「ゲームばかりしないで勉強しなさい」──そんな言葉は、もう過去のものになりつつあるのかもしれない。
ベネッセの調査では、94.4%の保護者が「学習にゲーム要素を取り入れること」を肯定的に捉えているという。
そのベネッセが運営する「進研ゼミ 小学講座」とセガが手を組み、コラボレーションコンテンツ『タッチでぷよぷよ』を、7月25日よりチャレンジタッチ内で提供開始する。掲げるのは、「ゲームか、勉強か」という二項対立ではなく、ゲームを入り口に子どもたちが自然と学びに向かう体験を届けることだ。
提供開始に先駆けて、7月21日には東京・大手町にて、メディア向けの親子体験会が開催された。会場では小学生の親子が『タッチでぷよぷよ』を実際にプレイし、ゲームを通じた新たな学習体験を楽しんだ。
イベントには、ベネッセ小学生事業本部 本部長の水上宙士氏、『ぷよぷよ』シリーズ総合プロデューサーの細山田水紀氏、小学校教諭で東京大学客員研究員の正頭英和氏の3名が登壇。企画の背景やゲームの学習効果、ゲーミフィケーションの可能性などについて説明を行った。本稿では、その模様をレポートする。
「勉強が好き」な小学生は11年で約2割減。進研ゼミがゲーミフィケーションに踏み込んだ理由
進研ゼミは、全国の小学生のうち、約90万人が利用している通信サービスだ。以前は紙の教材を提供していたが、2014年からはタブレット教材の「チャレンジタッチ」を導入。現在は8割超の会員が、こちらを使って学習している。
しかし学校外の学習時間は過去11年で、約2割減という状況だ。また、成績も上位層と下位層で二極化が進んでいる。それに合わせて、「勉強が好き」と答える小学生の割合も、11年前と比べて約2割減少した。
これは、勉強が好きではない子どもたちが以前より増えたということでもある。その一方で、当然のことながら保護者側からは勉強してほしいという思いがある。

ちなみに、昔は「ゲームじゃなくて勉強しなさい」というように、このふたつは二項対立的に捉えられることが多かった。しかし、同社が直近で行ったアンケートでは94パーセントの保護者が「学習へのゲーム要素の導入」に賛成しているという結果が出たのである。
そうしたアンケートの結果を踏まえて、同社では2026年4月に「進研ゼミ 小学講座」を12年ぶりにフルリニューアルした。ここで取り入れられたのが、ゲーミフィケーションだ。ゲームをクリアしていくような感覚で学習でき、子どもたちの学習意欲を高める内容へと進化している。
このゲーミフィケーション導入の効果は大きく、レッスンの利用率が10パーセント、赤ペン先生の添削課題提出率が13パーセント増加したという結果が出た。こうした結果を踏まえ、7月25日より提供されるのが、セガとベネッセコーポレーションによる『タッチでぷよぷよ』である。
こちらは、進研ゼミ 小学講座の「チャレンジタッチ」会員であれば、追加受講費などは不要で利用することができる。提供期間は7月25日から10月24日までだ。
認知度はセガIPで3位、女性ユーザーが過半数。『ぷよぷよ』が“学び”に向かうまで
『ぷよぷよ』が初めて登場したのは、1991年にコンパイルからMSX2とファミコンディスクシステム向けに発売されたときのことだ。遊び方としては、5色の「ぷよ」と「おじゃまぷよ」が登場し、同じ色のぷよを4つ以上つなげて消していく落ちものパズルゲームである。
近年はeスポーツの競技タイトルとしても展開されている。『ぷよぷよ』シリーズ総合プロデューサーの細山田氏によれば、現在、世界トップクラスとされるプレイヤーは小学5年生だという。

あまり知られていないものの、『ぷよぷよ』はセガのIPの中でもトップクラスの認知度を誇るという。一般のゲームユーザーを対象にセガが実施した調査では、3位にランクインした。
また、セガのゲームとしては珍しく、ユーザーの半数以上を女性が占めている点も特徴のひとつだ。
『ぷよぷよ』は家庭用ゲーム機やアーケード、スマートフォンなど、さまざまなプラットフォームで遊ばれている。今回の取り組みによって、教育分野にも活用の幅を広げた。シリーズを通して特に重視しているのが、「連鎖の爽快感」だ。『タッチでぷよぷよ』でもその楽しさを味わいながら、学びへとつなげてもらうことを目指している。
先ほどの話にもあったように、ゲームと勉強は対立するものとして捉えられがちだ。しかし近年は、ゲームが学びにつながるという理解も以前より広がってきている。たとえば『ぷよぷよ』では、一手先を読んだり、相手との駆け引きを楽しんだり、成功体験を積み重ねたりすることができる。
ゲームには、集中する力や試行錯誤する力、自ら考える力、失敗から学ぶ力などを引き出す側面もある。一方で、ゲームに限らず、何事もやり過ぎれば生活リズムを崩す原因になりかねない。そのため、ゲームを単純に良いものと悪いものに切り分けるのではなく、どのように付き合っていくかが大切だと細山田氏は語った。
ゲームが大人に与える影響について、『ぷよぷよ』を用いた実験では、プレイ中に脳活動が活性化したという結果も示されている。細山田氏は、ほかのゲームや読書でも同様の結果が得られる可能性に触れつつ、ゲームを一概に「悪」とみなすことはできないと説明した。
小学生の子どもを持つ保護者に向けて、細山田氏が大切にしてほしいと語ったのが「会話」だ。ゲーム開発者として、遊び終えたあとに誰かと感想を語り合いたくなるような作品を作りたいという思いがあるからだ。『ぷよぷよ』はひとりでも遊べる一方で、誰かと対戦したくなることや、プレイをきっかけに会話が生まれることも意識して作られているのである。
今回のコラボレーションは、進研ゼミ側からの声かけをきっかけに始まった。『ぷよぷよ』を教材として活用し、漢字を覚えたり、考える楽しさに触れたりすることで、学びのきっかけを作る内容となっている。
セガの『ぷよぷよ』チームとしても、そうした学習体験を後押ししたいという。
細山田氏は、『タッチでぷよぷよ』を通じてゲームと勉強を対立させるのではなく、どちらも楽しんでもらいたいと説明し、そこで得た成功体験が子どもたちの成長につながることへの期待を示した。
「遊びと学びを分けているのは大人だけ」。監修者・正頭英和氏が語る教育の“ガチャ”論
今回のコラボゲーム『タッチでぷよぷよ』を監修したのは、東京大学客員研究員の正頭英和氏である。
同氏は、教育におけるゲーミフィケーションの活用について紹介した。近年、よく耳にするようになったのが、「何のために学ぶのか」という問いだ。正頭氏は、こうした疑問を持つ人が昔よりも確実に増えていると指摘した。
昔は「より良い人生を送るため」や「いい大学に進学するため」など、学ぶ理由が比較的シンプルだった。その重要性は今も変わらないが、学ぶことの価値が多様化したことで、その目的を改めて問い直す機会も増えているという。
その結果、今の小学生にとっては「とりあえずやってみる」ことのハードルが高く、なかなか新しいことを始めにくくなっている。そのため、好きなものや夢中になれるものを見つける機会も減ってしまうという。

一方で、子どもたちは自由な時間をゲームや動画の視聴に使っている。そこで、子どもたちが親しんでいるゲームの要素を教育に取り入れ、「とりあえずやってみる」ためのハードルを下げることが重要だと正頭氏は語った。
正頭氏は、長年教師を務めるなかで、教育には「ガチャ」のような側面があると感じているという。ある授業では目を輝かせる子どもがいる一方で、あまり反応を示さない子どももいる。しかし、別の授業ではその反応が逆になることもあるのだ。
この「ガチャ」で当たりを引く方法は、数多く試すことだという。とりあえず挑戦してみることで、自分が好きなものや、反対に夢中になれないものがわかってくる。
『タッチでぷよぷよ』を通じて学ぶ最大のメリットは、子どもたちが「とりあえずやってみよう」と思えることにある。
また、正頭氏は「遊びと学びの違いは何ですか?」と聞かれることが多いという。しかし、それらを分けているのは大人だけだ。
子どもたちは、遊びだから、あるいは学びになるからという理由で行動するわけではなく、楽しいかどうかを優先している。遊びと学びの境界線を作っているのは、大人なのである。
正頭氏は、大人が「心を入れ替える」きっかけとして、また子どもたちの学びに寄り添うために、今回のゲームを活用してほしいと語り、講演を締めくくった。
会場を訪れた小学生の親子が『タッチでぷよぷよ』に挑戦!
3人の登壇者による取り組みの紹介が終わると、会場を訪れた小学生の親子が実際に『タッチでぷよぷよ』を体験するコーナーが設けられた。本作には「つうじょうモード」と「漢字モード」の2種類が用意されており、今回は「漢字モード」が体験できるようになっていた。
続いて好きなキャラクターと難易度を選び、「ゲームスタート」ボタンを押すと、プレイ開始だ。
操作はタブレットの画面をタップして行い、左右のボタンでぷよを移動できるほか、下方向への移動や回転にも対応している。基本的なルールは通常の『ぷよぷよ』と同様だが、『タッチでぷよぷよ』では同じ色のぷよを3つつなげることで消すことができる。
今回子どもたちが挑戦した「漢字モード」で落ちてくるぷよには、キャラクターの顔ではなく漢字が書かれている。低学年向けでは、天気や自然といったテーマごとに、関連する漢字が登場する。同じテーマの漢字をつなげて消すことで、遊びながら漢字を覚えたり、興味を持ったりするきっかけを作る仕組みだ。
一方、中高学年向けでは、同じ部首を持つ漢字が落ちてくる。部首を意識しながらプレイすることで、漢字への理解を深められるようになっている。
実際に子どもたちがプレイする様子を見ていると、難なくクリアする子もいれば、惜しくもゲームオーバーになってしまう子もいた。それでも、すぐに再挑戦する姿が多く見られ、短い時間ではあったが、子どもたちは夢中になって遊んでいたようだ。
『タッチでぷよぷよ』は、7月25日より「進研ゼミ 小学講座」のチャレンジタッチ内で提供される。提供開始後は、子どもだけでなく保護者も一緒にプレイすることで、ゲームをきっかけに会話を楽しみながら、新しいことに挑戦する体験を共有できそうだ。



















