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最新作『鬼武者 Way of the Sword』は「人間味のある重さ」を感じるアクションの手触りが新鮮!アクションの挙動全体が変化し、“経験者と新規プレイヤーの体験を一緒にする”の方針をまさに感じられる

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拝啓 宮本武蔵(および、モデルの三船敏郎)さま。

華麗な一太刀を決めることにこだわりすぎたこと、心からお詫び申し上げます。
いつかまた、機会があった暁には、華麗な一太刀にこだわらず泥臭く戦うことを意識する所存です。

筆者の『鬼武者 Way of the Sword』の先行体験は、こんな謝罪文を書きたくなるほどのものだった。

約20年ぶりの『鬼武者』完全新作をじかに体験できる貴重な機会ということで、筆者は直前に過去の『鬼武者』シリーズを時間の許す限りプレイ。敵を一撃で斬り伏せる華麗なる必殺技「一閃」を出す感覚を掴んでおいた。

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だが迎えた当日、筆者の操作する主人公・宮本武蔵が受けたのは返り討ちに次ぐ返り討ち。「ここぞ!」という時に「一閃」を決めようとボタンを押しても、敵の幻魔に先手を打たれてバッサリ

防御で一時的にしのぎ、隙をうかがおうとしたら武蔵が態勢を崩してしまい、その哀しき瞬間を狙うように幻魔がバッサリ。ならば普通に斬りかかるも、幻魔に受け流しを決められ、武蔵がよろけた瞬間を狙うように愛を込めてバッサリ

極めつけには、体験終盤で対峙した武蔵の宿敵・佐々木巌流をなかなか打ち崩せず、攻めに攻められてのズババババッサリ(ゲームオーバー)である。

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宮本武蔵と言えば、剣豪として名高い人物だが、本作はまだそう呼ばれる前の設定。ゆえにやや未熟なところがある……とは言うものの、モニターに映る彼はボロボロ。

筆者は先日、カプコンにて実施された実機プレゼンにも参加した。その時行われた開発スタッフへのインタビューで、今回の新作は「過去作経験者と新規プレイヤーの体験を一緒にする」との方針を掲げているとの発言があった。まさにそれを自ら証明した恰好である。

本稿では、今回の『鬼武者』の過去作との違いを振り返りながらレポートしたい。

なお、あくまでも今回体験したのは開発途中のバージョンで、機種はPlayStation 5版となる。そのため、一部仕様が製品版でも同じになるかは現時点で定かではなく、最終的に変更される可能性も十分あることを念頭に入れておいてほしい。

文・取材/シェループ
編集/anymo

生身の人間を動かしているようなリアルな操作感が、過去作で掴んだ経験を崩す!?

今回の『鬼武者 Way of the Sword』だが、アクション全般の挙動が過去作から変わっている

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最も大きな違いは「人間味のある重さ」が表現されていることである。手持ちのカタナを振るう時に留まらず、普通に歩かせる時にしても生身の人間が動いているかのようなリアリティがコントローラから伝わってくる。

じゃあ「鈍くなっているのか?」と言われれば、そうでもない。斬撃も防御も比較的スピーディに繰り出せる。ただ、過去作の経験があると、本当にごく僅かながら“間”があることをほのかに感じさせる手触りになっている。

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今回の新作にも従来型の「一閃」が存在するのは、実機プレゼンの時に確認している。しかし、結果的に筆者はあまり出すことはできず、幻魔にズバズババッサリされ続けた。そして、幾度も武蔵が瀕死になりかけたのである。

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失敗続きでここまで体力が削られてしまった……(※左下の黄色いゲージ参照)

そのために武蔵が何度も「死んでたまるかよ…」とボヤくばかり。すみません、申し訳ございません、上手く動かせなくてごめんなさいと、土下座したい思いになりつつあったのは言うまでもなかった。

ただ、「崩し一閃」については、何度か成功させることができた

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敵の攻撃をタイミングよく防御して受け流し、背後の岩や壁などに衝突させてよろけさせた(「力動崩れ」と呼ばれる状態になった)瞬間を狙って繰り出せる「一閃」だ。

同じ名称の「一閃」は、2006年発売の『新 鬼武者 DAWN OF DREAMS』(PlayStation 2)にも存在したが、本作は「力動ゲージ」なる、赤いゲージが空になった時に決められる別種の「一閃」となっている。

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「力動ゲージ」自体は敵との戦闘中、体力ゲージの真下に表示される。これを空にすれば繰り出せるという点では、従来の「一閃」に比べると出しやすくなっている。「力動ゲージ」自体も通常の斬撃でも削れるほか、先の受け流しを決めればさらに大きく削れるので、それを狙って立ち回ってみると、比較的スムーズに“バッサリ”と決められた。

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弓兵には力動ゲージが存在しないためか、「連鎖一閃」が決めやすい

崩し一閃を決めた時でも、近くにもう一体、力動ゲージが空になっている敵がいれば先日、リマスター版が発売されたのが記憶に新しい『鬼武者2』で初登場した「連射一閃」も決めることも可能である。

また「力動ゲージ」は武蔵にも存在する。主に防御で敵の攻撃を受け止めた時などで減るのだが、これが空になると武蔵がよろけ、一時的に操作を受け付けなくなってしまう(ほかに幻魔に受け流しを決められた時も同様)。そうなればもちろん、幻魔にバッサリである。

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受け流しは幻魔も決めてきたりするので油断大敵。

このプレイヤー側に隙が生じるシステムの存在も過去作とは大きく異なる点で、力動ゲージの減りにも気を配る必要があるという戦術面の変化を感じ取れた。特に防御は360度全方向に対応するという万能ぶりもあって、割と戦闘では多用しがち。

ゲージが空にならないよう、時には〇ボタンで回避(ステップ)を決めて身を反らすことも適時、心がけていく必要がある印象だ。実際、それを意識させられる場面が何度かあって、終わった後に「あの場面では使うべきだった……」と内心、反省したりもした。

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幻魔を倒した時に放出する魂を吸収する、『鬼武者』シリーズお馴染みの「魂吸収」はL2ボタンに当てられている。

こういった違いが多数あるため、過去作の経験が濃いと戸惑いやすいだろう。同時にこの一連の部分が「過去作経験者と新規プレイヤーの体験を一緒にする」を象徴する箇所になっている。確かに一通り終えてから、新規プレイヤーと同じスタートラインに立って遊んだ実感はあり、その方針の意味をプレイを通して実感した。

また体験の機会があるなら、是非、是非。リベンジを果たしたい。

何度も追い込まれはしたものの、難易度の塩梅は過去の『鬼武者』とほとんど変わっていない

これほどズタボロになったのなら、ゲームオーバーも繰り返したのかと言えばそうでもない。体験終盤に登場する佐々木巌流との戦闘ではゲームオーバーの憂き目に遭ったが、それ以外の場面では一度もなかった。

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というのも、幻魔の一撃が重くて瀕死状態になって大ピンチ、みたいな場面がない。確かにズタボロにはなりはしたが、受けるダメージの量は過去の『鬼武者』と大差ない(小~中程度)。また、方向キー上下を押すだけで即座に使える「丸薬」、幻魔を倒すと時折放出される「黄色の魂」といった回復手段と機会も多くあって、挽回はしやすい。

「黄色の魂」に関しては「鬼ノ武具」なるもうひとつの武器で幻魔を攻撃すれば、より多く放出させられることもできた。今回使えた「鬼ノ武具」は、「双刀【二天】」なる、素早い連続攻撃を繰り出すものだけだったのだが、これで瀕死の状態から一気に挽回するチャンスを作れるようになっていた。

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「鬼ノ武具」自体には制限があり、青い魂を吸収して「鬼力ゲージ」を一定量貯めないと使うことができない。過去の『鬼武者』にも鬼力ゲージを使った技などは存在していたが、今回は制限がやや厳しくなっているため、使うに当たっては適切なタイミングを見計らって使うことが求められそうな印象を抱いた。

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実際、今回の「双刀【二天】」は緊急的な回復手段として、主にボス戦においてベストなタイミングで使えば、逆転のチャンスを作り出す働きをしてくれそうだった。(それを見誤った筆者は、巌流にズババババッサリされたのだが)

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ともあれ、以上のような配慮もあって、いわゆる「死にゲー」と言われるほどの難しさはない。過去の『鬼武者』も、上級者向けのものを除けば難易度的にそこまで高くはなかったのだが、それは今回の新作でも踏襲されている。

プレゼン時のインタビューでも、「死にゲーにはしない」方針を掲げている発言があったのだが、実際に体験してみてその思いを十分に感じられた。

調整面に限らず、難易度選択機能もデフォルトで搭載されている。ストーリーを重点的に楽しみたいプレイヤーを対象にした「活劇」、過去作に近い手応えのあるアクションが楽しめる「剣戟」が用意されていて、好みの加減で楽しめるのだ。

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今回の先行プレイでは「剣戟」を選んだため、「活劇」の違いは確認できなかったのだが、選択画面の説明によれば補助機能がONになって戦いやすくなるようだ。

過去の『鬼武者』だと、敵の攻撃力や体力が低くなるほか、出現数も減るといった違いも存在したが、今回の新作でも同じなのか否かは今後の情報公開を待つか、再び体験できる機会があれば確かめたいところである。

ちなみに巌流の戦闘でゲームオーバーになったと前述したが、そこから再開地点はボス戦の始めからと、大きく巻き戻される仕組みではなかったことをお伝えしておきたい。トライ&エラーは昨今のゲームと変わらず、手軽にできる仕組みだ。

今度はもっと泥臭く、荒々しく戦いたい!──そんな再挑戦意欲を刺激する作りは紛れもなく『鬼武者』。

「再び体験できる機会があれば……」と、何度か繰り返しているように、体験が終わった現在も、筆者の胸の内には無性に「今度はこう立ち回りたい!」「もっと荒々しく斬りかかるようにしたい!」という思いがくすぶり続けている

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2度目のプレイでは、開始早々に受け流しからの崩し一閃を綺麗に決められた。(ここから挽回したかった……)

実は体験終了後、ちょっとだけ時間があったことから2度目のプレイを決め込んだのだが……その時に受け流しからの崩し一閃をスムーズに決められるようになっていた。明らかな上達が見られたことから、「だったらもう一度……!」とそのまま心の中で意気込んだのだが、残念ながらそれ以上は叶わなかった。

より華麗なプレイを求めて再び遊びたくなるところは、まさしく『鬼武者』と思えた部分。元々『鬼武者』は、「一閃」の快感とそれを連続して決める気持ちよさを知ると、よりよいプレイとカッコいい侍の立ち振る舞いを演じたい思いから、繰り返し遊びたくなる中毒性と面白さがある。

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極めたい思いを刺激する作りもさることながら、禍々しくもどこか美しさを秘めたグラフィックにさまざまな謎が隠されていることを暗示するストーリーなど、興味を誘った箇所は多い。

また、これはプレゼン時にも感じたことなのだが、声優の岡本信彦さんによる演技がバチバチにハマった佐々木巌流が存在感ありすぎである。下手すれば武蔵以上の人気キャラクターになるのではなかろうか。

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岡本信彦さんの演技がバチバチにハマっている佐々木巌流。

そして、これはプレゼンの時には気づけなかったのだが、実は敵の幻魔たちも戦闘中に結構(日本語で)喋る。「貫ク!」と言って斬りかかってくる一ツ目笠、「オ腹スイチャッタ…」とボヤく首灯などなど。おかげで結構、印象に残りやすい。

筆者は雑魚敵の幻魔も喋るという演出に、『鬼武者』シリーズ随一の異色作である『鬼武者タクティクス』【※】が脳裏を過ぎったりしたのだが……。

※『鬼武者タクティクス』:2003年に任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」向けに発売された『鬼武者』の番外編でシミュレーションRPG。鬼一族の血を引く主人公「王仁丸(おにまる)」が仲間たちと共にむ幻魔王「織田信長」の侵略に立ち向かうストーリー。斜め見下ろし視点で描写された戦闘マップを始め、“オウガ”のテイストが滲み出た作りが特徴。この作品では雑魚敵の幻魔も台詞付きで喋る。

本作は8月下旬にドイツで開催される「gamescom」にて、初めてのプレイアブル出展が実施される。本記事執筆時点で、日本国内での体験機会の有無は不明となっているが、そう遠くないうちに訪れることを期待したい。

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「新旧プレイヤーの体験を一緒にする」との方針の意味から、「死にゲーにはしない」と掲げる難易度の塩梅などは、実際に体験すれば存分に理解させられるだろう。いずれ機会が設けられた際、本作に興味を抱いているプレイヤーや過去の『鬼武者』シリーズのファンはぜひその手触りを確かめてみていただきたい。

そして、体験のあかつきには華麗な一太刀(一閃)を決めることにこだわりすぎぬよう。こだわりすぎれば、宮本武蔵はズタボロになってしまう。あえて狙ってみるのも一興だが、基本は泥臭く、荒々しく戦ってみよう。

そうすれば宮本武蔵も、フェイスモデルの三船敏郎さんもより一層らしくなる……はず。

ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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