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目指したのは『ジージェネF』のような「ガンダム大図鑑」──物量はもちろんマニアックな機体も実装、膨大なガンダム作品を1本のゲームで遊べる。新作『ジージェネ エターナル』開発陣が貫いた“ジージェネらしさ”

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スマホで『ジージェネ』を体験できるための試行錯誤。バトルUIは6回も変更

──これまでコンシューマーで作ってきた『ジージェネ』を、今回はスマホゲームで作ることになるわけですが、初代『ジージェネ』から携わられている上瀧さんとしては最初どのような感想でしたか?

上瀧氏:
率直に「無理なんじゃないか?」というのが最初の感想でした(笑)。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_007

──無理ですか(笑)。そう思った要因としてはなにが大きかったんでしょう。

上瀧氏:
『ジージェネ』をスマホゲームとして作るその根幹ですね。コンシューマーでじっくりプレイするのが従来の『ジージェネ』での体験です。それを「スマホでテンポよく手軽に」となると、相反してしまいます。

逆に、その体験を割り切って「テンポよく手軽に」すると今度は『ジージェネ』ではなくなってしまう。すり合わせにはかなり時間がかかりました。

花田氏:
スマホ向けテンポ向上としていくつかの武装は被弾パートを『クロスレイズ』のような戦闘演出ではなく、MAP側で見せるのはどうだろうかと提案させていただきました。

──二律背反ですよね。スマホゲームとして確立しつつ『ジージェネ』のよさも残しつつ、というのは。

上瀧氏:
シナリオを見せるにしても演出を入れるにしても、プレイ時間はどんどん伸びていきます。とくにトムクリエイトではこれまでコンシューマーゲームとしての『ジージェネ』を作ってきたので、演出がどうしても長くなりがちでした。

──その課題に対して、どういう風に落とし込んでいったんですか?

小島氏:
ひたすら話し合いつつ、試行錯誤ですね。アプリボットさんにはさまざまなUXデザインを出してもらって、家庭用の体験を損なわないうえでスマホならではの手軽さを突き詰めていきました。

武藤氏:
バトルのプレイ時間をどう短くするかが大きな課題でした。僕がプロジェクトに参画したタイミングでは1回のバトルにかかる時間が30分ほどだったんです。

このままだとスマートフォンゲームとして手軽に遊びにくくなってしまうと感じ、手軽さは担保しつつ、原作追体験という『ジージェネ』としての楽しさが両立できるよう企画開発を進行しました。

方針として、盤面に登場するユニットの数を減らしてバトル時間を短縮するような方向ではなく、軍勢シミュレーションらしく敵の数は多いがサクサク倒せる操作感ならば、体感上はバトルが短く感じます。

たとえば、オートモードについては、完全オート、敵軍だけオートと複数種類準備しています。これにより、実際に操作しなくても「見て楽しめる」時間が生まれ、映像を見ている感覚でゲームを楽しむことができます。もちろん、じっくり思考しながら手動でプレイもできるので、「メリハリがある面白さ」が感じられるバトル体験を追求しました。

──コントローラーでの操作ではなく、タップ操作になるのもコンシューマーとスマホの違いですよね。

武藤氏:
これまでの作品はコントローラー操作に適切なUXでしたが、それをスマホで遊ぶ際にいかに手軽に遊べるかについては調整しながら開発を進めてきました。ちなみにバトルUIは6回変わっています

──6回もですか!?

武藤氏:
はい。複雑に見えず、遊びやすいバトルUIになるまで何度も作り直しました。

大きな転換タイミングで言うと「ver4」です、CBT付近(ver2,ver3)では情報が多く、複雑に見えていた盤面から、思い切って色々な情報を削ぎ落としました。

初めて遊ぶ方でも、ユニットを移動させて右下のボタンを押すだけで基本的にはバトルが進行するようになっていることを担保しつつ、必要なときは確認したい情報がしっかり見られるようにしています。

最終的には、チームで、何度も何度もレビューを繰り返した結果、流石にこの情報がないと厳しいよね。といった要素を入れながら微調整を加え、今の形になっています。

──こだわって作ったポイントなどはありますか?

武藤氏:
細かいところで言うと、一撃で撃破してチャンスステップを発生させられるかどうか、がまず大事なゲーム性のため、一撃撃破のときはHPゲージの白部分の点滅速度を早くするなど、遊んでいて無意識に気づきやすいような工夫を入れています。

また、盤面のユニットをタップしなくても対象切り替えが出来るボタンを入れたり、ユニットをタップだけではなくスワイプで移動させることが出来る仕様も実は入っています。

スマートフォンに慣れている方もそうでない方も遊びやすくなるような工夫も入れておりますので、ぜひ自分なりのプレイスタイルで楽しんでいただけると嬉しいです。

──シリーズとして長く続いている『ジージェネ』ですが、過去作で培ったノウハウやユーザーさんからの反応は、『ジージェネ エターナル』にどのように活かされているのでしょうか。

花田氏:
「戦闘映像の作り方のルールを変えないでほしい」ということは、まず最初にお願いさせていただきました。

コンシューマー最新作の『クロスレイズ』同等かそれ以上のボリューム、クオリティを目指すときに、かつての機体たちを作り直さないといけないとなると、コストがものすごく膨れ上がってしまうので。

小島氏:
やはり参戦作品数の多さはしっかり担保したいところでした。コンシューマーだと容量の問題もあったと思いますが、今作はスマートフォンアプリなので、そこはある種の強みでもありました。

『ジージェネ』を長年愛してくださった皆さんのためにも、機体数はリリース後も含めてしっかり確保していくことは重要指針としています。

──スマートフォン向けの『ジージェネ』は、『RE』(2017〜2018年)以来となりますよね。

小島氏:
はい。ただ、そもそものお話をさせていただくと、『RE』という作品が、『ジージェネ』という名前ではあるものの、従来とはシステムが違うものでした。『ジージェネ エターナル』では「スマートフォンで『ジージェネ』を遊べるようにしよう」というコンセプトを掲げています。

ですので、どういったエッセンスが『ジージェネ』らしさであり、『ジージェネ』の魅力なのかは、トムクリエイトさんご協力のもと可能な限り練ってきたつもりです。

──その『ジージェネ』らしさとは具体的にどのような要素であると?

小島氏:
大前提としてシミュレーションゲームであること。そして、参戦機体数はしっかりと担保しつつ、コアなファンの皆さまに支えられてきたようなマニアックな作品、アニメ化されてない機体も実装する。そのうえで、スマホゲームとして適切な形に落とし込もうという考えでした。

展開ギミックから指先まで。SDだからこそのケレン味あふれる映像表現

──『ジージェネ エターナル』の戦闘アニメーションはアップ構図が非常に多いと感じましたが、スマホに最適化した結果でしょうか? 

花田氏:
そうですね。あまり知られていなかったり、そもそも戦闘アニメ化が初のユニットもいるので、「この武器ってここから出るんだ」とか「ここがこう動くんだ」みたいなのをお見せしたかったのがあります。

あとは武装そのものはあっても、原作本編だとその武器を1回も使ったことがないとか。これまでの開発経験やノウハウを活かして、どのユニットでも愛してもらえるよう全力で作らせていただいてます。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_014
フェニックスガンダムのフェザーファンネル。バインダーに仕込まれていることはイメージ通りだったものの、「そうやって分離するんだ」と目から鱗。
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「R・ジャジャがビームサーベルを抜く時の悠然とした騎士らしい所作、ものすごくかっこいい。「戦闘中にそんな余裕ないでしょ」というくらいにはゆったりな動き。だがそれがいい。

上瀧氏:
ギミックや演出もふくめて、モビルスーツをキャラクターと捉えています

デフォルメされた表現だからこそ、あえてケレン味のある演出を加え、SDならではの魅力を引き出せるようにと。モデリングの細かさも含め、ぜひ注目していただきたいです。

──細かいところですが、ウイングゼロがバインダーを広げたところもかっこいいですよね。点火時にブースターが本当に少しだけせり出して。

花田氏:
トムクリエイトの戦闘アニメスタッフ達がこだわって一個一個手作業で動きを付けてます。弊社のエースはそういうのが好きで、細々したギミックを仕込んで、気持ちのいいアニメーションを作るのがうまいんです。

『クロスレイズ』でも取り組んできたことですが、今回も気合を入れて作らせていただいています。ウイングゼロのマニピュレーターのパーツも、設定準拠のものなんですよ。戦闘アニメがカッコよく出来るように3Dモデルスタッフも頑張ってくれています。私もすべてのユニットを一個一個見て調整をお願いしています。

──汎用パーツではないんですね、労力がすごい……。ぜひじっくり見てみたいです。

花田氏:
ありがとうございます。とくに今作『ジージェネ』初参戦となるガンダム・エアリアルの指先を見ていただきたいですね。ちょっと尖ったディティールの専用マニピュレーターになっています。

上瀧氏:
マニピュレーターまで細かいところは、SDならではかもしれないですね。

花田氏:
SDだと手が大きく見えるんですよ。ポーズを決めるにあたって手や顔が目立つので、設定画があるものは可能な限りこだわって作りこんでいます。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_016

上瀧氏:
プラモデルでもSDの方が体に対して頭がでかいですね。画面に対して、頭が大きく見せられるのがSDの魅力だと思いますので。ロボットではありますが表情へのこだわりもあります。

花田氏:
そうですね、ちょっとしたキャラ性みたいなものです。たとえば『SEED』の機体はちょっと頭のひさしに角度をつけて目付きが「らしく」なるようにしてたり。

3Dモデルを作る時はどの角度のアニメーションでもかっこよく、ものによっては可愛くなるようにデフォルメ感を意識して作っています。

全部のモデルを見ているのですがスタッフごとでデフォルメ感の捉え方が違う上に最近のMSは形状が様々なので全体のバランスがバラつかないように「最新ジージェネデフォルメ」としてひとつひとつ細かく調整しています。

上瀧氏:
歌舞伎で言うところの「見得を切る」ですが、決め角度や表情で魅せるという技は、SDならではと思います。

シャッフル・ハートが復活!ル・シーニュやレッド・ゼータら初参戦機体にも注目

──開発は『ジージェネ』の醍醐味ですよね。『ジージェネ エターナル』の開発はシリーズ固定となっていますが、この形式を採用した理由を教えてください。

小島氏:
「メインステージ」というシナリオを楽しめるモードがあるのですが、リリース時点で10作品が実装され、サービス中もどんどん増えていきます。

そうなったとき、先々までをまとめてしてしまうと、ユーザー体験やバランス感の面から楽しみにくくなってしまうということで、シリーズ毎に区切らせていただきました。

──従来の『ジージェネ』ですと、宇宙世紀0079だったら同じ時間軸にある、『機動戦士ガンダム MS IGLOO』や『ギレンの野望』などの機体も、開発先になっていることもありました。そちらも完全に作品別でしょうか?

小島氏:
一部違うケースがあります。たとえば、初代『機動戦士ガンダム』の開発経路図に、G3ガンダム【※】が入っているケースもあり、区切りは多少混じっています。

※G3ガンダム……初登場作品は小説版『機動戦士ガンダム』。アニメ本編には登場しておらず、後にMSV(モビルスーツバリエーション)で設定が固まった。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_017

上瀧氏:
MSV系は、本流となる作品に含まれている状況が多いですね。

武藤氏:
あと、開発経路図を100%にすると意外な機体が出てきたりもするので楽しみにしていただきたいです。

上瀧氏:
個人的には『ジージェネ』は「探す遊び」だとも思っているんです。

自分もけっこうやるんですが、経路図を見て「この形……あのユニットか?」と予想する。もちろん、開発資料を見ればわかるんですが、プレイしつつ予想するのが楽しいんですよね。本作のキービジュアルにも小さくですが、色々なモビルスーツを入れてありますので、探して見てほしいです。

──おお、サプライズ要素としていいですね。

小島氏:
コンシューマーゲームでできた『ジージェネ』での体験を大切に思ってくれているユーザーさんも少なくないと思います。

その気持ちは痛いほどわかります。ただ、今回のスマホゲームとしては向かないシステムだったという判断です。一方で、家庭版とは違った楽しみがある「開発」になっているとプレイして感じていますので、そこは安心していただきたいですね。

──その中で、SDとして動くのは『ジージェネ エターナル』が初という機体はありますか?

花田氏:
ル・シーニュ、Zガンダム3号機P2型、通称レッド・ゼータが初になりますね。

小島氏:
ル・シーニュはパイロットのアスナ・エルマリートも実装しています。初のCVも付いていますので、ぜひご期待ください。

──『ジージェネ』への参戦が久々という機体もあると思います。PVにチラっと映った開発経路図のシャッフル・ハート【※】で「おっ!」となりました。

※シャッフル・ハート……属する作品は『機動武闘伝Gガンダム』。マスター・アジア(主人公ドモン・カッシュの師匠)の機体とされているモビルファイター。アニメ本編には登場していない。

花田氏:
登場は『ジージェネF』ぶりですね。シャッフル・ハートの演出もこだわって作っていますよ。

『ジージェネ エターナル』開発陣インタビュー:目指したのは『ジージェネF』のような”ガンダム大図鑑”だった_018

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編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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