──どちらのタイトルも遊んでいる身からすると、共通して「冒険する楽しさ」が詰まっていると感じます。世界が少しずつ広がっていく感覚、「一歩ずつ先に進んでいる」という手応えが良いですよね。
金山氏:
『FFXI』の初期は、まさにそうでしたね。
未知の地へのフロンティアスピリッツを刺激されて、その先に何があるかわからない旅の末に船着き場(セルビナ)にたどり着いたり、ひとりで突っ走って、暗中模索のジャグナー森林を越えてジュノを見つけたときの感動といったら……。
当時のジュノはまだ少数のプレイヤーしか到達できていなくて、「自分もそこにたどり着けたんだ」という達成感と、「この先に何があるんだろう」という発見の連続が、本当におもしろかったんです。
藤戸氏:
「冒険とはまさにそれだよね」という話は、開発メンバーともよくしていました。どれだけ通い慣れた場所でも、新しいエリアが開放された瞬間に、みんな目を輝かせて駆け出していったわけですから。
未知のモンスターや風景、その先にある街やドロップアイテム……。そこに夢が詰まっているんですよね。行ってみて何もなかったとしても、可能性があるということ自体が冒険なんです。
『ウィザードリィ』も同じで、マッピングしていない闇の中に、もしかしたら階段があるかもしれないし、泉があって休めるかもしれない。答えがわからないからこそ、一歩進みたくなる。この探求心こそが「冒険」の原点だと思います。
この感覚は、両作に共通していると思います。
金山氏:
やっぱり、「発見」こそがいちばんの楽しみなんですよね。だからこそ、安易にマップを使い回すのではなく、苦労してでも新規で作りたくなる。
藤戸氏:
まあ、そればかりやりすぎると、開発現場が死んでしまうんですけどね(笑)。
金山氏:
ええ(笑)。でも、ただの行き止まりだと思ったらその先に道が続いていた、というような驚きをプレイヤーに届けたいんです。そのワクワクを我々開発者も知っているからこそ、つい欲張って続けてしまうんですよね。
──『FFXI』において「先を見たい」という体験は、初めて訪れたズヴァール城で鮮烈に感じました。「怖い、だけど先を見たい」という独特の緊張感は、いまでも覚えています。今回のコラボで、あの感覚が再び味わえるのが本当に楽しみです。
金山氏:
『FFXI』のダンジョンって本当にすばらしいですよね。
序盤だと、3国それぞれの敵対勢力のアジト(ダボイ、ベドー、オズトロヤ城)が該当しますが、あのエリアの緊迫感はすさまじかった。「見つかったら即、殺される」というリアリティが徹底されていましたから。
藤戸氏:
当時は戦闘不能になって、周囲に誰もいなくてレイズをもらえなければ、そのままペナルティを受け入れてホームポイントに戻るしかありませんでしたからね(笑)。
金山氏:
敵がリンクしたらまず勝てないので、絶対に見つかるわけにはいかない。ダンジョン攻略というより、ほぼ隠密任務のようでした。
グスゲン鉱山なんかを歩いていると、急に遠くからスケルトンが走ってきて一瞬で全滅させられたり。あのダンジョン特有の“ヒリつき”は格別でしたね。
藤戸氏:
そうですね。レバーを引かないと開かない扉のギミックなども、やはりダンジョンだからこそのおもしろさです。
見つかったら命がないモンスターの群れの中で、仲間と試行錯誤しながらどう切り抜けるか。脳がフル回転している状態なので、ダンジョンの攻略ってとにかく疲れるんですよね(笑)。
金山氏:
でも、その攻略の途中で、仲間たちと「どうする? 行く?」「いや、もうちょっと待って」と声を掛け合う時間が、なんだかすごくリアルだったんです。
ジリ貧になってフロアの端にみんなで固まり、周囲を敵がウロウロしている中で「どうする、どうする?」と。ああいった生々しいスリルと一体感を仲間と味わえることこそが、MMORPGというゲームが持つ最大の魅力だと思います。
──全滅したことすら、「楽しかった思い出」にもなりますよね。「あそこでバカやって死んだよな」とか、「レベルが足りないのに強敵に挑んで玉砕したね」とか。
藤戸氏:
みんなが全力で協力し合った結果の全滅もあれば、誰かひとりのうっかりミスから始まるドタバタ劇の全滅もありますよね(笑)。
「おい、やめろよー!」と言いながら、何とか生き残ろうとスタンやスリプルを必死に回す。それでも支えきれずに、最終的にみんなで床に転がって屍を晒すことになる。先に倒れたメンバーは、残った仲間が必死に抗い、そして全滅していくまでの流れをじっと見守っているわけです。
だからこそ、全滅した瞬間の連帯感が半端じゃなかった。
そのあと、みんなで「やっぱりダメだったかー!」と笑いながらチャットで反省会をする。あの瞬間がひとつの区切りになるんですよね。それまで極限まで高めていた集中力がプツンと切れて、一気に場が緩む。その、みんなでふわふわと酔ったような空気になっている時間が、またたまらなく心地よかったりするんです。
金山氏:
用意されたシナリオではなく、プレイヤー固有の「物語」が生まれるんですよね。それだけ強い刺激と体験があったからこそ、何年経っても鮮明に覚えている。
全滅はもちろんですが、パーティの誰かひとりが死んでしまったときもドラマが生まれますよね。敵のアジトの奥深くで誰かが倒れると、蘇生手段がない場合はホームポイントからまた長い距離を走って戻ってこなければならない。
本人はパーティチャットで「いま、どこそこを通過!」と実況しながらひたすら走り、残された仲間は安全なフロアの隅で、敵に見つからないように息を潜めて待つ。あの合流を待つ時間も特別なものでした。
藤戸氏:
その合流プロセス自体が妙に盛り上がったりするんですよね。「本来の目的のダンジョン攻略はどこ行った?」という状態なんですけど(笑)。
金山氏:
なんとかがんばって迎えに行こうとしたものの、結局途中で力尽きて合流できなかったり。
藤戸氏:
走っている途中で、本人がそのまま寝落ちしちゃったりね(笑)。
金山氏:
オートランを入れたまま寝落ちして、壁に向かって延々と走り続けている(笑)。チャットを送ってもずっと無反応で、キャラクターだけが壁を押し続けている状態。
藤戸氏:
周りのメンバーが「おいおい、起きろ!」って、ゲーム内のコール(コマンド)を鳴らし続けたり(笑)。
金山氏:
いやあ、本当にそんな楽しい想い出ばかりです。
藤戸氏:
単に画面の向こうにプレイヤーがいるというだけでなく、本当にいっしょに行動して、背中を預け合えるほどの信頼関係ができましたから。そうやって固い絆で結ばれた人は本当に多いと思います。
金山氏:
シビアな環境や苦難があったからこそ生まれる繋がりですよね。全滅も苦戦も、いまとなってはどれもすばらしい思い出です。喉元過ぎれば、ではないですが(笑)。
藤戸氏:
喉元過ぎるまでは、レベルが下がって悶絶しているんですけどね(笑)。
でも、20年という時を経て、多くのひとの記憶の中では、こういう経験は美化されている。いま「あのころのあの体験は良かったよね」と笑顔で語っている人も、9割方はその瞬間はブチギレていたはずです(笑)。
『FFXI』のスタンドアローン版(オフライン版)を作ってほしいという要望はいまでもよくいただくのですが、仮にゲームを再現してリリースしたとしても、あのコミュニティの中で生まれる固有の体験までは絶対に再現できないだろうな、と思っています。
──今回のコラボを展開するにあたり、ゲーム内で『FFXI』らしさを表現するために特に意識した部分はどこでしょうか。
金山氏:
『FFXI』は20年以上の歴史がある偉大なタイトルですから、かつてヴァナ・ディールを旅していた方々が、プレイした瞬間に当時の記憶を呼び覚まされるような要素を詰め込みたいと考えました。
システムの大きな枠組みから、細かな小ネタに至るまで、「はいはい、これあったわ!」と膝を打つような仕掛けですね。
先ほど話したような、脳裏にギラついた記憶として刻まれている体験をできるだけ再現したかった。まったく異なるゲームシステムですので表現の手法は違いますが、抽象的な部分で、同じような手応えの「冒険体験」を目指しました。
藤戸氏:
「どこまでリスクを取るか」という危険度のバランスが、両作で共通しているんですよね。「無茶な挑戦をしたら死ぬ」というシビアさがベースにある。
『FFXI』と『ダフネ』は、そういったゲームの根底にある手触りという部分で、非常に親和性が高かったのだと思います。
金山氏:
作りの「趣味」が近いんだと思います。『ダフネ』も「あのころのゲームのシビアさや楽しさってこうだったよね」を地で行く作品ですので、この組み合わせは必然だったのかもしれません。
──スクウェア・エニックス側から見て、今回のコラボでファンの方々にぜひ注目してほしい見どころはどこでしょうか。
藤戸氏:
難しい質問ですね……。というのも、見どころだらけなんですよ(笑)。
ストーリーの作り込みはもちろん、キャラクター全員にボイスが当てられているので、ぜひ耳を澄ませて楽しんでほしいです。
それから、コラボ内で手に入る装備品やアイテムも、『FFXI』の意匠をそのまま『ダフネ』風にリファインして落とし込んでくださっています。「えっ、こんなマニアックなものまで入れたの!?」という驚きもあると思います。
──正直、当時の『FFXI』プレイヤーからすると、「レリック」【※】という単語を聞くだけでウッとなるような……。あの途方もない苦行の記憶が呼び覚まされそうですが(笑)。
※レリック……『FFXI』屈指の作成難度で知られる、最強クラスの武器。作成・強化に膨大な素材と時間を要し、入手の困難さがプレイヤーのあいだで語り草になっている
藤戸氏:
しかも『ダフネ』側の仕様を見てみたら、「あれ、要求される素材の数がちょっと本編と違くない?」といった、思わずツッコミを入れたくなる部分もあったり(笑)。
でも、それも含めて「『ダフネ』チームは、あの苦労をこういう形でゲーム内に解釈してくれたんだな」とニヤリとしてもらえるはずです。
今回のコラボはお話の間口が非常に広くて、『FFXI』をご存じの方はもちろん、知らない方にとってもすばらしい入門の機会になると思っています。ゲーム内では当時のBGMもふんだんに流していただいているので、曲を聴いて「いいな」と思ったら、ぜひ『FFXI』のヴァナ・ディールへ原曲を聴きに、そしてオリジナルの物語を見に来てほしいですね。
──ちなみに、ゲーム内に実装されている楽曲の数はどのくらいなのでしょうか。
金山氏:
今回は10曲ほどお借りしています。また、効果音もお借りして、かなり贅沢に使わせていただいています。
『FFXI』ファンの方々にどう受け止められるかドキドキする部分もありますが、とにかく当時の熱狂を思い出してほしくて詰め込みました。
『FFXI』で過ごした日々に対する想いは人それぞれだと思いますが、良い思い出も、悪い思い出も、そして「ウッ」となるような苦行の記憶も、すべてを愛おしく思い出していただけたらうれしいです。
──今回のコラボは単にキャラクターを借りてくるだけでなく、当時の熱狂や空気感そのものを再現しようとされているのがすごく伝わってきます。
金山氏:
自分が20年前に『FFXI』のサービス初日に感じたあの衝撃を、形こそ違いますが今度は自分が『ダフネ』で再現すべきだと思って開発に取り組んでいます。時代を超えて、モノづくりの魂が繋がっているんだなと。
そういう意味でいうと、当時の『FFXI』が持っていた圧倒的な冒険感の正体って、やっぱり「情報のなさ」だったと思うんです。誰も正解を知らないし、ネットで検索しても出てこない。だから自分たちの足で探検するしかない。
あの手探りの感覚が、最高に贅沢で楽しかったんですよね。
藤戸氏:
当時はまだ、いまのような網羅された攻略サイトという考え方自体が存在しませんでしたからね。じつはあの情報の少なさ、いわゆる「情報への飢餓感」は、私たち開発側がわざと狙って煽っていた部分もあるんです。
──所属しているリンクシェル内でも、レアなネームドモンスターの出現情報などをつかんでも「絶対に外部には情報を漏らさないこと」というルールにしていました。
金山氏:
昔のコンシューマーRPGの攻略に近いノウハウの共有ですよね。学校の休み時間の教室で「あいつにはまだ教えないようにしようぜ」なんて言いながら、みんなで『ドラゴンクエスト』の秘密を共有していた、あの子どものころの感覚。あれがオンラインゲームの規模で起きていたんですよね。
藤戸氏:
当時のゲーム雑誌などのメディア記事に対する事前チェックも、我々はものすごく厳格にやっていましたね。当時からいまに至るまで、宣伝担当の片山(片山理恵子氏)が目を光らせて「この先は、まだ明かさないでください」など、厳しくチェックしていました。これもプレイヤーに余計な先入観を与えず、ゲーム内での「初見の驚き」を守るために行っていたんです。
金山氏:
ゲームにおける「体験」の本質って、やっぱり初見にこそあるべきだと思うんです。だから、あらかじめ効率的な攻略法をすべて知った上でなぞるだけなのは、私たちが届けたい冒険の遊び方とは少し違います。
もちろん、現代のユーザーさんの中には最初から全体の把握による効率や正解を求める声もありますが、そこに関しては、『ダフネ』は頑なに「沈黙」のスタンスを貫いています。
──今回のコラボのために新しいジョブ(職業)を作ったことにも驚かされました。
金山氏:
いや、これも本当に、やりたくてやったわけじゃないんですよ(笑)。
今回のコラボのストーリーを構築していく中で、「やっぱりプリッシュは外せないよね」という話になったんです。彼女のジョブは格闘で戦う「モンク」タイプですから、となると『ダフネ』側にもそれを入れないわけにはいかないな……と。完全に物語体験側からの要求による流れでした。
──とはいえ、『ダフネ』に新しいジョブを追加するとなれば、既存のすべての戦闘バランスを調整し直さなければならないわけじゃないですか。
金山氏:
そうなんですよ。だから、いまかなり困っています(笑)。
──(笑)。
金山氏:
以前に実施した『ブレイド&バスタード』とのコラボのときは、同じ『ウィザードリィ』に関連した自社IPの作品でしたし、既存の職業の延長線上で少しアレンジすれば何とか落とし込める範囲でした。でも、今回のプリッシュに関しては、モーションも含めて完全新規のフルカスタムですから。
──期間限定のコラボキャラクターひとりのために、そこまで作り込むというのは、褒め言葉ですがやっぱり狂っていらっしゃると思います(笑)。
藤戸氏:
実際、開発中のモーションを見せていただきましたけど、本当に細部まですばらしく作り込んでくださっています。レリックウェポンに関しても、「これ、完全に専用武器じゃん。ここまで作り込んで大丈夫なのかな?」とこちらが心配になるレベルでした。

金山氏:
本当にたいへんですねぇ……(遠い目)。
でも、これだけ苦労してベースを作ったわけですから、今回のコラボをぜひ定例化して、第2弾、第3弾と続けていけたりするとよいですよね。
──ちなみにイロハは「侍」ですが、『ダフネ』既存の侍とは区別されているのですよね?
金山氏:
最初は「『ダフネ』にも同じ侍がいるから、落とし込みやすいだろう」と簡単に考えていたんです。ところが、『FFXI』のイロハって槍を使うんですよね。
『ダフネ』の侍は槍を使わない。「どうすればいいんだ……」と途中で頭を抱えました。
イロハが当初はやりを使うとしても、『ダフネ』の世界に馴染む中で刀の技術を習得していった、というような設定も考えたのですが、最終的には、彼女が持つ独自のサポートスキルや立ち回りをすべて再現した結果、単純な侍という枠を超えた、独自の専用ジョブ「宮司イロハ」として着地させる形になりました。
イロハは単純な攻撃以外にも、器用にいろいろな補助ができるキャラクターなんです。そうした特徴的なスキルを網羅していくと、もはや侍ではなく、「彼女でしかない存在」になるというか。

──ということは、ザイドに関しても……。
金山氏:
騎士でもなければ、戦士でもない、まさに「暗黒騎士ザイド」という個の存在となっています。
もちろん、コラボ期間が終わって、もし彼らがこの世界で長く生活して成長していけば、いずれは『ダフネ』のスキルを習得して世界に融合していくのかもしれません。ですが、ヴァナ・ディールから来たばかりの彼らは、どこまでも「彼ら自身」なんです。
ウェポンスキルの種類も多く……これでも当初の予定よりは随分削ったんですけども。開発初期は「『FFXI』って、こんなにたくさんウェポンスキルがあったっけ?」と驚きました(笑)。
スクウェア・エニックスさんと相談しながら、開発リソース的に作れる限界の数と、そのキャラクターを象徴する特徴的なスキルとのあいだで、折衷案を探っていきました。
ただ、自分にとっていちばん印象深いのは、各ジョブに少しずつしかウェポンスキルがなかった最初期の『FFXI』なんです。
藤戸氏:
20年以上の歴史の中で、プレイヤーのレベルがどんどん上がっていきましたからね。それに伴って使える技も増えましたし、魔法の数も劇的に増えました。
金山氏:
当時の自分は、戦士で両手斧を振り回してクリティカルを出すか、サポートモンクのカウンターを狙うか、くらいしかやっていなかったので(笑)。正直に言うと、戦士とモンク以外のスキルは、あまり詳しく知らなかったんです。
藤戸氏:
まあ、その戦士ですら、いまとなってはものすごい数の技を覚えますからね(笑)。
金山氏:
本当に、各ジョブの職業スキルも含めて相当増えていますよね。
藤戸氏:
拡張データディスク『アドゥリンの魔境』のタイミングで、レベル99よりも上の強さを表現する「アイテムレベル」という仕組みを導入したんです。その時期に、「レベル75以降で使える、専用のアビリティがもっと必要だよね」という話になりまして。
ただレベル上限を上げて数値のインフレを起こすだけじゃつまらない。そう考えて、ふたつ目のスペシャルアビリティを追加したり、独自の新しいアビリティを各ジョブに実装していった結果、スキルの総数が当時の倍以上に膨れ上がっているんです。
金山氏:
私は途中で一度『FFXI』を離れてしまっているのですが、いま再び遊んだら、また当時とは違う体験になりそうですね。
藤戸氏:
そうですね、いまはソロプレイでもかなり快適に遊べるようになっています。
金山氏:
昔は本当にソロに厳しかったですよね(笑)。野良パーティに参加しようとしても、白魔道士以外のジョブはなかなか誘われなくて。
藤戸氏:
いわゆる「誘われ待ちの玉」を出したまま、ボーッと立ち尽くすしかない時間が長かったですよね(笑)。
金山氏:
そうそう(笑)。だから私は途中から、獣使いをサポートジョブにして、ペットを呼び出して疑似的なふたりパーティを組んで、地道にソロでレベルを上げていました。
藤戸氏:
あとはNPCを相棒にするフェローシップを呼んだり、とか。
ちなみに現在の『FFXI』には、さらに進化した「フェイス」というシステムがあります。魔法として歴代のNPCたちを呼び出してパーティを組めるので、じつはすべてのミッション(メインストーリー)を最初から最後まで、完全ソロプレイでクリアできるようになっているんです。
金山氏:
昔は、パーティを組む手間に疲れて冒険を諦めてしまった人もいると思うんです。そう考えると、ストーリーが完結したいまだからこそ、もう一度遊ぶには最高のタイミングなのかもしれませんね。
藤戸氏:
ヴァナ・ディールの“いま”を見直していただくには、本当にいい機会だと思います。
──もしかしたら、かつて闇の王が倒せずに挫折してしまった人が、今回の『ダフネ』コラボで初めて闇の王を撃破し、その勢いで20年以上越しに『FFXI』に復帰する……なんて展開もあるかもしれませんね。
藤戸氏:
そうなってくれるとうれしいですね。じつは、現在の『FFXI』が用意しているフリートライアル(無料体験版)って、レベル上限が50まで、期間が14日間という制限があるんです。これを、もっと皆さんが遊びやすいように大幅に緩和しようという計画を現在進めています。
──おお、それはうれしい試みですね。
藤戸氏:
今回のコラボ開催には少し間に合わないかもしれませんが、14日間という期間制限を取り払って「期間無制限」にし、レベル制限も75あたりまで無料で上げられるようにしたいと考えています。それくらい無料の範囲を広げれば、今回のコラボで興味を持ってくださった方が、そのまま『FFXI』の当時の主要なコンテンツをばっちり体験できるようになりますから。
金山氏:
ソロでサクサク遊べるバランスなら、いつでも手軽に始められますし、本当にすばらしい取り組みですね。ただその一方で、みんなで一斉に同じタイミングで同じ世界に入り込んでいく、あの当時の「第何期生」みたいなスタートの熱狂も、ゲーム体験としては格別なものがあるなと思います。
藤戸氏:
そうなんです。ちょうど先日、周年キャンペーンを展開したのですが、本当にたくさんのお客様がヴァナ・ディールに戻ってきてくださって。しかも驚いたことに、完全新規のプレイヤーの方もたくさんいらっしゃったんです。その追い風もあって、現在稼働しているサーバーのうち4つほどがパンク寸前になるほどの盛況ぶりでたいへん好評です。
金山氏:
すばらしいですね。やっぱり、ゲームとして「本物」だからこそ、時代を超えて人が集まるんだと思います。
藤戸氏:
そう言っていただけると、本当にこれまで運営をやってきた甲斐がありますね。
ただ、いまの若い世代だと『FFXI』の存在自体を知らない方も多いので、まずは知ってもらうきっかけが必要です。
最近『FFXI』に多くのプレイヤーが帰ってきてくれている大きな要因のひとつが、当社の『ファイナルファンタジーXIV』で「エコーズ オブ ヴァナ・ディール」という『FFXI』をテーマにしたクロスオーバーコンテンツを実装したことだったんです。分母の大きなタイトルですから、そこから興味を持ってこちらに足を運んでくださる方が大勢いました。
今回の『ダフネ』とのコラボも、発表されたXのポストを見ていると、作品をまったく知らないという方もいれば、「『FFXI』懐かしい!」と熱く反応してくださる方も大勢いて。これを機に「もう一度ヴァナ・ディールを遊んでみようかな」と思ってくださる方が増えたらうれしいですね。
さきほどお話したように、いまの『FFXI』はソロでもサクサク進めますし、プレイヤーもたくさんいます。かつてプレイしていた方も、ぜひこの機会にあの世界を思い出してほしいですね。
金山氏:
うーん、そんなお話をうかがっていると、プレイヤーの皆さんが『ダフネ』をやっている場合じゃなくなっちゃうかもしれない(笑)。
藤戸氏:
いやいやいや、まずは『ダフネ』のコラボを全力で遊んでください(笑)。
金山氏:
でも本当に、いまの時代にああいったクラシックなMMORPGの濃厚な手触りはなかなか味わえないですから、若いゲーマーの人にこそあの世界を体験してほしいんですよね。
「ゲームの中に、これほど深い香りや空気感を持つ世界があるんだよ」ということを知ってほしい。
藤戸氏:
昔と違って、いまはネットで検索すれば何でもわかる時代ですから、攻略情報を見ながら効率よく進めるのも今の遊び方としてはアリだと思います。ゲームとしてのシステム的な古さはどうしても否めませんが、だからこそ一周回って、いまのプレイヤーには「逆に新鮮で新しい体験」だと感じてもらえるかもしれません。
金山氏:
当時の出来事は、どんなに細かいことでも覚えているんですよ。クエストで「ダリアの花を持ってきて」と言われて、「ダリアってなんだ?」と思いながら必死に探したり。
自分の所属するサンドリア王国ではぜんぜん手に入らないアイテムが、遥か遠くの鉱山都市バストゥークだと格安で売られていると知ったときは、バストゥークにいる見ず知らずのプレイヤーに必死に個人チャット(テル)で交渉して、郵送機能で送ってもらったり。
私、根がコミュ障なんですけど、あのときは必死でした(笑)。
藤戸氏:
ちなみにいまの『FFXI』は、競売のシステムが全国で共通になっているので、どこの国にいても同じように売買できます。
金山氏:
そうなんですね。……でも、そうやってシステムが便利になると、ゲームとしては非常に快適にはなるけれど、それと同時に失ってしまう大切なものもあるんですよね。
藤戸氏:
「不便だからこそ生まれていたおもしろさ」ですよね。
あのころのMMORPGがエンタメとしていちばん輝いていた時期って、ゲームの外の世界(インターネット)で情報交換すること自体がまだ難しかったからこそ成立していたんだと思うんです。いまはゲームの外で調べれば、どんな難問でもすぐに解決策がわかってしまいますから。
だから、ゲーム内だけを理不尽に難しくする意味が薄れてしまっているんです。それをいまの感覚のままやってしまうと、単なる「不親切で不自然なゲーム」と受け止められてしまいます。
当時は、ゲームの外も内も同じくらいハードルが高くて、むしろゲームの中でほかのプレイヤーとコミュニケーションを取るほうが問題解決の手っ取り早い手段だった。招待制のソーシャルサイトが流行りましたが、『FFXI』はまさにそれをゲームの形式で行っていたんだと思います。
濃密なコミュニティを形成するプラットフォームが、webサイトだったのか、ヴァナ・ディールというゲームの世界だったのかという違いだけというか。『FFXI』はゲームそのものが巨大なSNSとして機能していたと考えれば、20年以上経ったいまでもこれほど強い絆でコミュニティが維持されていることにも納得できますよね。

