3月10日、シンガポールのデータセンター開発・運営会社DayOneとオーストラリアのスタートアップ企業Cortical Labsは、オーストラリア国外では初となる大規模な「生物学的データセンター(Biological Data Center)」建設に向けた提携を発表した。
今回の提携では、DayOne、Cortical Labsおよびシンガポール国立大学が協力。人間の細胞を利用したコンピュータ基盤の開発と導入を支援するプロトタイプを確立していく。

生物学的データセンターとは、従来のシリコンチップの代わりに、幹細胞から育成された生体ニューロンを利用して情報を処理し、AIシステムを駆動させる次世代のコンピューティング施設だ。
膨大なエネルギーを消費する従来のデータセンターとは異なり、脳に似た機能を持つ人工の臓器「オルガノイド」の自然な効率性を活用することで、デジタルコンピュータが必要とする電力のわずか数分の一で機能させられることが大きな特徴となっている。

生物学的データセンターに使用されるのは、Cortical Labsが開発した“人間の脳細胞”を利用する生物学的コンピュータ「CL1」だ。生体ニューロンをシリコンチップ上に配置することで、そのチップを介して電気信号の送受信が行われる。
「CL1」では、培養した脳神経細胞・ニューロンの集合体を一種の生物学的なAIとして扱う。ニューロンの管理は非常に難しく、老廃物の除去や栄養の供給、不要な微生物の侵入防止など、最適な条件で維持する必要がある。
なおCortical Labsは先日、オーストラリア・メルボルンで世界初のバイオデータセンターのプロトタイプを公開している。
なお、今回の提携の背景には、シンガポール政府が主導する「グリーン・データセンター・ロードマップ」がある。これは、厳しい環境基準のもとで、データセンター建設の制限を解放していくというものだ。本稿で扱っている生物学的データセンターなど、低炭素エネルギーを使用する事業者に対しては追加容量が割り当てられる。
Cortical Labsは、まずシンガポール国立大学において、20台のユニットを備えたシングルラックに構成する予定だ。初期検証フェーズを経た後は、シンガポールにあるDayOneの商用データセンター施設内でのライブ導入環境へと移行し、実際の負荷条件下における運用の統合テストを計画している。
また、将来的にはDayOneの施設内に最大1000ユニットまで拡大する段階的な拡張計画も検討されているそうだ。
