ブラック企業で社畜となっていた主人公は、亡くなった祖父の手紙を読んだ。
それは田舎の古い農場で、新たな生活を始めることを勧めるものだった……。
荒れ果てた農地を開拓し、畑で作物を育て、牧場や果樹園も運営しながらのんびりした農村での生活を満喫する、大ヒットのスローライフ・シミュレーションゲームがスマホにも移植されています。
『Stardew Valley(スターデューバレー)』です。
『牧場物語』シリーズを愛するアメリカの個人開発者が、自らの牧場物語を作ろうと4年以上の歳月を費やして作り上げた作品。
PC版は公開2ヵ月で100万本を売り上げ、PS4、Xbox One、Nintendo Switch、PS Vitaでも販売されている、農園運営シミュレーションゲームの大ヒット作です。
それがついにiOSでも公開されました(Android版も2019/3に公開)。
スマホによくある“簡易的な農園ゲーム”とは違い、畑を耕し、種をまいて、毎日水をやるといった作業を繰り返さなければなりません。
「作業ゲー」とも言えますが、このゲームはその作業こそが楽しさです。
手間をかけて育てた作物が徐々に大きくなっていき、いずれ実を結び、出荷してお金を得る。
そこにはなんでも簡単に済ませてしまうゲームとは違う喜びがあります。
そして農作業だけでなく、畜産、漁業、果樹、採掘など、多方面の生産活動を行え、好きなように農園を発展させていくことができます。
廃坑での戦闘や村人との交流もあり、イベントも多彩、ゲーム要素は豊富に用意されており、実際に私も時間を忘れて没頭、色々と支障が出ているほどです……。
価格は 960 円。買い切りゲームなので課金や広告、スタミナ等はありません。
公開時点のiOS版には、ダンジョン(廃坑)の移動時や、建物の拡張時などにゲームが落ちてしまう不具合があったのですが、10月28日のアップデートで解消された模様です。
少なくとも当方の環境(iPad Pro 2017、10.5 インチ)では、これらの問題は発生しなくなっています(アップデート前は多発して困っていた)。
農場に着いた主人公がまずやることは、荒れ地を切り開くこと。
祖父の農場を譲り受けるのですが、ずっと放置されていてひどいことに。
まずは邪魔な岩や木を取り除き、地面を耕す必要があります。
モバイル版には方向キーやボタンはなく、操作は対象を直接タップして行います。
行きたい場所をタップすると半自動でそこに向かい、障害物をタップで撤去作業を実行。
木は長押しすることで切り倒します。
※アップデートで仮想ジョイスティック操作も導入されました。
草は鎌で、木は斧で、岩はツルハシで取り除けるのですが、道具をそのつど選択する必要はありません。
対象をタップするだけで必要なものを自動で使って作業してくれます。
しかし操作性は正直、あまり良いとは言えません……。
スマホだと画面が小さいため、どうしても押しミスが起こりやすいです。タブレットだとその心配はありませんが、あちこちに指を動かさないといけないので画面が大きいほどやり辛い。
どちらも一長一短で、ある程度の慣れが必要ですね……。
※ジョイスティック&ボタンの操作なら、かなりプレイしやすくなります。
スペースを作ったら、地面を耕して畑を作ります。
これも地面をタップするだけで、クワを使用して作業してくれます。
畑を作ったら種を植えるのですが、種は通常、町の商店に買いに行かなければなりません。
地名をタップしたらすぐお店にワープ、みたいなゲームではありません。
ちゃんと街道を歩いて村に向かい、商店に入ります。
スマホの農園ゲームに慣れていると移動が面倒に思えるかもしれませんが、あえて「手間」と、それに伴うリアルさがあるのがこのゲーム。
全体的にスローライフを演出しているのを感じます。
道の脇に価値のある野草や木の実が落ちていることも。
お店で種を買ったら、それを畑にまいて、水をやります。
水は毎日やらないと成長しません。
朝起きたら、まず畑仕事。これが農家の日課です。
畑仕事が終わったら、その後は好きなことをすればよいのですが、当面は荒れ果てた農場の整地が必要でしょう。
木を伐ったり岩を砕いていれば、木材や石も手に入ります。
それらは生産材料として使用できます。
まずは木を集め、アイテムを保管できる「箱」を作りましょう。
作成した家具は自宅はもちろん、屋外の好きな場所に設置できます。
木を切り倒すと得られる樹液からは肥料も作れます。
作業していると「エネルギー」が減っていき、尽きると歩行速度が激減、「やる気」もなくなってしまうので、その前に家に帰って休みましょう。
エネルギーは食事でも回復できますが、最初はそんな余裕はないはず。
木の実が落ちていることもありますが、最初は金欠なので食べるぐらいなら売る!
疲労は寝れば全快します。
ベッドで寝るとセーブが行われ、翌日になります。
セーブはこの時しか行われないので注意してください。
作物は数日から十数日で収穫できるようになります。
収穫した作物は店に売りに行くこともできますが、備え付けの出荷箱に入れておけば翌朝に自動で換金されます。
当面は、お金が増えたら新たな種を買い、畑を広げてまた植える……この繰り返しで規模を拡大していくことになるでしょう。
ただ、お金を得る方法は農作業だけではありません。
森に出かけてお金になる野草や木の実を集めても良いし、釣り竿が手に入ったら魚を釣ることもできます。
いずれは廃坑に潜り、鉱石を取ってきて精製することも。
最初のうちは釣りはヘタクソでゴミばかり釣れ、鉱山に潜っても石しか手に入らないでしょう。
しかし繰り返しているうちに「レベル」が上がります。
主人公は 農業・採鉱・採取・釣り・戦闘 の5つのレベルを持っていて、これが上がることで新しい製作物も覚えられます。
製作物が増えれば、木から松ヤニやシロップを取ったり、養蜂箱で蜂蜜を取ったりできるようになり、チーズやジャム、マヨネーズなどを作る加工設備も製作できるようになるでしょう。
廃坑は地下に潜るほど貴重な鉱石を得やすくなります。
敵も強くなるので無茶はできませんが、鉱石から精製できる金属は道具の強化にも必要。
それは農作業の効率化につながります。
モバイル版は戦闘時の攻撃をオートにでき、近くの敵に自動でぶんぶん剣を振ってくれます。
敵にぶつからない程度に近付くだけでOK。
とはいえ敵が飛びかかってくることもあるため、ノーダメージで進むことは難しく、採掘でエネルギーも消費するため、お弁当を忘れずに持っていきましょう。
村では定期的にイベントが開催されます。
品評会、ダンス大会、夜店、ハロウィン……村の活性化のための様々な催しが行われます。
どれも田舎らしさのある素朴なもので、雰囲気があってよいですね。
村の住民はたまに頼みごとをしてくることがあり、応じると友好度が上がります。
掲示板に掲げられている依頼を受けたり、プレゼントをすることでも友好がアップ。
友好度が高まれば恋人になることもできます。
このゲームは明確な目的は提示されませんが、目標となるべきものはいくつかあります。
1つは「公民館の再生」。
村にはボロボロの公民館がありますが、必要なアイテムを納品することで部屋が復活していきます。
ただし要求されるアイテムは多岐に渡り、あらゆる農業・加工・釣り・採鉱が必要になります。
よって達成は困難ですが、報酬で温室やトロッコを利用できるようになったり、バス路線が復活するといった、大きな恩恵を受けられます。
2つめは「博物館」。
村の図書館には博物館が併設されているのですが、最初は展示品がありません。
しかし探索を通して珍しいものを見つけることで、展示品が増えていきます。
もちろんご褒美ももらえるので、これも目標となります。
そして3つめは「結婚」。
誰かと親しくなってプロポーズすれば、夫婦となり、子どもを持ち、家族を作ることができます。
ただ、結婚できるまで親しくなるのはけっこう大変。
相手の好みを知る必要と、それを得る手段を用意する必要があります。
子どもを作るには家の増築も必要で、そのためには大金も要ります。
でも、人生の大きな目標であることは確かですね。
なお、このゲームは同性結婚も可能です。 この場合、子どもは養子になります。
この辺はさすがアメリカのゲーム……それで話題になったこともあったようです。
とにかくできることが豊富で、日々の作業も必要。
やることが尽きないので、延々と遊び続けてしまうゲームになっています。
とは言え、ゲーム自体は「田舎のスローライフ」の再現です。
「これをやらなければならない」といったものはないので、のんびり過ごしていても構いません。
むしろそれが本来の楽しみ方で、懸命に規模拡大を目指しても良いし、思うままに日々を暮らしても良い、どちらも楽しめるゲームですね。
ソシャゲ型の農園ゲームのような手軽さを求めている人だと面倒になるかもしれませんが、サンドボックス系(マイクラ系)や経営 / 運営型のシミュレーションゲームが好きな人は、きっと夢中になれる作品です。
Stardew Valley 「スターデューバレー」
スローライフな農場運営シミュレーション
・農園運営シミュレーション
・原作:ConcernedApe(アメリカ、個人)
・移植:The Secret Police(イギリス)
・公開:Chucklefish(イギリス)
・960円