ひろゆき氏が気になったゲームをおごって、プレイ後の感想を聞くゲーム談義企画「ひろゆきにゲームおごってみた」。今回は、コーエーテクモゲームズの人気作『真・三國無双』シリーズをリブートした『真・三國無双 ORIGINS』。
シリーズ本来のアイデンティティであるタクティカルアクション、その原点に立ち返ることを目指した本作は、発売以来、世界各地で高い評価を受けている。
そんな海外の高評価を見たひろゆき氏が、「気になる」というので本作をおごってみた。
最近の『無双シリーズ』はスルー気味だったというひろゆき氏だったが、今回しっかりと時間をかけてクリアしたとのこと。気になる点もいくつかあるそうなので、より深く語ってもらうために、本作のプロデューサーである庄知彦氏をお招きして座談会をしてもらうことにした。
本稿は、そんな座談会の内容をインタビュー形式の記事として再構成し、まとめたものである。
今回の座談会ではひろゆき氏が忌憚のない感想として「本作の高難度化は『エルデンリング』が売れた影響か?」と問えば、庄氏は“本音”の話として「そんなことはまったくありません」と応じるなど、ここでしか聞けない率直なやりとりが交わされた。
本作が「結構死ぬ『無双』」になった背景から始まり、昔ながらの歯ごたえのあるアクションと今の『無双』ならではの圧倒的爽快感の両立、発表時の反応から発売までの流れ、企画書の一部や次回作への展望など。『ORIGINS』プレイヤーの疑問・期待に応える様々なやりとりが飛び出す、非常に興味深いものとなったので、ぜひ最後までお読みいただきたい。
プロフィール
西村博之(ひろゆき)氏……インターネット掲示板「2ちゃんねる」の開設者かつ元・管理人。
庄知彦氏……コーエーテクモゲームス執行役員。『真・三國無双』シリーズにてプランナーやディレクターを歴任。『真・三國無双 ORIGINS』ではプロデューサーを務める。
高難度化は原点回帰。『真・三國無双』シリーズはそもそも「結構死ぬゲーム」ではありつつも、無双らしい“爽快感”との両立も目指した
庄知彦氏(以下、庄氏):
今回、ひろゆきさんのXを拝見した開発メンバーみんなが「ひろゆきが遊んでる!」みたいな感じで、すごく喜んでいました。遊んでいただいてありがとうございます。
『真・三國無双 ORIGINS』を49時間でクリア。
— ひろゆき (@hirox246) February 4, 2025
今までの無双シリーズはひたすら連打でクリア出来たのですが、今作は相手の動きを見て対処しないと無理なのでダークソウルとかが近い感じです。
ストーリーも三国志の歴史に上手く主人公が混じってて海外評価高いのも納得。https://t.co/ErqSEmmlu4 pic.twitter.com/OvmbPxM71e
ひろゆき氏:
いえいえ、こちらこそ面白かったです。
さっそくなんですけど、前作までの『真・三國無双』シリーズは連打でなんとかなる、いわゆる“草刈りゲー”だったのに、今回はアクション性がかなり高くて、難しくなったじゃないですか。これは「『エルデンリング』とか売れてるからいいよね」みたいな感じなんですか?
庄氏:
今日は本音でお話をさせていただきますけど、そんなことはまったくないです。
今回、いろんな方にアクションが面白くなったって言われて、それ自体はすごく嬉しいんですけど。弊社のアクションゲームが得意なブランドである「Team NINJAのメンバーが入っているからだ」とか、「『エルデンリング』みたいな死にゲーを模倣したからできている」とかいろいろ言われますが、むしろ『真・三國無双』としては原点回帰に近いんです。
ひろゆき氏:
そうなんですね。
庄氏:
『真・三國無双』って、もともと結構死ぬゲームだったんですよ。
PS2の時代も、『真・三國無双1』、『2』、『3』、『4』まででも、死にゲーとまでは言わないまでも、ある程度は死んで当たり前のアクションゲームを作っていたつもりです。もちろん、草刈りみたいな側面もありますけどね。
最初の「黄巾の乱」の雑魚兵でも4発は殴らないと倒せないようにしていたり、1個1個のバトルも、途中で自分や総大将がやられる可能性があって簡単にクリアできないようにしていました。
PS3の時代に海外のゲームがクオリティが高くなってたことを受けて、「もっとアクション性を高めよう」と思って『真・三國無双5』を作ったんですが、当時は自分の力不足もあり、できなかったこともありました。
ただ、『6』以降が草刈りって言われるような要素を主にして作られていたのは事実です。気持ちよく、爽快にいっぱい倒せるようにという方向性でした。
『5』以来、ひさびさに私が『真・三國無双』を作るにあたって、『5』の時にはできなかったことを、今だから、今のメンバーだからこその形で作り上げたのが本作です。「死にゲー」とか、「フロムゲー」とか、「Team NINJAが作った」とか言われてて、「いや、作ってねーよ」って思ってます(笑)。
今時のゲームも遊んでいるので、参考にしているところもありますが、ほとんどは『5』のころにあった要素です。
ひろゆき氏:
今回は草刈りが減ったという感じもなくて、大軍同士っていう、草刈り感は草刈り感でだいぶ増した気はしますけどね。
雑魚兵を倒す時はすごい爽快な草刈りがあって、ボスは連打ではもうどうしようもないっていう。そこはバランスがいいなと感じました。
庄氏:
『1』の頃からずっと、序盤は大変でもプレイ時間の蓄積の上で最高に爽快な体験ができるような作りを目指していました。具体的には、「五丈原の戦い」ぐらいまでいけば雑魚が簡単に倒せるように。
草刈りと言われるような、「圧倒的な一騎当千」の爽快感もシリーズとして欠かせない要素なんですよね。なので、今回は「今だからできる最高の気持ちよさを作ろう」と、矛盾しているようではあるんですが両立できるバランスを目指しました。
ひろゆきさんからそう言っていただけると、「やった!」って感じで、すごく嬉しいです。
ひろゆき氏:
本作を遊んでいて「わー、草刈りで楽しー。『真・三國無双』ってこうだよね」ってなってるときに出てきた張角がめちゃくちゃ強くて。回復を使ってもどうにもならず「あれ、こんなゲームだったっけ?」って、ちょっと心折れそうになったんですよね。
ただ、時間が戻せるので「ここで失敗したんだ」という部分をやり直して改善すればなんとかなる。難しすぎるけど、「“無理ゲー”にはならない」ってところがうまい作りだなと思いました。
庄氏:
コーエーテクモゲームスの中でもω-Force【※】は、「みんなが楽しめるアクションゲーム」をブランドの方針としています。今回はアクション性が高く難しく、それでも遊びやすくするというところに一番注力しました。
「何が失敗に繋がっているのか」、「何が狙い通りできているのか」を、遊んでくださる方にいかにわかりやすくお伝えするかであったり、プレイヤースキルの向上を感じてもらうために繰り返しやすくしたり、さまざまな工夫を凝らしました。
なので、ひろゆきさんの「難しいけど“無理ゲーじゃない”」という感想はすごく嬉しいです。「じゃあ次もこれでいけんな」って思います。

『コーエーテクモゲームス』の開発チーム。代表作は『無双』シリーズ。
ひろゆき氏:
あの巻き戻しは良かったですね。「途中まで削るのは簡単だけどそこから強いみたいなのを何度も削る」のって心が折れちゃうんですよ。「もう面倒くさー」みたいな。
庄氏:
いやー、わかります。私も年のせいか、いわゆる死にゲー疲れがちょっとありまして。
これに関してはもう、「俺、こんな必死に死にゲーで頑張らなくてもいいんじゃないか」と最近ちょっと思い始めてるところが……。
ひろゆき氏:
そうなんですよねぇ。「死にゲーの簡単じゃないギリギリ感のヒリヒリ感もやりたいけど、同じことを繰り返して時間を無駄にしたくない」という、この矛盾した欲望を本作はなんとかできている。
庄氏:
アクションゲームのいわゆるボス戦で、途中から再開できるものは、多分世界でもほぼないんじゃないかなと思っています。今回は通常のバトル全体も含めてなんですが、すぐ再開して遊べるということを狙いました。遊んでいて、このリプレイ性はすごくイイなと私も思っています。
ひろゆき氏:
マイクロソフトの『Forza Horizon』でも事故ったら戻れるみたいな機能があって、好きだったんですよね。僕は手元の操作がおぼつかないタイプなので、あの機能のおかげで、より楽しめた。それで、「これ! この仕組みがアクションゲームにも来たんだ!」と思いました。
庄氏:
『真・三國無双』は元々、バトルをクリアするとリプレイとして各軍団がどう動いていて、プレイヤーがどう動いていたかを再生する機能があったんです。そのうえで、よりわかりやすく「チェックポイントみたいに再開できるように」ということで、現場のみんなが頑張ってくれたんですね。
とはいえ、好き勝手に再開できてしまうと、それはそれで面白さと緊張感がなくなってしまいます。いわゆるチェックポイントは仕様によって生成したり狙って設定しつつ、リプレイもしやすく作りました。
ユーザー視点でバランス調整をする秘訣は「毎回記憶喪失になる」こと!?アクションゲームの得意な庄氏が身に着けた“絶対ユーザー感”
ひろゆき氏:
本作は「難しさ」と「なんとかなりそう」なゲームバランスがきちんとしていてストレスにならない感じだったんですけど、どうやってそのバランスを実現したのか気になったんですよね。ひたすら大勢でテストし続けて作るしかない感じなんですか?
庄氏:
そうですね。バランスの取り方は各社いろいろあると思うんですが、ひろゆきさんがおっしゃったような、いわゆるテストプレイを元に調整というのが一番オーソドックスで、みんながやっている手法です。
ですが、私の経験上、最後はディレクションしてる人間とか、コアになって作ってる人間の感覚がすごく大事だと思っています。データや意見を参考にしながらも、最後は自身の感覚を信じて一本の軸を通してちゃんと調整する、という作り方をしたのが今回の『ORIGINS』です。
ひろゆき氏:
でも、ディレクションしてる人って、「敵の体力がどれぐらいで、こういう弱点があるよね」とかが分かってますよね。普通のプレイヤーの感覚を持つのは無理じゃないですか?
庄氏:
今回に関してはちゃんとやれてるのかな、と思っています。あと、私自身で言うと、「毎回、記憶喪失になる自信」がある(笑)。
昔から、「絶対ユーザー感」という言葉を勝手に作って、やっています。
実際脳内に色々情報があるんですけど、とにかく「本当に俺何もこのゲーム知らねぇ」という気持ちで通しプレイを何回もやるような訓練を私自身はずっとやってきていて、今回のディレクターもみんなも、頑張って同じようにやってくれたと思います。
と言っても、「知ってるよね」はもちろんあるので完璧ではないのですが、修練して意識すれば仕事上はできると思っています。
ひろゆき氏:
プロの制作者は、「ゲームが下手になれる能力」も必要になるんですね(笑)。
庄氏:
そうですね。
今回はディレクターが二人体制で、主に全体のバトルを見ていた人はアクションゲームがある程度好きではあっても、いい意味で「アクションゲームが得意な人間」ではなかったんです。彼を中心にしてバランスを見れたので、本作はちょうどよくなったのかなとも思っています。
私自身は「アクションゲームが得意」なので、どうしても自分基準だと難しめになってしまいます。なので、脳内で「俺はアクションゲーム苦手だ」と思って下手なプレイを意識します。
ひろゆき氏:
今回のクリア率がどれぐらいとかってわかるものなんですか?
庄氏:
正確なデータは取っていないんですが、トロフィーや実績の取得率で、ある程度の推測ができます。「何かの勢力でクリアしたよ」だと、大半の方が到達してくれているような感じですね。やりこみを見て行くと、「物語なら全部やったよ」みたいな方で6%程度、「全てをやりこんだ」みたいな方が購入者の4%ぐらいでした。
ひろゆき氏:
じゃあ、難しくて進めないって人はあんまりいないんですね。
庄氏:
それでもXとかの書き込みをみていると「どうしても倒せないよ」というご意見を見かけます。我々の感覚としては、易しい難易度を選んでいただければクリアできるように作っているんですが。例えば、一番易しい難易度では、ガードをしていれば呂布の「どんなヤバイ攻撃」だろうが絶対に全てガードできるようにしています。
ひろゆき氏:
そんなに易しくなるんですね。
庄氏:
そうなんです。ガードさえしてくれれば、まず死なないような難易度を用意しています。
バトル全体で見ても、プレイヤー自身のレベルを上げたり、装備を整えて火力を上げたりしていただければそれなりのスピード感で攻略できるバランスを今回は狙ったので、いけると思うんですけど……まだ易しさが足りていないかもしれません。
たまに「こんなの無双じゃねえ、誰が死にゲー作ってくれって言ったんだよ」みたいなお怒りのコメントを見かけると、ちょっと申し訳なく思ってしまいますね。「そういう意図はないんだけど……」と。
ひろゆき氏:
そっか、素直に難易度を下げればよかったのか。呂布を倒す動画を見て「ここまでやってようやく倒せるのか」みたいに思ってました。
庄氏:
でも、そのまま遊んでいただけて開発メンバーとしては嬉しいです。
一番易しい難易度は「アクションが苦手な方でも物語を楽しんでいただけるように」と入れているので、一周クリアした後は難易度をひとつ上げて挑戦してみてほしいですし、緊張感を楽しめる素地がある方は、ぜひ通常の難易度以上でプレイしてみてください。アクションゲーム本来の面白さを楽しんでいただけるようにバランスを取っています。