「主人公の性別はどのように決まるのか?」開発者によって、物語によって、思想によっても変わる、ゲームの“顔”の選び方
河野氏:
この点に絡めて、僕からも皆さんに質問してもよろしいでしょうか。
僕は、プレイヤーキャラクターの性別も、クリエイターの考えるゲームのコンセプトと密接に絡んでいると思っているんです。
ちょうど今日のメンバーは、男性主人公で作っている方と女性主人公で作っている方が揃っています。なので、それぞれのコンセプトと、キャラクターの性別設定の関係をぜひ伺いたいです。現代的には違和感のある部分も出てくるかもしれないですが、30年前のゲームを作っていた当時は、何を考えて主人公の性別を決定しましたか?
レイナル氏:
『アローン・イン・ザ・ダーク』では、最初に主人公として、男性か女性かを選んでプレイできます。選択肢を残したのは、主人公を特別なだれかではない「普通の人」にしたかったからです。
当時のビデオゲームを遊ぶ層は、圧倒的に男性がメインでした。そして、私も若かったので、素朴に「女性キャラクターがいれば、女性ももっと遊びやすくなるんじゃないか」と考えたんです。だから主人公の性別を選べるようにしました。

さらに、これも素朴な考えとして、女性は男性ほど戦闘を好まないとも思っていました。だから女性主人公を選んだ場合は、内容がアドベンチャー寄りのものになる仕様も考えていました。
結局、突き詰める時間がなくて、見た目の違いと導入部分の差だけになりましたが、時間があれば遊び方そのものにも違いを出したかったですね。
外山氏:
『サイレントヒル』で言うと、モチーフがモダンホラーだったのが主人公の性別に関係していると思います。
女性主人公だと、それだけで「物語の主人公感」が出てしまうという感覚があったんです。
そういった、モダンホラーの特徴でもある特別な誰かではない「ただの人」という主人公観で、主人公は普通の中年の男性に落ち着きました。

柴田氏:
私の場合、主人公を決める前に、まずテーマがありました。そしてテーマの次に、一番最後のボスキャラクターが決まっていきました。
これは私の偏見かもしれませんが、幽霊は女性型の方が怖いんですよ。なので、ボスは女性の幽霊になりました。そして、最後のボスキャラクターが自分の思いを遂げて消えていく、という物語を考えていたので、主人公はそれに共感できる人間でなければなりませんでした。そういうわけで、主人公も女性になりました。
それは同じ境遇で心情が理解できる主人公の方が望ましいという考えだったので、ボスキャラクターが男性だったら、主人公も男性になっていたと思います。
河野氏:
僕の場合は、積極的に探索させたいか、消極的に危機を回避させたいかというところで選んでいました。レイナルさんがおっしゃった通り、当時の女性キャラクターには積極的に戦わないイメージがありましたから。

柴田氏:
確かに、ゲーム的にはシザーマンに抵抗できないのに、男性主人公だと「抵抗すればいいじゃん」という空気になっちゃいますもんね。『零』の敵も、霊的で物理的には勝てないから、共感することで解決させている側面があります。
河野氏:
中途半端に殴り合うのも嫌ですもんね。
あと、僕の知り合いのホラー監督が「おっさんの悲鳴なんて誰も聞きたくないんだよ」と言っていました(笑)。そういうのもあるかもしれません。
「館は、それ自体がひとりのキャラクター」時に舞台そのものが主役となるホラーゲームの特異性と、舞台をより印象的に演出する技法
──先ほど柴田さんが「『アローン・イン・ザ・ダーク』の主役は館だ」とおっしゃっていましたが、みなさんは舞台のセッティングをどれだけ重視していますか?
レイナル氏:
館という舞台は、それ自体がひとりのキャラクターだと思います。主人公も大事ですが、それはやるべきことをやるキャラクターにすぎません。
なので、環境こそが制作で最も手をかけていたところです。環境は、ある意味でテキストよりも前にある「語り」で、常にゲームの中心にいます。
キャラクターは成長したり新しい能力を得たりしますが、環境もプレイヤーの進行度とプレイヤーに何を発見させるかに合わせて変化していきます。だからゲームの中の一キャラクターとして考えるべきなんです。

外山氏:
自分はキャラクターよりも舞台のセッティングから作り始める方です。舞台が町であることが多かったのも、必然性は環境で決まるから、という考えを持っていたからではないかと思います。
私は、主人公とは基本的にプレイヤーの分身であり、「ストレンジャー」(よそ者)であるという立場を取っています。主人公が見知らぬ場所に迷い込んで、何を感じて何に興味を惹かれるかを考えると、どうしても舞台のセッティングが大事になるんです。
基本的に『サイレントヒル』では、モダンホラー的な町を作ろうとしていました。『SIREN』以降はもっとそのあたりを深めていき「傍観者の立場で入ったはずなのに、場所の歴史やバックボーンを知れば知るほど、抜け出せなくなっていく」という感覚を表現しました。
ホラーを離れて『GRAVITY DAZE』というゲームを作ったときも、まず「重力に支配された町」という舞台から設定しました。その中で人間の生活があるとしたら、という考えが出発点です。

柴田氏:
『零』シリーズは、大まかに言うと「幽霊が出そうな場所を歩いていくとやっぱり幽霊が出る」というゲームなんです。だから、幽霊が出そうな場所を“コレクション”していました。
外出したときに「なんか嫌だな」と思う場所をストックしておく。それらをゲームで集合させて、ひとつの家を作る、ということをやっていたんです。
つまり、幽霊が出そうな場所の集合体として環境を作りました。これは部屋ごとにキャラクターを作っていると言ってもいいかもしれません。
『SIREN』も同じように、特徴的な場所を集めて環境を構成していたと思います。でも外山さんと私では、微妙に感覚が違うんですよね。
私は、建物や部屋が「死んでいる」のではなく、「眠っている」ような場所を探してるんです。それは、汚くて荒廃しているだけの場所ではなく、「さっきまで人がいたかも」という痕跡を感じるような場所です。そういう場所なら、幽霊が存在できると考えているんです。
そういう生々しさを感じられるのが、『零』の舞台の特徴だと思います。
河野氏:
僕の場合は、ゲームプレイやシチュエーションをどれだけ作れるかを出発点にしているので、基本的に「ワンシチュエーション」なんですよね。だから、ギミックを組み込む余地がどれだけあるかを重視して舞台を考えています。
ただ、外山さんのお話を聞いて、なるほどとも思いました。
今後ホラーの舞台をどうするか考えてみると、もうやり尽くされた感があるんですよね。だから、新鮮な舞台設定を思いつけたら、もうそれだけで勝ちなんじゃないでしょうか。
