2025年12月8日、『龍が如く』シリーズは20周年を迎える。
ゲーム産業が巨大化し、閉塞感が強くなっていた2005年、日本のゲームに新たな風を吹き込むべく、既成概念を打ち破るタイトルとして現れたのが『龍が如く』だ。
「ゲームに飽きた大人たちが本気で楽しめるゲーム」をキーワードに、大人が楽しめるエンターテインメント作品を目指して制作された『龍が如く』シリーズは、20年が経過してもなお、高い人気を集めている。

2025年11月13日にはNintendo Switch2版『龍が如く 極』、『龍が如く 極2』が発売となり、2026年2月12日には新作、『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』の発売が予定されているなど、20年が経過しても勢いが止まらない『龍が如く』シリーズ。
20年続くシリーズの魅力とはどういったところなのだろうか? 20周年という節目を記念して、電ファミニコゲーマー編集部の『龍が如く』シリーズ好き編集者3人が集まり、その魅力について座談会形式で話し合ってみた。
<座談会参加者>
豊田恵吾
電ファミニコゲーマー副編集長。前職の週刊ファミ通、ファミ通.com時代には『龍が如く』番として、全シリーズ作をプレイ。各種記事のほか、公式の予約特典小冊子や攻略本の制作も手がけている。50代。川野優希
電ファミニコゲーマーの営業。第四境界ではキャスティングや作詞を担当。アニメ・声優関連にも精通。『龍が如く』シリーズは1作目からリアルタイムでプレイしている、生粋の『龍が如く』好き。推しキャラは峯と秋山。40代。ジスマロック(ジスロマック)
各種企画記事を手がける、ライター、編集者。『ファイナルファンタジー』や『ペルソナ』シリーズ、『崩壊:スターレイル』などのRPGが好き。最近、『テイルズ オブ』シリーズの波が来ているらしい。『龍が如く』が発売された2005年当時は3歳。ちなみに名前は「ジスロマック」でも「ジスマロック」でも大丈夫なので、あんまり気にしないで!
文/豊田恵吾
「ゲームに飽きた人たちへ」のフレーズに惹かれた1作目の思い出
豊田:
『龍が如く』シリーズ20周年ということで、シリーズの魅力について編集部で話し合う機会を設けてみました。川野さんは1作目からプレイしている古参ファンで、「『龍が如く』好き」という印象がありますけど、『龍が如く』に触れるきっかけはなんだったんですか?
川野:
きっかけは1作目のキャッチコピー「ゲームに飽いた人たちへ」【※】です。このフレーズをテレビCMか、渋谷の街中かで見て「なんじゃこのゲームは?」と気になったのが最初ですね。21歳のときで、ゲーム好きの友人に「『龍が如く』っておもしろいの?」と聞いたら「めちゃくちゃおもしろい」と言っていたので、遊んでみたら見事にハマったと。
当時、ああいった大人向けのタイトルってなかったじゃないですか。僕自身、若かったこともあってキャラの魅力にも惹かれました。男が憧れるキャラというか。一方で、実際に遊んでみたら「仲間が死にそうな状況なのにキャバクラに行って女の子を口説けちゃうの?」というバカバカしさもあり(笑)、そのギャップもめちゃくちゃ楽しくて。

アクションゲームは得意じゃなかったんですけど、攻撃ボタンを連打してるだけでも、ある程度は進められるのもちょうどよかったというか。ヒートアクションの派手さもあって、「俺、うまいじゃん」感が味わえるのも絶妙でしたね。
※1作目のキャッチコピー:
正式なキャッチコピーは「ゲームに飽いた人たちへ。そしてゲームを愛する人たちへ。」。テレビCMでも使われていた。

豊田:
そこからハマってシリーズは全作プレイしている、と。
川野:
『龍が如く 見参!』(以下、『見参』)がプレイステーション3で発売されたときは、ゲーム業界に関係のない職種に勤めていたので、ハードの進化にともなう表現の向上に驚きましたね。グラフィックを見て「マジかよ」と。俳優の顔がそのままゲームに登場するという仕掛け【※】にも惹かれました。
シリーズで発売日に遊んでいないのは『龍が如く OF THE END』くらいですね。
※俳優のモデリング
シリーズでおなじみとなっている実在人物のモデリングは『見参!』からスタート。『見参!』には、松田翔太(佐々木小次郎)、松方弘樹(謎の僧)、寺島進(伊東)、竹中直人(丸目長恵)、加藤雅也(吉岡清十郎)、塚本高史(祇園藤次)などが出演。

豊田:
フォローさせてもらうと、『龍が如く OF THE END』はもともと2011年3月17日に発売を予定していたのですが、東日本大震災の影響による諸事情で発売日が延期されたんですね。そういったタイミングだったので、遊べない方が多かったタイトルだと思います。
ジスマロック:
逆に僕は友だちが『龍が如く OF THE END』を遊んでいるのを見たのが、『龍が如く』というタイトルを初めて知ったきっかけでした。
小学生のころでしたし、「ヤクザとゾンビが戦うゲームってなに?」と思ったんですけど(笑)。いま思うと、だいぶヘンな出会い方ですよね。自分でも「いきなりそれかよ」と思います。

豊田:
最初に見たのが『龍が如く OF THE END』だと、印象がだいぶおかしなことに……。スピンオフタイトルは、本編のドラマやキャラの魅力がまた違う形で描かれてるから理解が難しいと思う。
川野:
やっぱり『龍が如く』シリーズはキャラの生き様が魅力だと思うんです。1作目の「俺は“東城会四代目”……桐生一馬だ!!」のシーンは本当にグッときました。そのあとの錦(錦山)も最高で……。
続編を作るつもりはなかったんだろうな、と感じさせる話の凝縮さでしたし、1作にかける「一撃のパワー」というのが本当にすごかったですね。
『龍が如く7』は“RPGとしての強度”が高い
豊田:
ジスマロックくんは『龍が如く』シリーズを最初にプレイしたのは、電ファミで仕事を始めてから?
ジスマロック:
そうですね。
なかなか触れる機会がなくて、ライターとして仕事を始めてから、「『龍が如く』はおもしろいからプレイして記事を書いてみれば?」と編集部の方におすすめしていただいて。そこから、『龍が如く0 誓いの場所』(以下、『龍が如く0』)をプレイしたのが最初です。
で、遊んでみたら……これがおもしろかった!
「ヘンに食わず嫌いしててすいません!」と謝りたくなるくらい、ちゃんとおもしろかった!
そのあと、『龍が如く7 光と闇の行方』(以下、『龍が如く7』)、『龍が如く 維新! 極』、『龍が如く8』とプレイさせていただいたんですが……自分は『龍が如く7』がだいぶ刺さったというか、かなり好きなタイトルですね。
失礼な言い方になるかもしれませんが、「見直した」と言いますか……正直、実際にプレイするまで、『龍が如く7』は「イロモノ」なんだろうなと思っていたんです。ただ、遊んでみたら、純粋にRPGとしてもおもしろいし、これはRPGとしての強度がめちゃくちゃ高いぞと。

自分自身、『ファイナルファンタジー』とか、『ペルソナ』とか、『テイルズ オブ』シリーズとか……なにかと「RPG」が好きなんです。そのせいで、自分のなかの「RPGに求めるハードル」みたいなのが上がり続けてるんですよ(笑)。
ただ、『龍が如く7』はそんな勝手なハードルをあっさりと越えてきて、ストーリー面でも、クオリティ面でも、もう完全に「おもしろさ」で黙らされてしまった。そういう感覚でした。
それこそ、シリーズ的な意味でも『龍が如く7』は、一番(春日一番)と同じ気持ちで見れたんです。自分も、まだそこまでシリーズタイトルには手を出せていないなかで、主人公が変わって、ジャンルもRPGに一新されていて、なんだか入りやすい。だから、ちょうど『龍が如く7』が刺さったのかなと思いますね。
豊田:
「RPGの強度」について、もうちょっと聞かせてもらっていい?
ジスマロック:
純粋に、あらゆるRPGのいいところを持ってきているんですよね。
仲間とのイチャイチャもあれば、泣けるストーリーもあるし、バトルだって普通におもしろい。「RPGはこのおもしろさを外さないでほしい」みたいなポイントを全部抑えていて、このゲームを五角系のステータスで表現したら、どこにも欠点がないくらいのハイスペックっぷりだと思うんです。「バカっぽく振舞ってるのに、じつはかなりの実力者」みたいなゲームですよね(笑)。
それこそ、『龍が如く』という冠がなくても成立するくらい、純粋にRPGとして仕上がっているというか……最初はホームレスでなにもないところから始まるのも、プレイヤーの気持ちをうまく乗せてくれるんですよね。
いつの間にか、自然と「一番を応援したい」という気持ちにさせられている。で、ちゃんと最後まで追いかけたら、みんな好きになっていて、感動できる……。シンプルに「1本のRPG」として強度が高いと感じました。
豊田:
『龍が如く7』をプレイしたのって何歳のとき?
ジスマロック:
21歳のときですね。え、21歳? もう2年前? 怖っ……そう考えると、奇しくも川野さんが『龍が如く』1作目をプレイしたときと同じ年齢ですよね(笑)。
豊田:
世の中の21歳の方は、これを機に『龍が如く』シリーズのプレイをはじめましょう(笑)。
と、ちなみにジスマロックくんはいわゆる極道映画とか、ヤクザドラマとかを観る世代ではないよね?
ジスマロック:
そうですね。
強いて挙げるなら、友だちと見に行った『男たちの挽歌』くらいで……もしかしたら昔の極道モノをガンガン見ている気合いの入った同世代もいるかもしれないけど、映画やドラマなんかを含め、なかなか「触れる機会」自体がないんじゃないかなと思ったりはします。
豊田:
そういう意味では新鮮な部分もあった? たとえば「組長」はわかるけど、「若頭」がどういう立場なのかとかはわからないでしょ?
ジスマロック:
そういう節はあったかもしれないですね。
だから『龍が如く0』をプレイしていたときには、「見たことのない世界を楽しめるゲーム」という意味での新鮮さは感じていたと思います。もう、ある種のファンタジーですよね(笑)。
先ほど川野さんが「つぎを考えないで作った感じが『龍が如く』1作目にあった」と話してましたけど……自分としては『龍が如く7』もそれくらい強烈なインパクトがあって。
ストーリー的にも、キャラクターの位置エネルギー的にも、完璧なオチがついたと思っていたんですよ。「あ、『龍が如く』というシリーズ自体をここで畳むのかな?」と思うほどには。だから、『龍が如く8』が発売したときは、「え、あそこから続編なんて作れるのか?」と気になっちゃって、発売日に買ったりしてましたね(笑)。
川野:
まあ、『龍が如く7』の最後のシーンは、中谷さん(声優 中谷一博さん:春日一番役)の演技がすさまじかったので……。

ジスマロック:
ラストは本当に泣きました。正直、『龍が如く』でこんなに泣くとは思っていなくて……だから最後までプレイしたときに、改めて「これはすごい傑作だな」と思いましたね。
RPGが好きな人やふだんからゲームを遊んでる人って、なんとなく「ゲームの流れ」が読めちゃうときがあるじゃないですか。ここでクライマックスになって、このくらいの規模感で、このあと何時間で終わるんだろうな……とか。
でも、『龍が如く7』はそういう「なんとなくこのくらいの規模だろう」みたいな予想を、だいぶ超えてきたんですね。そこが、自分の「ハードルを飛び越えていった」みたいな印象に繋がっているのかなと。
それこそ、ほかのタイトルだったら追加DLCとかでやりそうなことを、最初から全部やっているタイトルだと思うんですよ(笑)。たとえば、桐生さんが出てくるとか、ドラゴンカートとか……あとから追加されそうなことが、最初から全部見越したうえで詰め込まれている。その「掌の上」感も含めて、圧倒されました。
異次元の戦い方でキャラを立たせる『龍が如く』の「ズルさ」
豊田:
さっき「春日一番を応援したくなった」と話してたけど、ほかのキャラも魅力的だった?
ジスマロック:
キャラクターという点では……『龍が如く』ってだいぶズルいことをしてると思うんですよ(笑)。
豊田:
「ずるい」とは?
ジスマロック:
ほかのRPG……たとえば『ファイナルファンタジー』シリーズであれば天野喜孝さんや野村哲也さんがデザインをされていて、『テイルズ オブ』シリーズでは藤島康介さん、いのまたむつみさんなどがデザインを手がけている。いわば「デザイナーの力」によってキャラが立っている。
でも、『龍が如く7』のナンバは「安田顕の魔法使い」って……もうそれだけでキャラ立ちがパーフェクトじゃないですか! だからもう、安田顕さんを起用した時点でキャラクターデザインが成り立っちゃっているのが「ズルい」というか、異次元の戦い方ですよ!(笑)

ジスマロック:
つまり、デザイナーさんなどの力で、空想のキャラクターを立てていくのが一般的なところに、『龍が如く』は実在の著名人をベースにしてキャラクターを生み出してくる。
RPGに限らず、どのゲームも「どれだけいいキャラクターを出せるか」ということをめちゃくちゃがんばっていると思うんですが……『龍が如く』は異次元のカードを切ってますよね。キャラクター戦国時代のなかで、これはそうそうマネできない戦法ですよ(笑)。
かつ、オリジナルモデルのキャラも織り交ぜていて、ハン・ジュンギとか、趙天佑とか、足立さんとか……声優を立てたキャラもめちゃくちゃ魅力的ですよね。モデルのありなしを含め、「実写っぽいキャラ」の作り方がうまいというか、ズルい。
ほかのゲームじゃ、なかなか摂取できないキャラの味がここにあるんですよね(笑)。
川野:
『龍が如く』は、いまは女性ファンからの人気が高いですからね。
豊田:
1作目からゲームメディアの立場で関わっている身からすると、『龍が如く3』までは男性ファンばかりだったんですよね。発売日サイン会とかに集まるファンも、ほとんどがヤンチャ系で。でも、いまは『龍が如く』のイベントには女性が多数。推しキャラのバッジをカバンにつけまくってる人もたくさんいますし、20年でいろいろ変わったなと、感慨深いです。
ジスマロック:
男性キャラクターの絡みも非常に濃いですし、自分自身も「あー!ウチの心のなかの乙女が喜んでる──!!」と転がりながらプレイしていました。ちょいちょい乙女回路が起動します。
川野:
これは僕の感覚なんですけど、ゲームを実際にプレイしている層は男性が多く、女性は実況を楽しんでいる層が多いのかなと。
『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』にゲーム実況者の牛沢さんが登場していましたけど、ゲーム実況で広がりが生まれたのは間違いないのかなって。
あとは『龍が如く7』で主人公が変わり、ジャンルもRPGに変わり、しかも超名作だったというのが、めちゃくちゃタイミングがよかったなと。
豊田:
アクションからRPGに変わったことで、やりやすくなって外側に届いたというのは間違いなくあるでしょうね。
あと、これは言い難いことですが、『龍が如く6』の終わり方に賛否があったり、一番のお披露目のときは過剰に桐生と比較されたり、RPGに変わることが発表されたときも「なぜアクションから変えるのか」と反発があったり、『龍が如く7』発売前はけっこう荒れていたんですよね。
川野:
それも神懸かっていたというか、「こんなミラクルある?」と。そういった不満や不安を、内容のすばらしさで黙らせたわけですよね。プロモーションや見せ方がどうとかではなく、ゲームとしてのクオリティで払拭したと。
ジスマロック:
自分はそのあたりの状況をあんまり知らずに、『龍が如く7』を楽しんでいた節があるんですが……たしかに、桐生が登場するシーンって、ゲーム自体がおもしろくなかったらもっといろいろ言われていたところかもしれませんね。前作の主人公が出てきたことへの反発とか、倒せることについての不満とか。
でも、『龍が如く7』はそこに納得感があるし、「これなら腑に落ちる」と、頷かせてきた。そういったシーンひとつとっても「実力で黙らせた」タイトルなんでしょうね……とか、シリーズ新参者のクセにいろいろ思ったりします(笑)。すいません!
川野:
ちょっと話がずれちゃうかもしれないですが、『JUDGE EYES:死神の遺言』(以下、『ジャッジアイズ』)も名作ですし、めちゃくちゃ評判がいいですよね。『ジャッジアイズ』も発売前は「木村拓哉が主人公ってどうなの?」といった声がありましたけど、そういった反発を実力で黙らせていて。

豊田:
『ジャッジアイズ』シリーズもこれまでのファン層とは別の層を取り込みましたよね。「フル課金キムタク」がバズったりもして。
川野:
『ジャッジアイズ』シリーズの続編、お待ちしてます(笑)。
ジスマロック:
そういえば、『龍が如く』シリーズをプレイしたことのない脚本家の友人が、以前『龍が如く7』を遊んでいたんですけど……たしか、ちょうど自分もハマっていた時期で、「いや、絶対好きだと思うよ!」みたいなことを話していたんです。
実際、その人も「めちゃくちゃよかった!」的なことを言っていて、なんか謎にうれしかったですね(笑)。やっぱり日ごろからシナリオに関わっている方なだけあって、ストーリーにも一家言あるタイプだと思うんですが、『龍が如く7』はおもしろかったと言ってくれて。やっぱりここから始めても感動できるゲームなんだなと思ったりしました。
『龍が如く』自体がファン層を広げているのはこういうところなんだろうなと……それこそ自分みたいな感じで、「興味がなかったはずなのに刺さっちゃった」みたいな人が結構いらっしゃるのかなと。
「3Dキャラの演技に泣かされる」すさまじいディレクション
豊田:
以前、川野さんは音響的なところでも『龍が如く』シリーズを評価していましたけど、ほかのゲームとの違いってどういうところだと感じているんですか?
川野:
ゲームキャラクターの演技やお芝居で泣かされるという経験って、なかなかない経験だと思うんです。物語的に泣くことはあっても、3Dキャラクターの演技で泣くことはない。
たとえば、音楽とシーンの演出で感情が揺さぶられることはあると思うんですけど、『龍が如く』シリーズは3Dゲームキャラクターの演技で泣けるものになっている。
わかりやすいのは、さっきも話した『龍が如く7』の最後のコインロッカー前でのシーン。あそこの中谷さんの演技って、「もしかして演技に合わせて一番の表情を作った?」と感じるほど、鬼気迫るヤバい演技ですよね。あそこまでのディレクションって、ふつうのゲーム制作の現場だとなかなかできることじゃないですよ。ゲーム収録の現場は役者の掛け合いじゃなくて、それぞれで収録する形式ですから、お互いに高め合っていくこともできないわけですし。演者との信頼関係や、演者にそこまでの演技を出させるディレクション。役者さんのキャラへの深い理解と愛情がないと、あの熱演を収録することは無理だと思うんですよね。本当にすごかった。心が震えるお芝居でした。

川野:
アニメだったら、同様の熱量の演技はいくつかあるとは思うんですけど、「ビデオゲームキャラクターの演技がやべえ」と感じさせるゲームって、『龍が如く』シリーズだけなんじゃないかなと。
あと、「龍が如くスタジオ」は収録現場の様子をよく動画で公開していますが、このあいだ公開された黒田崇矢さんの動画の2分45秒過ぎくらいに飲み物が映ってるんですけど、1回の収録で用意する量じゃないんですよね(笑)。これだけで収録にかなりの時間をかけていることがわかる。
それができるのって、やっぱり演者との信頼関係が構築されていて、ディレクションがすさまじくしっかりできているからなんですよね。
ハードの進化とともにファンをつかみ続け、愛され続けてきたシリーズ
ジスマロック:
豊田さんと川野さんはリアルタイムで1作目から触れていたわけじゃないですか。おふたりに聞きたいんですが、具体的にシリーズが「跳ねた」タイミングってあったりされるんですか?
豊田:
最初に火がついたのが『龍が如く2』で、そのつぎが『龍が如く7』かな。『龍が如く』1作目は新規タイトルだったので、いきなり売れるというのではなく、口コミで人気がじわじわと広がって、中古市場でずっとぐるぐる回ってたのね。
で、『龍が如く2』がプレイステーション2時代にも関わらず開発期間8ヵ月で制作されて、1年後に『龍が如く2』が発売されたと。その後セガから廉価版も発売されて、「ゲームで歌舞伎町を歩き回れる」とか、「ゲームでキャバクラに行ける」とか、そういった部分がフォーカスされて水商売系の女性にも広まり、『龍が如く3』では当時人気が爆発していた『小悪魔ageha』と協力してキャバクラ嬢オーディションをスタートさせたり。
あとはさっきも話に出たように、『龍が如く7』がRPGに変わって外側に広がり、内容のすばらしさでプレイした人の多くを魅了した……と。「龍が如くスタジオ」は1年に1本ペースで新作を出し続けているので、そういったところもファンをつかみ続けてることにつながっている、という感じかな。
川野:
『見参!』からプレイステーション3になって、そこから役者の顔をモデリングすることが始まったんですよね。
豊田:
当時はプレイステーション専売だったので、ハードが新しくなるタイミングでは、スピンオフが最初に出ていたんですよね。スピンオフで新ハードの技術検証を行って、そこで得た知見を本編で活かすやり方を続けていたことが開発陣インタビューなどで語られています。
川野:
「プレイステーションが新しくなると『龍が如く』の新作が出る」というイメージが確かにありました。
豊田:
いまはSteamでも遊べることが、ファン拡大や海外への訴求につながっていると思います。
ジスマロック:
なるほど……やっぱり以前から、ほかのゲームじゃあんまりやらないようなことをやってたんですね。というか、1年に1本のペースで新作を出すのもすごいですよね。RPGで言ったら『ポケモン』くらいの速度感で新作が出てるじゃないですか(笑)。
川野:
いまは慣れちゃいましたが、主人公がおじさんというのもかなりチャレンジブルですよね。海外のゲームではいろいろありますけど、日本産のゲームでおじさんが主人公というのは、現在でもあまりないですから。
豊田:
ジスマロックくんのように『龍が如く7』から入った人からすると、『極』シリーズは助かる感じ?
ジスマロック:
やっぱり、過去のハードで遊ぶのは、それだけでハードルが高いというか……「現行機で遊べる」って、それだけで本当にありがたいことなんですよ! うん、私は身に染みて感じてますよ!
あと、正直『龍が如く8』をプレイしていたときに桐生さんのもろもろを見ながら「『龍が如く6』までをプレイしていたら、もっと感動できたんだろうな……悔しいっ!」とは思っていたんです。いや、プレイしてない自分が全部悪いんですけども……。
そんなタイミングでも、ちゃんと最新ハードでプレイできる……ということを含めて、『極』シリーズはありがたいと思います。『龍が如く 極』、『龍が如く 極2』はNintendo Switch 2でも展開されるので過去作がいつでも最新ハードでプレイできる。これホント大事。何度でも言いたい。あと、いま見たら『極』シリーズは価格も結構安いんですね(笑)。
川野:
『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』は峯 義孝が主人公の『3外伝』が超楽しみです。オリジナルと同様、中村獅童さんがそのまま峯の声を演じると発表されたときは震えましたから。

川野:
『龍が如く3』をプレイしたことのないジスマロックさんに説明すると、『龍が如く3』の1作しか出てきていないんだけど、めちゃくちゃ人気があるのが峯というキャラクター。1回しか登場していないのに、2018年実施のキャラクター人気投票で5位に輝くという。
いま考えても、龍司(郷田龍司)と錦(錦山 彰)より上位は流石にヤバい。

ジスマロック:
ええ、気になっちゃうなぁ……川野さんがそんなに言うならなぁ……。
あと、『極』シリーズは、3Dでフルリメイクなのに、このペースで発売されてるのは普通にすごいと思います。素朴に「どういう開発力なんだ?」と思います(笑)。
まあ、これだけ長く続いているシリーズなので、開発チームの世代交代がうまくいっているのかなと思ったり……ちゃんと『龍が如く』というシリーズが愛され続けるために動いているのだろうなと思うし、むしろそこが愛され続けている理由でもあるのだと思います。
ファンのみなさんにも愛されて、開発の人たちも愛をもって臨んでいる。
そんな愛が、シリーズ全体からすごく伝わってきます。
豊田:
じゃあ、次回の座談会は、ジスマロックくんが『龍が如く6』までをプレイし終えたらやりましょう(笑)。
ジスマロック:
……え、何年先になるんですか!?(笑)
ひょっとしてプレッシャーがかかってますね、これ!?
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