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メタスコア平均94点獲得、超高評価で話題の『アストロボット』開発者に話を聞いてみたらプレステ愛に溢れていた。大切にしたのは「おもちゃとしての楽しさ」

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2024年11月で、家庭用ゲーム機プレイステーション5(以下、PS5)の発売から4年となる。PS5の「最初のタイトル」といえば『ASTRO’s PLAYROOM』を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。

PS5にプリインストールされており、小型ロボットの「アストロ」がDualSenseコントローラーの操作や特徴を身体を張って紹介してくれる、いわば「はじめてのPS5」とでも言うべきゲームだ。

PS5を持っていない人でも、かわいいロボットがPS5の中をイメージした世界で冒険する姿をCMなどで目にしたことがあるかもしれない。アストロはもはや、PS5のマスコット的存在といっても過言ではないだろう。

そんなアストロが主役の新作ゲーム『アストロボット』が、9月6日にPS5向けタイトルとして発売された。美しく広がる世界やアストロのかわいさはそのまま、80以上のステージと多彩なアクションを盛り込んだ大ボリュームの作品となっており、プレイステーションの人気キャラクターをイメージしたボットたちも多数登場するとのこと。

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今回は、そんな『アストロボット』をはじめとしたアストロシリーズを手掛けるTeam ASOBI代表の二コラ・ドゥセ氏にお話を伺う機会をいただいた。この記事では、「おもちゃとしての楽しさ」を追及したゲーム性や、かわいらしいロボットたちへのこだわりについて二コラ氏に存分に語っていただいたインタビューの様子をお届けする。

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二コラ・ドゥセ氏

聞き手/逆道
編集/柳本マリエ


アストロシリーズは「おもちゃとしての楽しさ」を大事にしている

──『アストロボット』を遊んでみて感じたことは、アストロのパンチで落ち葉やカラースプレーをかき分けたり、動物ロボットたちと触れ合ったり、「ゲームのメインプレイと関係なく遊べる部分がたくさんある」という点でした。このような「あそび」をたくさん入れた理由があればお伺いしたいです。

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二コラ・ドゥセ氏(以下、ドゥセ氏):
ゲームを作るときはふたつの考え方があると思っています。ひとつは「チャレンジや目標を達成するためのゲーム」という考え方。『アストロボット』なら、ボットを見つけながらステージのゴールまで行く部分ですね。

もうひとつは「おもちゃとしてのゲーム」という考え方です。たとえばゴールから少し離れたところに面白いキャラクターがいて、パンチをするたびに大きなリアクションをしてくれる。こういった「何回でも同じことができる」という遊び方は、子どもがおもちゃを使う遊び方に似ています。

報酬のない繰り返し作業は退屈ですが、毎回面白いリアクションという報酬があれば何度でも繰り返したくなります。この「おもちゃループ」をTeam ASOBIはとても大切にしています。

『アストロボット』は、おもちゃループをPS5の機能や物理演算と掛け合わせることですごくパワフルな遊び方ができると思って作りました。スペースが余っていたらできるだけそういった「あそび」を入れて、たくさん遊べるようにしています。ゴールや勝敗だけではなく、おもちゃとしても楽しいゲームになるように意識しています。

──アストロはプレイヤーの方を向いていると手を振ってくれたり、ムービー中にこちらにアクションしてくれたりします。このように画面を超えてプレイヤーにアクションしてくれる仕組みを作った意図は何でしょうか?

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ドゥセ氏:
じつは前作『ASTRO BOT: RESCUE』の名残なんです。しかしよくよく考えてみると他のゲームにはあまりない表現ですし、アストロがプレイヤーに向かってアクションをしてくれるとかわいくて暖かい感じがします。そこで、こういうアクションを残すことにしました。

アストロシリーズで大事にしているのは、「生きている世界を作る」ということです。アクションをしたら必ずリアクションがあり、動かないところはほとんどない。アストロは自分の世界にもプレイヤーの世界にも興味があるので、デジタルの世界の中からうしろを向いて、プレイヤーに「こんにちは」をしてくれたらきっと楽しいと思いました。

それから、視線も大事にしています。アストロはもちろん敵でさえも「どこを見ているか」という点を意識することで生きている世界になると考えました。

──ではアストロにとってプレイヤーはどんな風に見えているのでしょう?

ドゥセ氏:
そうですね、強いて言うなら「チームの仲間」みたいな感じでしょうか。

というのも、じつは「ボットはどこから来たのか」など彼らの生い立ちや説明はあえて深く考えないようにしています。なぜなら、設定を細かく設けてしまうとそれしか作れなくなってしまうからです。柔軟性を持っていた方が、ゲームごとにいろんなことができるのではないかと考えています。ぜひ、頭で深く考えずに直感的に遊んでみてください。

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『アストロボット』は「PS5のゲーム」であることをフルに生かしたアイデアの宝庫

──『アストロボット』はオープニングムービーをはじめとするさまざまなシーンにおいて、個性豊かなボットたちが集まって楽しそうに動いているのがとても印象的でした。たくさん登場するボットたちの動きや見た目をデザインするうえで、いちばん気にしたことは何ですか?

ドゥセ氏:
まず全体として大事にしているのは、「かわいさ」と「面白さ」ですね。見たら笑顔になれる、何かおバカなことをしているのを見て笑える、そういった部分を大事にしています。

デフォルトのボットのデザインはシンプルで覚えやすく、わかりやすいシルエットを心がけました。おしりのところがおむつを履いているみたいにポンポンしていて……赤ちゃんみたいな愛くるしい感じを意識しています。

また、今回は歴代プレイステーションの人気キャラクターとコラボしたボットも登場しているので「モデルとなったキャラクターのアクションをきちんと守ること」も大切にしました。プレイヤーが見つけたときに「あ!これ覚えてる!こういうのあった!」と懐かしくなってくれたらうれしいですね。ちょっとしたネタも加えているので、懐かしさやユーモアを感じていただけるのではないかと思っています。

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ドゥセ氏:
プレイアブルキャラクターのアストロは、ボタンを押したらきちんとリアクションがあるように操作とアニメーションに注力して作りました。

じつはアストロは何もしてないときのアクションもいろいろあるんです。例えばワンちゃんと一緒にいたら、ワンちゃんと遊び始めてごはんをあげたりとか。そういうアニメーションが本当にたくさんあるので、たまにコントローラーを手離してみてください。

──それはあえて手を離して見たくなりますね。ちなみに、アストロのアクションの中でいちばん好きなアクションは何ですか?

ドゥセ氏:
それでいうと、アストロが歴代ゲーム機を取り出してゲームを遊び始めるところがいちばん好きです。私はゲームやハードをたくさんコレクションしているので、私のようなコレクター好きには刺さるアクションではないかと思います。

しかもカメラを動かして覗いてみると、ローポリ版の『アストロボット』をプレイしているんです。案外ナルシストですよね!(笑)

──(笑)。それは気がつきませんでした。ぜひ見たいです。

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インタビュー後に確認したところPSPやPS oneで遊んでいる姿を発見
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起動するときに出てくるお馴染みのあのロゴなど細部まで再現

──『アストロボット』は各ステージに散らばったボットたちを助け出すのが主な目的のひとつですが、その数は300体にものぼるそうですね。300体ものボットを配置するのは大変ではありませんでしたか?

ドゥセ氏:
正直なところ大変でした(笑)。ボットたちはゲームプレイ的に置かれていることもあれば、ネタ的な要素として置かれていることもあります。

──アイディアはどのように思いつくのでしょうか?

ドゥセ氏:
配置のアイデアは、チームメンバーから集めました。特にコンセプトアートや3Dアニメーションの担当者は発想が豊かで、毎日のように新しいアイデアを出してくれました。300体のボットを配置するのは、ひとりでは絶対に無理だったと思います。

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──二コラさんの考える『アストロボット』らしさはどのようなところなのでしょう? ほかのゲームとの差別化で意識しているところはありますか?

ドゥセ氏:
やっぱり、PS5でしかできない表現がたくさん詰まっているところだと思います。特にDualsenseコントローラーの「アダプティブトリガー」と「ハプティックフィードバック」機能を使った表現は象徴的と言えるでしょう。

たとえば、飛び出すボクシンググローブでパンチをするとコントローラーの中にばねの感触を感じられますし、水の中を歩けば水面の浮かぶ葉っぱを1枚ずつかき分ける感触が振動で伝わってきます。

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ドゥセ氏:
PS5はハードウェアとしてのパワーもすごいので、ゲームを作るうえで物理演算もたくさん使いました。「ドアを開けたときに何百個も物が転がってくる」といった細かい表現には演算能力が必要なので、PS4までのハードウェアではできなかった表現だと思います。

アストロシリーズと強く結びついたプレイステーションの歴史

──アストロシリーズといえばPS5にプリインストールされている『ASTRO’s PLAYROOM』がPS5発売時のCMや機器紹介などにも起用され、PS5のマスコットのような形で知られている印象です。最初の作品はPSVR向けのゲーム、さらにその原型はPS4のプリインストールゲーム『プレイルーム』だったそうですが、今作の『アストロボット』に至るまでの道のりをどのように受け止めていますか?

ドゥセ氏:
改めて考えてみると、いちばん最初にロボットのデザインをしたときには、いつかこれがジャンプアクションゲームになるという想像は全くしていませんでした。各プロジェクトでキャラクターについて考えることによってキャラクターは少しずつ進化し、そして『ASTRO’s PLAYROOM』のときには、かなり今の形に近くなっていたと思います。

『ASTRO’s PLAYROOM』の開発時には3つの目標がありました。ひとつ目はDualSenseコントローラーのガイドになること、ふたつ目はプレイステーション25周年の歴史をお祝いすること、そして3つ目はTeam ASOBIとしての目標だったのですが、アストロのキャラクターを生かして「強いゲーム」を作ることでした。

幸いなことに『ASTRO’s PLAYROOM』はプレイヤーの皆さんからたくさんの反響を頂き、チームのメンバーも自信がつきました。次はもっと大きなゲームを作ろう、ということで『アストロボット』に繋がりました。

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──PS5というゲーム機そのもののチュートリアル的な役目を担っていた『ASTRO’s PLAYROOM』に対し、一般販売のタイトルである『アストロボット』は前作と異なる部分も多々あるかと思います。その中でも、最も大きな違いだと考えるポイントは何ですか?

ドゥセ氏:
『ASTRO’s PLAYROOM』がプレイステーションというハードウェアにフィーチャーした作品だったのに対して、『アストロボット』はアストロというキャラクターに注目した作品になっています。

そこで今回はまず先に「アストロの世界」のデザインをしました。例えば惑星のデザイン、新しいパワーアップアイテム、敵やボスなど「アストロの世界」のものをすべて作ってから、最後に歴代プレイステーションの人気キャラクターを登場させるなどの要素を詰め込みました。

これまでのプレイステーションの歴史を感じながらも新しいアストロの世界を楽しんでいただけたらうれしいです。きっと楽しんでいただけるはずなので。先ほど話した「歴代ゲーム機で遊ぶアストロ」もぜひ見てくださいね。


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プレイヤーに手を振ったり、自分のゲームで遊び始めたりと自由なアストロ。そんなアストロを主人公にしたゲームを制作するうえで、ドゥセ氏は目標や勝敗を達成するだけでなく、何度でも繰り返し遊びたくなるような「おもちゃとしての楽しさ」を追及したという。

そんなドゥセ氏率いるTeam ASOBIのこだわりは、『アストロボット』の細部に至るまで詰め込まれている。PS5のスペックをフルに活用した最先端の「あそび」は、大人でも子どもでもついつい目を引かれてしまう楽しさだ。

また、『アストロボット』には歴代プレイステーションの人気キャラクターたちをイメージしたボットがたくさん登場しており、プレイステーションの歴史を追える作品にもなっている。元ネタを知っている人ならクスっと笑えるようなネタも盛りだくさんなので、こちらも注目したい。

『アストロボット』は9月6日よりPS5向けに発売されている。制作陣の「あそび」へのこだわりがたくさん詰まった、アストロたちの魅力にぜひ触れてみてほしい。

ライター
なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『ドラゴンクエスト』シリーズで育ち、『The Stanley Parable』でインディーゲームに目覚めた。作った人のやりたいことが滲み出るゲームが好きです。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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