独自の道を切り開いてきた2人が語る、フィードバックやトレンドとの向き合い方
── ここからは来場者の皆さんからの質疑応答となります。
来場者からの質問:
ゲームを作っているあいだ「これは面白い」「ここは変えたほうがいい」といったフィードバックを受けることがあると思います。フィードバックをどのように受け取り、どう対応していますか。
エリック氏:
非常に興味深い質問で、まさに制作の核心にあたる部分だと思います。ただ、本当にプロジェクトによりますね。すぐにうまくいくものもあれば、そうでないものもある。『Another World』は前者でした。
時間がかかったのは『フロムダスト』です。「これは何か面白いものがあるぞ」と思えたのは、開発を始めてから1年半ほど経ってからでした。本作に実装されている、「プレイヤーが地形を操作するインタラクション」がようやく形になったときです。
『フロムダスト』は、ざっくり言えば、プレイヤーが神のような存在となり、変化し続ける環境の中で「とある部族」を生き延びさせるゲームです。最初は、その部族をプレイヤーが直接操作する作りにしていました。でも、その直接操作をやめてから、かなりうまくいくようになったんです。
だから、ときには「諦める」ことも必要だと思います。うまくいかないものは、手放す。そこに特別な方法論があるわけではありません。結局は、自分の感覚に頼るしかないんです。
上田氏:
結局はフィードバックの「良し悪し」次第というところになるのかなと思います。
どうしてもこだわらないといけないところ。当初のコンセプトや表現したかったものに対して、そこをスポイルしてしまったり、ずれてしまったりするようなものは、やっぱり受け入れがたいと思います。
いっぽうで、たとえば今のプレイヤーが操作しやすいボタン配置といったものは、お客さんのことを考えると対応したほうがいいとも思います。
じゃあ、誰がそれを決めるのか。それを多数決で決めるのか、それともクリエイティブを担っている誰か、たとえば僕のようなディレクターが決めるのか。それは状況によるかもしれません。
でも最終的に「どっちでもない」となったら、最後はやっぱりディレクターが決める、ということになると思います。そういう役割のためのディレクター、ということでもあると思うので。
来場者からの質問:
先ほどエリックさんがおっしゃっていた、「行動そのものが感情を与えている」ということについて伺います。上田さんとチームの皆さんは、どのようにアニメーションを制作されたのでしょうか。
上田氏:
作業としては、本当に小さなものを積み上げていって、ディテールを積み重ねて作る、ということに尽きます。
たとえば『ICO』のヨルダというキャラクターが飛んでいる鳥を見たりとか、何か興味のあるところに移動していってみたりとか。あれは制作中、開発チームから「これに何の意味があるんだ」というようなことを言われたりもしたんです。
だけど、『Another World』とか、それこそ先ほどの話のように、そこに機能として、スコアとしての能力がなかったとしても、そこに存在する意味を表現したいという自分のこだわりのようなものがあって、実現したんです。
そして、『ICO』がお客さんに受け入れられ、評価されたという後押しがあって『人喰いの大鷲トリコ』はもっとそこにこだわりを入れることができました。
自分たちが作っているときは、いつもそこに本当に意味があるのかどうか疑心暗鬼になりながら作っているんです。でも、ゲームがリリースされて「そこにキャラクターが存在しているように感じた」とか「そのキャラクターを好きになった」という感想を聞くと、そこでようやく間違っていなかったんだな、と感じることができるんですね。
来場者の方からの質問:
ゲーム業界はトレンドがすごく移り変わりますよね。そうしたトレンドから影響を受けることはありますか。
上田氏:
自分の中でも明確に答えがあるわけではなくて。いろいろ動きながら作っている、という感じでしょうか。
流行っているタイトルや、今受け入れられているタイトルをダイレクトに取り込むかといったら、そうでもないです。かといって、全く意識をしないかというと、それはお客さんに対しての裏切りにもなるのかな、という気持ちもあります。
だから、その中で少しでも自分が分かるエッセンスだったり、お客さんがこれをどう楽しんでいるのかを意識しながら、取り入れられそうだったら取り入れます。無理だったら諦めますね。
どうしても、そのゲームの面白さや魅力が自分にはわからない、というものも、やっぱり中にはあったりします。それは申し訳ないですが「自分向きのゲームじゃないんだ」と諦めることはあります。
エリック氏:
そうですね。トレンドは私もあまり意識していません。そもそも「今どういうトレンドがあるのか」を把握しようとしていないんです。ただ、いろんなゲームを遊びますし、とくにインディーゲームはよくプレイしています。
たとえばこの半年で言えば、『Cairn』【※】はすごく良い作品でしたね。
※『Cairn』
The Game Bakersが開発した、山を登るクライミングゲーム。
インディーゲームには、いつも驚かされます。意外に思われるかもしれませんが、いわゆる弾幕系の『20 Minutes Till Dawn』【※】のような作品も遊んでいるんです。
※『20 Minutes Till Dawn』
押し寄せる敵の群れを20分間しのぐ、見下ろし型のローグライクシューティング。

自分の中でインディーゲームのランキングも作っていて、Steamのライブラリに「最初の20分」というセクションを作っています。これは遊び始めの20分が良かった作品──つまり、この先も続けたいと思えた作品を、そこに入れているんです。今は20タイトルぐらいが入っていますね。
ほかにも、いまいちだったゲームのリストや、これから試すゲームのリストなどいろいろあって、ライブラリ全体では200タイトルぐらいになります。
つまるところ、トレンドがどうこうというよりも、私自身がゲームを遊びたいんです。ただ、そのすべてを遊ぶ時間はないから、どこかで妥協せざるを得ない。それでも、周りでどんなことが起きているかには、常にアンテナを張っていますね。
(了)
象徴的な「言葉のなさ」は作りたい世界を表現するために「そうせざるを得なかった」ものだったという。上田氏は、『Another World』や『ハートオブダークネス』が「自分の背中を押してくれた」と語った。
先人の作品が、後進の背中を押す瞬間がそこにはあったのだ。技術の制約が緩んだ今、上田氏は「最初から制約を設け、余力があれば広げる」作り方を挙げた。
上田氏は現在、新作『gen ATLAS』の制作に注力されている。インタラクティブな世界と心に残る体験を作り続けてきたふたりのクリエイターは、これから先どのような作品を生み出していくのだろうか。

