24年もの歳月を紡ぎ、いまなお多くのプレイヤーを魅了し続けるMMORPG『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。その偉大な歴史を持つヴァナ・ディール【※】の世界を、ダンジョンRPG『Wizardry Variants Daphne』(以下、『ダフネ』)へと落とし込むコラボレーションが実現した。
※ヴァナ・ディール……『ファイナルファンタジーXI』の物語の舞台となる世界の名称。プレイヤーは冒険者としてこの世界を旅する
いわゆる“期間限定コラボ”といえば、数体の記念キャラクターと、小規模な専用クエストが実装される程度を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、本コラボはこれまでの常識を覆す、異様な作り込みとなっている。
クエスト、キャラ、ボイス、武器、イベント、戦闘システム、専用ジョブなどなど、とにかくあらゆる要素を入れ込んでワンオフで作り込まれているのだ。その物量とクオリティの高さは、監修元のスクウェア・エニックスが「え?」と驚くほどだったという。
さらに驚くべきことに、これほど作り込んだ仕組みを期間限定のものにするというのだ。コラボ期間が終了すれば、ほぼ入手・体験できなくなってしまう仕掛けを、なぜドリコムはこれほど作り込んだのか?
その答えは、開発陣が掲げる「システムより先に、体験がある」というモノづくりの哲学にあった。プレイヤーに忘れられない「驚き」を届けるためなら、常軌を逸した手間や作り込みさえも厭わない。
全滅すらも、理不尽な死すらも、忘れられない「体験」として輝いていた、あのころの『FFXI』。それは『ダフネ』と共通するプレイヤー体験であり、『FFXI』と『ダフネ』だからこそ味わえる「冒険」なのである。
電ファミニコゲーマーは、スクウェア・エニックスの『FFXI』プロデューサー兼ディレクター藤戸洋司氏と、ドリコム『ダフネ』統括ディレクターである金山圭輔氏にインタビューを実施。
コラボ実現までの経緯や開発秘話、お互いのタイトルの印象などを深掘りして語り合っていただいた。

※この記事は『Wizardry Variants Daphne』の魅力をもっと知ってもらいたいドリコムさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
──本日はよろしくお願いします。まずは今回の『FFXI』と『ダフネ』のコラボに至った経緯から話をお聞かせください。そもそもおふたりは、ご面識はあったのでしょうか。
金山圭輔氏(以下、金山氏):
直接の面識はありませんでした。今回のコラボで初めてお会いさせていただいて。
ただ、じつは自分も『FFXI』はサービス開始初日からプレイしていたので、今回のコラボが実現できて感慨深いです。
──『FFXI』はゲーマーとしてプレイしていたのでしょうか? それとも、ゲームクリエイターとして「やっておかないと」という感覚だったのでしょうか。
金山氏:
いちユーザーとしてプレイしていました。初めて体験するMMOが『FFXI』だったんです。
サービス開始初日は仕事が忙しくて、朝方に帰ってきてからログインをひたすら試して、そのまま寝落ちする。それを繰り返していました。初めてヴァナ・ディールの世界に入れたときは、本当にうれしかったですね。
サンドリアからスタートしたので、周辺を走り回っていたのですが、「ほかのプレイヤーが画面の中にいる」ということに感動したのを、いまでも鮮明に覚えています。あれは、熱狂でしたね。
藤戸洋司氏(以下、藤戸氏):
ありがとうございます。
僕はサービス開始日は、会社の中からログインしていたんです。「みんな来るかな?」とドキドキしながらウィンダスで待っていたんですけど、誰ひとりとして入ってこない。「ぜんぜん来ないね」、「本当に始まったのかな?」と話していたら、ログイン障害が起こっていて一般の方は入れない状況でした(苦笑)。
金山氏:
『FFXI』は仲間内でよくやっていました。仕事が忙しい時期だったので、いつも朝方に家に帰ってきて、寝るまでの少しのあいだだけログインしていたんですね。
そうするとだいたい、さっきまでいっしょに仕事をしていた連中が、みんなログインしているんです。「いるいる(笑)」とパーティーを組んで、3人ぐらいでちょっと遊んでから寝る。そんなことを繰り返していました。あのときは本当に楽しかったです。
水色の画面の中で動く『PlayOnline』接続中のUIは、いまも脳裏に焼き付いていますね。
藤戸氏:
当時はオンラインで繋がるだけで新体験という感じがありましたよね。
掲示板で意見交換する文化もちょうど社会現象になりつつあるタイミングでしたから、ログインできない状況をみんな掲示板で「入れた?」、「入れない?」と言い合っていて(笑)。
ただ、プレイヤーがみんな外部の掲示板で連絡を取り合うようになってしまったので「せっかくゲーム内にチャットシステムを入れたのに……。もう少しゲーム内でしゃべってほしいな」と思っていました(笑)。でも、「/Say」でしゃべるとログがどんどん流れてしまいますし、周囲のプレイヤーにも表示されてしまいますから、なかなかしゃべりづらかったとは思います。
──MMOのマナーもよくわかっていない時代でしたから(笑)。
藤戸氏:
マクロでウェポンスキルを撃つときにも、「俺の技を食らえ! ファストブレード!」といった具合に、みんなメッセージを入れてやっていた時代でしたから(笑)。
金山氏:
すごく自由でよかったですよね。MMOの常識がまだ浸透していなくて、知らない人も多かったから、みんな暗中模索というか。
藤戸氏:
まだ何もプレイヤー間のルールが決まっていないカオスな時代で、だからこそ唯一無二のおもしろさがありましたね。
──今回のコラボは、ドリコム側からスクウェア・エニックスへ打診されたのでしょうか?
金山氏:
はい、我々のほうからご提案をさせていただきました。
「ゲーム体験的にやり応えがあって、ユーザー層的にも合うんじゃないか」と『ダフネ』開発チームの中でもともと話していたんですね。だったらダメ元で声をかけてみよう、と。
せっかくやるからには、「プレイヤーにとって驚きのある良い作品と組みたい」というのがありました。その点、『FFXI』は波長といいますか、いろいろ『ダフネ』と合うという感覚があって。
藤戸氏:
『FFXI』は、装備を集めて自分のジョブの立ち回りに合うようにカスタマイズしたり、限界突破の試練をクリアしないとレベルキャップが上がらなかったり、そのうえ他人との協力が必須と、かなりシビアな内容になっています。
そのあたりは『ダフネ』と合致する部分だと思います。「スマートフォンタイトルでここまで負荷をかける理由があるんだろうか」と思いながら、こちらも『ダフネ』をプレイさせていただいていました(笑)。
──藤戸さんご自身も『ダフネ』をプレイされていたのですか。
藤戸氏:
はい。ひとつのタイトルを遊び倒すようなことはあまりしないのですが、幅広く触るようにはしています。『ダフネ』に触ったときに、その設定とディテールが「最高だな」と感じました。
たとえば「逆転の右手」にせよ、ガチャと呼ぶのではなくて、「時間を戻したからキャラが骨から復活する」という設定になっている。キャラが重複することはあっても「それは骨がたくさんあるからそうなるんだな」と納得できる。さらに、その「逆転の力」を使って、ストーリーまで巻き戻してしまう。
ゲームの作り手として見ると、「無茶なことをしているな」と思うんですよ。だって、カースドホイールで物語を巻き戻したときのフラグ管理は、めちゃめちゃたいへんじゃないですか。ですから、自分としては「信じられないことをやってのけているタイトルだな」と思っていました。
今回のコラボのお話をいただいて改めてプレイしていて、いまはグアルダ城塞まで行ったんですけど、さすがにちょっと厳しくなってきたところですね。
──そこは、ひとつの壁ですからね。
藤戸氏:
グアルダ城塞に至るまでの作りも、表現も、ゲームデザインも、「リスクを取る」というテーマが根底にあるゲームとなっていて、そのリスクの取り方や難易度の調整がすごくいいんですよね。
もちろん、基本プレイ無料+アイテム課金のビジネスモデルなので、ショートカット的なことも行える前提で設計されているわけですが、無課金でもかなり進めるじゃないですか。
「これはどうやってお金を稼いでいくつもりなんだろう?」と、他人事ながら思ってしまうほどで(笑)。
──同じゲーム業界の人から見ても、『ダフネ』は特異な作り方だと。
金山氏:
あまりお金を稼ぐつもりはなかったというか(笑)。
──でも『ダフネ』は現在まで盛り上がりが持続していますし、伝わるユーザーにはちゃんと伝わって、コミュニティもしっかり形成されている印象です。
藤戸氏:
作りが丁寧なんですよ。バトルも大味になりにくいですし。
雑魚戦は「このスキルを使ったらクリア」という面もありますけど、ボス戦は戦術をしっかり考えないと簡単には勝てないし、そこに至るまでのギミックも理解しないといけない。
押さえるべきポイントは、しっかりと押さえられている。そういう印象が強いタイトルです。
金山氏:
基本的に、昔のゲームが好きなんですよ。1980年代後半から1990年ぐらいのゲームというか。
「あのころのゲームってこうだったよね」という歯ごたえや冒険の雰囲気。そういったものを『ダフネ』で再現できたらいいなと思っています。
あと、最近のゲームへのアンチテーゼっぽいところもあって、どうしてもシビアになりがちです。でも、『FFXI』も大概だなと思いますけど(笑)。
──(笑)。『FFXI』もサービス開始から今年で24周年ですし、本当にすごいと思います。
藤戸氏:
20周年ぐらいまでは、これまで展開した拡張データディスクや、積み重ねてきたお客様からの信頼。そしてしっかりとしたコミュニティがあったので、支えていただき続けてこられた。でも、これ以上の新しい遊び方を提供する余地が、さすがになくなってきたんです。
追加投資をして、いまいるお客様にプレイを続けてもらい、その場を維持するのか。それとも、もっと「上」を取りに行くのか。でも、上を取りに行くなら、いろいろと新しくしないと無理でしょう、と。
「古臭い」とか、「この部分は破綻している」など、改修を希望されるお客様からのフィードバックは重々認識しつつも、24年続いているMMOですから、直したくても直せないんですよね。
そこをどうするか悩み続けて、じつを言うとサービス終了の道を探った時期もありました。
自分がプロデューサー兼ディレクターになる直前【※】のころですね。2代目プロデューサーの松井(松井聡彦氏)も、『FFXI』の着地をどうするかをずっと気にかけていました。
※プロデューサー兼ディレクターになる直前……藤戸氏は2016年に『FFXI』ディレクターに就任。2023年3月よりプロデューサーも兼任している。
──歴史があるからこそ、その終わり方をどうするか、と。
藤戸氏:
そういった中、『FFXI』が20周年を迎えて、ひとつの良い区切りだったので、そこで着地するのが良いんじゃないか、という話もしていたんです。
ただ、その準備の過程で、『FFXI』の20周年記念サイト「WE ARE VANA’DIEL」を作ったんですね。『FFXI』の立役者の方々のインタビューや対談を掲載するという企画をずっとやっていたのですが、そこで接したOBの皆さんが「まだまだ続けてほしい」と言ってくださって。
またプレイ中のお客様の、記事をお読みになった反響からも、継続を強く希望される声が多く寄せられまして、「これは止めるわけにはいかない」という話になり、「もうちょっとだけやりましょう」となったんですね。
となると、サーバーが流石に古くなっているので、交換しないとあと1、2年で寿命を迎えてしまう。まずはこれをどうにかしないといけない。
それがきっかけで、方針として『FFXI』を続け、しかも膨らませていく方向でいかなければいけない、という話をしました。上長にも「積極的な施策で長期運営を視野に入れた安定運用を選ぶのか、それとも行けるところまでいって、続けられなくなる部分が見えるまで現状を維持する消極的な安定運用を選ぶのか、会社としてどっちをとるのが望ましいですか」と相談して。
最終的には「より長期に安定運用できる方でいこう」という話になり、もう直せるところはどんどん直して将来につなげられるようにしていこう、という方針で、現在の運営状況に至っている状況なんです。
他社コラボはほぼしてこなかった『FFXI』が、今回動いた理由
──7月3日にコラボの発表が行われました(編集部注:インタビュー取材は7月3日に実施)。
◤ Wizardry Variants Daphne
— Wizardry Variants Daphne(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)【公式】 (@Wizardry_Daphne) July 3, 2026
FINAL FANTASY XI
今夏 コラボ開催 ◢
続報にご期待ください。#ウィズダフネ #FF11 pic.twitter.com/vgtrda9LuT
藤戸氏:
発表された直後から、Xでハッシュタグ「#FF11」や「#ウィズダフネ」をずっと追っていたのですが、とにかく反響がすさまじかったですね。皆さん、良い意味でパニックになって驚いていました。
金山氏:
意外というか、かなり衝撃的な組み合わせだったみたいですね。
──『ダフネ』が他社さんのIPとコラボレーションを実施するのは、今回が初めてですよね?
金山氏:
はい、初めてとなります。ロードマップとしては、最初は自社(ドリコム)の他タイトルとのコラボ【※】でワンクッションを挟んでから、満を持して他社さんとのコラボを本格始動させようと計画していたんです。
そこで「記念すべき最初の他社コラボは何にしようか」と考えた際、『FFXI』を選ばせていただきました。
※自社(ドリコム)の他タイトルとのコラボ……2025年3月18日〜4月7日に実施された、
蝸牛くも先生のダークファンタジー『ブレイド&バスタード』とのコラボ。
──『ダフネ』ユーザー目線からすると、「逆転の右手」で遺骨からキャラクターを蘇らせて仲間にするという独自のシステム的に、他社作品とのコラボは難しいのではないかと思っていました。
金山氏:
おっしゃるとおりです。ただ、私たちは基本的に「ほかがやらないような意外性のある部分」をあえて掘り進んでいかないと、この激しい市場で勝ち目はないと考えているんです。
だからいつも、一見すると実現不可能な無理難題にみずから突っ込んでいき、茨の道に入ってからスタッフ全員で血反吐を吐きながらゴールを目指す、そういう作り方をしてしまうというか(笑)。
今回も「ダークファンタジーの『ウィザードリィ』で他社コラボをするのは難しそうだ」という巨大なハードルをどう越えていくのか。どうファンの納得いく落としどころを探るか、という課題からスタートしました。でも、その高い壁を工夫と苦悩を重ね乗り越えて形にできたとき、プレイヤーの皆さんの「驚き」と「よろこび」は最大化されるはずだと。やっぱり、予定調和じゃつまらないですからね。
「プレイヤーに驚きと感動を与えたい」という一心で、アイデアを絞り出してなんとか実現にこぎつけました。
藤戸氏:
その熱意の中で、こちら側のわがままやこだわりもいろいろと汲み取って調整していただき、本当にありがとうございました。
──スクウェア・エニックスとしては、コラボの打診をいただいた際、スムーズにOKが出たのでしょうか。
藤戸氏:
最初にお話をうかがったときは、率直に「なぜいまこのタイミングで、数多あるタイトルの中から『FFXI』を選んでくれたんだろう?」と驚きました。ただ、お話を詳しくうかがっていくと、ドリコムの開発メンバーの皆さんがかつて『FFXI』を熱心にプレイされていた“ガチ勢”だらけだということがわかりまして(笑)。
じつは『FFXI』側としては、近年は他社さんとのコラボに対して、こちらから能動的に動くのが非常に難しい状況でした。先ほどもお話しした通り、開発リソースに余裕がないため、新しいデータを作るのがとにかくたいへんなんです。
もしコラボを行うとなれば、お相手の作品のキャラクターや装備品を『FFXI』内で高いクオリティで再現しなければなりませんが、それを用意すること自体が開発的に極めて高いハードルになってしまう。
「私たちのいまのリソース状況では、お相手のブランドに見合う十分なクオリティをお返しできないのではないか」、「こちらからコラボを提案するのは少し図々しいかもしれない」という控えめな思いもあり、結果として他社タイトルとのコラボにはほとんど関わってきませんでした。
そんな中、今回はドリコムさん側から「そちらの手間は取らせません。すばらしいものを作ります」と熱烈なオファーをいただいたんですね。しかも、作っていただけるのが「『FFXI』を誰よりも愛してくれている開発者たち」なのであれば、これほど信頼できる話はありません。そういった状況でしたので、「ぜひ前向きに検討させてください」とお返事させていただきました。
社内に対しても、単なるお祭りとしてではなく『ダフネ』という作品が持つ確かなクオリティと魅力を丁寧に説明し、承認を得ました。RPGの原点とも言える『ウィザードリィ』の血を引く作品に、日本のRPGを牽引してきた『ファイナルファンタジー』が本格的に絡んでいく。これはゲーム業界にとっても非常に歴史的なことだなと胸が熱くなり、正式にお受けさせていただいた、という経緯になります。
──コラボ内容を見せていただいて、「ここまでやるか」という驚きがすごかったです。
金山氏:
お話ししたように、『ダフネ』にとっては今回が他社作品との初めてのコラボになります。
しかも、お相手が『FFXI』ですから、どこまで現実的に作れるかといった細かいことは一度置いておいて、「とにかくやりたいんです」という熱い想いをぶつけるために資料を作り上げました。やれることは全部やろうと。
本編の最初のダンジョンである「はじまりの奈落」でも、プレイヤーの皆さんには「この先、何が起こるんだろう」という驚きや発見があったと思うんです。それは、コラボでも提供し続けなければならない。中途半端な内容ではガッカリされますし、『ダフネ』のファンは目が肥えていらっしゃるので、手抜きはすぐに見抜かれてしまいます。
「『ダフネ』はコラボでもここまでやるのか」と感じてほしくて、ディテールにこだわって資料を作っていたら、いつの間にか物量が膨大になってしまいました(笑)。
キャラクターのイラストをどれだけ描き起こすかというところから始まり、コラボ用のシナリオを作成し、プロットを確認していただいて、物語を肉付けしていく……。そのすべての過程で、アイデアがどんどん増えていきました。「いっそ、いろいろな物語を混ぜてしまおうか」といった話も出てきたりして、最初の設計段階から本当にたいへんでした。
でもじつは、最初に想定したときの半分ぐらいのボリュームには減ったんですよ。
──え? あれでも減っているのですか? たぶん、新しい「奈落」を開発するのと、ほぼ変わらないぐらいの労力をかけてらっしゃるのだろうなと……。
金山氏:
コラボを実施できるとわかったときから、その覚悟で作ってきました。もちろん、「奈落」準備への影響はできるだけ軽くなるように、という前提はありつつ。
やるのであれば驚いてもらわないと、『ダフネ』はもちろん、『FFXI』のプレイヤーに対しても失礼になりますから。期間限定のコラボだからとか、そんな事情はまったく関係なく。
──藤戸さんは、ドリコムから提出されたコラボ内容をどうご覧になられていたのでしょうか。
藤戸氏:
通常ですと「当社の別タイトルが、こういうキャラクターをこういう形で出すので監修をお願いします」という形でいただくのですが、そのときのボリュームってあまり多くないですよ。絵はもちろん使う分だけ枚数も上がってくるんですが、クエストに注目した場合のテキスト量は、ファイル1個にまとめられるくらいの分量ですね。それくらいの出力を1回分として、それを複数回実施するようなケースが多いんです。
でも、今回のコラボはもうすごかったです(笑)。「通常のコラボ1回分」のボリュームじゃなくて、カースドホイールによる2周目、3周目の展開まで当たり前のように用意されているという(笑)。
2周目、3周目の展開でシナリオが分岐するので、「こっちのルートでここまで話が進んでいるなら、この段階でこういう展開になるのはおかしいんじゃないか?」という組み合わせの確認を、監修担当がものすごく頭を抱えてやっていました(笑)。
最初は、プロットの段階からしっかり確認させていただいて、そこに間違いがなければ、あとはテキストの最終修正を入れるだけで済むだろうと予想していたんです。そういう段取りを取らせていただいたんですけど、それだけだと済まない内容というか……今回は仕組みやUIなんかも作られた上に、FFXIにはない「音声」もあるわけじゃないですか。そういった意味ではこちらの見積もりが甘かったというべきか、監修側のこちらが最初に驚かされた感じになりました(笑)
期間としては半年弱、毎月の定例会議だけではなく、基本はSlack経由で「ああでもない、こうでもない」と、ずっと密にやり取りを続けていました。
──ズヴァール城が登場することについても、ドリコムさん側からの提案だったんですか。
金山氏:
そうですね。『FFXI』は歴史の長い作品ですから、最初のプロットを書く段階で「どの部分を切り取り、どのキャラクターをどうクロスオーバーさせていくか」ということに非常に悩みました。開発メンバーの中でも、とくに『FFXI』をずっと遊び込んでいた人間が中心になって考えてくれたんです。
これまでの歩みに敬意を表して、「ひとつずつの拡張データディスクに合わせる形でエピソードを組み込んでいくのがベストだろう」ということで、この形になりました。
──『FFXI』チームとしては、「ここを持ってきてくれたんだ」という驚きはありましたか?
藤戸氏:
『FFXI』のどの部分をテーマに持ってきてもらうのがいちばんわかりやすいかと言ったら、やっぱり「闇の王」なんですよ。象徴的な存在ですし、物語の区切りとしても非常に美しい。ですから、そこをご提案いただいたことにはすごく納得しました。
ただ、「なぜそのキャラクターがここにいるのか」、「なぜズヴァール城がそこにあるのか」を監修するにあたって、最初にお願いしたのがヴァナ・ディールの世界と『ダフネ』の世界は「混じり合ってほしくない」ということでした。
もし完全に世界が混ざってしまうと、『ダフネ』の設定がヴァナ・ディール側にも影響を及ぼしてしまいます。「ここで『ダフネ』のキャラクターがこう動いたから、これまでの歴史を修正しなければならない」といった矛盾が生じると、20年以上積み上げてきた膨大なストーリーをすべて見直さなければならなくなってしまうんです。
それはナンセンスですし、お互いの世界にとってよくない。だからこそ、「世界の直接的な干渉はなしにしてください」とお伝えしました。
その代わり、世界どうしが「響き合う」ような形であれば問題ありません。ヴァナ・ディールの世界の中で起こった出来事や強い意志や個性のぶつかりが、形には残らない微弱な情報として、別の世界の何かに観測される、感じ取られる、という理屈です。世界観の境界を行き来できるキャラクターについては、そのままの姿で登場することもある程度許容しています。「それ以外のキャラクターは、別の表現や違ったアプローチで出現するなら大丈夫です」ということを最初の約束事にさせてもらったんです。
このルールを定めたことで、結果的にさまざまなキャラクターが『ダフネ』の世界で活躍するための自由度が生まれました。ヴァナ・ディールでの設定上の制約、枷が外れた状態で、自由にアイデアを広げていただけるようになったので、そのルール上で本当にいろいろと考えていただいたと感じています。
──最初に物語をクエスト的に描いて、そこからキャラクターの選定に入っていったのでしょうか。
金山氏:
物語のテーマ性に沿うかという面と、あとは純粋に「どういうキャラクターが求められているか」というビジネス的な観点の両面からすり合わせて、最終的に誰を登場させるかを決めていきました。
──登場キャラクターは、すんなりと決まったのですか。
金山氏:
いえ、そこはかなり難航しました。作れるアセットの数に限りがある中で、ゲーム内の人気キャラクターやビジネス的な視点も含めて「これも出したい、あれも出したい」という候補の中から厳選しなければならなかったので。
──かつ、それを『ダフネ』のベースに落とし込まなければいけないわけですよね。
金山氏:
そうなんです。『ダフネ』とは職業も種族も異なるキャラクターたちなので、どうしてもゼロからフルカスタムで作ることになります。完全な新規起こしになるため、作る量がとんでもないことになっていて……。新しく作る量が多すぎて、現場はいま、うれしい悲鳴をあげ続けています(笑)。
──3Dモデルをゼロから作成するだけでなく、武器もそれに合わせて作らなければならないわけですよね。
金山氏:
さらに言えば、技の見せ方にしても、ヴァナ・ディールと『ダフネ』では物理法則やリアリティの基準が異なっているんですね。そのため、『ダフネ』向けに再構築するにあたって「どこまでのアレンジなら許されるか」は、デザイナーと悩みながら作っていきました。
藤戸氏:
でも、本当に忠実に再現していただいていますよ。何と言っても『FFXI』本編よりもキャラクターが綺麗です。細密なポリゴンで作られていて、動きも驚くほどスムーズですから。今回は日本語だけではなく、英語のボイスまで付いているので、ものすごくリッチですよね。
金山氏:
英語ボイスに関しては、じつは再収録までやっているんです。一度は収録を問題なく終えたのですが、原作キャラの特徴や魅力を再現するにあたり、収録した音声を改めて確認したところ「ニュアンスが少し違うな」となり。
開発チーム内に熱心な『FFXI』ファンのスタッフがいて、彼がこだわってゴネてくれたおかげで、録り直すことになりました。良い意味でのこだわりですが……あ、ちなみに私は今回はゴネていないですからね(笑)。
藤戸氏:
(笑)。日本語ボイスは、『ディシディア ファイナルファンタジー』などで当時担当していただいた声優さんをベースにしているので、すごく「公式感」がある仕上がりになっています。
──2026年の最新技術で『FFXI』のキャラクターを表現したらこうなる、という一端が見られるわけですね。1回きりのコラボで終わらせるのがもったいないクオリティですね。
藤戸氏:
次回に関しても、こちらはいつでもウェルカムですよ(笑)。
──登場する3キャラクター(プリッシュ、ザイド、イロハ)ですが、ザイドはガルカですから『ダフネ』にはいないキャラクターの大きさですし、3Dモデルの制作はとくにたいへんだったのでは?
金山氏:
ザイドは本当にすごいですよ。何がすごいかって、体のサイズが大きすぎて、そのまま置くと椅子に座れなかったり、壁にめり込んだりしてしまうんです(笑)。
当初、「少し大柄な冒険者」くらいに考えていたのですが、ガルカは予想外の巨体で、既存のマップのどこに行っても収まらないという。
藤戸氏:
ザイドは設定上、とくに大きいんですよ。本編でも、遠目だとオークと間違えられるくらいの巨体ですから(笑)。今回はそうした絵の部分だけでなく、UIやゲームシステムに至るまで、本当にゼロから丁寧に起こしてくださっていて頭が下がります。
金山氏:
彼が登場するほぼすべてのシーンで、ザイド専用のレイアウトやカメラアングルを用意しました。まさにフルカスタムで、相当な手間をかけて作り込んでいます。
藤戸氏:
これでノウハウができたということで、今後の新展開でもガルカを出せますね(笑)。
──ゲームシステム面でもかなり踏み込んだ仕掛けがありますが……。
金山氏:
バトルに『FFXI』おなじみの「リンク」や「ヘイト」といった概念を取り入れています。
『FFXI』をプレイしていた方々に、あのころの思い出にどっぷりと浸ってほしかったんですね。物語やキャラクターだけではなく、実際のゲーム体験としても「そう、これこれ!」と感じられる要素を入れたかったんです。
泣く泣く削った部分もありますが、象徴的なシステムは原作と形は違えど、いくつか実現できました。
──今回導入される新システムは、今後の『ダフネ』に恒久的に残るわけではなく、このコラボ限りの実装になるのでしょうか。
金山氏:
贅沢なことに、完全にワンオフのほぼ「使い捨て」になります。現場としては「どこかで流用したい」とはつねづね考えており、機会があれば……。
抽象的な部分で似た価値観を持っている両タイトルとはいえ、いざ形にするとなると、やはり『FFXI』ならではの良さは完全な専用カスタムを施さないと再現できないんですよ。改めて、すばらしいシステムだなと実感させられました。
──しかも期間限定ですから、ワンオフでそこまでやるというのはすごいなと……。スクウェア・エニックスから見ても、ドリコムのこだわりは、良い意味で「狂っている」と感じるのでは?
藤戸氏:
本当におかしいですよ(笑)。これほど手間ひまをかけて、ワンオフの要素を作り込んでくださること自体、こちらとしてはもう信じられない仕事です。
なんだったら、ドリコムさんで「FFXI-2」を作ってほしいくらいです(笑)。スマートフォン版としてリリースしていただけるなら、こちらはもう言うことなしです。
──(笑)。『FFXI』的な武器強化や、ノートリアスモンスター(NM)【※】の要素までありますよね?
※NM(ノートリアスモンスター)……特別な名前を持つ強力なモンスター。討伐すると希少なアイテムが得られる

金山氏:
ヴァナ・ディールでの体験を『ダフネ』でも味わってほしくて、「NM狩り」のようなシステムも組み込んでいます。
「リンク」や「ヘイト」も含め、『ダフネ』が新しい仕組みを追加しがちな点について、昔のファミコンやスーパーファミコンの時代って、ちょっと尖った変なシステムを持つゲームがたくさんあって、新しく買って帰るときは本当にワクワクしましたよね。娯楽だからこそ、そういう新鮮な驚きやワクワク感は大事にしたいなと思って。
──BGMも『FFXI』の原曲が『ダフネ』の中で流れるわけですよね。
金山氏:
プレイヤーの皆さんにとって大切な「想い出の曲」の数々は、どうしてもお借りしたかったんです。
──正直、かつて『FFXI』をプレイしていた人たちは、あの音楽を聴けるというだけで「ちょっと遊んでみようかな」となると思います。それくらい、あの旋律は脳裏に刷り込まれていますから。
金山氏:
そうですよね。曲を聴いた瞬間、あのころの思い出や熱狂がブワッと蘇ってきますから。
藤戸氏:
ここまでやるなら、「プレイオンライン」のオープニング曲も入れておけばよかったかもしれませんね(笑)。
──それ、金山さんは本当にいまから実装してしまいそうですけども(笑)。
金山氏:
それは楽しいかもしれないですね。いまからでもいけるかな?(笑)
──(笑)。当時、冒険に出かけるときは必ずプレイオンラインの画面と音楽を聞いていたわけですから、すべてのプレイヤーがグッとくる楽曲には間違いありません。繰り返しとなりますが、本当に今回のコラボは驚くことばかりです。
藤戸氏:
さきほどプロットの話がありましたが、プロットやシナリオのテキスト自体は、もちろん最初の段階で綺麗に監修を終えているわけです。
でも、そのあとに「ちょっとした演出を追加したので、ここに使うテキストも監修してください」といった感じで、つぎからつぎへと新しいものが追加で送られてきたんです(笑)。
金山氏:
実際にテストプレイを重ねていくと、どうしても「ここはもっと良くできるよね」という部分が出てきてしまって……。
その都度、追加のご相談をお願いすることが増えてしまいました。本当に申し訳ございません。
藤戸氏:
いえいえ。むしろ、クオリティを限界まで追い求めたいという情熱が、同じ開発者として痛いほどよくわかるんですよ。
実際にゲームを作っていると、「ここを直したい」と気づく瞬間は必ずありますし、直すからには、関連するほかの部分も合わせて修正しないと全体の辻褄が合わなくなりますから。
ギリギリのタイミングまで試行錯誤を繰り返してデータを送ってくださるというのは、それだけ本気で向き合ってくれている証拠と言いますか。それはモノづくりにこだわるゲームメーカーなら、どこも同じだと思います。ただ……さすがにコラボの開催発表もされましたし、そろそろ一段落していただけると助かるな、とは思います(笑)。
金山氏:
現場でもさすがに最近は、「これを足すと、またスクエニさんの監修チームのお手間をいただくことになるぞ……」と、及び腰になり始めています(笑)。
──今回のコラボでは「逆転の右手」の演出が変更されているそうですが、どのように決まったのでしょうか?
金山氏:
『FFXI』のキャラクターたちを、そのまま『ダフネ』のルールで「逆転」させるわけにはいかなかったということですね。どう成立させるかは、かなり頭を悩ませました。
──通常、『ダフネ』のキャラクターは「骨」から蘇生して誕生するので、根本から表現を変える必要があったということですね。
金山氏:
キャラクターの設定的に、どうしても譲れないNGラインがあるわけです。「では、どうすれば世界観を壊さずに仲間として迎えられるか」を模索していきました。
藤戸氏:
『FFXI』では直接的な「死」を絵で表現することはほとんどなくて、基本的には「戦闘不能」になるんです。ですのでヴァナ・ディールのキャラクターが戦闘不能を越えて「死」を迎えるときはすごく特別で、お話として大体は光の泡のようになって「クリスタルに帰っていく」という表現になるんです。だから、そもそも骨が残らないんですね。
仮に『FFXI』のキャラクターが『ダフネ』の世界に迷い込んだとしても、骨を拾ってきて復活させるというのは、ヴァナ・ディールの存在のあり方として絶対に合致しなかったんです。
そこで、こちらからも「骨からの復活は難しいので、何か別の媒体で呼び出す形にできないでしょうか」と提案させていただき、両社で議論を重ねていちばん良い着地点を探っていきました。
金山氏:
その結果、今回は「巻物」から登場するという形になりました。ボロボロに朽ちたスクロールに「逆転の右手」を使って時間を巻き戻すと、書かれていた「転移の呪文」が蘇る、という演出になっています。
それがウィザードリィでおなじみの転移呪文「マロール」なのか、あるいは『ファイナルファンタジー』の魔法「テレポ」なのか。その魔術の輝きに導かれるようにして、『FFXI』のキャラクターたちがこちらの世界へ転送されてくる、という流れになっています。
──なるほど。演出を変えれば、どんな作品とでもコラボできる可能性があるわけですから、今後の展開も楽しみです。しかし、「マロール」と「テレポ」という両作品の伝統的な魔法に絡めているのは、アイデアがすばらしいですね。
金山氏:
何の根拠もないご都合主義的な演出にしてしまうと、目が肥えている大人のプレイヤーの皆さんは冷めてしまうと思うんです。
世界観がカッチリしている作品だからこそ、そこにある設定やルールは意地でも守らないといけない。そういうシビアなリアリティラインは、ゲームに没入するうえでとても大事ですから。
自分が夢中になっていた初期の『FFXI』にも、移動の手間を含めて、そういう「世界のガチ感」がありましたよね。
──『ダフネ』もそうですが、『FFXI』もゲーム内のあらゆるシステムに対して、世界観の裏付けを徹底されていた印象があります。
藤戸氏:
開発当初の『FFXI』は、『EverQuest』【※1】などから知見を得て、日本のお客様に向けて、より受け入れられやすいように噛み砕いた形でMMORPGを実現しようという試みでした。
ただ、ゲーム内のあらゆる表現に対して「なぜそうなるのか」という理由付けをしておかないと、プレイヤーは納得してくれないし、ただの「システム的な記号」に成り下がってしまうという懸念が当初からあったんです。
たとえば、モンスターがなぜ急に目の前に湧き出る(ポップする)のか、力尽きたらどうなるのか。プレイヤーが死んだ場合、あらかじめ設定した拠点に戻る。この「なぜそこに戻るのか」という理屈についても『ファイナルファンタジー』の世界観に落とし込んで設定を作っていきました。ヴァナ・ディールという世界の創生に関して、当時ディレクターだった石井浩一さんが強くこだわられていた部分ですね。
そういう点を踏まえて、パーティーを組んだとき、「なぜ遠く離れているメンバーどうしで声が届いて、周りの一般プレイヤーには聞こえないのか」といった些細なチャットの仕組みですら、世界観を踏まえた理屈付けを考えていたんです。
いわゆるギルドチャットに相当する「リンクシェル」【※2】というシステムも、現代の通信技術の概念をそのまま持ってくるのは違和感があったため、遠くまで声が届くアイテムを作り、そこにチャットが響いているという世界設定としているんです。
※1 『EverQuest』(エバークエスト)……1999年3月、Sony Online Entertainmentによってアメリカでサービスが開始されたWindows用のMMORPG。プレイヤーは「ノーラス(Norrath)」と呼ばれる3D世界を冒険。探検や戦闘が重視されたゲームデザインが特徴。
金山氏:
当時からそこまで徹底されていたんですね。
藤戸氏:
そこは譲れない部分でした。
金山氏:
まさにそういったところが、今回のコラボの思想的にも大きなポイントだと思っています。
ゲーム的な便利機能としてのシステムを、いかに抽象化してその世界へ違和感なく落とし込むか。両タイトルにはその共通のこだわりがあったんですよね。
そこを丁寧に作り込むからこそ、プレイヤーは外からゲームを俯瞰するのではなく、その世界のひとりの住人として入り込み、本物の「冒険」を楽しめる。『FFXI』には間違いなくそれがありましたから。
藤戸氏:
端的に言うと、「メタな視点を極力排除した」ということになりますね。
冒険者の目線で見たときに、そこに存在する理由がちゃんと腑に落ちるからこそ、自然にその道具を使い、世界を旅できる。「ロールプレイ」という言葉をそのまま体現できる世界をMMORPGの中に実装したかったんです。
当時のプロデューサーだった田中弘道さんもときどきおっしゃっていましたが、ちょっと原点に立ち返って「『ファイナルファンタジー』って本来こんな感じだったよね」というエッセンスを、当時の開発者はそれぞれの場面で追求していったと。
それらが混然一体となってひとつの世界を紡ぎ出し、ちゃんとその世界で生きていける空間として、深い「冒険」ができるものに仕上がったのかなと解釈しています。
金山氏:
じつは『ダフネ』の開発現場でも「メタ視点の排除」と「冒険体験の再現」をいつも議論しているんです。
『FFXI』と『ダフネ』は、その体験価値を何より重視しているという点において、ゲームとしての血流というか文脈がすごく似ているなと感じました。
藤戸氏:
先ほど私が『ダフネ』の設定の綿密さに驚いたという話をしましたが、まさにここがいちばんわかりやすいポイントですよね。プレイヤーがスムーズに冒険者視点に没入できるのも、「ガチャを回す」のではなく「時間を逆転させている」という設定が効いているからです。
「かつて命を落とした名もなき冒険者を復活させて、再びともに歩む仲間として迎えているんだ」という物語が、プレイヤーの感情に逆らわずすんなり入ってくる。ただガチャからパッと出てくるだけの存在ではない。そういった、作り手が世界観を大切にしている部分は、遊んでいてちゃんと心に響いてきます。
──どちらのタイトルも遊んでいる身からすると、共通して「冒険する楽しさ」が詰まっていると感じます。世界が少しずつ広がっていく感覚、「一歩ずつ先に進んでいる」という手応えが良いですよね。
金山氏:
『FFXI』の初期は、まさにそうでしたね。
未知の地へのフロンティアスピリッツを刺激されて、その先に何があるかわからない旅の末に船着き場(セルビナ)にたどり着いたり、ひとりで突っ走って、暗中模索のジャグナー森林を越えてジュノを見つけたときの感動といったら……。
当時のジュノはまだ少数のプレイヤーしか到達できていなくて、「自分もそこにたどり着けたんだ」という達成感と、「この先に何があるんだろう」という発見の連続が、本当におもしろかったんです。
藤戸氏:
「冒険とはまさにそれだよね」という話は、開発メンバーともよくしていました。どれだけ通い慣れた場所でも、新しいエリアが開放された瞬間に、みんな目を輝かせて駆け出していったわけですから。
未知のモンスターや風景、その先にある街やドロップアイテム……。そこに夢が詰まっているんですよね。行ってみて何もなかったとしても、可能性があるということ自体が冒険なんです。
『ウィザードリィ』も同じで、マッピングしていない闇の中に、もしかしたら階段があるかもしれないし、泉があって休めるかもしれない。答えがわからないからこそ、一歩進みたくなる。この探求心こそが「冒険」の原点だと思います。
この感覚は、両作に共通していると思います。
金山氏:
やっぱり、「発見」こそがいちばんの楽しみなんですよね。だからこそ、安易にマップを使い回すのではなく、苦労してでも新規で作りたくなる。
藤戸氏:
まあ、そればかりやりすぎると、開発現場が死んでしまうんですけどね(笑)。
金山氏:
ええ(笑)。でも、ただの行き止まりだと思ったらその先に道が続いていた、というような驚きをプレイヤーに届けたいんです。そのワクワクを我々開発者も知っているからこそ、つい欲張って続けてしまうんですよね。
──『FFXI』において「先を見たい」という体験は、初めて訪れたズヴァール城で鮮烈に感じました。「怖い、だけど先を見たい」という独特の緊張感は、いまでも覚えています。今回のコラボで、あの感覚が再び味わえるのが本当に楽しみです。
金山氏:
『FFXI』のダンジョンって本当にすばらしいですよね。
序盤だと、3国それぞれの敵対勢力のアジト(ダボイ、ベドー、オズトロヤ城)が該当しますが、あのエリアの緊迫感はすさまじかった。「見つかったら即、殺される」というリアリティが徹底されていましたから。
藤戸氏:
当時は戦闘不能になって、周囲に誰もいなくてレイズをもらえなければ、そのままペナルティを受け入れてホームポイントに戻るしかありませんでしたからね(笑)。
金山氏:
敵がリンクしたらまず勝てないので、絶対に見つかるわけにはいかない。ダンジョン攻略というより、ほぼ隠密任務のようでした。
グスゲン鉱山なんかを歩いていると、急に遠くからスケルトンが走ってきて一瞬で全滅させられたり。あのダンジョン特有の“ヒリつき”は格別でしたね。
藤戸氏:
そうですね。レバーを引かないと開かない扉のギミックなども、やはりダンジョンだからこそのおもしろさです。
見つかったら命がないモンスターの群れの中で、仲間と試行錯誤しながらどう切り抜けるか。脳がフル回転している状態なので、ダンジョンの攻略ってとにかく疲れるんですよね(笑)。
金山氏:
でも、その攻略の途中で、仲間たちと「どうする? 行く?」「いや、もうちょっと待って」と声を掛け合う時間が、なんだかすごくリアルだったんです。
ジリ貧になってフロアの端にみんなで固まり、周囲を敵がウロウロしている中で「どうする、どうする?」と。ああいった生々しいスリルと一体感を仲間と味わえることこそが、MMORPGというゲームが持つ最大の魅力だと思います。
──全滅したことすら、「楽しかった思い出」にもなりますよね。「あそこでバカやって死んだよな」とか、「レベルが足りないのに強敵に挑んで玉砕したね」とか。
藤戸氏:
みんなが全力で協力し合った結果の全滅もあれば、誰かひとりのうっかりミスから始まるドタバタ劇の全滅もありますよね(笑)。
「おい、やめろよー!」と言いながら、何とか生き残ろうとスタンやスリプルを必死に回す。それでも支えきれずに、最終的にみんなで床に転がって屍を晒すことになる。先に倒れたメンバーは、残った仲間が必死に抗い、そして全滅していくまでの流れをじっと見守っているわけです。
だからこそ、全滅した瞬間の連帯感が半端じゃなかった。
そのあと、みんなで「やっぱりダメだったかー!」と笑いながらチャットで反省会をする。あの瞬間がひとつの区切りになるんですよね。それまで極限まで高めていた集中力がプツンと切れて、一気に場が緩む。その、みんなでふわふわと酔ったような空気になっている時間が、またたまらなく心地よかったりするんです。
金山氏:
用意されたシナリオではなく、プレイヤー固有の「物語」が生まれるんですよね。それだけ強い刺激と体験があったからこそ、何年経っても鮮明に覚えている。
全滅はもちろんですが、パーティの誰かひとりが死んでしまったときもドラマが生まれますよね。敵のアジトの奥深くで誰かが倒れると、蘇生手段がない場合はホームポイントからまた長い距離を走って戻ってこなければならない。
本人はパーティチャットで「いま、どこそこを通過!」と実況しながらひたすら走り、残された仲間は安全なフロアの隅で、敵に見つからないように息を潜めて待つ。あの合流を待つ時間も特別なものでした。
藤戸氏:
その合流プロセス自体が妙に盛り上がったりするんですよね。「本来の目的のダンジョン攻略はどこ行った?」という状態なんですけど(笑)。
金山氏:
なんとかがんばって迎えに行こうとしたものの、結局途中で力尽きて合流できなかったり。
藤戸氏:
走っている途中で、本人がそのまま寝落ちしちゃったりね(笑)。
金山氏:
オートランを入れたまま寝落ちして、壁に向かって延々と走り続けている(笑)。チャットを送ってもずっと無反応で、キャラクターだけが壁を押し続けている状態。
藤戸氏:
周りのメンバーが「おいおい、起きろ!」って、ゲーム内のコール(コマンド)を鳴らし続けたり(笑)。
金山氏:
いやあ、本当にそんな楽しい想い出ばかりです。
藤戸氏:
単に画面の向こうにプレイヤーがいるというだけでなく、本当にいっしょに行動して、背中を預け合えるほどの信頼関係ができましたから。そうやって固い絆で結ばれた人は本当に多いと思います。
金山氏:
シビアな環境や苦難があったからこそ生まれる繋がりですよね。全滅も苦戦も、いまとなってはどれもすばらしい思い出です。喉元過ぎれば、ではないですが(笑)。
藤戸氏:
喉元過ぎるまでは、レベルが下がって悶絶しているんですけどね(笑)。
でも、20年という時を経て、多くのひとの記憶の中では、こういう経験は美化されている。いま「あのころのあの体験は良かったよね」と笑顔で語っている人も、9割方はその瞬間はブチギレていたはずです(笑)。
『FFXI』のスタンドアローン版(オフライン版)を作ってほしいという要望はいまでもよくいただくのですが、仮にゲームを再現してリリースしたとしても、あのコミュニティの中で生まれる固有の体験までは絶対に再現できないだろうな、と思っています。
──今回のコラボを展開するにあたり、ゲーム内で『FFXI』らしさを表現するために特に意識した部分はどこでしょうか。
金山氏:
『FFXI』は20年以上の歴史がある偉大なタイトルですから、かつてヴァナ・ディールを旅していた方々が、プレイした瞬間に当時の記憶を呼び覚まされるような要素を詰め込みたいと考えました。
システムの大きな枠組みから、細かな小ネタに至るまで、「はいはい、これあったわ!」と膝を打つような仕掛けですね。
先ほど話したような、脳裏にギラついた記憶として刻まれている体験をできるだけ再現したかった。まったく異なるゲームシステムですので表現の手法は違いますが、抽象的な部分で、同じような手応えの「冒険体験」を目指しました。
藤戸氏:
「どこまでリスクを取るか」という危険度のバランスが、両作で共通しているんですよね。「無茶な挑戦をしたら死ぬ」というシビアさがベースにある。
『FFXI』と『ダフネ』は、そういったゲームの根底にある手触りという部分で、非常に親和性が高かったのだと思います。
金山氏:
作りの「趣味」が近いんだと思います。『ダフネ』も「あのころのゲームのシビアさや楽しさってこうだったよね」を地で行く作品ですので、この組み合わせは必然だったのかもしれません。
──スクウェア・エニックス側から見て、今回のコラボでファンの方々にぜひ注目してほしい見どころはどこでしょうか。
藤戸氏:
難しい質問ですね……。というのも、見どころだらけなんですよ(笑)。
ストーリーの作り込みはもちろん、キャラクター全員にボイスが当てられているので、ぜひ耳を澄ませて楽しんでほしいです。
それから、コラボ内で手に入る装備品やアイテムも、『FFXI』の意匠をそのまま『ダフネ』風にリファインして落とし込んでくださっています。「えっ、こんなマニアックなものまで入れたの!?」という驚きもあると思います。
──正直、当時の『FFXI』プレイヤーからすると、「レリック」【※】という単語を聞くだけでウッとなるような……。あの途方もない苦行の記憶が呼び覚まされそうですが(笑)。
※レリック……『FFXI』屈指の作成難度で知られる、最強クラスの武器。作成・強化に膨大な素材と時間を要し、入手の困難さがプレイヤーのあいだで語り草になっている
藤戸氏:
しかも『ダフネ』側の仕様を見てみたら、「あれ、要求される素材の数がちょっと本編と違くない?」といった、思わずツッコミを入れたくなる部分もあったり(笑)。
でも、それも含めて「『ダフネ』チームは、あの苦労をこういう形でゲーム内に解釈してくれたんだな」とニヤリとしてもらえるはずです。
今回のコラボはお話の間口が非常に広くて、『FFXI』をご存じの方はもちろん、知らない方にとってもすばらしい入門の機会になると思っています。ゲーム内では当時のBGMもふんだんに流していただいているので、曲を聴いて「いいな」と思ったら、ぜひ『FFXI』のヴァナ・ディールへ原曲を聴きに、そしてオリジナルの物語を見に来てほしいですね。
──ちなみに、ゲーム内に実装されている楽曲の数はどのくらいなのでしょうか。
金山氏:
今回は10曲ほどお借りしています。また、効果音もお借りして、かなり贅沢に使わせていただいています。
『FFXI』ファンの方々にどう受け止められるかドキドキする部分もありますが、とにかく当時の熱狂を思い出してほしくて詰め込みました。
『FFXI』で過ごした日々に対する想いは人それぞれだと思いますが、良い思い出も、悪い思い出も、そして「ウッ」となるような苦行の記憶も、すべてを愛おしく思い出していただけたらうれしいです。
──今回のコラボは単にキャラクターを借りてくるだけでなく、当時の熱狂や空気感そのものを再現しようとされているのがすごく伝わってきます。
金山氏:
自分が20年前に『FFXI』のサービス初日に感じたあの衝撃を、形こそ違いますが今度は自分が『ダフネ』で再現すべきだと思って開発に取り組んでいます。時代を超えて、モノづくりの魂が繋がっているんだなと。
そういう意味でいうと、当時の『FFXI』が持っていた圧倒的な冒険感の正体って、やっぱり「情報のなさ」だったと思うんです。誰も正解を知らないし、ネットで検索しても出てこない。だから自分たちの足で探検するしかない。
あの手探りの感覚が、最高に贅沢で楽しかったんですよね。
藤戸氏:
当時はまだ、いまのような網羅された攻略サイトという考え方自体が存在しませんでしたからね。じつはあの情報の少なさ、いわゆる「情報への飢餓感」は、私たち開発側がわざと狙って煽っていた部分もあるんです。
──所属しているリンクシェル内でも、レアなネームドモンスターの出現情報などをつかんでも「絶対に外部には情報を漏らさないこと」というルールにしていました。
金山氏:
昔のコンシューマーRPGの攻略に近いノウハウの共有ですよね。学校の休み時間の教室で「あいつにはまだ教えないようにしようぜ」なんて言いながら、みんなで『ドラゴンクエスト』の秘密を共有していた、あの子どものころの感覚。あれがオンラインゲームの規模で起きていたんですよね。
藤戸氏:
当時のゲーム雑誌などのメディア記事に対する事前チェックも、我々はものすごく厳格にやっていましたね。当時からいまに至るまで、宣伝担当の片山(片山理恵子氏)が目を光らせて「この先は、まだ明かさないでください」など、厳しくチェックしていました。これもプレイヤーに余計な先入観を与えず、ゲーム内での「初見の驚き」を守るために行っていたんです。
金山氏:
ゲームにおける「体験」の本質って、やっぱり初見にこそあるべきだと思うんです。だから、あらかじめ効率的な攻略法をすべて知った上でなぞるだけなのは、私たちが届けたい冒険の遊び方とは少し違います。
もちろん、現代のユーザーさんの中には最初から全体の把握による効率や正解を求める声もありますが、そこに関しては、『ダフネ』は頑なに「沈黙」のスタンスを貫いています。
──今回のコラボのために新しいジョブ(職業)を作ったことにも驚かされました。
金山氏:
いや、これも本当に、やりたくてやったわけじゃないんですよ(笑)。
今回のコラボのストーリーを構築していく中で、「やっぱりプリッシュは外せないよね」という話になったんです。彼女のジョブは格闘で戦う「モンク」タイプですから、となると『ダフネ』側にもそれを入れないわけにはいかないな……と。完全に物語体験側からの要求による流れでした。
──とはいえ、『ダフネ』に新しいジョブを追加するとなれば、既存のすべての戦闘バランスを調整し直さなければならないわけじゃないですか。
金山氏:
そうなんですよ。だから、いまかなり困っています(笑)。
──(笑)。
金山氏:
以前に実施した『ブレイド&バスタード』とのコラボのときは、同じ『ウィザードリィ』に関連した自社IPの作品でしたし、既存の職業の延長線上で少しアレンジすれば何とか落とし込める範囲でした。でも、今回のプリッシュに関しては、モーションも含めて完全新規のフルカスタムですから。
──期間限定のコラボキャラクターひとりのために、そこまで作り込むというのは、褒め言葉ですがやっぱり狂っていらっしゃると思います(笑)。
藤戸氏:
実際、開発中のモーションを見せていただきましたけど、本当に細部まですばらしく作り込んでくださっています。レリックウェポンに関しても、「これ、完全に専用武器じゃん。ここまで作り込んで大丈夫なのかな?」とこちらが心配になるレベルでした。

金山氏:
本当にたいへんですねぇ……(遠い目)。
でも、これだけ苦労してベースを作ったわけですから、今回のコラボをぜひ定例化して、第2弾、第3弾と続けていけたりするとよいですよね。
──ちなみにイロハは「侍」ですが、『ダフネ』既存の侍とは区別されているのですよね?
金山氏:
最初は「『ダフネ』にも同じ侍がいるから、落とし込みやすいだろう」と簡単に考えていたんです。ところが、『FFXI』のイロハって槍を使うんですよね。
『ダフネ』の侍は槍を使わない。「どうすればいいんだ……」と途中で頭を抱えました。
イロハが当初はやりを使うとしても、『ダフネ』の世界に馴染む中で刀の技術を習得していった、というような設定も考えたのですが、最終的には、彼女が持つ独自のサポートスキルや立ち回りをすべて再現した結果、単純な侍という枠を超えた、独自の専用ジョブ「宮司イロハ」として着地させる形になりました。
イロハは単純な攻撃以外にも、器用にいろいろな補助ができるキャラクターなんです。そうした特徴的なスキルを網羅していくと、もはや侍ではなく、「彼女でしかない存在」になるというか。

──ということは、ザイドに関しても……。
金山氏:
騎士でもなければ、戦士でもない、まさに「暗黒騎士ザイド」という個の存在となっています。
もちろん、コラボ期間が終わって、もし彼らがこの世界で長く生活して成長していけば、いずれは『ダフネ』のスキルを習得して世界に融合していくのかもしれません。ですが、ヴァナ・ディールから来たばかりの彼らは、どこまでも「彼ら自身」なんです。
ウェポンスキルの種類も多く……これでも当初の予定よりは随分削ったんですけども。開発初期は「『FFXI』って、こんなにたくさんウェポンスキルがあったっけ?」と驚きました(笑)。
スクウェア・エニックスさんと相談しながら、開発リソース的に作れる限界の数と、そのキャラクターを象徴する特徴的なスキルとのあいだで、折衷案を探っていきました。
ただ、自分にとっていちばん印象深いのは、各ジョブに少しずつしかウェポンスキルがなかった最初期の『FFXI』なんです。
藤戸氏:
20年以上の歴史の中で、プレイヤーのレベルがどんどん上がっていきましたからね。それに伴って使える技も増えましたし、魔法の数も劇的に増えました。
金山氏:
当時の自分は、戦士で両手斧を振り回してクリティカルを出すか、サポートモンクのカウンターを狙うか、くらいしかやっていなかったので(笑)。正直に言うと、戦士とモンク以外のスキルは、あまり詳しく知らなかったんです。
藤戸氏:
まあ、その戦士ですら、いまとなってはものすごい数の技を覚えますからね(笑)。
金山氏:
本当に、各ジョブの職業スキルも含めて相当増えていますよね。
藤戸氏:
拡張データディスク『アドゥリンの魔境』のタイミングで、レベル99よりも上の強さを表現する「アイテムレベル」という仕組みを導入したんです。その時期に、「レベル75以降で使える、専用のアビリティがもっと必要だよね」という話になりまして。
ただレベル上限を上げて数値のインフレを起こすだけじゃつまらない。そう考えて、ふたつ目のスペシャルアビリティを追加したり、独自の新しいアビリティを各ジョブに実装していった結果、スキルの総数が当時の倍以上に膨れ上がっているんです。
金山氏:
私は途中で一度『FFXI』を離れてしまっているのですが、いま再び遊んだら、また当時とは違う体験になりそうですね。
藤戸氏:
そうですね、いまはソロプレイでもかなり快適に遊べるようになっています。
金山氏:
昔は本当にソロに厳しかったですよね(笑)。野良パーティに参加しようとしても、白魔道士以外のジョブはなかなか誘われなくて。
藤戸氏:
いわゆる「誘われ待ちの玉」を出したまま、ボーッと立ち尽くすしかない時間が長かったですよね(笑)。
金山氏:
そうそう(笑)。だから私は途中から、獣使いをサポートジョブにして、ペットを呼び出して疑似的なふたりパーティを組んで、地道にソロでレベルを上げていました。
藤戸氏:
あとはNPCを相棒にするフェローシップを呼んだり、とか。
ちなみに現在の『FFXI』には、さらに進化した「フェイス」というシステムがあります。魔法として歴代のNPCたちを呼び出してパーティを組めるので、じつはすべてのミッション(メインストーリー)を最初から最後まで、完全ソロプレイでクリアできるようになっているんです。
金山氏:
昔は、パーティを組む手間に疲れて冒険を諦めてしまった人もいると思うんです。そう考えると、ストーリーが完結したいまだからこそ、もう一度遊ぶには最高のタイミングなのかもしれませんね。
藤戸氏:
ヴァナ・ディールの“いま”を見直していただくには、本当にいい機会だと思います。
──もしかしたら、かつて闇の王が倒せずに挫折してしまった人が、今回の『ダフネ』コラボで初めて闇の王を撃破し、その勢いで20年以上越しに『FFXI』に復帰する……なんて展開もあるかもしれませんね。
藤戸氏:
そうなってくれるとうれしいですね。じつは、現在の『FFXI』が用意しているフリートライアル(無料体験版)って、レベル上限が50まで、期間が14日間という制限があるんです。これを、もっと皆さんが遊びやすいように大幅に緩和しようという計画を現在進めています。
──おお、それはうれしい試みですね。
藤戸氏:
今回のコラボ開催には少し間に合わないかもしれませんが、14日間という期間制限を取り払って「期間無制限」にし、レベル制限も75あたりまで無料で上げられるようにしたいと考えています。それくらい無料の範囲を広げれば、今回のコラボで興味を持ってくださった方が、そのまま『FFXI』の当時の主要なコンテンツをばっちり体験できるようになりますから。
金山氏:
ソロでサクサク遊べるバランスなら、いつでも手軽に始められますし、本当にすばらしい取り組みですね。ただその一方で、みんなで一斉に同じタイミングで同じ世界に入り込んでいく、あの当時の「第何期生」みたいなスタートの熱狂も、ゲーム体験としては格別なものがあるなと思います。
藤戸氏:
そうなんです。ちょうど先日、周年キャンペーンを展開したのですが、本当にたくさんのお客様がヴァナ・ディールに戻ってきてくださって。しかも驚いたことに、完全新規のプレイヤーの方もたくさんいらっしゃったんです。その追い風もあって、現在稼働しているサーバーのうち4つほどがパンク寸前になるほどの盛況ぶりでたいへん好評です。
金山氏:
すばらしいですね。やっぱり、ゲームとして「本物」だからこそ、時代を超えて人が集まるんだと思います。
藤戸氏:
そう言っていただけると、本当にこれまで運営をやってきた甲斐がありますね。
ただ、いまの若い世代だと『FFXI』の存在自体を知らない方も多いので、まずは知ってもらうきっかけが必要です。
最近『FFXI』に多くのプレイヤーが帰ってきてくれている大きな要因のひとつが、当社の『ファイナルファンタジーXIV』で「エコーズ オブ ヴァナ・ディール」という『FFXI』をテーマにしたクロスオーバーコンテンツを実装したことだったんです。分母の大きなタイトルですから、そこから興味を持ってこちらに足を運んでくださる方が大勢いました。
今回の『ダフネ』とのコラボも、発表されたXのポストを見ていると、作品をまったく知らないという方もいれば、「『FFXI』懐かしい!」と熱く反応してくださる方も大勢いて。これを機に「もう一度ヴァナ・ディールを遊んでみようかな」と思ってくださる方が増えたらうれしいですね。
さきほどお話したように、いまの『FFXI』はソロでもサクサク進めますし、プレイヤーもたくさんいます。かつてプレイしていた方も、ぜひこの機会にあの世界を思い出してほしいですね。
金山氏:
うーん、そんなお話をうかがっていると、プレイヤーの皆さんが『ダフネ』をやっている場合じゃなくなっちゃうかもしれない(笑)。
藤戸氏:
いやいやいや、まずは『ダフネ』のコラボを全力で遊んでください(笑)。
金山氏:
でも本当に、いまの時代にああいったクラシックなMMORPGの濃厚な手触りはなかなか味わえないですから、若いゲーマーの人にこそあの世界を体験してほしいんですよね。
「ゲームの中に、これほど深い香りや空気感を持つ世界があるんだよ」ということを知ってほしい。
藤戸氏:
昔と違って、いまはネットで検索すれば何でもわかる時代ですから、攻略情報を見ながら効率よく進めるのも今の遊び方としてはアリだと思います。ゲームとしてのシステム的な古さはどうしても否めませんが、だからこそ一周回って、いまのプレイヤーには「逆に新鮮で新しい体験」だと感じてもらえるかもしれません。
金山氏:
当時の出来事は、どんなに細かいことでも覚えているんですよ。クエストで「ダリアの花を持ってきて」と言われて、「ダリアってなんだ?」と思いながら必死に探したり。
自分の所属するサンドリア王国ではぜんぜん手に入らないアイテムが、遥か遠くの鉱山都市バストゥークだと格安で売られていると知ったときは、バストゥークにいる見ず知らずのプレイヤーに必死に個人チャット(テル)で交渉して、郵送機能で送ってもらったり。
私、根がコミュ障なんですけど、あのときは必死でした(笑)。
藤戸氏:
ちなみにいまの『FFXI』は、競売のシステムが全国で共通になっているので、どこの国にいても同じように売買できます。
金山氏:
そうなんですね。……でも、そうやってシステムが便利になると、ゲームとしては非常に快適にはなるけれど、それと同時に失ってしまう大切なものもあるんですよね。
藤戸氏:
「不便だからこそ生まれていたおもしろさ」ですよね。
あのころのMMORPGがエンタメとしていちばん輝いていた時期って、ゲームの外の世界(インターネット)で情報交換すること自体がまだ難しかったからこそ成立していたんだと思うんです。いまはゲームの外で調べれば、どんな難問でもすぐに解決策がわかってしまいますから。
だから、ゲーム内だけを理不尽に難しくする意味が薄れてしまっているんです。それをいまの感覚のままやってしまうと、単なる「不親切で不自然なゲーム」と受け止められてしまいます。
当時は、ゲームの外も内も同じくらいハードルが高くて、むしろゲームの中でほかのプレイヤーとコミュニケーションを取るほうが問題解決の手っ取り早い手段だった。招待制のソーシャルサイトが流行りましたが、『FFXI』はまさにそれをゲームの形式で行っていたんだと思います。
濃密なコミュニティを形成するプラットフォームが、webサイトだったのか、ヴァナ・ディールというゲームの世界だったのかという違いだけというか。『FFXI』はゲームそのものが巨大なSNSとして機能していたと考えれば、20年以上経ったいまでもこれほど強い絆でコミュニティが維持されていることにも納得できますよね。
──『FFXI』も『ダフネ』も、ともに偉大な歴史を持ちながらオンラインで運営されています。歴史あるシリーズをオンラインで長期運営するうえで、おふたりがもっとも大切にされているのはどんな部分でしょうか。
金山氏:
ひと言で言えば「バランス」なのですが。……本音を言ってしまえば、私はそもそも『ウィザードリィ』をオンラインにしたくなかったんですよ。
藤戸氏:
おお、まさかの回答ですね(笑)。
金山氏:
ユーザーの皆さんからもよく「スタンドアローンで出してほしい」というお声をいただきますが、私もできることならそうしたかったんです。コンシューマ向けに出すという考え方もありました。
ただ、『ダフネ』プロジェクト開始当初、ユーザーの皆さんに満足のいく『Wizardry』を届けるために、現代のゲーム業界におけるビジネスモデルや収益構造、それに伴って投入できる開発コストとクオリティの限界を突き詰めていった結果、ひとつの最適解にたどり着きました。
それが「オンラインサービスという仕組み」と「コンソールゲームのような極上の個人体験」を高次元で融合させることでした。だからこそ、その舵取りのバランスがすべてなんです。
根底には「スタンドアローンでひとりの冒険者として没入する体験」がありつつも、オンラインだからこそ新しいコンテンツが続々と投下され、つねに新鮮なプレイヤーが世界に参入してくる。既存のプレイヤーが遊び尽くしても、すぐにつぎの冒険が待っている。
そのサイクルを維持するためのバランスを取り続けなければならない。これが運営の命題であり、同時にいちばんしんどい部分でもあります。
藤戸氏:
深く共感します。『FFXI』はMMORPGというジャンルである以上、たくさんのプレイヤーが存在しないと絶対に成立しません。人がいる前提で設計されているので、いかに「世界が賑わっている状態」を維持するかに苦心を重ねてきました。
いわゆる「コンテンツ消費型」のゲームですから、新しい要素を作っても、プレイヤーはあっという間に食べ尽くしてしまう。極端な話をすれば、出す料理がなくなればお客さんはよそへ行ってしまう世界です。
だから、メインの料理を食べ尽くされても、別のごちそうを用意して楽しんでもらえる状況をどう作るか、ずっとその試行錯誤の連続でした。だから、いままさにその渦中にいる『ダフネ』さんの苦労は、まったく他人事だとは思えないです。
先ほど『FFXI』のサービス継続についての話もありましたが、ある時期までの僕らは、言ってみれば「使い古した同じお皿」を使い回していた状態だったんです。そのお皿に乗せる料理というコンテンツを、毎月ちょっとずつ変えて提供する。
そうした工夫を泥臭く積み重ねた結果、なんとか今日までお客さんが通い続けてくれる“食堂”であり得ました。
ただ、同じ材料ばかりではどうしても飽きられますし、自然減衰は避けられません。だからこそ、「このお皿自体を新しく作り直して、メニューも一新しよう」という大きな挑戦の対話を社内で進めているところなんです。
もちろん、「これからもがんばります」と口で言うだけで許してくれるほど、プレイヤーの皆さんは甘くありません。実際にお皿を新しくした姿勢を行動で示す必要があります。
先日、ゲームのサーバー設備を丸ごと最新のものへリプレースしたのもその一環です。土台となるお皿を新しくしたことで、「スクエニはまだまだ本気で『FFXI』を続ける気なんだ」とコミュニティの皆さんに伝わり、一気に前向きな空気が広がりました。
最終的には、コミュニティの皆さんが「このタイトルをずっと続けてほしい」とどれだけ声を上げてくださるか、それに尽きると思っています。その声に応えるための努力は、私たちは絶対に惜しみません。いまはそれを第一優先に考えています。
いずれは豪華なディナーパーティのような特大のイベントも仕掛けたいのですが、単なるお祭り騒ぎで終わらせては意味がない。ゲームとして本当に価値のあるものをしっかりお届けしたいです。
これまではリソースの兼ね合いで渋っていた部分もありましたが、皆さんの期待に応えるためにも、これからは新しいスペシャルメニューをガツンと作れるように、もうひと踏ん張りがんばろうと思っています。
──『FFXI』と『ダフネ』は客層がすごく似ているんじゃないかと感じます。「俺が応援しなきゃこの世界が消えちゃうかもしれない」という使命感を持っているというか(笑)。
藤戸氏:
たしかに、ときどきお客様から「もっとお金を払わせろ!」というお叱りの声が聞こえてきます。
金山氏:
『ダフネ』でも、まさにまったく同じ声をいただくことがあります。
藤戸氏:
『FFXI』はあまりグッズ展開を積極的にやっていなくて、リアルイベントのときに少し作る程度なのですが、そのたびに「なんでもっと作らないんだ」とお叱りを頂戴するんです(笑)。
「お前たちのサービスを継続させるために金を払いたいのに、なぜその金を支払う場所を用意しないんだ」という、ちょっと皮肉めいた、でも本当にありがたいファンレターをいただくこともあって。
ただ、お客様全員が全く同じ熱量ではありませんし、欲しいもの、色や形状の好みなども異なりますので、実際にグッズを大量に作ると今度は売れ残ってしまう、という現実的な課題はあります。
でも、そうやって「買い支えたい」と思ってくださる方が、心の中で留めるだけでなく、実際に声を上げて行動に移してくださっている。そこが重要なんですよ。
その熱量が、現在の『FFXI』の衰えない活気と盛り上がりに、とてつもなく貢献してくれていると自分の中では感じているんですよね。
金山氏:
『ダフネ』でも、そういった温かい空気感を日々感じています。「無料でここまでふつうに遊ばせてもらっていいの?」ですとか、「とにかく長く続いてほしいから、お布施をさせてくれ」といったお声ですね。
我々としても、そうした熱い応援の声を実際に受け取ると、「よし、もっとがんばってサービスを維持して、ストーリーを完結させるための手段を泥臭く講じていこう」という前向きなトーンになります。
だからこそ、プレイヤーの皆さんにはぜひ声を大にして応援を発信し続けてほしいですし、それがあれば絶対に私たちは諦めません。
……それにしても、なぜ両作のプレイヤーはここまで同じような傾向になるんでしょうね?
──おそらく、『FFXI』も『ダフネ』も、キャラや武器やかけた金額だけで「強く」なるわけではないというか。プレイヤーの経験、知識も含めての強さといいますか。だからこそ、プレイヤー自身がその世界とキャラクターに愛着を持てるような気がします。
金山氏:
『ダフネ』では、短期的な商売としての効率よりも、プレイヤーにとって「居心地のいい素晴らしい世界でありたい」という想いが根底にあります。私たちが提供するのは、少しシビアで恐ろしくもありながら、驚きと発見に満ちたどこまでもワクワクする楽しい世界であり、そこでプレイヤーにひとりの冒険者としてとことん楽しんでもらい、その対価としてお金をいただくのが本来の仕事ですから。
それ以外の目的に対し、あまりギラギラしていない姿勢が、結果的に共通しているのかもしれません。
藤戸氏:
『FFXI』は、基本的には月額課金以外の追加課金要素がほぼ存在していません。
戦闘のテンポも現代のゲームに比べれば非常にゆったりしていますし、年配の方がマイペースに遊ぶのにもちょうどいい。いつも冗談半分で言っているんですけど、「これ、将来的に老人ホームに導入されていてもいいんじゃないか?」って思うくらいです(笑)。
──確かにそれはいいかもしれません。ゲーム内でコミュニケーションもとれますし。
藤戸氏:
そうなんですよ。たとえば、みんなでパーティを組んで、攻略方法を真剣に相談するとか。
最近のゲームはシステム側で「緩く繋がる」ように設計されているものが多いですが、当時の『FFXI』はもっとガッチガチに濃密な関係性を強いていた世界でした。
だからこそ、単なるネット上のフレンド以上の強い絆になりがちなんですよね。実際、20年前のリンクシェルのメンバーとリアルで飲み会を続けているという方たちが、いまもたくさんいます。まるで学生時代の部活の繋がりに近い、ものすごく強固なコミュニティが人生の中に形成されているというか。
金山氏:
まさに青春を共に過ごした同級生のような、一生モノの絆ですよね。
藤戸氏:
ただ、『FFXI』はそこまで強固な人間関係を作ってしまったがゆえに、当時は人生を狂わされてしまった人も山ほどいる罪深いタイトルでもあるんですけども(笑)。
でも、おかげさまでサービス開始から20年以上の歳月を経て、当時リアルタイムでハマっていた若者たちが、いまやゲーム業界や各メディアで偉くなっていて、決定権を持つポジションに就いているんです。そして、彼らが我々のところに「ぜひ『FFXI』とコラボさせてくれませんか」と熱い企画書を持ち込んでこられるようになったという(笑)。
──(笑)。今回の『ダフネ』とのコラボも、まさにそうした歴史の延長線上にあるわけですね。
藤戸氏:
ええ。こんな未来が待っているなんて、20年前の誰が予想できたでしょうか。ちょっと不思議な運命の巡り合わせだなと思いながら、最近はありがたく仕事に励んでいます。
当時『FFXI』を狂おしいほど愛してくださった方々が、大人になって今度は「恩返しがしたい」という名目で、いろいろな企画を提案してくださる。
開発者のひとりとして、つくづく『FFXI』をここまで諦めずに続けてきて本当に良かったなと思います。同時に「皆さんの人生のインフラみたいにしちゃって、お時間を奪ってしまって本当にごめんなさい」と、ちょっとだけ申しわけなく思ったりもしますね(笑)。
──せっかくの機会ですから、お互いに聞いてみたかったことなどがあれば、ぜひぶつけていただければ。
金山氏:
藤戸さんは、サービス開始からずっと『FFXI』の現場にいらっしゃるんですか?
藤戸氏:
ええ、このまえサービス24周年を迎えましたが、ずっと『FFXI』ですね。
金山氏:
『ダフネ』はまだ始まったばかりで、四半世紀近くに及ぶ歴史の長さには到底及びませんが……。ひとつのタイトルを守り続けた20年以上の歳月というのは、振り返ってみていかがですか?
藤戸氏:
開発の立ち上げ当初から現在までずっと現場に残り続けているのは、気がつけば社内でも私ひとりだけになってしまいました。一度現場を離れて戻ってきた人や、別部署で偉くなった人間は山ほどいますけど。
24年がどうだったかと聞かれるとひと言では難しいのですが……。最初の1、2年くらいは「もう十分やった、さすがに飽きたな」と思って、別の新作に関わりたいという気持ちにもなったんです。ただ、ある一線を越えてからは、この世界を守ることが完全に自分の「日常」になりました。
半年前からつぎの年間計画を立てて、ルーチンを回していく。私がディレクターに就任した2016年から、その仕事のペースはまったく変わっていません。
金山氏:
日常、ですか。
藤戸氏:
ええ。「毎年同じことを繰り返しているな」と感じる時期もありました。ただ、ルーチンに飽きないのは、限られた人的・データ的な全リソースをやりくりして、年に一度の周年記念で突拍子もないリアルイベントを仕掛けたり、それに連動してゲーム内に新しい驚きを実装したりと、つねに変化を起こし続けてきたからです。
現場で手を動かすクリエイター陣は時代とともにどんどん入れ替わりますが、私はチーム運営や予算管理といった土台を支えながら、そうやって世界に刺激を与え続ける役割にシフトしていった感覚ですね。
金山氏:
なるほど、そういう感じなんですね。
──そういう意味では、今回の『ダフネ』からのコラボ打診は、良い刺激になったのではないですか。
藤戸氏:
それは本当に。まったく予想もしていなかったので最高の刺激であり、驚きでしたね。
金山氏:
コラボの内容に関しては、ファンの皆さんに喜んでいただけるよう本当に吟味を重ねました。
じつは私自身、『ダフネ』の舞台である「奈落」を最後まで描き切るという大きな使命を背負っているのですが、これを全部作り終えるには、相当な年数がかかる可能性があるんです。
だからこそ、ひとつのタイトルと長年付き合っていくのはどんな感覚なのだろうと、藤戸さんの歩まれてきた道にとても興味があったんです。
藤戸氏:
もし金山さんが「まだまだやりたいことがたくさんある」という状態なのであれば、アイデアが枯渇することはありませんよ。きっと、「途中でほかのゲームを作りたくなる」といった目移りする気持ちに支配されることもないはずです。
金山氏:
……そうですね。幸いなことに、『ダフネ』の世界でやりたいことは、いまでも山ほどあります。
藤戸氏:
『ダフネ』はとにかく硬派ですよね。その姿勢が本当にブレない。
金山氏:
いや、私たちも別に「頑なに硬派にしよう」と意固地になっているわけではないのですが、突き詰めていくとなぜかそうなっちゃうんですよ。
藤戸氏:
絵的な面でも、キャラクターデザインは本当にすばらしい着地をしていると思います。安易な派手さはないけれど、たしかな気品があって、かといって地味でストイックすぎるわけでもない。
この「ちょうどいい塩梅」が絶妙ですよね。
金山氏:
ゲームとしてのエンタメ成分と、世界観としてのリアリティのバランスについては、社内のイラストレーターと毎回激しいせめぎ合いをしていますね。
当然、ある程度の売上を立てなければサービス自体が終了してしまい、結果的にプレイヤーの皆さんを不幸にしてしまう。サービスを永続させるために魅力的な冒険者を追加していく必要がある中で、この渋めの世界観にどう調和させるか。
派手すぎず、地味すぎず、それでもプレイヤーの皆さんの琴線に触れるデザインの落としどころを、つねに模索しています。
藤戸氏:
まさに絶妙なラインだと思います。じつは『FFXI』のキャラクターデザインにも通ずる部分があるのですが、デザイナーさんの「ここだけは絶対に譲らない」という強いプライドや作家性が、どのキャラクターからもビシビシ伝わってくるんです。
本当に見事なバランス感覚ですし、時折少しテイストを変えた意外性のあるキャラクターを投下してくるあたり、いつも「お上手だなあ」と感心していました。
金山氏:
デザイナー陣も含めて、チーム全員がそこの「越えてはいけない一線」を深く理解して作ってくれています。生みの苦しみはもちろんありますが、そうやってキャラクターを形作っていく過程は、やっぱりクリエイターとして最高に楽しい仕事ですね。
藤戸氏:
金山さんに聞いてみたかったんですけど、『ダフネ』ってダンジョンRPGなのに、草原みたいな開けた屋外フィールドもありますよね。あれ、すごく新しいなと思って。
金山氏:
『ウィザードリィ』はもともとダンジョンというクローズドな舞台がメインですから、どうしても世界を感じるフィールドが少なめだったんですね。
でも『FFXI』やほかのゲームには、広大なフィールドを歩いて、その遥か先にある目的地へ到達する体験がある。あの感覚は絶対に入れていきたいと思っていたんです。
草原や砂漠があって、草原を越えて北国に行く、砂漠を三日三晩歩いて東の国へ行く、そういう旅情を描きたかったんですね。あのフィールドも、同じような草原のマップを3つくらいひたすら冒険して、「これ、いつたどり着くんだ……」と思ってもらう作りにしていて。
藤戸氏:
まさにそう思いました(笑)。
金山氏:
じつは『FFXI』で広大なフィールドを走っていた当時、まったく同じことを感じていたんです。「あれ、この先に本当に町があるのかな?」と不安になりながら走るあの感覚。
藤戸氏:
そうそう! 『ダフネ』で草原を走っていて、同じ感覚に陥ったんですよ。
金山氏:
時間をかけてようやくマップの北端に到達して、「これでようやく町か」と思ったら、つぎのエリアも再び広いフィールドという(笑)。
藤戸氏:
草原の奥で荷馬車を見つけたときは、ものすごく安堵しました(笑)。
金山氏:
あれも、ひとつの「冒険」の形だと思うんですよ。先が見えないからこそおもしろい。そういう手探り感をやりたかったんです。
藤戸氏:
しかもフィールド上にモンスターの影があっちこっちウロウロしていて、ヒタヒタと近づいてくるじゃないですか。あれをいかに避けながら進むかという立ち回りは、まさに『FFXI』のインビジやスニークを彷彿とさせて。「うわ、めちゃくちゃ『FFXI』っぽいな」とニヤリとしました。
一方で、ダンジョン内に入ると通路が細いからすぐに捕まっちゃって、それはそれですごく怖いんですよね。
金山氏:
私たちのモノづくりって、もともとユーザーに与えたい「体験」がまず最初にあって、その体験を実現するために「ゲームシステム」をあとから作る、という順序なんです。だから、システム的な統一感でいえば変なところが多々あるんですよね。
ゲームシステムありきでロジカルに見ると、「もっとこうすれば快適なのに」という部分がいっぱいあります。草原についても「果てしない旅の体験」を与えたいからこそ、あの形になりました。プリッシュの件も、「この設定なら格闘タイプの新職業にするしかない」という体験が先です。
昔のゲームの思い出、楽しかった記憶、味わってみたい映画的な体験があって、それをゲームシステムに力技で落とし込む。だから、どうしてもヘンなものができちゃうんです。
藤戸氏:
ちなみに、第二の奈落の水路で勢いよく流される展開がありますけど、あれはいったいどういう体験を味わってほしかったんですか。
金山氏:
昔のRPGの思い出で、よくわからない未知の場所に流砂や濁流、移動床で流される体験が強烈に忘れられなくて(笑)。あのハラハラ感を現代のプレイヤーにも味わってほしいなと思って実装しました。
そのほかにも、クエスト前に地図をなぞりながら作戦説明を受けるブリーフィングさながらのシーンや、周囲の登場人物たちが結局はみんなプレイヤーを頼ってくるところなんかは、まるで自分が映画の主人公になったような体験だとも思っていて。そういったRPG(ロールプレイングゲーム)の没入体験をみんなにも味わってほしかったんですね。
過去に衝撃を受けたゲームやアニメ、映画などの体験が抽象化されて詰め込まれているといいますか。
藤戸氏:
『ダフネ』を遊んでいると、そうやって「なんだこれは」とびっくりする展開が放り込まれますよね。「はじまりの奈落」でも、途中にゴブリンが出てくる洞窟があって、「いまのレベルなら大丈夫だろう」と思って足を踏み入れたら、散々な目に遭うとか(笑)。
金山氏:
近年のゲームは難易度のカーブが綺麗に右肩上がりに傾斜しているものが多いですけど、昔のゲームって、橋を渡っただけで急に敵が強くなったり、何でもない場所に唐突にえげつなく強い敵が配置されていたりしたじゃないですか。ああいう理不尽に突然遭遇する驚きを、現代のプレイヤーにも味わってもらいたかったんです。
──そういった、いい意味で突き放したところも、『FFXI』と『ダフネ』に共通していますね。
金山氏:
エリアチェンジしただけで、急に敵の強さが跳ね上がって「やばいやばい」と全力で逃げ帰るような(笑)。しかも『FFXI』だと、そうやって自分ひとりが必死に逃げ帰っても、エリアの出口に敵が大量に溜まってしまって、その直後に入ってきた無関係な別プレイヤーが瞬殺されてしまうというオマケ付きでしたから。
藤戸氏:
意図しないMPKですね(笑)。
金山氏:
でもやっぱり、そういう理不尽さも含めて楽しかったですよね。『ダフネ』でも、そういった予測不能な体験を感じてほしいというのが根底にあります。
藤戸氏:
すごくよくわかります。低レベル向けのエリアを移動していたら、巨大な羊のノートリアスモンスターがドシンドシンと足音を響かせてこっちへ向かってきて、「なんだあれ?」と思いながら好奇心で軽く触ってみたら瞬殺される、みたいな。
金山氏:
最初は絶対に手が出ないけれど、強くなってからあとで倒す、というリベンジ展開は最高ですよね。
じつは『ダフネ』の草原にも、まさにそういうエリアボス的な敵キャラをつねに徘徊させたかったんですよ。クエストで大怪鳥という巨大なモンスターが出現するのですが、本当はつねに上空をリアルタイムで飛んでいて、プレイヤーを見かけると急降下して襲ってくるという設計にしたかったんです。
技術的、工数的なハードルが高くて泣く泣く断念したのですが、いずれ実現したいですね。
藤戸氏:
ロマンがありますよね。「あいつ、いつになったら倒せるんだろ」とか。
──『ダフネ』は、すごく強いボスと遭遇して「これは死にバトルかな」と思って負けたらふつうにゲームオーバーになった、という展開も多いですよね(笑)。
金山氏:
そういう理不尽な罠は、できる限り作らないように気をつけてはいるんですけども(笑)。
藤戸氏:
『ファイナルファンタジー』シリーズでは、イベント的に全滅するバトルがよくあったので、「この戦闘、本当に負けていいやつかな?」と疑心暗鬼になる感覚はたしかにあります。
金山氏:
「このダメージの通り方、もしかして工夫すれば倒せるのか?」みたいな。
藤戸氏:
そうやってジタバタしていると、敵から非道な量のダメージが飛んできたり(笑)。
金山氏:
「あ、やっぱりこれは負けイベントなんだな」と安心してそのまま死ぬと、ふつうにゲームオーバーになってタイトルに戻されるという(笑)。
藤戸氏:
(笑)。そういう意味では、やっぱり作りやノリがすごく似ていますね。もういっそのことドリコムさんが「FFXI-2」を作ったらいいんじゃないですか(笑)。
金山氏:
(笑)では『ダフネ』が落ち着いたあとに……って、そのころには私、もうおじいちゃんになっているかもしれません(笑)。
──ぜひ、その前段階としてコラボ第2弾も期待したいです。登場キャラクターには、まだ『FFXI』の人気種族、タルタルがいないですし(笑)。
金山氏:
そうですね。気が早いかもしれないですけど、今回のコラボをお客様に好評で受け止めてもらえたら、どんどん追加していきたいです。まだ実現できていないアイデアもいっぱいありますから。
ただ、コラボをやるたびに『FFXI』のジョブが増えていったら、とんでもないことになりそうですが。
藤戸氏:
いま、全部で22ジョブありますからね。そうやってコラボのたびに増えていって、いずれ『ダフネ』が『FFXI』にどんどん侵食されて、最終的には『FFXI』そのものになる、というのはどうでしょうか?(笑)
金山氏:
以前、『ブレイド&バスタード』コラボをおこなったときも、実施後に「これは絶対に第2弾をやったほうがいい」という話が自然に持ち上がって、実際に第2弾を実現したんですね。今回の『FFXI』コラボも、それくらいお客様に愛されて、いつか定例化していくことになったら良いですよね。
──『ダフネ』ともコラボした『ブレイド&バスタード』はアニメ化も決定しました。アニメの放映タイミングでは、再々コラボを望む声が高まりそうですね。
金山氏:
やりたいアイデアは山ほどあるのですが、リソースをどう確保すればいいのかが本当に悩ましくて……。とにかく開発者が足りないんです。
藤戸氏:
それはとてもよくわかります。『FFXI』も非常に古いシステムとプログラムで動いているので、その構造を熟知している人間でないと、新しい要素を何ひとつ作ることができないんです。
かと言って、いまの時代に新しく入ってきた優秀な開発者に、20年以上前のレガシーな専用技術をゼロから学んでもらうのは、キャリアを考えてもナンセンスじゃないですか。
だからこそ、古い仕組みそのものを現代風に作り変えないと、いずれ誰も手を加えられなくなってしまう。そこが『FFXI』の目下最大の課題です。
金山氏:
独自のこだわりやピーキーなシステムを突き詰めれば突き詰めるほど、開発作業はどうしても属人的な「職人技」になってしまいますし、コードのレガシー化も防げません。
結果として、もしそのゲームが大きな収益を上げられたとしても、将来的にそれをメンテナンスして引き継いでいける人がどこにもいない、という壁に突き当たってしまうんですよね。
藤戸氏:
「その職人さんが現場にいるうちに、どこまで形にできるか」という時間との勝負になってしまいますから。
金山氏:
まさに、その巨匠にしか作れないような、唯一無二の伝統工芸の壺を作っている世界観に近いかもしれません(笑)。
藤戸氏:
本当に、人間国宝のようなベテランたちが作っている状態です(笑)。
そして当然、年齢を重ねて退職される方も増えてきているので、システムがどんどんブラックボックス化してしまう。
そうしたクローズドな技術は、できるだけいまのうちにオープンにしていかないと本当にマズいと思っています。最近はAI技術がすさまじい勢いで進化を遂げていますから、それらを活用して、レガシーな古い仕組みを現代のコードに変換するようなアプローチも、真剣に模索していかなければいけないのかなと。
──ただ、『FFXI』は立ち上げの開発筆頭メンバーである田中弘道さん、石井浩一さんたちが離れたあとも、こうして今日までサービスが継続しています。属人性はありつつも、そのバトンは間違いなく引き継がれているのだと感じています。
藤戸氏:
そうですね、本当にギリギリのところで受け継いできました。……うーん、でもやっぱり、これから先を考えると、まだまだ難しい宿題が山積みですね。
──今回の相性のよさを見ると、ドリコムとスクウェア・エニックスで新たな共同プロジェクトが立ち上がってもおかしくないのかなと。
金山氏:
昔のゲームの楽しかったコアの部分を抽象化して、現代に再構築する作業は、ドリコムが一定得意とするところだと思っています。ですから『FFXI』についても、現代の最新フォーマットでありながら、当時の体験や手触りのまま新しく蘇る、といった試みは純粋におもしろそうですよね。
藤戸氏:
いいですね。非常に夢があります(笑)。
──ちなみに今回の『ダフネ』と『FFXI』のコラボ期間は6週間とのことですが、ユーザーからの反響や声が大きくなれば、期間を延長する可能性などはあるのでしょうか。
金山氏:
一度決まったスケジュールがあるため期間そのものの延長は難しいかもしれませんが、熱いご要望をたくさんいただければ、どこか別のタイミングで復刻開催を検討することは十分にあり得ると思います。
とにかく楽しんでいただきたいですし、もちろんSNSなどでさまざまなご意見を交わして盛り上がってほしいです。
『FFXI』の膨大な歴史の中から、今回のコラボに向けてどの要素や体験を切り出すべきか、プレイヤーの皆さんごとにこだわりや好みがあると思います。
私たちは「今回はここを全力で切り出して、このように表現しました」という形で提示していますので、そこも含めていろいろと語り合っていただければうれしいですね。
──それでは最後に、今回のコラボの見どころを教えていただきつつ、おふたりからファンの皆さんへメッセージをお願いします。
金山氏:
もう、思いの丈は語り尽くした気がします(笑)。
藤戸氏:
『FFXI』は20周年のときに、サイゲームズさんの『グランブルーファンタジー』とコラボさせていただいているので、他社さんとのコラボは2回目になるのですが、それぞれ形式がまったく異なります。ある意味、「最新の技術と表現で描かれた『FFXI』」を見られる絶好の機会だと思っています。
ファンの皆さんはぜひ見逃さずに触ってみてほしいですし、これを機にまた『FFXI』のヴァナ・ディールにも戻ってきてくれるとうれしいです。
金山氏:
昔『FFXI』のプレイヤーだったという方にとっては、あのときの冒険の記憶が鮮烈に呼び起こされるような、大小さまざまなこだわりをゲーム内に散りばめました。
どのディテールに胸を熱くするかは、本当に人それぞれだと思います。もし少しでもピンと来たものがあれば、SNSなどで何かしらの反応をいただけると開発一同の励みになります。
そうしてコラボを目一杯楽しんでいただいたら、また『FFXI』を遊びに行ってみる、といった双方向の行き来が生まれたら、こんなにうれしいことはありません。<了>
期間限定のコラボに、これほどの熱意を持って膨大な量のコンテンツを詰め込む──。
一見すると常識では考えられないほどの”狂気”とも思えるこだわり。その正体こそが、「システムより先に、体験がある」という両氏に共通したモノづくりの哲学だった。
かつて多くのプレイヤーを震え上がらせた唐突な全滅も、容赦のない理不尽な死すらも、そこでは「驚きと冒険の体験」として緻密に設計されている。そしてそのこだわりは、金山氏がいちプレイヤーとして味わい、藤戸氏が作り手として形作ってきた、『FFXI』の熱狂の原体験に根ざしている。
『ダフネ』と『FFXI』。誕生した時代もゲームとしての姿形も違えど、ふたりがその先に見据え、プレイヤーへ届けようとするものの本質は、驚くほど同じだった。
作り手の哲学が妥協なく注ぎ込まれた、この6週間。あのころに心を震わせた冒険者も、いままさに奈落を往く者も、その手でぜひ、この体験を確かめてほしい。

















