いま読まれている記事

作り込みのすさまじさにコラボ先も驚嘆──『Wizardry Variants Daphne』×『FFXI』コラボが期間限定なのにジョブもキャラも武器も戦闘システムもワンオフで作り込まれた理由を両ディレクターに聞く

article-thumbnail-260803w

1

2

3

4

──スクウェア・エニックスとしては、コラボの打診をいただいた際、スムーズにOKが出たのでしょうか。

藤戸氏:
最初にお話をうかがったときは、率直に「なぜいまこのタイミングで、数多あるタイトルの中から『FFXI』を選んでくれたんだろう?」と驚きました。ただ、お話を詳しくうかがっていくと、ドリコムの開発メンバーの皆さんがかつて『FFXI』を熱心にプレイされていた“ガチ勢”だらけだということがわかりまして(笑)。

じつは『FFXI』側としては、近年は他社さんとのコラボに対して、こちらから能動的に動くのが非常に難しい状況でした。先ほどもお話しした通り、開発リソースに余裕がないため、新しいデータを作るのがとにかくたいへんなんです。

もしコラボを行うとなれば、お相手の作品のキャラクターや装備品を『FFXI』内で高いクオリティで再現しなければなりませんが、それを用意すること自体が開発的に極めて高いハードルになってしまう。

「私たちのいまのリソース状況では、お相手のブランドに見合う十分なクオリティをお返しできないのではないか」、「こちらからコラボを提案するのは少し図々しいかもしれない」という控えめな思いもあり、結果として他社タイトルとのコラボにはほとんど関わってきませんでした。

そんな中、今回はドリコムさん側から「そちらの手間は取らせません。すばらしいものを作ります」と熱烈なオファーをいただいたんですね。しかも、作っていただけるのが「『FFXI』を誰よりも愛してくれている開発者たち」なのであれば、これほど信頼できる話はありません。そういった状況でしたので、「ぜひ前向きに検討させてください」とお返事させていただきました。

社内に対しても、単なるお祭りとしてではなく『ダフネ』という作品が持つ確かなクオリティと魅力を丁寧に説明し、承認を得ました。RPGの原点とも言える『ウィザードリィ』の血を引く作品に、日本のRPGを牽引してきた『ファイナルファンタジー』が本格的に絡んでいく。これはゲーム業界にとっても非常に歴史的なことだなと胸が熱くなり、正式にお受けさせていただいた、という経緯になります。

──コラボ内容を見せていただいて、「ここまでやるか」という驚きがすごかったです。

金山氏:
お話ししたように、『ダフネ』にとっては今回が他社作品との初めてのコラボになります。

しかも、お相手が『FFXI』ですから、どこまで現実的に作れるかといった細かいことは一度置いておいて、「とにかくやりたいんです」という熱い想いをぶつけるために資料を作り上げました。やれることは全部やろうと。

本編の最初のダンジョンである「はじまりの奈落」でも、プレイヤーの皆さんには「この先、何が起こるんだろう」という驚きや発見があったと思うんです。それは、コラボでも提供し続けなければならない。中途半端な内容ではガッカリされますし、『ダフネ』のファンは目が肥えていらっしゃるので、手抜きはすぐに見抜かれてしまいます。

「『ダフネ』はコラボでもここまでやるのか」と感じてほしくて、ディテールにこだわって資料を作っていたら、いつの間にか物量が膨大になってしまいました(笑)。

キャラクターのイラストをどれだけ描き起こすかというところから始まり、コラボ用のシナリオを作成し、プロットを確認していただいて、物語を肉付けしていく……。そのすべての過程で、アイデアがどんどん増えていきました。「いっそ、いろいろな物語を混ぜてしまおうか」といった話も出てきたりして、最初の設計段階から本当にたいへんでした。

でもじつは、最初に想定したときの半分ぐらいのボリュームには減ったんですよ。

──え? あれでも減っているのですか? たぶん、新しい「奈落」を開発するのと、ほぼ変わらないぐらいの労力をかけてらっしゃるのだろうなと……。

金山氏:
コラボを実施できるとわかったときから、その覚悟で作ってきました。もちろん、「奈落」準備への影響はできるだけ軽くなるように、という前提はありつつ。

やるのであれば驚いてもらわないと、『ダフネ』はもちろん、『FFXI』のプレイヤーに対しても失礼になりますから。期間限定のコラボだからとか、そんな事情はまったく関係なく。

──藤戸さんは、ドリコムから提出されたコラボ内容をどうご覧になられていたのでしょうか。

藤戸氏:
通常ですと「当社の別タイトルが、こういうキャラクターをこういう形で出すので監修をお願いします」という形でいただくのですが、そのときのボリュームってあまり多くないですよ。絵はもちろん使う分だけ枚数も上がってくるんですが、クエストに注目した場合のテキスト量は、ファイル1個にまとめられるくらいの分量ですね。それくらいの出力を1回分として、それを複数回実施するようなケースが多いんです。

でも、今回のコラボはもうすごかったです(笑)。「通常のコラボ1回分」のボリュームじゃなくて、カースドホイールによる2周目、3周目の展開まで当たり前のように用意されているという(笑)。

2周目、3周目の展開でシナリオが分岐するので、「こっちのルートでここまで話が進んでいるなら、この段階でこういう展開になるのはおかしいんじゃないか?」という組み合わせの確認を、監修担当がものすごく頭を抱えてやっていました(笑)。

最初は、プロットの段階からしっかり確認させていただいて、そこに間違いがなければ、あとはテキストの最終修正を入れるだけで済むだろうと予想していたんです。そういう段取りを取らせていただいたんですけど、それだけだと済まない内容というか……今回は仕組みやUIなんかも作られた上に、FFXIにはない「音声」もあるわけじゃないですか。そういった意味ではこちらの見積もりが甘かったというべきか、監修側のこちらが最初に驚かされた感じになりました(笑)

期間としては半年弱、毎月の定例会議だけではなく、基本はSlack経由で「ああでもない、こうでもない」と、ずっと密にやり取りを続けていました。

──ズヴァール城が登場することについても、ドリコムさん側からの提案だったんですか。

金山氏:
そうですね。『FFXI』は歴史の長い作品ですから、最初のプロットを書く段階で「どの部分を切り取り、どのキャラクターをどうクロスオーバーさせていくか」ということに非常に悩みました。開発メンバーの中でも、とくに『FFXI』をずっと遊び込んでいた人間が中心になって考えてくれたんです。

これまでの歩みに敬意を表して、「ひとつずつの拡張データディスクに合わせる形でエピソードを組み込んでいくのがベストだろう」ということで、この形になりました。

──『FFXI』チームとしては、「ここを持ってきてくれたんだ」という驚きはありましたか?

藤戸氏:
『FFXI』のどの部分をテーマに持ってきてもらうのがいちばんわかりやすいかと言ったら、やっぱり「闇の王」なんですよ。象徴的な存在ですし、物語の区切りとしても非常に美しい。ですから、そこをご提案いただいたことにはすごく納得しました。

ただ、「なぜそのキャラクターがここにいるのか」、「なぜズヴァール城がそこにあるのか」を監修するにあたって、最初にお願いしたのがヴァナ・ディールの世界と『ダフネ』の世界は「混じり合ってほしくない」ということでした。

もし完全に世界が混ざってしまうと、『ダフネ』の設定がヴァナ・ディール側にも影響を及ぼしてしまいます。「ここで『ダフネ』のキャラクターがこう動いたから、これまでの歴史を修正しなければならない」といった矛盾が生じると、20年以上積み上げてきた膨大なストーリーをすべて見直さなければならなくなってしまうんです。

それはナンセンスですし、お互いの世界にとってよくない。だからこそ、「世界の直接的な干渉はなしにしてください」とお伝えしました。

その代わり、世界どうしが「響き合う」ような形であれば問題ありません。ヴァナ・ディールの世界の中で起こった出来事や強い意志や個性のぶつかりが、形には残らない微弱な情報として、別の世界の何かに観測される、感じ取られる、という理屈です。世界観の境界を行き来できるキャラクターについては、そのままの姿で登場することもある程度許容しています。「それ以外のキャラクターは、別の表現や違ったアプローチで出現するなら大丈夫です」ということを最初の約束事にさせてもらったんです。

このルールを定めたことで、結果的にさまざまなキャラクターが『ダフネ』の世界で活躍するための自由度が生まれました。ヴァナ・ディールでの設定上の制約、枷が外れた状態で、自由にアイデアを広げていただけるようになったので、そのルール上で本当にいろいろと考えていただいたと感じています。

『Wizダフネ』&『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念対談。期間限定なのにジョブも新システムもほぼ「使い捨て」の作り込み_008

──最初に物語をクエスト的に描いて、そこからキャラクターの選定に入っていったのでしょうか。

金山氏:
物語のテーマ性に沿うかという面と、あとは純粋に「どういうキャラクターが求められているか」というビジネス的な観点の両面からすり合わせて、最終的に誰を登場させるかを決めていきました。

──登場キャラクターは、すんなりと決まったのですか。

金山氏:
いえ、そこはかなり難航しました。作れるアセットの数に限りがある中で、ゲーム内の人気キャラクターやビジネス的な視点も含めて「これも出したい、あれも出したい」という候補の中から厳選しなければならなかったので。

──かつ、それを『ダフネ』のベースに落とし込まなければいけないわけですよね。

金山氏:
そうなんです。『ダフネ』とは職業も種族も異なるキャラクターたちなので、どうしてもゼロからフルカスタムで作ることになります。完全な新規起こしになるため、作る量がとんでもないことになっていて……。新しく作る量が多すぎて、現場はいま、うれしい悲鳴をあげ続けています(笑)。

──3Dモデルをゼロから作成するだけでなく、武器もそれに合わせて作らなければならないわけですよね。

金山氏:
さらに言えば、技の見せ方にしても、ヴァナ・ディールと『ダフネ』では物理法則やリアリティの基準が異なっているんですね。そのため、『ダフネ』向けに再構築するにあたって「どこまでのアレンジなら許されるか」は、デザイナーと悩みながら作っていきました。

藤戸氏:
でも、本当に忠実に再現していただいていますよ。何と言っても『FFXI』本編よりもキャラクターが綺麗です。細密なポリゴンで作られていて、動きも驚くほどスムーズですから。今回は日本語だけではなく、英語のボイスまで付いているので、ものすごくリッチですよね。

金山氏:
英語ボイスに関しては、じつは再収録までやっているんです。一度は収録を問題なく終えたのですが、原作キャラの特徴や魅力を再現するにあたり、収録した音声を改めて確認したところ「ニュアンスが少し違うな」となり。

開発チーム内に熱心な『FFXI』ファンのスタッフがいて、彼がこだわってゴネてくれたおかげで、録り直すことになりました。良い意味でのこだわりですが……あ、ちなみに私は今回はゴネていないですからね(笑)。

藤戸氏:
(笑)。日本語ボイスは、『ディシディア ファイナルファンタジー』などで当時担当していただいた声優さんをベースにしているので、すごく「公式感」がある仕上がりになっています。

──2026年の最新技術で『FFXI』のキャラクターを表現したらこうなる、という一端が見られるわけですね。1回きりのコラボで終わらせるのがもったいないクオリティですね。

藤戸氏:
次回に関しても、こちらはいつでもウェルカムですよ(笑)。

『Wizダフネ』&『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念対談。期間限定なのにジョブも新システムもほぼ「使い捨て」の作り込み_009

──登場する3キャラクター(プリッシュ、ザイド、イロハ)ですが、ザイドはガルカですから『ダフネ』にはいないキャラクターの大きさですし、3Dモデルの制作はとくにたいへんだったのでは?

金山氏:
ザイドは本当にすごいですよ。何がすごいかって、体のサイズが大きすぎて、そのまま置くと椅子に座れなかったり、壁にめり込んだりしてしまうんです(笑)。

当初、「少し大柄な冒険者」くらいに考えていたのですが、ガルカは予想外の巨体で、既存のマップのどこに行っても収まらないという。

藤戸氏:
ザイドは設定上、とくに大きいんですよ。本編でも、遠目だとオークと間違えられるくらいの巨体ですから(笑)。今回はそうした絵の部分だけでなく、UIやゲームシステムに至るまで、本当にゼロから丁寧に起こしてくださっていて頭が下がります。

金山氏:
彼が登場するほぼすべてのシーンで、ザイド専用のレイアウトやカメラアングルを用意しました。まさにフルカスタムで、相当な手間をかけて作り込んでいます。

藤戸氏:
これでノウハウができたということで、今後の新展開でもガルカを出せますね(笑)。

──ゲームシステム面でもかなり踏み込んだ仕掛けがありますが……。

金山氏:
バトルに『FFXI』おなじみの「リンク」や「ヘイト」といった概念を取り入れています。

『FFXI』をプレイしていた方々に、あのころの思い出にどっぷりと浸ってほしかったんですね。物語やキャラクターだけではなく、実際のゲーム体験としても「そう、これこれ!」と感じられる要素を入れたかったんです。

泣く泣く削った部分もありますが、象徴的なシステムは原作と形は違えど、いくつか実現できました。

──今回導入される新システムは、今後の『ダフネ』に恒久的に残るわけではなく、このコラボ限りの実装になるのでしょうか。

金山氏:
贅沢なことに、完全にワンオフのほぼ「使い捨て」になります。現場としては「どこかで流用したい」とはつねづね考えており、機会があれば……。

抽象的な部分で似た価値観を持っている両タイトルとはいえ、いざ形にするとなると、やはり『FFXI』ならではの良さは完全な専用カスタムを施さないと再現できないんですよ。改めて、すばらしいシステムだなと実感させられました。

──しかも期間限定ですから、ワンオフでそこまでやるというのはすごいなと……。スクウェア・エニックスから見ても、ドリコムのこだわりは、良い意味で「狂っている」と感じるのでは?

藤戸氏:
本当におかしいですよ(笑)。これほど手間ひまをかけて、ワンオフの要素を作り込んでくださること自体、こちらとしてはもう信じられない仕事です。

なんだったら、ドリコムさんで「FFXI-2」を作ってほしいくらいです(笑)。スマートフォン版としてリリースしていただけるなら、こちらはもう言うことなしです。

──(笑)。『FFXI』的な武器強化や、ノートリアスモンスター(NM)【※】の要素までありますよね?

※NM(ノートリアスモンスター)……特別な名前を持つ強力なモンスター。討伐すると希少なアイテムが得られる

『Wizダフネ』&『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念対談。期間限定なのにジョブも新システムもほぼ「使い捨て」の作り込み_010
(画像は『FFXI』20周年記念サイトト「WE ARE VANA’DIEL」より)

金山氏:
ヴァナ・ディールでの体験を『ダフネ』でも味わってほしくて、「NM狩り」のようなシステムも組み込んでいます。

「リンク」や「ヘイト」も含め、『ダフネ』が新しい仕組みを追加しがちな点について、昔のファミコンやスーパーファミコンの時代って、ちょっと尖った変なシステムを持つゲームがたくさんあって、新しく買って帰るときは本当にワクワクしましたよね。娯楽だからこそ、そういう新鮮な驚きやワクワク感は大事にしたいなと思って。

──BGMも『FFXI』の原曲が『ダフネ』の中で流れるわけですよね。

金山氏:
プレイヤーの皆さんにとって大切な「想い出の曲」の数々は、どうしてもお借りしたかったんです。

──正直、かつて『FFXI』をプレイしていた人たちは、あの音楽を聴けるというだけで「ちょっと遊んでみようかな」となると思います。それくらい、あの旋律は脳裏に刷り込まれていますから。

金山氏:
そうですよね。曲を聴いた瞬間、あのころの思い出や熱狂がブワッと蘇ってきますから。

藤戸氏:
ここまでやるなら、「プレイオンライン」のオープニング曲も入れておけばよかったかもしれませんね(笑)。

──それ、金山さんは本当にいまから実装してしまいそうですけども(笑)。

金山氏:
それは楽しいかもしれないですね。いまからでもいけるかな?(笑)

──(笑)。当時、冒険に出かけるときは必ずプレイオンラインの画面と音楽を聞いていたわけですから、すべてのプレイヤーがグッとくる楽曲には間違いありません。繰り返しとなりますが、本当に今回のコラボは驚くことばかりです。

藤戸氏:
さきほどプロットの話がありましたが、プロットやシナリオのテキスト自体は、もちろん最初の段階で綺麗に監修を終えているわけです。

でも、そのあとに「ちょっとした演出を追加したので、ここに使うテキストも監修してください」といった感じで、つぎからつぎへと新しいものが追加で送られてきたんです(笑)。

『Wizダフネ』&『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念対談。期間限定なのにジョブも新システムもほぼ「使い捨て」の作り込み_011

金山氏:
実際にテストプレイを重ねていくと、どうしても「ここはもっと良くできるよね」という部分が出てきてしまって……。

その都度、追加のご相談をお願いすることが増えてしまいました。本当に申し訳ございません。

藤戸氏:
いえいえ。むしろ、クオリティを限界まで追い求めたいという情熱が、同じ開発者として痛いほどよくわかるんですよ。

実際にゲームを作っていると、「ここを直したい」と気づく瞬間は必ずありますし、直すからには、関連するほかの部分も合わせて修正しないと全体の辻褄が合わなくなりますから。

ギリギリのタイミングまで試行錯誤を繰り返してデータを送ってくださるというのは、それだけ本気で向き合ってくれている証拠と言いますか。それはモノづくりにこだわるゲームメーカーなら、どこも同じだと思います。ただ……さすがにコラボの開催発表もされましたし、そろそろ一段落していただけると助かるな、とは思います(笑)。

金山氏:
現場でもさすがに最近は、「これを足すと、またスクエニさんの監修チームのお手間をいただくことになるぞ……」と、及び腰になり始めています(笑)。

──今回のコラボでは「逆転の右手」の演出が変更されているそうですが、どのように決まったのでしょうか?

金山氏:
『FFXI』のキャラクターたちを、そのまま『ダフネ』のルールで「逆転」させるわけにはいかなかったということですね。どう成立させるかは、かなり頭を悩ませました。

──通常、『ダフネ』のキャラクターは「骨」から蘇生して誕生するので、根本から表現を変える必要があったということですね。

金山氏:
キャラクターの設定的に、どうしても譲れないNGラインがあるわけです。「では、どうすれば世界観を壊さずに仲間として迎えられるか」を模索していきました。

藤戸氏:
『FFXI』では直接的な「死」を絵で表現することはほとんどなくて、基本的には「戦闘不能」になるんです。ですのでヴァナ・ディールのキャラクターが戦闘不能を越えて「死」を迎えるときはすごく特別で、お話として大体は光の泡のようになって「クリスタルに帰っていく」という表現になるんです。だから、そもそも骨が残らないんですね。

仮に『FFXI』のキャラクターが『ダフネ』の世界に迷い込んだとしても、骨を拾ってきて復活させるというのは、ヴァナ・ディールの存在のあり方として絶対に合致しなかったんです。

そこで、こちらからも「骨からの復活は難しいので、何か別の媒体で呼び出す形にできないでしょうか」と提案させていただき、両社で議論を重ねていちばん良い着地点を探っていきました。

金山氏:
その結果、今回は「巻物」から登場するという形になりました。ボロボロに朽ちたスクロールに「逆転の右手」を使って時間を巻き戻すと、書かれていた「転移の呪文」が蘇る、という演出になっています。

それがウィザードリィでおなじみの転移呪文「マロール」なのか、あるいは『ファイナルファンタジー』の魔法「テレポ」なのか。その魔術の輝きに導かれるようにして、『FFXI』のキャラクターたちがこちらの世界へ転送されてくる、という流れになっています。

『Wizダフネ』&『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念対談。期間限定なのにジョブも新システムもほぼ「使い捨て」の作り込み_012

──なるほど。演出を変えれば、どんな作品とでもコラボできる可能性があるわけですから、今後の展開も楽しみです。しかし、「マロール」と「テレポ」という両作品の伝統的な魔法に絡めているのは、アイデアがすばらしいですね。

金山氏:
何の根拠もないご都合主義的な演出にしてしまうと、目が肥えている大人のプレイヤーの皆さんは冷めてしまうと思うんです。

世界観がカッチリしている作品だからこそ、そこにある設定やルールは意地でも守らないといけない。そういうシビアなリアリティラインは、ゲームに没入するうえでとても大事ですから。

自分が夢中になっていた初期の『FFXI』にも、移動の手間を含めて、そういう「世界のガチ感」がありましたよね。

──『ダフネ』もそうですが、『FFXI』もゲーム内のあらゆるシステムに対して、世界観の裏付けを徹底されていた印象があります。

藤戸氏:
開発当初の『FFXI』は、『EverQuest』【※1】などから知見を得て、日本のお客様に向けて、より受け入れられやすいように噛み砕いた形でMMORPGを実現しようという試みでした。

ただ、ゲーム内のあらゆる表現に対して「なぜそうなるのか」という理由付けをしておかないと、プレイヤーは納得してくれないし、ただの「システム的な記号」に成り下がってしまうという懸念が当初からあったんです。

たとえば、モンスターがなぜ急に目の前に湧き出る(ポップする)のか、力尽きたらどうなるのか。プレイヤーが死んだ場合、あらかじめ設定した拠点に戻る。この「なぜそこに戻るのか」という理屈についても『ファイナルファンタジー』の世界観に落とし込んで設定を作っていきました。ヴァナ・ディールという世界の創生に関して、当時ディレクターだった石井浩一さんが強くこだわられていた部分ですね。

そういう点を踏まえて、パーティーを組んだとき、「なぜ遠く離れているメンバーどうしで声が届いて、周りの一般プレイヤーには聞こえないのか」といった些細なチャットの仕組みですら、世界観を踏まえた理屈付けを考えていたんです。

いわゆるギルドチャットに相当する「リンクシェル」【※2】というシステムも、現代の通信技術の概念をそのまま持ってくるのは違和感があったため、遠くまで声が届くアイテムを作り、そこにチャットが響いているという世界設定としているんです。

※1 『EverQuest』(エバークエスト)……1999年3月、Sony Online Entertainmentによってアメリカでサービスが開始されたWindows用のMMORPG。プレイヤーは「ノーラス(Norrath)」と呼ばれる3D世界を冒険。探検や戦闘が重視されたゲームデザインが特徴。

※2 リンクシェル……『FFXI』で、プレイヤー同士がグループを作り会話できる仕組み。作中では「遠くまで声が届く貝殻」という世界設定で表現され、現在のギルド/コミュニティに近い役割を果たした。

『Wizダフネ』&『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念対談。期間限定なのにジョブも新システムもほぼ「使い捨て」の作り込み_013

金山氏:
当時からそこまで徹底されていたんですね。

藤戸氏:
そこは譲れない部分でした。

金山氏:
まさにそういったところが、今回のコラボの思想的にも大きなポイントだと思っています。

ゲーム的な便利機能としてのシステムを、いかに抽象化してその世界へ違和感なく落とし込むか。両タイトルにはその共通のこだわりがあったんですよね。

そこを丁寧に作り込むからこそ、プレイヤーは外からゲームを俯瞰するのではなく、その世界のひとりの住人として入り込み、本物の「冒険」を楽しめる。『FFXI』には間違いなくそれがありましたから。

藤戸氏:
端的に言うと、「メタな視点を極力排除した」ということになりますね。

冒険者の目線で見たときに、そこに存在する理由がちゃんと腑に落ちるからこそ、自然にその道具を使い、世界を旅できる。「ロールプレイ」という言葉をそのまま体現できる世界をMMORPGの中に実装したかったんです。

当時のプロデューサーだった田中弘道さんもときどきおっしゃっていましたが、ちょっと原点に立ち返って「『ファイナルファンタジー』って本来こんな感じだったよね」というエッセンスを、当時の開発者はそれぞれの場面で追求していったと。

それらが混然一体となってひとつの世界を紡ぎ出し、ちゃんとその世界で生きていける空間として、深い「冒険」ができるものに仕上がったのかなと解釈しています。

金山氏:
じつは『ダフネ』の開発現場でも「メタ視点の排除」と「冒険体験の再現」をいつも議論しているんです。

『FFXI』と『ダフネ』は、その体験価値を何より重視しているという点において、ゲームとしての血流というか文脈がすごく似ているなと感じました。

藤戸氏:
先ほど私が『ダフネ』の設定の綿密さに驚いたという話をしましたが、まさにここがいちばんわかりやすいポイントですよね。プレイヤーがスムーズに冒険者視点に没入できるのも、「ガチャを回す」のではなく「時間を逆転させている」という設定が効いているからです。

「かつて命を落とした名もなき冒険者を復活させて、再びともに歩む仲間として迎えているんだ」という物語が、プレイヤーの感情に逆らわずすんなり入ってくる。ただガチャからパッと出てくるだけの存在ではない。そういった、作り手が世界観を大切にしている部分は、遊んでいてちゃんと心に響いてきます。

1

2

3

4

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ