いま読まれている記事

目指したのは『ジージェネF』のような「ガンダム大図鑑」──物量はもちろんマニアックな機体も実装、膨大なガンダム作品を1本のゲームで遊べる。新作『ジージェネ エターナル』開発陣が貫いた“ジージェネらしさ”

article-thumbnail-250415b

1

2

3

『SDガンダム GGENERATION』(以下、『ジージェネ』)。1998年にリリース以降、ガンダムファンに愛され続けている長寿シリーズだ。

「好きな機体で自軍を編成し、ガンダム作品の歴史に介入していく」体験に魅せられたプレイヤーは数知れない。筆者もそのひとりで、中高生時代に初代『ジージェネ』や、『ジージェネF』を貪るように楽しんだ。

ガンダム作品は本当に膨大だ。すべてを把握できている人は稀だろう。

そんなガンダム作品が集うのが『ジージェネ』という作品なのだ。登場するのは人気作品だけじゃない。濃いファンですら「えっ……何それ知らない」と唖然とするような知る人ぞ知る作品も多く取り扱ってきた歴史がある。

アニメ化されていない作品も積極的に収録しており、『ジージェネ』からそのモビルスーツやキャラクターを知った人も多いのではないだろうか。『ジージェネ』は「まだ見ぬ世界を知るきっかけ」を提供してくれているのだ。

そんな『ジージェネ』の最新作『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』(以下、『ジージェネ エターナル』)のリリースが迫っている。リリース日は2025年4月16日。事前ダウンロードは4月14日より始まっている

本作『ジージェネ エターナル』は、バンダイナムコエンターテインメント主導のもと、ゲーム制作はアプリボットが、戦闘演出やユニットのモデリング、その他にはユニットデータ画面など表示されるイラスト提供をトムクリエイトが担当する体制となる。

トムクリエイトと言えば、長年『ジージェネ』シリーズに携わってきた、開発における本家本元。SD表現で、モビルスーツをかっこよく動かし続けてきたスペシャリスト集団だ。

そして今回、電ファミニコゲーマー編集部では、そんな『ジージェネ エターナル』の開発陣へインタビューする機会に恵まれた。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_001
左から、トムクリエイトにてグラフィック制作室マネージャーを務める上瀧圭一郎氏。同アートディレクターを務める花田翔平氏。プロデューサーを務めるバンダイナムコエンターテインメントの小島省吾氏。ディレクターを務めるアプリボットの武藤永輝氏。

待望の新作である一方、古参ファンからは「スマホじゃなくてコンシューマーで遊びたかった」というような声も聞く。筆者も初代からプレイしていたユーザーとして気持ちは理解できた。「『ジージェネ』は据え置き機でじっくりやるものだ」と。

今回のインタビューでは、「『ジージェネ エターナル』はなぜスマホゲームとして作られたのか」といった根本的な話はもちろん、『ジージェネ』が大事にしているコンセプトや『ジージェネ』をスマホゲームにどう落とし込んだのかについてもお聞きしている。

取材のなかで明らかになったのは「従来の『ジージェネ』の体験を大事にしながら、新しい『ジージェネ』を作る」という開発陣の熱意であった。『ジージェネ』に熱狂しているファンにこそぜひ読んでもらいたい。

取材・文/世界のザキヤマ
編集/竹中プレジデント
撮影/増田雄介


目指したのは『ジージェネF』のような「ガンダム大図鑑」

──本作はバンダイナムコエンターテインメントとアプリボット、そしてこれまで『ジージェネ』シリーズを手がけられてきたトムクリエイトの3社による共同開発となっています。トムクリエイトがどのように関わっているかというのは、シリーズファンとして気になるところです。

花田氏:
ゲーム内の仕様、グラフィックや画面作りなどはアプリボットさんが開発されていて、我々としては戦闘演出や3Dモデルなど素材となる部分に協力させていただきました。

また、弊社としてそれなりに長い期間『ジージェネ』に関わらせていただいてきたので、ユニットの選定も含め、アドバイザーとしても携わっています。上瀧は初代『ジージェネ』から開発に携わっていて、通称「ジージェネマイスター」とも呼ばれているんですよ。

──「ジージェネマイスター」ですか!?

上瀧氏:
マイスター……かどうかはわかりませんが、1996年からグラフィックを担当していて、ありがたいことに長らく中心メンバーとして関わらせていただいています。ですので、『ジージェネ エターナル』にも参加できてうれしいです。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_002

──歴史を知る者というか、生き字引というわけですね。『ジージェネ』といえば参戦作品数、登場する機体の多さが特徴のひとつだと思うのですが、どのような考えのもと登場する機体を選定されているのでしょうか。

上瀧氏:
おっしゃる通り『ジージェネ』と言えば物量だと思います。

どのタイトルでも容量という制限がありましたが、そのなかで可能な限り多くの機体を1本のゲームに登場させられるように工夫を重ねてきたつもりです。

花田氏:
ユニット選定は頭を悩ませるところです。ゲーム的に必須な機体はもちろんですが、『ジージェネ』らしさを担保するという視点から、今作もバンダイナムコエンターテインメントさんとアプリボットさんの選出のもと、相談に乗らせていただきました。

──漫画原作の作品も大変そうですよね。カラーの表紙以外だと、白か黒かしかわからないわけですよね。

上瀧氏:
FAXでやりとりしていたのが懐かしいです。ガビガビの画質で資料が届くんですよ(笑)。

──久々にFAXって聞いた気がします(笑)。それだけ『ジージェネ』の歴史が長いってことですよね。ちなみに、『ジージェネ エターナル』ではどのような基準で選定されたんですか?

花田氏:
バンダイナムコエンターテインメントさんから「『ジージェネF』【※】のようなガンダム大図鑑を目指したい」との方向性をいただいたうえで、それならば……と過去『ジージェネ』からしばらく登場していなかったMSや、初登場となる作品を選出しました。もちろん限度があるので可能な範囲で、になってしまいましたが……。

※SDガンダム GGENERATION-F……2000年8月3日、PlayStationにて発売。参戦機体数が1000体以上と極めてボリュームが多く、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』や『機動戦士クロスボーン・ガンダム』は今作で初映像化を果たした。いまなおシリーズでも指折りの名作という声が多い。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_003

上瀧氏:
やはり「こんなモビルスーツやキャラクターがたくさんいるんだ!」というところは届けたいですよね。今回も「これを何とか」「それも何とか」と、かなりお願いしてしまいました。

小島氏:
これまでのノウハウのあるトムクリエイトさんからのご提案なわけですから、僕たちとしてもできる限り実装できるように取り組んで参りました。開発という面では、アプリボットさんに苦労をおかけしてしまったのかなと。

武藤氏:
そうですね、リリース時に実装される機体数が500体と非常に多いため、実装はもちろんのこと、デバッグやバランス調整など言葉以上に大変な部分はありました。

でもそのおかげで、リリース時からファンの皆さんに喜んでいただけるラインナップになっているんじゃないかと思います。

『ガンダム』を知らない人にとって入口になるのが『ジージェネ』にとって外せないポイント

──『ジージェネ』というのは本当に長年愛され続けているコンテンツなんだなと、『ジージェネ エターナル』発表時のSNSでの反応を見てあらためて感じました。

上瀧氏:
大前提として『ガンダム』自体が多くの方に愛されているIPですよね。世代ごとにそれぞれの作品のファンがいて、好きなモビルスーツやキャラクターがあります。

昔の作品を知っているファンにとって、最新のゲームでその作品を遊べるというのは、当時を懐かしむ以上の価値があると思うんです。

なかなかシナリオ再現されない作品も『ジージェネ』でなら追体験できますし、逆に若い世代が昔のガンダムを知るきっかけにもなる。「『ジージェネ』でガンダムを知った」という声はよく耳にします

──たしかに。自分もガンダムに触れるようになったのは初代『ジージェネ』からでした。

上瀧氏:
『ガンダム』というコンテンツの歴史の長さと、『ジージェネ』の物量が噛み合った結果、世代を超えて楽しめるゲームになっているのかなと思っています。

子どものころに『ジージェネ』を遊び、大人になってからも新作を楽しみにしてくださる方もいます。長く興味を持ってもらえることも『ジージェネ』の魅力かなと。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_004

──そんな『ジージェネ』で「これは外せない!」というコンセプトをぜひ教えてください。

上瀧氏:
初代からずっと掲げているコンセプトとして「『ジージェネ』は辞書」というものがあります。

モビルスーツ、キャラクター、世界観……『ガンダム』って作品内の歴史も長いですし、情報量がとにかく多いじゃないですか。

──ざっくり分けても初代『機動戦士ガンダム』に続く宇宙世紀(UC)、それ以外の世界観のオルタナティブ作品、SDガンダム系など、把握しきれないくらい多いですよね。

上瀧氏:
それぞれの世界観設定の中で、さまざまな兵器や特殊な力とともに、キャラクターたちがくり広げる人間ドラマこそ、『ガンダム』の魅力だと僕は思っています。

それら『ガンダム』シリーズを1本のゲームとして遊んでいただける。それが『ジージェネ』最大のコンセプトなんです。『ガンダム』を知らない人にとっての入口となる。ここは絶対に外せないポイントです。

──めずらしい作品も取り扱っていますし、すでにガンダムを知っている人でも新鮮味を感じられるのもうれしいです。

上瀧氏:
すでにガンダム作品を知っている方にとっても、その世界を広げるきっかけになれるようにというのは意識しています。「こんな機体知らないよ!」と驚いてもらえれば(笑)。

花田氏:
アニメになっていない作品を登場させることもジージェネならではですね。『ジージェネ』の初期で言えば……たとえばジョニー・ライデンとか。

いまや漫画『ジョニー・ライデンの帰還』をはじめ、詳しい方にとっては知名度が高い作品かと思うのですが、『ジージェネ』初期の段階ではまだ知る人ぞ知る存在でした。ボイスがついたのも『ジージェネ』が初でした。

──プラモや雑誌の企画だったMSV(モビルスーツバリエーション)が出典ですよね。ゲームで見た多くのユーザーが「だれだ!?」と驚いたと思います。

小島氏:
『ジージェネ』でガンダムを知る……それこそ『ジージェネ エターナル』の発表の際にも、ル・シーニュ【※】を初めて知った方々がいらっしゃいました。

※ル・シーニュ……『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル 天空の学校』に登場する主役モビルスーツ。『ジージェネ』には初参戦。

花田氏:
『ジージェネ』シリーズ未登場の作品も可能な限り出したい。その想いは開発チーム一同ずっと持っています。ただ、ゲーム作りという枠組みに限界はあるため、いつも容量や工数との戦いですね。

上瀧氏:
ガンダムの魅力って本当に幅広くて奥深いんですよね。だからこそ、まだ知らない作品やキャラクター、モビルスーツに触れてもらって、「刺さる」部分を見つけてもらいたい。作ってる側としてはそれがいちばん嬉しいです。

アニメ、プラモ、カード、アーケード。開発陣が『ガンダム』にハマったきっかけ

──コンテンツとしての歴史が長い『ガンダム』シリーズですが、開発陣の皆さんも世代がわかれていますよね。いちばん若いのが武藤さんかと思うのですが、年齢はおいくつなんでしょうか?

武藤氏:
今年28歳になります。先ほど上瀧さんが1996年からグラフィックを担当されているとおっしゃっていたと思うのですが、自分が生まれたのはその年なんです。

──おお、そんなに世代の差が。話題が横道に逸れるのですが、ここからは皆さんのガンダム歴についておうかがいさせてください。まずは武藤さんから、『ガンダム』に触れるきっかけについて教えていただけないでしょうか。

武藤氏:
僕は『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』から
です。ゲーセンに通うくらいにはハマっていましたし、家庭用の『NEXT』、『NEXT PLUS』も遊んでいました。

そこから徐々にエピソードにも興味を持ち出して、ガンダム作品を見るようになっていきましたね。

──アニメではどの作品から入ったんですか? 

武藤氏:
『機動戦士ガンダムSEED』です。そこから『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』も見ていったのですが、ミーア・キャンベルをめちゃくちゃ好きになってしまって……。

彼女のキャラソンに『EMOTION』って曲があるんですけど、多くのガンダム作品の中でもいちばん好きな楽曲です。主役になりきれないけど……葛藤の描写がすごく好きなんです。『ジージェネ エターナル』でも彼女の登場を密かに願っています。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_005

──続いて小島さんはいかがでしょうか。

小島氏:
僕は学生時代にアーケードゲームの『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』からですね。そこから『ジージェネ』含めて『ガンダム』のゲームをプレイするようになったのですが、本格的にハマったのは、カードゲームの『ガンダムウォー』がきっかけでした。

友人からすすめられてカードショップに行ってみると、そこにはまったく知らないユニットが無数にいて……。その中で僕の心にものすごい刺さったユニットがいたんです。ガンダムTR-6【※】なんですけど

※ガンダムTR-6……『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』に登場。素体となる「ウーンドウォート」をベースに多数の強化パーツが存在し、TR-6名義でのバリエーションは、全モビルスーツの中でも屈指。

──あの独特なフォルム、ロマンが詰めこまれた兵装の数々がたまりません。

小島氏:
「こんなにかっこいい機体がいたのか!」と感動しました。そこから『ガンダム』という作品の歴史に興味がわき、アニメや小説を一気に追うようになったんです。

──そのうえで、いちばん好きな作品は何でしょう?

小島氏:
やはり、TR-6が登場する『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』です。じつは……『ジージェネ エターナル』にも「ユニットやキャラクターを実装できないか」と提案という名のお願いをしています(笑)。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_006

──花田さんはいかがでしょう。

花田氏:
私はSDの騎士ガンダムや武者ガンダムなどプラモから入りました。祖父や祖母の家に遊びに行くと、プラモをひとつ買ってもらえたんです。当時はロボットやアニメはあまり知らず、純粋にプラモのかっこよさに惹かれていました。

──ゲームやアニメでガンダムに触れるのはどの作品からなんですか?

花田氏:
ゲームだと『第4次スパロボ』や『ジージェネF』、アニメだと『Vガンダム』や『ガンダムW』だったかと思います。

ただ、当時は今のようにサブスク配信もないので、アニメを最初から最後までしっかり見にくかったんです。レンタルビデオ屋にいっても、みんな同じことを考えていたみたいで、1巻〜3巻がいつもないんですよ。1話から見たいのに。

しかも1週間レンタルが基本でしたから、なかなか戻ってこない。巻数も多くて親にお願いしてもなかなか借りれませんでしたね。

──そう考えると昔は、コスパや入手経路の点からゲームが手軽でしたよね。もっとも歴が長いであろう上瀧さんはいかがでしょう。

上瀧氏:
自分は初代の『機動戦士ガンダム』のアニメ再放送です。初代にハマって以降、アニメ作品はずっと見ています。

あと、ファミコンの『SDガンダムワールド ガチャポン戦士 スクランブルウォーズ』はめちゃくちゃ遊んだ記憶があります。

──そんな好きな作品を作る側になるというのは、当時どういった心境だったのでしょうか。

上瀧氏:
アニメもゲームも本当に大好きだったので、まさか自分が『ジージェネ』開発に携わることになるなんて夢にも思いませんでしたね

実際に働く際には「これを仕事にするのか!」と衝撃でした。しかも職場では、みんながみんなマニアックな話をするんですよ。自分たちが中学生とかで話してたようなことを、大の大人が。

そんな話をしているうちに「もっと詳しくなりたい」という気持ちが大きくなりました。そうしないと好きな人に満足するものが作れない。ですので『ガンダム』と仕事として向き合っていくようになります。もちろんやり甲斐はあるし、夢が現実になりましたね。いまも継続中ですけれど。

1

2

3

編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ