国民的RPG『Fate/Grand Order(以下、FGO)』にハマり続けた結果、公認スポンサー契約を結び、ついには必殺技名にまで「FGO」の名を冠したプロレスラーがいる。
それが、新日本プロレスに所属する“グレート-O-カーン”(以下、オーカーン氏)選手だ。
オーカーン氏は、プロレスラーという激務をこなしつつ、『FGO』の冠位戴冠戦を一種400周オーバーで周回するほどのやり込み勢。
SNSでの発信や、公式YouTubeチャンネルでの『FGO』について語る動画の投稿、公式生放送への出演など、支配者(ドミネーター)の強面の裏には『FGO』愛があふれている。
ここまでゲーム業界に寄り添ったレスラーも珍しい。
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— グレート-O-カーン/オーカーン👑新日本プロレス (@Great_O_Khan) January 4, 2025
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ただ、気になる点がひとつある。
そもそも、なぜ『FGO』がプロレスラーのスポンサーについているのか?
どうしてプロレスラーが『FGO』にハマッているのか。
……というか、プロレスラーってゲームする暇あるのか!?
と、考えれば考えるほど疑問が湯水のように湧き出てくる。
この度、電ファミニコゲーマーでは、『FGO』が大好きなオーカーン氏へインタビューさせてもらえる機会に恵まれた。
オーカーン氏の『FGO』愛はどれだけ深いのか……。我々は熱き想いを聞きに新日本プロレスまで行ってみた。
オーカーン「三途の川を泳ぎたいのは貴様か」
無礼をお許しください。
果たして、我々は生きて帰ることができるのだろうか……?
取材・文/TsushimaHiro
編集/竹中プレジデント
※この記事は『Fate/Grand Order』の魅力をもっと知ってもらいたいラセングルさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
水着頼光を見て一目ぼれ⇒『FGO』にハマる
──オーカーンさんが『FGO』ユーザーであることは有名だと思うのですが、改めて、『FGO』を始めたきっかけを教えてください。
グレート-O-カーン氏(以下、オーカーン氏):
うむ。くるしゅうない。是非もなし。
まず、2017年に開催された『FGO』の夏イベントのCMで、水着を着た“源頼光”を見た。あれで一目惚れし、心を射止められた。
──もともと、『Fate』も知っていたのでしょうか。
オーカーン氏:
もともと、『Fate』シリーズはアニメも観ていたし、『FGO』自体も知っておったのじゃが、サービスが開始時にスタートダッシュする時期を逃していた。
やっぱりね、オタクとしてはコンプリートしたいというか……
どうせやるなら、最初からやってみたかった。故に、踏ん切りがつかなかったのだが、彼女(源頼光)がゲームに引き込んでくれた。
源頼光の水着を観て衝撃を受けたのだが……いやその。
まず、余は黒髪と巨乳キャラが大好きなんだ。
──直球ですね。
オーカーン氏:
うん。実は、余は支配者(エリミネーター)ではあるのだけれども、たまにこう……甘えたくなる。頼光ママはもちろん、イリヤにもバブみを感じる。こっちが「バブー」ってなる。ママみがある。
また、頼光は自分でも母だと言っているから。そして、余はもともと幼いキャラも好きなんだ。美少女か巨乳か、じゃな。中間はあんまり好きじゃない。
──『FGO』は魅力的なキャラクターが多数登場しますので、ゾッコンになってしまう気持ちはわかります。
オーカーン氏:
そうだな。『FGO』は魅力的なキャラクターはいっぱいいるんだけど、やっぱり夏イベのCMの頼光ママの水着だよ。
もう、マスクをふたつ着けてるみたいな。あれ、どういうデザインなの?って最初に見たときは衝撃を受けたし。あの水着を着れるだけの魅力が頼光ママにはあるよな。
──あと、ゲーム内での性能も良いですよね。
オーカーン氏:
性能の話をすると、頼光はめちゃくちゃ使える。
実際に好きでハマって使ってたら、かなり性能が良い。味方の攻撃力を上げられる、バスターも超絶強化できる、弱体効果無効もできる。
『FGO』は、キャラクターの性能が良かったら好きになることもあるというのも面白いぞ。キャストリア(※)なんかもう……好きだ!いないと本当に不安になる。
※キャストリア
アルトリア・キャスター。2020年8月10日の5周年記念に期間限定サーヴァントとして実装され、ゲーム本編では第2部6章「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ」に登場。他のサーヴァントと比較してもスキル群が突出して優秀で、とくにアーツ攻撃を多用するパーティにはほぼ必須級の性能を発揮しており、2025年の記事執筆時点ではユーザーに多用されている。また、宝具も敵の攻撃を防ぐ効果を味方全体に付与するという強力なもの。とりあえず、キャストリアを編成しておけばストーリーの攻略は格段に楽になるほど。
──(笑)。性能はもちろんですが、『FGO』の登場人物はビジュアルもすさまじいですよね。
オーカーン氏:
ビジュアルでいうと、例えば「デンジャラス・ビースト」「トリック・オア・トリートメント」とかのドスケベ礼装(※)とかもすごかったよな。服がすごいんだよ。とにかく、尖っているデザインが多い。
※ドスケベ礼装
『FGO』における非常に奥ゆかしい魅力を漂わせている概念礼装(装備)のイラストを差す言葉であり、中でも魅力が突出しているイラストに対しては、ユーザーが敬意を込めて「ドスケベ礼装」と呼称している。ReDrop氏の描いた「トリック・オア・トリートメント」や「デンジャラス・ビースト」はあまりにも有名である。
「Fate/Grand Order」にて開催中のハロウィン・カムバックに登場する概念礼装「デンジャラス・ビースト」のイラストを描かせて頂きました。ハロウィンですよ、先輩っ。よろしくお願い致します~ #FateGO https://t.co/YOnTW9pIoL pic.twitter.com/nt9Jel7x4O
— ReDrop/おつまみ (@otmm) October 19, 2016
──最初に目にしたときは度肝を抜かれました。
オーカーン氏:
キャラクターもかわいいし、ドスケベな礼装もそうだが、そこは『Fate』がもともとはエロゲー出身というのも良いと思う。昔からアニメも観ていたのだが、エロゲーだった頃の時代も好きだな。
『Fate/stay night』のアニメも観たし、月刊コンプエースも含めて雑誌も読んでいた。
余はアニメが好きで、『Fate/Zero』や『Fate/EXTRA Last Encore』も良かったぞ。あと『ロード・エルメロイII世の事件簿』や『プリズマ☆イリヤ』シリーズは映画も含めて大好きだ。あと、『カーニバル・ファンタズム』な、あれも良い。
──かなりご覧になっていますね!?
オーカーン氏:
『ロード・エルメロイII世の事件簿』に関しては、イギリスの話じゃろ。
当時の余はイギリスで修業中だったから、聖地巡礼もした。
時計塔はもちろん、エルメロイが通っているであろうと噂されているカフェに足を運んだり、キング・アーサーの墓も観に行った。
──聖地巡礼までかかさず行っていたのですね。さまざまなタイトルを視聴されていることがわかったのですが、強いていうなら『Fate』関連のアニメシリーズで一番印象深いタイトルは何でしょうか。
オーカーン氏:
アニメシリーズなら『プリズマ☆イリヤ』だな!
プリヤはかわいいのも勿論いいのだけれど、カードを使ってバーサーカーの服のコスプレが見れるというのが凄く良い。あれはいいよな。アサシンのお面の演出も良かったぞ。
必殺技も「FGO」に。きっかけは“ドスケベ礼装”の描き手
──確か、オーカーンさんは「FGO(フェイト・グラップル・オーカーン)」という技もあるんですよね。公式YouTubeチャンネルの動画によると、英霊「アストライア」の宝具からインスピレーションを得たとか。
オーカーン氏:
そうじゃ。
──いつ頃、必殺技「FGO」を開発されたのでしょうか。
オーカーン氏:
時系列からいうと、最初に「ReDrop」っていうイラストレーターと交流していたことから始まったんだ。やつとは、『Fate』に関わるずっと前から仲が良かった。
──ReDrop氏というと、いわゆるユーザーの間で有名な“ドスケべ礼装”を描いた方ですね。
「Fate/Grand Order」にて開催中のハロウィン・ストライクに登場する概念礼装「トリック・オア・トリートメント」のイラストを描かせて頂きました。ハロウィン特別治療祭開催です(?)。よろしくお願い致します~。 #FateGO https://t.co/3Xk9YvU6BM pic.twitter.com/m5539FkPfe
— ReDrop/おつまみ (@otmm) October 25, 2017
オーカーン氏:
そうだ。当時の余は、『FGO』に関してもSNSで語ってなかった。
ReDropがどんなイラストを描いていたのかも知らなくて、「トリック・オア・トリートメント」を描いたやつだと知って「え?天才なの?」と衝撃を受けたくらいだ。
最初は、ReDropから「オーカーンさんは『FGO』をどれくらい遊んでるんですか」って聞かれたから、基本はレベル上限までは上げているし、周回もそれなりにしてるよ、なんて話をしたら「プロレスラーという仕事をしている中でこんなにやりこんでいるのはすごい、公言したほうがいいです」って言われた。
──確かに、プロレスラーで『FGO』のやりこみ勢というのはほかに聞いたことがないです。
オーカーン氏:
でも『FGO』は、やりこんでいる奴は本当にすごいじゃん。
ボックスイベントでも「1日で100箱開けました」とか、時間の使い方がどうなってるのかよくわからないぞ。錬金術かなんかしてるのか?どうかしてる。
さすがにそういう人たちと比べると、自分はにわか知識だと思うし、ちょっとな……と思ったのだ。
「いや十分です」とReDropが言ってくれたから、SNSで発信しはじめた。
そうしていると、ほかの『FGO』のイラストレーターが集まる食事会に招待してもらった。
──え?英霊たちの生みの親たちの集会ということですか?
オーカーン氏:
そうじゃ。そこで、ReDropが「源頼光が大好きなオーカーンさんはこれだけFGOをやりこんでるんですよ」とみんなに紹介してくれた。
そこで、『Fate』とプロレスって親和性高いよな、なんか技つくろうぜ」っていう話になった。アニメでも『プリズマ☆イリヤ』でよくプロレス技が炸裂していたし、クリスマスイベントにサンタ版ケツァル・コアトルが登場してタッグマッチが開催されていたしな。
「FGO(フェイト・グラップル・オーカーン)」という必殺技名も、そこに集まったイラストレーターが一緒に考えてくれた。名付け親なんだ。
──その場にいらっしゃったイラストレーターさんはほかにはどれくらいいらっしゃったのでしょうか。
オーカーン氏:
食事会と言ってもバーベキュー大会形式で、人数的には50人を超えていた。さすがに全員で必殺技名を考えたわけじゃないけど、10人くらいで考えた。
──豪華すぎる。
オーカーン氏:
そこで、先生同士で『FGO』関連の本を持ってきてお互いにサイン会も始まった。イラストブックとかも作ったりしてな……アレ、とんでもない聖遺物になるぞ。
『FGO』フェスで奈須きのこ氏と出会い、ふたつ返事でスポンサーに
──ずっと気になっていたんですけど、そもそも『FGO』がスポンサーになった経緯とはどのようなものだったのでしょうか。
オーカーン氏:
うむ。余は聖遺物が生まれるバーベキュー大会の後に、2023年に開催された『FGO』フェスに行ったんだ。
そこで、余のゲームのやりこみ具合や「本当に「FGO」というプロレス技がある」という話をReDropが奈須きのこに持ちかけてくれたんだよ。そこで、「オーカーンがスポンサーを探している」という話までしてくれたんだ。
そしたら、奈須きのこが「ちょうど社会貢献みたいなことをやろうと思っていたので、やらせてください」ってな、その場でOKされた。
──それは、イベント会場で二つ返事でOKが出たってことですか?
オーカーン氏:
そうだよ。やっぱり、できる人って違うんだなと思った。人としての判断力が強い。
もともと、余も『FGO』に絡みたいという想いはあったのだが、まさか奈須きのこに会えて、スポンサーになってくれるなんて思いもしなかった成果だった。それは、ひとつ自信になったな。
──ぶっちゃけた話、その後の生活はどのように変化しましたか?
オーカーン氏:
気のせいか、ガチャが出やすくなった。
星5のサーヴァントがな。
一同:
爆笑
──その後、奈須きのこ氏とはどのようなお付き合いが続いたんでしょうか。
オーカーン氏:
個人的な付き合いはないが、本人を東京ドームの大会に招待したら見に来てくれた。
ほかの話だと、コミケ会場で余がReDropのブースの売り子をしていた時に奈須きのこを見かけたことがあったな。自分の手で大量のお土産を抱えて配りまくってた。本当によくできた方なんだな、と思ったよ。
その時にイラストレーターからも奈須にプレゼントを渡すんだけど、すげぇ喜んでた。手渡されたプレゼントを心の底から喜べる人間性があるって、素晴らしいと思えたな。
間違いなくいいやつだし、腰も低いから。もう2回目に会う時は緊張もしなかったぞ。
『FGO』は物語・イベント・キャンペーンのテンポが良い
──次は、オーカーン様の考える、『FGO』の魅力についてお聞きしたいと思います。約10年かけて多数のコンテンツやストーリーが実装されている本作ですが、2017年のイベント以降、ずっと『FGO』を遊び続けていられる理由は何だと思いますか?
オーカーン氏:
うむ……よかろう。ここは長いぞ。
一同:
(笑)。
オーカーン氏:
まず、ストーリー・イベント・キャンペーンのテンポがすごく良い。
余は『FGO』の前にとある音ゲーをふたつ遊んでいたのだが、イベントをプレイして上位にランクインしないと配布キャラが貰えないという仕様だった。やりすぎた結果、その音ゲーで2回も腱鞘炎になってるんだよ。
──プロレスラーを負傷させる音ゲーがあるとは……
オーカーン氏:
それでいうと、『FGO』はイベントクエストをある程度やりこめば入手できるだろう。
また、配布キャラだけでも十分強力なのだが、低レアと言われている星1、2、3の英霊(サーヴァント)も育成すれば強いし、ちゃんと使える。決して(最高レアの)星5じゃなくても良いのだ。そういう意味では、無課金でも遊べるのは魅力だな。
あと、昔はコマンドカードの選択ボタンを一度押すと元に戻れないという仕様だったが、改善された。
当時はスキルを押し忘れて進んでしまい、慌てたものだ。改善された点でいうと、一部の英霊はアニメーション・モーションも改善されたな。

──確かに、年月を重ねるごとにさまざまな要素が改修されましたね。
オーカーン氏:
そうだな。天井システムの実装も含めて、途中から運営方針もユーザーフレンドリーに変わった。
英霊の育成のために素材を集めるのも最初は「無理だろ」と言いたくなるほど大変だったが、その難しさがよかった。そして、ある程度素材を集めるのが余裕になってきたら、今度はアペンドスキルが実装された。
──アペンドスキルは衝撃的でした。やりこみ要素が増えていきましたよね。
オーカーン氏:
そうだ!『FGO』はやりこみ要素がどんどん増えていく。これが飽きずに続けられる理由だな。
さらに言うと、ゲーム性も素晴らしいぞ。『FGO』のユーザーはほとんどがストーリーやキャラクターを語るのだが、ゲームシステムや運営方法も素晴らしい。だから飽きずに続けられる。
第1部が終わった時も「ああ、終わったな」と思ったら、「いや、終わらねえよ」と言わんばかりに続きが始まっただろう。次は1.5部、さらに2部、奏章と、次々と新しい要素が追加されている。常に新しい世界を見せてくれる、という意味では本当に良いゲームだ。
オーカーン氏:
あと、余はちゃんと終わってくれる作品が好きだな。
それで言うと、本当はソーシャルゲーム形式より買い切り型のほうが好きなんだが、『FGO』は話がいったん終わりそうになる点がいい。
──第1部が終わる時も、いったん締めくくっていましたね。
オーカーン氏:
そう。第2部も終章って言ってるし。「ああ、終わるのかな」と感じさせてくれるだろう。これがいい。よくある、サービス終了まで永久に終わらないという形式ではなく、一回幕をおろして、再び始まる。この話の終わり方が素晴らしい。
カビたパンの話が忘れられない。
──では、ストーリーに関してはどうでしょうか。これまで『FGO』をプレイしている中でも一番心に残っているシーンなどがありましたら、ぜひお聞かせください。
オーカーン氏:
第2部第5章「星間都市山脈 オリュンポス」のキリシュタリアだな。もう、サーヴァントとしても来てほしい。
ちゃんとキリシュタリアが主人公として活躍するストーリーを見たいと思った。あの1章で終わらせるのはもったいない。
唐突に早口になったオーカーン氏:
キリシュタリアは一見、冷酷無比に見えるキャラクターなのだがすごく仲間想いなんだ。ただの仲間想いとかではなく、ほかのクリプターを蘇らせた理由も「もし自分が失敗しても、ほかのメンバーが良い成果を残してくれる」と信じていたからなんだよ。自分を卑下するわけでもなく、周囲の人間を真に信じてるんだ。
自分が助けられたらそれでいい、というわけでもなく、みんながいたらもっと良い結果を残せるという信念のもと生きていたわけだ。その結果、子供のころに父親を超えてしまって身内に殺されかけた。何とか逃げ延びた先で、スラムで生きる少年からカビたパンを分け与えてもらえた。ただ、その時のキリシュタリアはまだ精神が出来上がってなかった。本来、それが普通っちゃ普通なんだよ。カビたパンなんか食っても腹を壊すし、体力もなくなるから。まぁ、と言いつつもそれを食うしかなかったから食って、その状況がみすぼらしすぎて泣いちゃったりするんだ。それで、パンをくれた少年は「姿隠しのペンダント」を持ってたんだ。キリシュタリアはもうすぐ刺客に見つかってしまいそうだ、と諦めかけるんだが少年はペンダントをキリシュタリアに預けて、またキリシュタリアのためにパンを取りに行ったんだ。
少年はボロボロの姿になりながら、焼きたてのパンをもってきた。キリシュタリアはどうせ持ってくるなら、肉や魚だろう、と言うんだ。
キリシュタリアは、少年が貧乏でパンしか食い物を知らないということがわからなかった。少年はずっとキリシュタリアを見て「綺麗だ」と思っていた。キリシュタリアもその橋はよく渡っていたが、少年の姿を認識しようとしていなかった。結局、少年はパンを盗んだことでぼこぼこにされて死んじゃうんだよ。
そこで、これまでの研鑽や才能があり、貴族として生きてきたキリシュタリアはスラム街の人たちへ目が向かなかったことに対する自身の愚かさに気づいた。つまり、魔法使いでもなんでもない少年が、キリシュタリアを助けることができる、影響を与えることができる。というのが根本にあると思う。もう、すごくない?まさに名もなき英雄。
『Fate』は歴史に名を遺した英雄を召喚するお話だけど、貧民の男の子がヒーローになって、そこからキリシュタリアという人物が形成されたと思うと、すごいなって思うし、本当に感動する。己の命を賭して人を助けるというのは、良い話だよ。
──お話を伺っていると、『FGO』に対するストーリーに対する解像度がめちゃくちゃ高いように思えるのですが、読み返したりもするのでしょうか。
オーカーン氏:
いや、そんなこともない。
ぶっちゃけて言うけど、話が難しすぎる。
一同:
(笑)。
オーカーン氏:
よくわかんない用語がいっぱい出てくるし、詩的な比喩表現もめちゃくちゃするし。だから全体を通してだとわからないことも多いけど、キリシュタリアのエピソードだけは見返した。
英霊が世界を救うために戦う、ってある意味普通っちゃ普通じゃないか。
そこに名前すら出てこない登場人物にスポットライトが当たっていて、キリシュタリアの考え方の根本に影響を与えているという部分がすごく好きになれた。ここは見返したいと感じたな。










