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ヒットの規模は大きくなったのに、「みんなが知っている話題作」は少なくなった?──この20年で変化したインターネットの「バズりの構造」について、ゲーム宣伝のプロに聞いてみた

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どうも最近、ゲームの「バズりかた」が変わってきている気がする──。

記憶に新しいのは、2026年に発売された『めっちゃカメレオン』の大ヒットだ。同作は小規模開発のインディータイトルでありながら、執筆時点で2000万本以上を売り上げるという、歴史的なヒットを記録している。

もちろんこうしたタイトルの躍進は、いちゲームファンとして素直に喜ばしい。ただ同時に、そうしたヒットの背景、つまり「バズり方」は、明らかに昔とは異なっている感覚があるのだ。

ゲームの話題を取り巻く環境、たとえばSNSの空気感などが様変わりしているのは間違いない。しかし「なにが変わったのか?」と考えたとき、その実態はどうにもイメージがしづらい。

そこで今回疑問をぶつけたのは、ゲームを専門とするプロモーション会社・株式会社リュウズオフィス代表取締役の小沼竜太氏。

小沼氏はこれまで、『ペルソナ』シリーズや『Fate/Grand Order』(以下、FGO) のプロモーションを手掛け、近年では『原神』『崩壊:スターレイル』などの日本国内施策にも携わっている。

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(画像はP3 – ペルソナ3 – 公式サイトより)
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(画像はFate/Grand Orderの世界 | Fate/Grand Order 公式サイトより)

『マンガで分かる!Fate/Grand Order』や、『FGO』の公式生放送「カルデア放送局」の仕掛け人と言えば、ファンの方にはイメージがつきやすいかもしれない。20年以上、内外からコンテンツを盛り上げてきた、ゲーム宣伝のプロである。

同氏の経験や分析をもとに、ゲームの売れ方やバズり方がどう変化してきたかに迫ろうというのが、今回の趣旨だ。

「ゲームがヒットしたときの『桁』は大きくなっているのに、一方で『みんなが知っている話題作』という概念が消えてしまった」と小沼氏は語る。

SNSの仕様やアルゴリズムの移り変わりによって「話題の広まり方」も別物となり、結果としてゲームの宣伝における最適解も、それに合わせて激変しているというのだ。

では実際に、ゲームの宣伝はどう変わったのか?

そして訪れつつあるAIの時代、「人の心に残る」ことを目指す宣伝の仕事において、それでも「変わらないもの」はなんなのか?

今回は、プロモーションという視点から見た「バズりの構造」を紐解きつつ、ゲームの宣伝の本質的な面白さや魅力についてもお聞きすることができた。

聞き手/TAITAI
編集/なからい実存

※この記事はリュウズオフィスさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


この20年で変化したインターネットの「バズりの構造」について、ゲーム宣伝のプロに聞いてみた_003
株式会社リュウズオフィス代表取締役・小沼竜太氏

「みんなで同じものを見る」時代の終わり──コロナ禍以降、SNSは「レコメンドされたものを見る時代」に変わった

──今日は小沼さんに、ここ10年~20年におけるゲームのプロモーションの流れや潮流の変化についてお聞きしたいと思っています。

ゲームの宣伝は、2000年代以降、ウェブマーケティングの時代から、動画や生放送の時代、XなどのSNSプラットフォームの時代と、大きな変化が続いてきました。

それをふまえつつ、まずは「いま現在、何が最先端で、それがどうなっているのか」ということをお聞かせいただければと思います。

小沼氏:
それではまず、2010年代ごろからのSNSの潮流を振り返ってみましょう。

2010年代中盤から後半は、ひとことで言うと「みんなで同じものを見る」という時代でした。当時の日本では、ニコニコ動画やTwitterのようなサービスが全盛を迎えていましたよね。

とくにその後のコロナ禍は、みなさん時間を持て余していたので「みんなで同じものを見る」長時間の生放送や、同じタイムラインを共有するTwitterの仕組みに熱中していた時期だったんです。

一方で2020年代以降、コロナ禍が終了したころに起きたのが、各種プラットフォームでの仕様変更です。

これによって「みんなで同じものを見る」というよりは、それぞれが「レコメンドされたものを見る」という時代に急速に変化していきました。

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──具体的にはどういったことが起きたのでしょうか。

小沼氏:
たとえばYouTubeでは、その頃からショート動画などに比重が移っていきました。ほかにも大きなもので言うと、Twitter(現・X)で起きた変化があげられます。

仕様変更により、フォローしているアカウントのタイムラインではなく、アルゴリズムによってレコメンドされた「おすすめ欄」に表示される内容が拡散されるようになっていったんです。

Xに関しては、先日こうしたアルゴリズムのソースコードが公開されて、弊社でも分析や解析を進めているところです。

──「おすすめ欄」の登場によって、マーケティング目線ではどういった変化があったのでしょうか?

小沼氏:
極論を言うと、「みんなが知っている話題作」という概念がなくなってしまった、ということが大きいです。

2010年代ごろは、話題をつくることによって、日本中のみんなが同じものを見ていた。あるいは「見ている」という幻想を追いかけていました。
たとえば、『FGO』のようにヒットしたタイトルがあったとしたら、拡散された情報がタイムライン上でみんなに届くので、みんながその動向を把握できていたんですよ。

しかし、現状は「おすすめ欄」の仕組みによって分断が発生しています。人によって、目に映るものが違ってきているんです。

昔だったら、大きなヒットであればみんなが知っているし、なんとなくでも「情報を追いかけている気持ち」になれていたと思います。
ただ、いまは人によって見るものがバラバラなので、「みんなで共有するヒット作」や「みんなで共有するブーム」といったものが実感しづらくなっているんです。

──「たくさん売れたヒット作=みんなが知っている話題作」の図式が成立しなくなってきたと。

小沼氏:
実は、ヒットしたゲームの「桁」というのは、2010年代よりいまの方が大きくなっているんです。ダウンロード市場の拡大によってグローバルでの販路が充実し、飛躍的に大きなヒットを飛ばしやすくなっている。

少し皮肉なのは、それにもかかわらず、こうした分断のような現象が起きていることです。

10年以上前だったら、数十万本売れたゲームであれば、界隈には「ヒット作」と認知されていました。
『めっちゃカメレオン』ほどのヒットであれば、さすがにゲーム業界にいれば名前は聞いたことがあるかもしれませんが……。最近はそういった形で認知されることが起きづらくなっているんですよ。

これが、ゲームのプロモーションをめぐる大きな変化だと思います。

──2010年代であれば、フォローしているアカウントのあらゆる話題がタイムライン上に流れてきていたから、そのなかでバズったものが結果として「みんなが知っているもの」になっていた。

一方いまは、おすすめ欄のアルゴリズムによって、そもそも見ている話題が人によって違います。なので、ある人のおすすめ欄でバズっているものが、他の人のおすすめ欄にはまったく表示されないようなこともあるわけですね。

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小沼氏:
そうですね。いまのXでは投稿がおすすめ欄に載らなければ、基本的には拡散されません。そして、そのおすすめ欄は人によって違う。

なので、古くはみんなで同じテレビ番組を見ていた時代、そしてコロナ禍においてみんなで生放送の番組を見て、同じ時間を共有していた時代が終わりつつあるんです。

そしていまはかなり細かく分散された趣味嗜好のクラスターごとに、完全に見ているものが違う。さらに言うと、その人によっても違いますから、「みんなで共有できる物語」が消えつつある。あるいは、消えてきたんじゃないか、と思っています。

2010年代のバズりは「人間の肉体」に依存していた

──マスメディア全盛の時代にさかのぼると、テレビであれば、限られたチャンネル数や放送の「枠」があり、雑誌なども、毎週600万部発行される『週刊少年ジャンプ』をみんなが追っているといった構造があった。それによって、物理的にも「みんなが知っているもの」が作りやすかったと思います。

その後インターネットが登場し、パソコン通信やネット掲示板、ブログの全盛期には、「各々がそれぞれ好きなものを追う時代になった」と言われていました。

一方、その後の2010年代にはTwitterのようなSNSの出現があり、また「みんなで見る」空気に戻ったような感覚がありますよね。

小沼氏:
おっしゃる通りだと思います。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌のようなマスメディアの時代は、限られた枠があったからこそ、みんなが共通のものを知っていた。制限があったからこそ、共通の場という役割がありました。

それがインターネットの登場により、ある種のクラスターやトライブのようなものに分散しました。

その後は旧Twitterの誕生と隆盛、あるいはニコニコ動画のようなメディアの成長によって、趣味嗜好が似通った人たち、雑に言うと「オタクのような人たち」にとって、ふたたび共通の話題が生じやすい時代になりました。それが2010年代だったと思います。

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──2010年代は、Twitterのタイムラインやニコニコ動画のランキングがある種「口コミの震源地」になっていた時代だと思います。
みんなが同じものを見ていたからこそ、特定の界隈で仕掛けられた話題や、発生した口コミが拡散されて、結果として大きな流れになっていた。

小沼氏:
すこし言い換えると、当時の拡散は、アルゴリズムではなく「人間の認知能力」に依存している拡散だったのだと思います。

当時のTwitterでは、たとえば新作タイトルの発表があったら一斉にみんなが飛びついて、リツイートやコメントを行っていた。それによって、一挙に話題の流れができていたじゃないですか。

そうした新情報の発表は一気にコアなユーザーの中で広まって、彼らの口コミによって拡散される。それが結果として、その周辺にいる人たちに少し遅れて認知されていく形でした。

つまりそれは、人間の認知や行動、「人間の肉体」に依存した拡散だったわけです。

──2010年代の拡散は、いまよりも「フィジカル的であった」と言えるでしょうか。それが2020年代、アルゴリズムの登場によって、フィジカル的ではなくなった。

小沼氏:
まさにそうですね。

2010年代はフィジカル、つまり人間の認知能力に基づいた拡散が行われていました。だからこそ「みんなが知っている話題作」「みんなのヒット作」のような感覚があった。でも、いまは完全に違います。

日本国内でゲームの宣伝における主要なプラットフォームはやはりYouTubeとXになりますが、特にそのふたつではアルゴリズムによって、プラットフォーム側が拡散するものを決め、拡散するタイミングを決めるようになりました。

いまは人間の認知や知覚能力よりも手前に「アルゴリズムによるフィルター」がかかっている状態なんですよ。

──もちろんいまでも、人間が発生させた口コミがアルゴリズムに乗って拡散するということもあるとは思います。

ただ昔はそれが要因の大きな割合を占めていたものが、いまはアルゴリズムによって参照される起点にすぎない、という構造になっていますよね。口コミがアルゴリズムに引き上げられることによって、はじめてマスに届くというか。

小沼氏:
Xのアルゴリズムは頻繁に変更されますが、直近の内容でいうと、アルゴリズムが参照しているのは「実際のユーザーの反応」というよりは、「ユーザーがどういう反応をするか」という予測の方なんです。【※】

もちろんユーザーの反応も見てはいるのですが、それを見たうえで「どの程度まで広がるか」という予想をX自身が行い、それによって与えられた「与信」にもとづいて、拡散するかどうかが決められています。

※掲載されている情報は取材日(2026年8月28日)時点のものです。

大手もインディーも関係ない「総力戦」。戦いはフェアになったが、競争は激化した

──2010年代の「共有できる物語」が、2020年代になって消えてしまった。それではいまの時代のプロモーションにおいては、何をやるべきだという話になっているんでしょうか?

小沼氏:
まず、単独で大きな注目が得られる、ファンコミュニティがきちんと存在している大きなシリーズに関しては、やるべきことはあまり変わっていません。

一方で問題なのは、新しい作品ですよね。新規のタイトルを売り出していくときに「これをやっておけばなんとかなる」といったものが、すごく多彩かつ分かりにくくなってしまいましたから。

──Steamの発売タイトルは2025年で2万本超。そのなかで、「どうすれば埋もれずにいられるのか」というのは至上命題です。でも新しいクリエイターや新作のゲームたちは、どこを足がかりにしてプロモーションしていけばよいのか、まるで見えていない気がするんです。

小沼氏:
その答えはゲームによって異なりますが、コロナ禍でインディーゲームの注目が生まれる場所やシステムを作る必要があるだろうと考えて作ったのが、INDIE Live Expo【※】です。

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※INDIE Live Expo……リュウズオフィスが2020年に立ち上げ、運営を開始した、アジア最大級のインディーゲーム情報番組。
(画像はINDIE Live Expo | インディゲームのための情報番組より)

いま言ったように、「とりあえずこれをやっておけばなんとかなる」という宣伝は、ゲームごとに全く異なります。ゲームジャンルだけでなく、コンシューマー、スマートフォンなど配信するハードによってニーズも変化します。

そのうえで共通して必須なのは「100人が注目してくれる、熱狂できる切り口」ですね。

──「ゲームの宣伝においては、ただ1万人に知られるよりも、熱量の高い100人のファンを作ったほうが、結果としてパワーがある」というお話ですね。そしてその「100人が熱狂できる」プロモーションを行っていくのが重要であると。

電ファミでは8年前にも小沼さんにインタビューを行っているのですが、その時に語られていたことでした。

小沼氏:
これはそもそも作品の中に絶対必要なものですし、あるいは、作品の中に埋もれているものの、見つけていない切り口も結構あると思っています。

なので、「切り口を発掘すること」自体がまず必須だと思います。

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──「100人が熱狂した結果、1万人に届く」ということであれば、その戦いにおいては「メジャーかインディーか」「大きいメーカーか小さいメーカーか」といったことは、もはや関係ない世界になってきますよね。

となると、昔であればそもそものチャンスがなかった、インディーゲームや個人開発者の勝負の土台が、いまでは逆にフラットになってきた。そういう見方でよいのでしょうか。

小沼氏:
以前よりは全然フラットになったと思います。フェアな世界ですよね。

──フェアな世界にはなったものの、競争は激化しているから、楽になったわけではない。

小沼氏:
そうですね。逆に言うと「大手だから」「個人・インディーだから」というのは、いまでは関係がありません。

大手だろうがインディーだろうが、死に物狂いで切り口を見つけ、拡散できる道を探し……というふうに、総力戦で挑まないといけない。

それが、世の中に存在するすべてのゲームに課される時代にはなってしまいましたね。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、「第四境界」プロデューサー。 ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長を経て、KADOKAWA&ドワンゴにて「電ファミニコゲーマー」を立ち上げ、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、サイトの設計など運営全般に携わる。2019年に株式会社マレを創業し独立。 独立以降は、編集業務のかたわら、ゲームの企画&プロデュースなどにも従事しており、SNSミステリー企画『Project;COLD』ではプロデューサーを務める。また近年では、ARG(代替現実ゲーム)専門の制作スタジオ「第四境界」を立ちあげ、「人の財布」「かがみの特殊少年更生施設」の企画/宣伝などにも関わっている。
Twitter:@TAITAI999
ライター
スパイスからカレー作っちゃう系の元バンドマン。占いも覚えたが占いたいことがないのですぐ忘れた。思い出のゲームは『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civilization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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