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血を求める神の名を冠した圧倒的暴力を描くクライムノベル『テスカトリポカ』Kindle版が50%ポイント還元セール中。冷たく凄みに満ちた文章で、メキシコ麻薬カルテルの生き残りが日本で暗躍する様を描く直木賞受賞作

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佐藤究による小説『テスカトリポカ』Kindle版が、現在50%のポイント還元セールを実施している。購入金額1164円のうち、580円分がポイントとして還元される。

本作は第165回直木賞の受賞作品。メキシコの麻薬カルテルの生き残りが、海を越えて日本で「心臓密売」の闇ビジネスを立ち上げるさまを描いたクライムノベルだ。このように書くと非常にそっけないが、本書はこれを非常に血なまぐさい、圧倒的で凄惨な暴力とともに描いており、内容はかなり濃密だ。

登場人物は程度の差こそあれほとんどが「悪人」と呼べそうな人物ばかりで、流血はもちろん人間の想像力に挑んでくるような肉体破壊の描写も少なくない。物語は終始、感情を抑えた冷たく硬質な文体で綴られていくのだが、読み進めれば熱のこもったような凄みに終始圧倒されることになるだろう。

一方で、文章全体にそうした暴力的な描写とは似て非なる、呪術的な装いがあることも特徴だ。本書の題名にもなっている《テスカトリポカ》は、ナワトル語で「煙を吐く鏡」を意味するというアステカ神話の神の名だ。

「夜と風」《ヨワリ・エエカトル》、「われらは彼の奴隷」《ティトラカワン》という名前でも呼ばれ、祭祀では生贄として少年の心臓が奉げられていたという。こうした言葉は日本語の文章の中に異質な響きを持って立ち上り、どこか暗いファンタジーのようでもある。単に描写がエグいだけというわけでは決してない、本作の面白さが表れている部分だ。

ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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