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次世代ノンタゲMMORPG『AION2』はPlayStation 5版も開発中!「オートバトル・ガチャ不要」で世界に挑む、MMORPGの未来を懸けた背水の陣の覚悟を訊く

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現在のスマホ向けMMORPG市場は、「オートバトル」と「ガチャ」の2つを成功の方程式としている。しかし、その潮流に真っ向から「NO」を突きつけ、MMORPGの未来そのものを懸けた巨大タイトルが現れた。NCSOFTが満を持して送り出す『AION2』である。

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なぜNCSOFTは、売上を約束された自動操作を全廃し、「ガチャは1個たりとも販売しない」という険しい道を2021年の時点で選んでいたのか。その背景には、グローバル市場を見据えた緻密な戦略と、「もし失敗すればMMORPGのジャンルが終わる」という、背水の陣の覚悟があった。

電ファミではG-STAR 2025の会期2日目に、『AION2』開発チームを率いるソ・インソップ氏キム・ナムジュン氏への単独インタビューを実施した。彼らの真意や、16年ぶりに再び語られる「VISION」、そして彼らが目指すMMORPGのパラダイムシフトについて、現時点で聞けるすべてを余すことなくお届けする。

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左よりNCSOFT 事業室長のソ・インソップ氏、『AION2』開発プロデューサーのキム・ナムジュン氏

聞き手・文/kawasaki

オートバトルを全撤廃。時代の流れに「逆行」するに至った経緯

──インタビュー時間が1時間しかないので、さっそく本題に入ります。『AION2』は、プレイヤーによる手動操作にこだわった、非常にコアなMMORPGです。現在の同ジャンルはライトなゲーム内容が主流ですが、どのような経緯で、コア向けに至ったのでしょうか?

事業室長 ソ・インソップ氏(以下、ソ氏):
それは大きく分けて、2つの理由があります。 まず、『AION2』はアクションに徹底的にこだわっているからです。しかも、近年のさまざまなゲームジャンルのトレンドを吸収して大きく進化を遂げており、その全貌は皆さんの想像を超えていると自負しています。

ですが、これほど密度の濃いアクションを実現しても、オートバトルやオート移動を実装してしまえば、その真価は伝わりません。だからこそ、手動操作に特化すべく、オート機能は全撤廃しました。

──では、もうひとつの理由は?

ソ氏:
現在のNCSOFTが、韓国や日本だけでなく、グローバル展開に注力していることです。仮に韓国や日本を中心に展開するのなら、自動操作でも良かったかもしれません。しかし、グローバル市場全体で考えると、それでは多くの国で受け入れられないのが明白でした。

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──いちプレイヤーとしては深く共感できますが、会社としてはビジネスであり、売上を立てなければ存続できません。そのあたり、葛藤などはありましたか?

ソ氏:
そこは非常に悩みました。だからこそ、データを徹底的に分析し、計算したのです。

もし『AION2』が韓国市場のみでのリリースであれば、自動プレイの導入は不可欠だと判断したかもしれません。しかし、グローバル市場ではオートではなく、手動プレイを望むユーザーの声が非常に大きかったのです。

『AION2』がグローバルを目指すのであれば、このデータに基づき、手動操作で勝負できるという確信に至りました。

──初めて『AION2』が発表された2018年当時、プラットフォームはスマートフォンのみでした。それが2021年に開発体制が刷新され、PC向けに変更されています。つまり、NCSOFTのスマホMMORPGの収益が絶頂期を迎えていた2021年に、その決断をされていたのですか?

開発プロデューサー キム・ナムジュン氏(以下、キム氏):
はい。2021年に私が開発のトップに就任し、手動操作を重視する方針へ転換しました。それに伴い、開発チームだけでなくゲームプログラムも、すべて仕切り直しましています。

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現代のゲーマーに向けて、どのように魅力を伝えるか

──現在の若い世代にとって「MMORPG=ライトでオートバトルでガチャ」という認識が定着している面もあります。そういった世代に『AION2』のコアな魅力を届けるのも、一筋縄ではいかなそうですが。

ソ氏:
手動操作によるアクションを追求したり、仲間と協力して攻略したりする面白さは、ゲームとして普遍的なものだと思います。また、『AION2』のグラフィックスは客観的に見ても優れており、キャラクターカスタマイズなどを見て興味を惹かれる人も多いはずです。韓国市場でも、手動操作を求めるユーザーさんは確実にいらっしゃいますし、ゲームの中身に関しては心配していません。

──では、なにが大事になってくるのでしょうか?

ソ氏:
若い人を含む幅広いユーザーに向けて、『AION2』の魅力を「いかに伝えるか」です。
たとえば、YouTube Liveでの生放送を継続的に行い、開発中のものを見せながらフィードバックを受けて一緒にゲームを作っていったり。若い世代のユーザーが親しんでいるショート動画(※YouTubeへのリンク)でのアピールを行ったり。戦闘以外の生産系コンテンツや、ミニゲーム類も充実させたり。

また、これまでの韓国市場ではDiscordやSNSを活用する文化がそれほどなかったのですが、これはグローバル展開を行ううえで必須なので、考えを改めています。

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『AION2』公式サイト内の特設ページ(※外部リンク

──プレイヤーのゲームに対する接し方とか、環境のありかたは17年前の『AION』とは全然違っていますよね。

ソ氏:
そういった時代の変化を踏まえて、現在のユーザーに向けてきちんと伝えられるアプローチを行えれば、『AION2』そのものの魅力はきっと伝わるはずです。それが成功すれば、いまはオートバトルがメジャーだからこそ、『AION2』のコアさが、逆に新鮮さをもって受け入れられるのではないかと考えています。

日本のタイトルですと、『ファイナルファンタジーXIV』はオートバトルを実装していませんが、グローバルで愛されているじゃないですか。そういった成功例を見て、勇気づけられてもいますね。

「ガチャは1個たりとも販売しません」

──オートバトル廃止と同じくらいインパクトがあるのが、「ガチャ廃止」です。

ソ氏:
はい。そして次に聞かれる前にお答えしますが、プレイヤーキャラクターの能力値に影響を及ぼすようなアイテムも、1個たりとも販売しません(笑)。

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──いやはや……。では、どのようなビジネスモデルなのでしょうか。

ソ氏:
基本プレイは無料で、いくつかのサブスクリプションを用意しています。なお、これらはゲームプレイ上、必須のバランスではありません。

──つまり、それらも2021年の段階で念頭に置いていたと。さきほどおっしゃられたように、グローバル展開を踏まえたロジックとしては理にかなっていても、時代に逆行することへの不安などは無いのですか?

ソ氏:
正直言って、ものすごく怖い気持ちもあります(苦笑)。 この決断のせいで、NCSOFTという会社が潰れてしまったらどうしようかと……。

──どこまで本気で言ってるのか分からない冗談ですね。株主総会で糾弾されるソ・インソップさんとか見たくないですよ……。

ソ氏:
やめてください!(笑)

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編集者
元4Gamer。『Diablo』 『Ultima Online』 『EverQuest』 『FF11』 『AION』等々の、黎明期のオンラインRPGにおける熱狂やコミュニティ、そこから生まれたさまざまな文化は今も忘れられません。

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