの解法が書かれているので、使えばモンスターを楽に切り抜けられるようになっています。アクションゲームではなく、少し頭を使う必要のあるアドベンチャーゲームにしたかったんです。

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画像はSteam:Alone in the Dark 1より

当時は、答えが見つからずに完全に詰まってしまうゲームも許される時代でした。今なら、「けしからん」と言われるかもしれませんが、ゲームだからこそ、何よりもプレイヤーの体験が優先される。私はすべてのゲームを、そうやって作ってきたのです。

柴田氏:
『アローン・イン・ザ・ダーク』が優れていた点は、カメラがカット割りされていて、映画的な画面の中でプレイヤーが動くことだと思います。

その後に続いた作品にも同じような形式のゲームは多いですが、それらはプレイヤーキャラクターよりも背景の方が主役なんです。

主人公が舞台背景に翻弄される「弱さ」や、より上位の存在から見られている感じがある。これをゲームに取り入れているのが革新的だったんです。

一方で、今のゲームにおけるカメラワークのデファクトスタンダードは、肩ごしの三人称カメラです。

『零』シリーズでは、これらのカメラを両方試しました。

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Credit | Alexander Degiorgio

古い『零』では、カット割りやパンがある固定カメラの方ですね。『アローン・イン・ザ・ダーク』のように、館や家が主役です。

一方、リメイク作品では、プレイヤーの体験を重視して肩ごしカメラにしました。こちらでは、プレイヤーキャラクターが主役であって、背景の館や村はあくまで映されて、探索される側です。やってみてわかりましたが、ふたつのカメラワークには、まったく違う怖さがありました。もちろんどちらもテクニックが重要ですが。

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画像はSteamF:零 ~紅い蝶~ REMAKEより

というわけで、当時の技術的な制約から来たものとはいえ、『アローン・イン・ザ・ダーク』のカメラ固定の方法には、捨てがたい魅力があると改めて感じられたんです。

カメラワークで言うと、外山さんの『サイレントヒル』は固定カメラじゃないですし、河野さんの『クロックタワー』はサイドビューという、また違う手法を使っていますよね。話がそれてしまうんですが、カメラワークについては是非おふたりにも話を聞かせてほしい部分です。

外山氏:
「ゲームにおけるカメラをどうするか」は難しい問題ですが、他のジャンルとの比較から入るとわかりやすいかなと思いました。

ホラーでも、基本的には「緩急」のリズムがあります。映画だったら、監督の意図通りに緩急を時間軸で設計できる。ところがゲームは、その緩急がプレイヤーに委ねられるところが、面白さなんです。

つまりゲームでは、その場にいるだけの時間が、退屈な時間ではなく緊張感のある時間として成立するんです。そういう、自分がそこにいるような没入感こそが、ゲームならではの特徴だと思います。

その上でカメラワークの話をしますが、『アローン・イン・ザ・ダーク』から始まって『バイオハザード』などに受け継がれた「カメラに映らない部分を想像させる」という感覚は、素晴らしい発明でした。

私の場合は、技術的な理由で、フル3Dの背景をテーマにしました。でも「見えるはずなのに見えない」と感じさせる技法は同じです。その根源的な恐怖は、表現が違っても受け継がれていたのだと思います。

河野氏:
僕も柴田さんに回答しつつ、お話したいと思います。

外山さんやレイナルさんがおっしゃった通り、カメラでプレイヤーに対してどこまで情報を制限するかは、それぞれのホラー表現のテイストとセットになっているんですよね。

たとえば、一人称視点であるFPSはプレイヤーの視界以上のものを見せませんが、三人称視点であるTPSはプレイヤーの視界に加えてある程度カメラが向いている方向を見せます。

僕の『クロックタワー』は、キャラクターは気づいていないけどプレイヤーは気がつくという、「背後にいる何かの恐怖」を表現したかったので、サイドビューを採用しました。

名作ホラーゲーム開発者による特別座談会レポート『サイレントヒル』外山圭一郎氏『零』柴田誠氏らが集結_021
(画像は『クロックタワー・リワインド』より)

だからカメラワークは、クリエイターがどういう恐怖を表現したいかで決まるものだと思います。

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ライター
ゲームを学びながらゲームを遊ぶ、天ぷら学生。すべてのゲームは面白い……はず!をモットーに、めげずに色んなゲームに挑戦中。プレイ中に百合要素を見つけると、どんなゲームでもお気に入りになる、信用ならないやつ。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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