『勝利の女神:NIKKE』と『Stellar Blade』──韓国のゲーム開発会社であるSHIFT UPが手がけた人気タイトル同士のコラボが、2025年6月12日より開催される。
今回のコラボは、『NIKKE』側には『Stellar Blade』のキャラクターが、『Stellar Blade』側には『NIKKE』のキャラクターが、それぞれ登場する双方向のものとなっている。
そして、どうやらこのコラボが実現に至った要因のひとつに両作品における「キャラクターの表現技法(スタイル)」が似ていることがあったというのだ。
明かされたのは、本コラボを記念して6月10日に配信された特別番組。この番組は、SHIFT UPの代表であり『Stellar Blade』のプロデューサーを務めるキム・ヒョンテ氏、『NIKKE』ディレクターのユ・ヒョンソク氏が登場し、今回のコラボ実施における制作秘話を語る、といった内容だ。
また、スペシャルゲストとして、本企画に深く関わり、元ソニー・インタラクティブエンタテインメント-インディーズ イニシアチブの吉田修平氏、両作品とコラボを実施している『ニーア』シリーズのプロデューサーを務める齊藤陽介氏、ディレクターを務めるヨコオタロウ氏も出演。
番組内では、「ポストアポカリプス(終末的な世界)」を舞台とし、「魅力的なキャラクターが活躍する」作品をテーマとした対談が行われた。
そして、じつはこの特別番組の収録後に、メディアを招いての合同インタビューが実施されていた。登壇したのは、キム・ヒョンテ氏、ユ・ヒョンソク氏、吉田修平氏の3名。

合同インタビューでは、コラボの見どころやコラボの経緯。自社タイトル同士のコラボだからこそ、「自由に」「細部までこだわれた」制作エピソードが語られた。
SHIFT UPを象徴するメンバーが集い、互いの情熱と信頼、そして“ゲームへの愛”が語られた貴重な時間となった。コラボの全貌が少しずつ明かされていく中で、どのような想いがあったのか。SHIFT UPが届ける“本気の自社コラボ”の裏側に迫った。
『NIKKE』×『Stellar Blade』コラボの見どころをSHIFT UP開発陣が語る
──まず今回のコラボの見どころを、それぞれの作品ごとに教えてください。
ヒョンソク氏:
今回の『NIKKE』×『Stellar Blade』のコラボでは、たくさんの見どころを用意していますよ。
『NIKKE』側で注目してほしい要素としては、まずストーリーです。もともと想像していた以上にいいものができあがったと思っています。
『NIKKE』と『Stellar Blade』は、世界観が「ポストアポカリプス(終末的な世界)」である点が共通しているので、違和感なく自然と融合できました。ファンの方にも満足いただける内容になっていると思います。
──『NIKKE』のプレイヤーは、魅力的なキャラクターはもちろん、ストーリーを楽しみにしている方も多いですから、ストーリーに注力されているのはうれしいと思います。
ヒョンソク氏:
ふたつ目は、3Dフィールドの演出です。『Stellar Blade』ファンの方なら「おっ、あれだ!」と気づいてもらえるような、いろんな要素を散りばめています。オマージュだったり、小ネタだったり、そういった要素を探す楽しさもあると思います。
それから、『Stellar Blade』に登場する「エグゾスーツ:プロビデンス」とのバトルも、しっかり再現しています。バトルシーンにもぜひ注目してほしいですね。
──『Stellar Blade』側はいかがでしょう。今回のコラボで『NIKKE』ユーザーにとくに注目してほしい要素はありますか?
ヒョンテ氏:
まず注目していただきたいのは、『NIKKE』のキャラクター「紅蓮」が、同じ声優・同じ性格で『Stellar Blade』の世界に登場することです。
銃撃戦がメインの『NIKKE』では焦点が当たっていなかった紅蓮の剣術が、しっかりと描かれています。剣と剣がぶつかり合う真剣勝負を楽しみにしていただきたいです。
リアルな質感で描かれた紅蓮は、非常に魅力的に仕上がっており、まさに『NIKKE』らしさを象徴する存在として再現されています。また、作中には『NIKKE』の特徴のひとつである「宝もの」要素も取り入れられていますよ。
紅蓮は、同時期に追加される【※】「マン」というキャラクターとともに、『Stellar Blade』でもっとも手強い相手のひとりになると思います。
※コラボDLCとしてではなく、本編へのパッチとして実装される。
──リリース初期から登場している「紅蓮」は、性能としても優秀で、人気の高いキャラクターです。
ヒョンテ氏:
さらに、バトル面でも『NIKKE』らしさを感じていただけるような再現を行っています。
最近は『NIKKE』の戦闘スタイルにインスパイアされたコンテンツが増えてきた印象がありますが、そうした中でも「開発元スタジオとしてのこだわり」がしっかり詰まった内容になっています。
言い換えれば、「『NIKKE』のバトルをやるなら、これくらい本気でやってほしい!」と言えるような、そういう完成度を目指しました。
ヒョンソク氏:
SHIFT UPの大きな特徴として、「キャラクター表現の魅力(表現技法、スタイル)」【※】や「ポストアポカリプスという世界観に基づいたストーリーテリング」があります。
この点は『NIKKE』と『Stellar Blade』の両方に共通している部分です。ですので、『Stellar Blade』を楽しんだ方は、『NIKKE』の世界にもきっと興味を持っていただけるのではないかと思います。
今回のコラボストーリーでは、「記憶」というテーマのもと、両タイトルが自然に融合するような展開を準備しました。ぜひその物語にも注目していただければ嬉しいです。
※コラボを記念した特別対談の中でも、コラボ実現のきっかけのひとつに「キャラクターの表現技法(スタイル)が似ていた」ことがあったと明かされている。
ヒョンテ氏:
それぞれのゲームに良さがありますが、今回のコラボでは互いの作品において、それぞれのゲームの要素が取り入れられています。
「もし『Stellar Blade』開発チームが『NIKKE』を手がけたら」、逆に「『NIKKE』の開発チームが『Stellar Blade』を作ったら」という、“IF”の世界を形にしたようなコラボ内容になっていると言えます。
自社タイトル同士のコラボのため、より細部にまでこだわれる分、開発には時間がかかった
──今回のコラボが実現するまでの経緯について教えてください。
ヒョンソク氏:
自分としては、『Stellar Blade』がリリースされる前から「いつか一緒に(コラボを)したい」と思っていたんです。
なので、何度もキム(ヒョンテ氏)に声をかけていました。今思うと、ちょっとした“洗脳”みたいだったかもしれません(笑)。
ただ、お互いのプロジェクトに対するリスペクトもあり、開発チーム同士もとても良い関係を築けていたので、「コラボを実施するのが自然」という空気が徐々に生まれていきました。そして、タイミングが噛み合ったことで、今回ようやく形にできたというわけです。
ヒョンテ氏:
少しだけ裏話をすると……じつはこのコラボは実現しなかった可能性もありました。
『NIKKE』で実施されるコラボは、コンテンツとして非常に重要な位置づけを持っています。楽しみにしてくださっているユーザーの方々も多いです。そのため、コラボする作品については慎重に検討を重ねています。
──自社コラボとはいえ「ユーザーの方々が楽しめるかどうか」を第一に考え、コラボ実施に向けて判断されているということですね。
ヒョンテ氏:
「『NIKKE』とのコラボにふさわしい内容になっているか」という点では少なからずプレッシャーがありました。正直、コラボ実施を発表した今でも少し緊張しています。
それでもこうして実現できたのは、『NIKKE』チームのみなさんの理解と協力があったからです。そしてなにより『Stellar Blade』を楽しんでいただいたユーザーの方々のおかげです。本当に感謝しています。
──今回のコラボについて、初予告から実施までの期間が長かったように思います。自社タイトルによるコラボというのが影響しているのでしょうか。
ヒョンソク氏:
今回のコラボは、『NIKKE』にとって初めての“自社コラボ”という位置づけだったこともあり、「作れるもの」「やりたいこと」が本当に多くて、かなりボリュームのある企画になりました。
また、自社タイトル同士ということで、より細部にまでこだわれる分、開発に時間がかかったというのはあるかと思います。
加えて、外部タイトルとのコラボ実施の際に必要な他社さんとの調整や制約がなかったため、早いタイミングで発表できたという背景もあります。
ヒョンテ氏:
『Stellar Blade』の発売日に、うっかり言っちゃったような記憶があります(笑)。
開発チームのみんなは、少し驚いたかもしれません。私が『Stellar Blade』のリリース日にあまりにも興奮(?)してしまい、「コラボやります!」と一方的に宣言をしてしまったような形になったので……。
ヒョンソク氏:
じつは、自分がコラボ実施について初めて知ったのは、コラボについて取り上げられている記事を見たときでした(笑)。
両作品の開発チームの競争心に火がつき、刺激しあった結果が今回のコラボ内容
──今回のコラボ実施にあたって、『NIKKE』から『Stellar Blade』側に要望したことはありましたか?
ヒョンソク氏:
とくにありませんでした。お互いに「こうしたい」というアイデアを自由に出しあいながら、やりたいことを存分に盛り込めた取り組みだったと感じています。。自社コラボならではの特徴だと思っています。
ただ、当初は同じ会社のコンテンツ同士なのもあって、もっと気楽に進められると考えていたんです。それが実際に蓋を開けてみると、両チームメンバーの熱量が高くて……。より理解を深めるために議論を重ねる場面も多くありました。
ヒョンテ氏:
『Stellar Blade』チームの視点にはなってしまうのですが、今回のコラボはPC版の発売とほぼ同時、同じタイミングでのリリースとなっています。PC版とコラボDLCというふたつのプロジェクトを同時に進める形での開発になったため、スケジュールは非常にタイトでした。
そうした事情もあって、私自身はあえて「こうしてほしい」といった細かい指示は出さず、メンバーに自由に任せる方針にしました。すると、自然と競争心に火がついて、お互いに刺激し合うような形になったんです。
それがどんどん高まっていって、最終的には「そこまでやる必要ある?」と思うくらいの熱意で取り組んでくれて……。本当に感動しましたし、心から感謝しています。
ヒョンソク氏:
当初、キムさんからは「PC版の準備と並行になるから、コラボとしてはベストなものが出せないかもしれない」と聞いていたんですよ。
ところが、いざ開発中のビルドを見せてもらったら、とんでもなくクオリティの高いものができあがっていて……正直驚きました。
すぐに『NIKKE』チームに戻って、「大変だよ!あっちはすごいものを作ってる!」と伝えなきゃいけないと思ったくらいでした。当然『NIKKE』側も負けじと気合が入りましたね。お互いを高め合う、理想的なコラボ開発だったと思います。
──扱いじたいは異なりますが、両作品とも人類と、ヒューマノイドまたはアンドロイドが重要なキーワードになっていると思います。今回のコラボでも、そうしたキーワードについてより深く描かれるのでしょうか?
ヒョンテ氏:
『Stellar Blade』側のシナリオに関しては、テーマ的には本編とは別軸となっているかもしれません。今回のコラボではキャラクターの魅力を引き出すことに重点を置いた内容にしています。
一方で、『NIKKE』側では、より深い考察ができるような展開になっていると聞いていますよ。
ヒョンソク氏:
はい、そうですね。両作品には共通した世界観やテーマがあるのですが、両作品のストーリーの中で相性の良い部分を活かしたうえで、「ひとつの物語として成立させる」ことを工夫しました。
今回のコラボでは「記憶」をテーマに据えた物語を描いています。『ニーア オートマタ』とのコラボの際に扱ったテーマから、さらに一歩踏み出して、より新しい切り口で、両タイトルが交差するストーリーをお届けできるよう意識しました。
具体的な内容についてはネタバレになるので詳しくはお話しできませんが、きっと楽しんでいただけると思います。ご期待いただければ幸いです。
元SIE吉田氏が語る、SHIFT UP作品の魅力。『NIKKE』のカメラアングルを見て「このゲームは勝ったな」と感じた
──今回のコラボを記念した特別対談の司会、そしてメディアインタビューのゲストとして登壇いただいている吉田さんですが、SHIFT UPが開発した『NIKKE』と『Stellar Blade』については、どのような印象をお持ちですか?
吉田氏:
『NIKKE』について印象的だったのは、日本でリリースされるタイミングでのマーケティング展開でした。とくに新宿などで実施された大規模な広告展開は、まさに“街をジャックした”ような迫力があって、すごく目を引きました。
そしてなにより、SHIFT UPさんならではのキャラクターの見せかたです。ゲーム中にキャラクターの背中を中心に据えるカメラデザインは、非常にユニークで強く印象に残りました。その時点で「このゲームは勝ったな」と感じたのをよく覚えています。
──『Stellar Blade』についてはいかがでしょうか。
吉田氏:
『Stellar Blade』は個人的に非常に好みのタイプの作品です。
高難度のサードパーソン・アクションゲームで、プロトタイプの段階から何度もプレイさせていただきました。初期はかなり難しい内容ではあったのですが、プレイテストを重ねる中で調整が加えられていって、とくにパリィの感触などが大きく改善されていったのを感じました。
発売直前にもパッチでレスポンスを良くするなど、常にゲームをアップデートし続ける姿勢も素晴らしいと思っています。
──吉田さんは、過去にSHIFT UP社に訪問した経験もあるとのことですが、スタジオの印象はいかがでしたか?
吉田氏:
最初に訪問したのは、たしか2019年、コロナ禍の前でした。
以前から、いちプレイヤーとして『デスティニーチャイルド』を楽しんでいたんですが、それを知っていた当時のSIEの同僚から「韓国(SHIFT UP)に行く予定があるので、吉田さんもぜひ来てください」と誘われたんです。
その際、現地で紹介されたのが、『Stellar Blade』のプロトタイプだったんです。実際にプレイしてみると、すでにアクションの手応えがあり、これはすごいと感じました。
──当時はどのようなやりとりをされたのでしょうか。
吉田氏:
韓国のゲーム業界といえば、MMORPGやPCゲーム、モバイルゲームが中心です。
以前から私たちは、韓国には優秀なディベロッパーが多くいながら、コンソール向けのタイトルがなかなか出てこないことを惜しく思っていて、「いつかコンソールにも挑戦してほしい」と願っていました。
なので、キムさんから「子どものころからプレイステーションで遊んでいた」ことや「いつか(コンソール向けの)自分のゲームを出したい」ことなどをお聞きして、その言葉にとても感動したのを覚えています。
──『Stellar Blade』開発を最初期からを見守ってきたわけですね。『Stellar Blade』は大成功を収めたわけですが、その要因について吉田さんはどう分析されていますか?
吉田氏:
キャラクターの造形、技術力、グラフィックなど、さまざまな魅力がありますが、私がいちばん強く印象に残っているのはやはりバトルの手触りですね。
シビアな難易度でありながら、プレイヤーが慣れてくると確実に乗り越えられる設計になっていて、そこに熱さがあります。
パリィのようなアクションも難しいだけでなく、視覚的なフィードバックを通じて誰でも学べるように工夫されていて、遊びやすく、かつ奥深いコンバット体験が実現されていました。
──『Stellar Blade』の魅力として、なによりアクションとしての手触りがよいと。
吉田氏:
そうですね。ただ、そこに至るまでのプロセスも非常に重要だったと思います。
SHIFT UPさんが単独で開発を進めるのではなく、SIEのプロデューサーやマーケター、テスターなどが継続的に関わり、フィードバックやアイデアのやり取りを密に行っていたんです。
たとえば、マーケティング側から「こう見せたいから、こう調整してほしい」といった具体的な要望があり、それに対して開発側も真摯に応じる。そうした密な連携が、ゲーム全体のクオリティをさらに高める原動力になったのではないでしょうか。
ヒョンテ氏にとって、吉田氏は『Stellar Blade』の“母親”のような存在
──最後に、今回の対談動画収録と合同インタビューの感想をお聞かせください。
ヒョンテ氏:
まずは改めて、この場をお借りして吉田修平さんにお礼を申し上げます。番組へのご協力、そしてメディア取材へのご同席など、多大なご尽力をいただき、本当にありがとうございます。吉田さんがこの場にいらっしゃることには、とても大きな意味があると感じています。
吉田さんには『Stellar Blade』を発掘していただき、世界へ広げるきっかけをも作っていただきました。さらにはPC版の展開や『NIKKE』とのコラボといった新たな試みに対しても、変わらぬご支援をいただいています。私にとって吉田さんは、『Stellar Blade』の“母親”のような存在なんです。
そして、みなさんご存知のことと思いますが、吉田さんはプレイステーションの黎明期から関わり、PS4の時代まで数々の名作を世に送り出されました。
『アンチャーテッド』や『ゴッド・オブ・ウォー』といった作品に出会えたことは、いちゲーマーとしてかけがえのない経験です。今は開発者の立場として、ゲーム業界に大きな足跡を残してきた吉田さんに、深い敬意と感謝の気持ちを抱いています。
もし今後また機会があれば、吉田さんが現在力を入れていらっしゃるインディーゲームの支援や、これからのゲームのあり方についても、もう少し踏み込んだお話ができればいいですね。
吉田氏:
私は『デスティニーチャイルド』の頃からSHIFT UPさんのファンだったので、今回お声がけいただいたときも「ぜひやらせてください」と、即答させていただきました。
ただ後になって、Level Infiniteから当日のスケジュール(丸1日かけて行う)を見せていただいた際に、その気合の入りかたに正直ちょっと焦りはしました(笑)。それでも「やります!」と改めてお返事をして、実際に参加してみて、本当に楽しかったです。
いろんな話を聞けましたし、(特別動画のニーアパートの)ヨコオさんや齊藤さんがいつも通りユーモアを交えつつ、真剣で深い話もされていて、とても充実した時間になりました。
ヒョンテ氏:
そう言っていただけて、光栄です。
SHIFT UPの手がける2つの作品が交差した今回のコラボレーション。そこには、単なる施策を超えた、開発者同士のリスペクトや信頼、そして“面白いものを届けたい”という真っ直ぐな想いが込められていた。
ジャンルじたいまったく異なる『NIKKE』と『Stellar Blade』が、どのような形で互いの世界を広げていくのか。
『勝利の女神:NIKKE』の『Stellar Blade』コラボイベント及び、『Stellar Blade』向け『勝利の女神:NIKKE』コラボDLCは6月12日より展開予定となっている。
両作品のファンの方々はもちろん、どちらか一方しか知らなかった方も、この機会にもう一方の世界へ足を踏み入れてみてはいかがだろうか。