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マンガ完結後の世界が描かれる『封神演義 逆命承天』。「藤崎竜先生の描き方」をいかに研究・分析したのか? 集英社ゲームズと開発元のラストワンダーに聞く

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集英社ゲームズから電撃発表された『封神演義 逆命承天』

『封神演義 逆命承天』開発者インタビュー:「藤崎竜先生の描き方」を分析・研究して制作_001

『封神演義』【※】の世界がローグライトで楽しめるという意欲作なのだが、驚くべきはマンガ完結後の世界が描かれるということ。

※『封神演義』……『週刊少年ジャンプ』にて、1996年から2000年まで連載されていた藤崎竜によるマンガ。中国の古典怪奇小説『封神演義』を原典としている。物語の舞台は、3000年前の古代中国。悪政を続ける妲己によって乱れた国を救うべく、仙人界崑崙山は悪の仙道を神界に封じ込める「封神計画」を太公望に命じる。太公望は持ち前の頭脳と宝貝(パオペエ)と呼ばれる仙界の道具を使い、霊獣の四不象(スープーシャン)と封神計画を進めていく。

集英社ゲームズだからこそのタイトルといえる『封神演義 逆命承天』。マンガ完結後の世界を描くにあたり、原作を務める藤崎竜先生はどのように関わっているのか? 藤崎先生の独特のデザイン、作風をどうゲームに落とし込んでいるのか?

電ファミ編集部は、本作のプロデューサーを務める集英社ゲームズの砂川和紀氏と、開発を手がけるラストワンダーの浅野祥氏へインタビューを行う機会をいただいたので、回答をご覧いただきたい。

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写真右から砂川和紀氏、浅野祥氏。

聞き手・文/豊田恵吾


原作者・藤崎竜先生が全面協力。主人公と霊獣のデザイン、キービジュアル、そしてシナリオに至るまで「先生にご助力いただいたことで、初めて実現できたゲーム」

──本日はよろしくお願いします。本作の発表でいちばん驚いたのは「マンガ完結後の物語が描かれる」ということでした。なぜこれが実現できたのかをまずはお聞かせください。

砂川氏:
『封神演義』は単行本の累計発行部数が2200万部を超えており、1999年にアニメ『仙界伝 封神演義』、2018年にはアニメ『覇穹 封神演義』が放送されている人気作品です。

版権元様とゲーム化のお話を進めていく中で、もちろん「アニメ版のゲーム化」という案も出ました。ただ、本作は企画立案時から、マンガ原作のその後のオリジナルストーリーであったり、魅力的なキャラクターをどんどん出していきたいといった構想があったんですね。

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ですので、たとえばアニメ版をベースにしてしまうと、その後の話がゲームで描けなくなってしまうわけです。

私たちが『封神演義』のゲーム化で目指していること、やりたいこととマッチする方法を考えていったときに、ちょうど原作『封神演義』30周年プロジェクトの議題があり、実現に至ったんです。

──なるほど。藤崎先生が新規にデザインしたキャラクターが主人公というのもすごいことですよね。

砂川氏:
ありがたいことに、本作では藤崎先生から多大なご協力をいただいています。主人公と霊獣のデザイン、描きおろしのキービジュアル、そしてシナリオに関してもいろいろとご相談に乗っていただいています。

藤崎先生にたいへんなご助力いただいたことで、初めて実現できたゲームとなります。『封神演義』のファンの方々にはご期待いただければと思います。

──企画の経緯についておうかがいしたいのですが、まず集英社ゲームズの中で企画が立ち上がり、そのあとに版権元へ許諾をお願いしにいった、という流れだったのでしょうか。

砂川氏:
そうですね。集英社ゲームズ社内で企画を立てるにあたり、最初期からラストワンダーさんにお声がけをさせていただき、両社で企画を詰めていった、という感じです。

──「ローグライト、ハクスラの『封神演義』」というアイデアがまずあったのでしょうか?

砂川氏:
もともと、往年の名作のリブートと言いますか、すばらしい作品をいまの時代の新しい方々にも知ってもらいたいというのが大前提としてありました。

その考え方に沿って過去の人気作品を調査していく中で、『封神演義』が候補としてあったんです。また、「ローグライトのアクションゲームとして魅力を最大限活かせるものは?」と考えたときに、『封神演義』を組み合わせたらすごくおもしろいものができるんじゃないかと感じたんですね。

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浅野氏:
『封神演義』以外にも候補はいくつかあったんですけど、我々としても本作がもっともやりたい企画だったというところもあって。そこから集英社ゲームズさんと相談を重ねていき、ラストワンダーがこれまでアクションゲームを作ってきたこともあり、ローグライトにジャンルが定まりました。

そこから集英社ゲームズさんと「現行作品ではなく、もともとすごく人気があって、近年そんなにゲーム化もされてないもの」と企画を考えていったんですね。

その中でビビッときたのが『封神演義』だったんです。世界観的にもバッチリだし、なにより開発スタッフに『封神演義』ファンが多く、藤崎先生のキャラクターをしっかりと映像化してみたいという思いがありました。

藤崎先生のイラストは繊細で複雑でとても美しいものですから、そのデザインを取り入れたアクションゲームを作れたら唯一無二になるという確信もありました。

また、たとえば『封神演義』は中華圏の方も原典はご存じで、藤崎先生独自の解釈で描かれているマンガの世界観も比較的理解しやすく、グローバルな広がりが期待できる作品でもあるわけで、ローグライト、ハクスラというジャンルと『封神演義』の組み合わせはベストマッチだと考えています。

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『封神演義 逆命昇天』では原作の“その後”が描かれる。太公望は桃辰の師匠として登場し、ほかにも黄天化や哪吒など原作キャラが主人公をサポート

砂川氏:
新規の方に訴求するにあたり、「原作のその後の話にしたい」といった考えがあり、版権元様にストレートにお伝えしました。合わせて「オリジナルの主人公にしたいのですが、藤崎先生にデザインいただけないでしょうか」とご相談をさせていただいたんですね。

──イラストにはオリジナルキャラクター、主人公の桃辰(トウシン)に加えて、霊獣(朱雀童子(チュウチュエどうじ))も描かれています。この霊獣までセットでお願いされたのでしょうか?

砂川氏:
じつは最初の起案には霊獣はおらず、ラストワンダーさんとのお話の中で主人公と霊獣がバディで「霊獣に騎乗するアクション」という案が出てきたんですね。その流れで、藤崎先生に「主人公と霊獣をセットで」とお願いをさせていただきました。

──さまざまな宝貝(パオペエ)が登場し、プレイヤーが使い分けながら進めていくというゲーム性ですが、複数の宝貝を使えるということは……。

砂川氏:
あ、その話題はそこまでで(笑)。いろんな宝貝を使えるということも含めて、「ゲームだから」というものではなく、しっかりと理由と言いますか、設定がちゃんとありますので、続報を楽しみにしていてください。

──わかりました(笑)。話題をイラストに戻しますが、太公望と四不象(スープーシャン)も描かれてますが、プレイキャラとして操作できるのでしょうか?

浅野氏:
操作できるのは主人公であるオリジナルキャラクターのみとなります。太公望に関しては主人公の師匠という立ち位置ですね。太公望を含め、原作に登場したキャラクター、たとえば黄天化や哪吒なども登場し、主人公のサポートだったり、修行をつけてくれます。

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──キャラクターのボイスも気になります。

砂川氏:
トレーラーを見ていただいてわかるとおり、各キャラにボイスがあります。年内には詳細を発表する予定ですので、楽しみにしていてください。

──原作のキャラクターはどれくらい登場するのでしょうか?

浅野氏:
20人以上が登場します。原作キャラクターはもちろん、主人公と霊獣以外にもオリジナルキャラクターが登場しますので、ご期待ください。

──ゲームの舞台は仙人界なのですか?

浅野氏:
人間界になります。序盤は浮島のようなステージとなっており、進めていくと地下の世界や海の中など、バラエティーに富んだ世界を駆け巡るものになります。

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キャラクター、アウトライン、背景からエフェクトまで……マンガのタッチ“すべて”を再現するため、原作の筆さばきや色彩・陰影をとにかく研究&分析

──藤崎先生の個性的なデザインやタッチをどのようにゲームに落とし込んでいるのでしょうか?

砂川氏:
集英社ゲームズからラストワンダーさんにお願いしていた部分になるんですけど、まずはマンガのタッチを再現するということでした。再現というのは、キャラクターだけではありません。アウトラインや背景、エフェクトなども含めて、すべてをゲームで再現するということをお願いしました。

藤崎先生の線のタッチだったり、色彩だったり、マンガの世界が感じられるように、こだわって制作しています。

浅野氏:
さきほどお話したように、制作スタッフのほとんどが『封神演義』が好きで、参加しているイラストレーターやアーティストは藤崎先生の影響を大きく受けた世代が多いです。

ゲーム制作にあたり、藤崎先生の淡く、柔らかい筆のタッチですとか、色彩の入れ方ですとか、陰影の付け方などはかなり研究、分析しました。

たとえば、ゲーム中の主人公のサイズはそれほど大きいものではありませんが、モデルのアウトラインに強弱をつけていたり、服の影を斜線で描いています。藤崎先生のイラストは、線の強弱が特徴としてありますし、影もベタではなく、斜線で描かれていることが多いんですね。

草や地面の表現に関しても、陰影を線画で入れてから着彩するという、独特のアプローチを行っています。また、ゲーム中は見下ろし視点になりますので、角度がある状態で見たときにも、各キャラクターの髪型や服装といったボリューム感が残るようにモデリングしています。

いちばん難しかったのは手足のバランスでした。独特のデフォルメをキャラクターモデルに反映するまでには、結構な時間がかかりましたね。大きいモデルで作るのであれば割とやりやすいのですが、本作のサイズでそれを感じさせるバランスを維持するのはとても難しくて……。

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──藤崎先生の描き方を研究されたということですが、もう少しそのお話を聞かせてください。

浅野氏:
あくまでも我々の分析としてお聞きください。たとえば、藤崎先生のディティールの入れ方は独特で、パッとみたときにシンプルな見え方であっても、ちゃんと質感が入っているんですよね。

ほかにも、服のシワの付け方にも特徴があって、あえてムラのような表現をされているんです。本作でも再現しているのですが、シェーディングではうまくいかなかったので、ライティングをいろいろと調整しつつ、直接描く形で表現しています。

あとは描画の線の太さ。太さの強弱はもちろん、「え? ここに線が?」と密度が高い箇所があったりするんです。

──なるほど。マンガは単行本の表紙などを除いてカラーで見る機会が少ないですから、色については苦労が多かったのではないですか?

砂川氏:
完全版の表紙が藤崎先生が描かれた『封神演義』の最新のカラーになりますから、そちらを参考にしています。

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浅野氏:
マンガ原稿とカラー原稿の特性の違いにも気づかされました。ゲーム内で絵柄を完全再現しても、3Dモデルにしたときに藤崎先生の絵にはならないんですよね。そういったバランスについても、ひとつずつアーティストが考えて調整を行っています。

ほかにも、キャラ線のほうに感情が入っているため、背景はほぼ線が入っていないシーンもあったりして。抑揚をなくしたバージョンと、すごく抑揚をきかせたバージョンを作成し、先生の絵に見えるのはどちらなのかを比較したり……。

光源についても、先生は厳密ではなく、絵として映える光源を置いてらっしゃるんです。たとえば、崖の上部分に当たっているライトと、下部分のライトの向きを変えているんですね。

マンガではなかなかない表現だと思うのですが、塗りのある部分、たとえば黒でもグラデーションが入っているので、そういった部分もゲームに取り入れています。

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──いや、すごいですね。このお話、ずっと聞いていたいです(笑)。

浅野氏:
藤崎先生特有ということでいえば、アーティストチームが先生の絵らしさを研究している中で、陰影とも輪郭とも色の代用ともハッキリとは分類できない使い方で「独特の線」が入っていることに気付きがありました。たとえば山の側面に、シャッと線が入っていたり。

それと同じ表現の線がキャラクターにも入っていますし、背景にも入っているんですけど、藤崎先生の独特のものだと思います。陰影や質感表現、湾曲。そういったものがいろいろなところに入っているわけです。そういった、いわば先生のセンスというべきところも、分析を重ねながら丁寧にゲームで再現しています。

砂川氏:
遠景のほうがむしろ書き込まれていたりとか、いろいろなシーンで独特のバランスがあるんですよね。

浅野氏:
先生はおそらく「霧がかった風景は白で抜く」という表現をされているのですが、そういった表現をゲーム背景としてどう見せるか? などはアーティストチームが表現をいろいろと模索している部分です。

──原作ファンが安心するこだわりの話で、とても興味深いです。

砂川氏:
繰り返しになりますが、あくまでも我々の分析ですので、これが答えというわけではありません。「先生のテイストをゲーム内で再現することに全力で取り組んでいます」ということをお伝えさせていただいたというか。

浅野氏:
制作していく中で、「やるならとことんやらないとダメ」となったんですよね(笑)。アクションシーンの表現も、マンガのトーン、センスが感じられるものにしています。衝撃エフェクトも独特なんですよね。集中線に加えてエフェクトが使われてるケースがあったりとか。

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──藤崎先生も監修のときに出来栄えに驚かれたのではないですか?

浅野氏:
モック状態のものを先生にお見せしたことがあったのですが、絵のバランスをすごく気に入ってくださったんです。背景、キャラクターともに気に入っていただいて。

ただ、そのときにお見せしたキャラクターのモデルは、通常と比べて4倍くらいの労力をかけて作ったものだったので、そのクオリティで突き進むしかなくなったといいますか(笑)。

──(笑)。シナリオは集英社ゲームズで作成し、版権元および藤崎先生が監修されているのですか?

砂川氏:
そうですね。設定や世界観に関わる部分は先生にもご確認いただいています。

──宝貝のオリジナルも登場するのでしょうか?

砂川氏:
はい。開発初期に版権元様に「オリジナルの宝貝を作って大丈夫ですか?」とご確認させていただき、許可をいただいています。

原作で描かれた宝貝も30種以上が登場しますので、大半の宝貝を扱っています。

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──『封神演義』といえば、キャラクターの個性や話し方、コミカルなやり取り、コミュニケーションも特徴のひとつですが、そういったエッセンスも入れ込まれているのでしょうか。

砂川氏:
できる限り入れ込んでいます。そこを切り離してしまうと『封神演義』の魅力が損なわれてしまうというか。拠点で原作キャラクターとの会話シーンがありますので、そういったところで表現しています。

──ちなみに、サブタイトルの「逆命承天(ぎゃくめいしょうてん)」はどういう意味があるのですか?

砂川氏:
相反する言葉の組み合わせなのですが、「運命に逆らう」という意味と、「天命を授かり従う」という意味があります。中国語でもちゃんと理に適った言葉になります。

まだストーリーの詳細はお伝えできないのですが、物語の全容がわかると、このサブタイトルが際立つものになっています。

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──さきほど遊ばせていただいて、宝貝の使い分けだったり、霊獣に騎乗してのアクションの爽快感など、ほかのローグライトとの差別化もあり、スピード感やレスポンスといった手触りもすばらしいと感じました。

砂川氏:
アクション周りに関しては、ラストワンダーさんがアクションが得意ということもあり、とてもいい仕上がりになりつつあります。ローグライトは優れたタイトルも多く、どうしても比べられますからね。

浅野氏:
手触りが良くて気持ちよくて駆け引きがちゃんとある、というところはコンセプトの柱だと思っています。あとは原作の宝貝の楽しさをどう再現するか。いろいろな能力がありますので、調整を続けていきます。

──原作ファンとしてのお願いは、「申公豹はめちゃくちゃ強くしてほしい」です(笑)。

砂川氏:
そうですよね(笑)。期待に応えられるよう、がんばります。

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──では最後に、発売を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。

浅野氏:
原作ファンの方に必ず楽しんでいただけるものを用意いたしますので、ぜひ発売をお待ちください。

砂川氏:
マンガの世界観のその後を作らせていただき、藤崎先生にキャラクターデザインや、シナリオのご相談に乗っていただいているのが本作となります。

私自身、ファンのひとりとして、とても楽しみな作品になっております。この気持ちをそのままファンの方々にも体験していただきたいという思いで制作していますので、発売まで楽しみにお待ちいただければと思います。(了)

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

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