──『FFXI』も『ダフネ』も、ともに偉大な歴史を持ちながらオンラインで運営されています。歴史あるシリーズをオンラインで長期運営するうえで、おふたりがもっとも大切にされているのはどんな部分でしょうか。
金山氏:
ひと言で言えば「バランス」なのですが。……本音を言ってしまえば、私はそもそも『ウィザードリィ』をオンラインにしたくなかったんですよ。
藤戸氏:
おお、まさかの回答ですね(笑)。
金山氏:
ユーザーの皆さんからもよく「スタンドアローンで出してほしい」というお声をいただきますが、私もできることならそうしたかったんです。コンシューマ向けに出すという考え方もありました。
ただ、『ダフネ』プロジェクト開始当初、ユーザーの皆さんに満足のいく『Wizardry』を届けるために、現代のゲーム業界におけるビジネスモデルや収益構造、それに伴って投入できる開発コストとクオリティの限界を突き詰めていった結果、ひとつの最適解にたどり着きました。
それが「オンラインサービスという仕組み」と「コンソールゲームのような極上の個人体験」を高次元で融合させることでした。だからこそ、その舵取りのバランスがすべてなんです。
根底には「スタンドアローンでひとりの冒険者として没入する体験」がありつつも、オンラインだからこそ新しいコンテンツが続々と投下され、つねに新鮮なプレイヤーが世界に参入してくる。既存のプレイヤーが遊び尽くしても、すぐにつぎの冒険が待っている。
そのサイクルを維持するためのバランスを取り続けなければならない。これが運営の命題であり、同時にいちばんしんどい部分でもあります。
藤戸氏:
深く共感します。『FFXI』はMMORPGというジャンルである以上、たくさんのプレイヤーが存在しないと絶対に成立しません。人がいる前提で設計されているので、いかに「世界が賑わっている状態」を維持するかに苦心を重ねてきました。
いわゆる「コンテンツ消費型」のゲームですから、新しい要素を作っても、プレイヤーはあっという間に食べ尽くしてしまう。極端な話をすれば、出す料理がなくなればお客さんはよそへ行ってしまう世界です。
だから、メインの料理を食べ尽くされても、別のごちそうを用意して楽しんでもらえる状況をどう作るか、ずっとその試行錯誤の連続でした。だから、いままさにその渦中にいる『ダフネ』さんの苦労は、まったく他人事だとは思えないです。
先ほど『FFXI』のサービス継続についての話もありましたが、ある時期までの僕らは、言ってみれば「使い古した同じお皿」を使い回していた状態だったんです。そのお皿に乗せる料理というコンテンツを、毎月ちょっとずつ変えて提供する。
そうした工夫を泥臭く積み重ねた結果、なんとか今日までお客さんが通い続けてくれる“食堂”であり得ました。
ただ、同じ材料ばかりではどうしても飽きられますし、自然減衰は避けられません。だからこそ、「このお皿自体を新しく作り直して、メニューも一新しよう」という大きな挑戦の対話を社内で進めているところなんです。
もちろん、「これからもがんばります」と口で言うだけで許してくれるほど、プレイヤーの皆さんは甘くありません。実際にお皿を新しくした姿勢を行動で示す必要があります。
先日、ゲームのサーバー設備を丸ごと最新のものへリプレースしたのもその一環です。土台となるお皿を新しくしたことで、「スクエニはまだまだ本気で『FFXI』を続ける気なんだ」とコミュニティの皆さんに伝わり、一気に前向きな空気が広がりました。
最終的には、コミュニティの皆さんが「このタイトルをずっと続けてほしい」とどれだけ声を上げてくださるか、それに尽きると思っています。その声に応えるための努力は、私たちは絶対に惜しみません。いまはそれを第一優先に考えています。
いずれは豪華なディナーパーティのような特大のイベントも仕掛けたいのですが、単なるお祭り騒ぎで終わらせては意味がない。ゲームとして本当に価値のあるものをしっかりお届けしたいです。
これまではリソースの兼ね合いで渋っていた部分もありましたが、皆さんの期待に応えるためにも、これからは新しいスペシャルメニューをガツンと作れるように、もうひと踏ん張りがんばろうと思っています。
──『FFXI』と『ダフネ』は客層がすごく似ているんじゃないかと感じます。「俺が応援しなきゃこの世界が消えちゃうかもしれない」という使命感を持っているというか(笑)。
藤戸氏:
たしかに、ときどきお客様から「もっとお金を払わせろ!」というお叱りの声が聞こえてきます。
金山氏:
『ダフネ』でも、まさにまったく同じ声をいただくことがあります。
藤戸氏:
『FFXI』はあまりグッズ展開を積極的にやっていなくて、リアルイベントのときに少し作る程度なのですが、そのたびに「なんでもっと作らないんだ」とお叱りを頂戴するんです(笑)。
「お前たちのサービスを継続させるために金を払いたいのに、なぜその金を支払う場所を用意しないんだ」という、ちょっと皮肉めいた、でも本当にありがたいファンレターをいただくこともあって。
ただ、お客様全員が全く同じ熱量ではありませんし、欲しいもの、色や形状の好みなども異なりますので、実際にグッズを大量に作ると今度は売れ残ってしまう、という現実的な課題はあります。
でも、そうやって「買い支えたい」と思ってくださる方が、心の中で留めるだけでなく、実際に声を上げて行動に移してくださっている。そこが重要なんですよ。
その熱量が、現在の『FFXI』の衰えない活気と盛り上がりに、とてつもなく貢献してくれていると自分の中では感じているんですよね。
金山氏:
『ダフネ』でも、そういった温かい空気感を日々感じています。「無料でここまでふつうに遊ばせてもらっていいの?」ですとか、「とにかく長く続いてほしいから、お布施をさせてくれ」といったお声ですね。
我々としても、そうした熱い応援の声を実際に受け取ると、「よし、もっとがんばってサービスを維持して、ストーリーを完結させるための手段を泥臭く講じていこう」という前向きなトーンになります。
だからこそ、プレイヤーの皆さんにはぜひ声を大にして応援を発信し続けてほしいですし、それがあれば絶対に私たちは諦めません。
……それにしても、なぜ両作のプレイヤーはここまで同じような傾向になるんでしょうね?
──おそらく、『FFXI』も『ダフネ』も、キャラや武器やかけた金額だけで「強く」なるわけではないというか。プレイヤーの経験、知識も含めての強さといいますか。だからこそ、プレイヤー自身がその世界とキャラクターに愛着を持てるような気がします。
金山氏:
『ダフネ』では、短期的な商売としての効率よりも、プレイヤーにとって「居心地のいい素晴らしい世界でありたい」という想いが根底にあります。私たちが提供するのは、少しシビアで恐ろしくもありながら、驚きと発見に満ちたどこまでもワクワクする楽しい世界であり、そこでプレイヤーにひとりの冒険者としてとことん楽しんでもらい、その対価としてお金をいただくのが本来の仕事ですから。
それ以外の目的に対し、あまりギラギラしていない姿勢が、結果的に共通しているのかもしれません。
藤戸氏:
『FFXI』は、基本的には月額課金以外の追加課金要素がほぼ存在していません。
戦闘のテンポも現代のゲームに比べれば非常にゆったりしていますし、年配の方がマイペースに遊ぶのにもちょうどいい。いつも冗談半分で言っているんですけど、「これ、将来的に老人ホームに導入されていてもいいんじゃないか?」って思うくらいです(笑)。
──確かにそれはいいかもしれません。ゲーム内でコミュニケーションもとれますし。
藤戸氏:
そうなんですよ。たとえば、みんなでパーティを組んで、攻略方法を真剣に相談するとか。
最近のゲームはシステム側で「緩く繋がる」ように設計されているものが多いですが、当時の『FFXI』はもっとガッチガチに濃密な関係性を強いていた世界でした。
だからこそ、単なるネット上のフレンド以上の強い絆になりがちなんですよね。実際、20年前のリンクシェルのメンバーとリアルで飲み会を続けているという方たちが、いまもたくさんいます。まるで学生時代の部活の繋がりに近い、ものすごく強固なコミュニティが人生の中に形成されているというか。
金山氏:
まさに青春を共に過ごした同級生のような、一生モノの絆ですよね。
藤戸氏:
ただ、『FFXI』はそこまで強固な人間関係を作ってしまったがゆえに、当時は人生を狂わされてしまった人も山ほどいる罪深いタイトルでもあるんですけども(笑)。
でも、おかげさまでサービス開始から20年以上の歳月を経て、当時リアルタイムでハマっていた若者たちが、いまやゲーム業界や各メディアで偉くなっていて、決定権を持つポジションに就いているんです。そして、彼らが我々のところに「ぜひ『FFXI』とコラボさせてくれませんか」と熱い企画書を持ち込んでこられるようになったという(笑)。
──(笑)。今回の『ダフネ』とのコラボも、まさにそうした歴史の延長線上にあるわけですね。
藤戸氏:
ええ。こんな未来が待っているなんて、20年前の誰が予想できたでしょうか。ちょっと不思議な運命の巡り合わせだなと思いながら、最近はありがたく仕事に励んでいます。
当時『FFXI』を狂おしいほど愛してくださった方々が、大人になって今度は「恩返しがしたい」という名目で、いろいろな企画を提案してくださる。
開発者のひとりとして、つくづく『FFXI』をここまで諦めずに続けてきて本当に良かったなと思います。同時に「皆さんの人生のインフラみたいにしちゃって、お時間を奪ってしまって本当にごめんなさい」と、ちょっとだけ申しわけなく思ったりもしますね(笑)。
──せっかくの機会ですから、お互いに聞いてみたかったことなどがあれば、ぜひぶつけていただければ。
金山氏:
藤戸さんは、サービス開始からずっと『FFXI』の現場にいらっしゃるんですか?
藤戸氏:
ええ、このまえサービス24周年を迎えましたが、ずっと『FFXI』ですね。
金山氏:
『ダフネ』はまだ始まったばかりで、四半世紀近くに及ぶ歴史の長さには到底及びませんが……。ひとつのタイトルを守り続けた20年以上の歳月というのは、振り返ってみていかがですか?
藤戸氏:
開発の立ち上げ当初から現在までずっと現場に残り続けているのは、気がつけば社内でも私ひとりだけになってしまいました。一度現場を離れて戻ってきた人や、別部署で偉くなった人間は山ほどいますけど。
24年がどうだったかと聞かれるとひと言では難しいのですが……。最初の1、2年くらいは「もう十分やった、さすがに飽きたな」と思って、別の新作に関わりたいという気持ちにもなったんです。ただ、ある一線を越えてからは、この世界を守ることが完全に自分の「日常」になりました。
半年前からつぎの年間計画を立てて、ルーチンを回していく。私がディレクターに就任した2016年から、その仕事のペースはまったく変わっていません。
金山氏:
日常、ですか。
藤戸氏:
ええ。「毎年同じことを繰り返しているな」と感じる時期もありました。ただ、ルーチンに飽きないのは、限られた人的・データ的な全リソースをやりくりして、年に一度の周年記念で突拍子もないリアルイベントを仕掛けたり、それに連動してゲーム内に新しい驚きを実装したりと、つねに変化を起こし続けてきたからです。
現場で手を動かすクリエイター陣は時代とともにどんどん入れ替わりますが、私はチーム運営や予算管理といった土台を支えながら、そうやって世界に刺激を与え続ける役割にシフトしていった感覚ですね。
金山氏:
なるほど、そういう感じなんですね。
──そういう意味では、今回の『ダフネ』からのコラボ打診は、良い刺激になったのではないですか。
藤戸氏:
それは本当に。まったく予想もしていなかったので最高の刺激であり、驚きでしたね。
金山氏:
コラボの内容に関しては、ファンの皆さんに喜んでいただけるよう本当に吟味を重ねました。
じつは私自身、『ダフネ』の舞台である「奈落」を最後まで描き切るという大きな使命を背負っているのですが、これを全部作り終えるには、相当な年数がかかる可能性があるんです。
だからこそ、ひとつのタイトルと長年付き合っていくのはどんな感覚なのだろうと、藤戸さんの歩まれてきた道にとても興味があったんです。
藤戸氏:
もし金山さんが「まだまだやりたいことがたくさんある」という状態なのであれば、アイデアが枯渇することはありませんよ。きっと、「途中でほかのゲームを作りたくなる」といった目移りする気持ちに支配されることもないはずです。
金山氏:
……そうですね。幸いなことに、『ダフネ』の世界でやりたいことは、いまでも山ほどあります。
藤戸氏:
『ダフネ』はとにかく硬派ですよね。その姿勢が本当にブレない。
金山氏:
いや、私たちも別に「頑なに硬派にしよう」と意固地になっているわけではないのですが、突き詰めていくとなぜかそうなっちゃうんですよ。
藤戸氏:
絵的な面でも、キャラクターデザインは本当にすばらしい着地をしていると思います。安易な派手さはないけれど、たしかな気品があって、かといって地味でストイックすぎるわけでもない。
この「ちょうどいい塩梅」が絶妙ですよね。
金山氏:
ゲームとしてのエンタメ成分と、世界観としてのリアリティのバランスについては、社内のイラストレーターと毎回激しいせめぎ合いをしていますね。
当然、ある程度の売上を立てなければサービス自体が終了してしまい、結果的にプレイヤーの皆さんを不幸にしてしまう。サービスを永続させるために魅力的な冒険者を追加していく必要がある中で、この渋めの世界観にどう調和させるか。
派手すぎず、地味すぎず、それでもプレイヤーの皆さんの琴線に触れるデザインの落としどころを、つねに模索しています。
藤戸氏:
まさに絶妙なラインだと思います。じつは『FFXI』のキャラクターデザインにも通ずる部分があるのですが、デザイナーさんの「ここだけは絶対に譲らない」という強いプライドや作家性が、どのキャラクターからもビシビシ伝わってくるんです。
本当に見事なバランス感覚ですし、時折少しテイストを変えた意外性のあるキャラクターを投下してくるあたり、いつも「お上手だなあ」と感心していました。
金山氏:
デザイナー陣も含めて、チーム全員がそこの「越えてはいけない一線」を深く理解して作ってくれています。生みの苦しみはもちろんありますが、そうやってキャラクターを形作っていく過程は、やっぱりクリエイターとして最高に楽しい仕事ですね。
藤戸氏:
金山さんに聞いてみたかったんですけど、『ダフネ』ってダンジョンRPGなのに、草原みたいな開けた屋外フィールドもありますよね。あれ、すごく新しいなと思って。
金山氏:
『ウィザードリィ』はもともとダンジョンというクローズドな舞台がメインですから、どうしても世界を感じるフィールドが少なめだったんですね。
でも『FFXI』やほかのゲームには、広大なフィールドを歩いて、その遥か先にある目的地へ到達する体験がある。あの感覚は絶対に入れていきたいと思っていたんです。
草原や砂漠があって、草原を越えて北国に行く、砂漠を三日三晩歩いて東の国へ行く、そういう旅情を描きたかったんですね。あのフィールドも、同じような草原のマップを3つくらいひたすら冒険して、「これ、いつたどり着くんだ……」と思ってもらう作りにしていて。
藤戸氏:
まさにそう思いました(笑)。
金山氏:
じつは『FFXI』で広大なフィールドを走っていた当時、まったく同じことを感じていたんです。「あれ、この先に本当に町があるのかな?」と不安になりながら走るあの感覚。
藤戸氏:
そうそう! 『ダフネ』で草原を走っていて、同じ感覚に陥ったんですよ。
金山氏:
時間をかけてようやくマップの北端に到達して、「これでようやく町か」と思ったら、つぎのエリアも再び広いフィールドという(笑)。
藤戸氏:
草原の奥で荷馬車を見つけたときは、ものすごく安堵しました(笑)。
金山氏:
あれも、ひとつの「冒険」の形だと思うんですよ。先が見えないからこそおもしろい。そういう手探り感をやりたかったんです。
藤戸氏:
しかもフィールド上にモンスターの影があっちこっちウロウロしていて、ヒタヒタと近づいてくるじゃないですか。あれをいかに避けながら進むかという立ち回りは、まさに『FFXI』のインビジやスニークを彷彿とさせて。「うわ、めちゃくちゃ『FFXI』っぽいな」とニヤリとしました。
一方で、ダンジョン内に入ると通路が細いからすぐに捕まっちゃって、それはそれですごく怖いんですよね。
金山氏:
私たちのモノづくりって、もともとユーザーに与えたい「体験」がまず最初にあって、その体験を実現するために「ゲームシステム」をあとから作る、という順序なんです。だから、システム的な統一感でいえば変なところが多々あるんですよね。
ゲームシステムありきでロジカルに見ると、「もっとこうすれば快適なのに」という部分がいっぱいあります。草原についても「果てしない旅の体験」を与えたいからこそ、あの形になりました。プリッシュの件も、「この設定なら格闘タイプの新職業にするしかない」という体験が先です。
昔のゲームの思い出、楽しかった記憶、味わってみたい映画的な体験があって、それをゲームシステムに力技で落とし込む。だから、どうしてもヘンなものができちゃうんです。
藤戸氏:
ちなみに、第二の奈落の水路で勢いよく流される展開がありますけど、あれはいったいどういう体験を味わってほしかったんですか。
金山氏:
昔のRPGの思い出で、よくわからない未知の場所に流砂や濁流、移動床で流される体験が強烈に忘れられなくて(笑)。あのハラハラ感を現代のプレイヤーにも味わってほしいなと思って実装しました。
そのほかにも、クエスト前に地図をなぞりながら作戦説明を受けるブリーフィングさながらのシーンや、周囲の登場人物たちが結局はみんなプレイヤーを頼ってくるところなんかは、まるで自分が映画の主人公になったような体験だとも思っていて。そういったRPG(ロールプレイングゲーム)の没入体験をみんなにも味わってほしかったんですね。
過去に衝撃を受けたゲームやアニメ、映画などの体験が抽象化されて詰め込まれているといいますか。
藤戸氏:
『ダフネ』を遊んでいると、そうやって「なんだこれは」とびっくりする展開が放り込まれますよね。「はじまりの奈落」でも、途中にゴブリンが出てくる洞窟があって、「いまのレベルなら大丈夫だろう」と思って足を踏み入れたら、散々な目に遭うとか(笑)。
金山氏:
近年のゲームは難易度のカーブが綺麗に右肩上がりに傾斜しているものが多いですけど、昔のゲームって、橋を渡っただけで急に敵が強くなったり、何でもない場所に唐突にえげつなく強い敵が配置されていたりしたじゃないですか。ああいう理不尽に突然遭遇する驚きを、現代のプレイヤーにも味わってもらいたかったんです。
──そういった、いい意味で突き放したところも、『FFXI』と『ダフネ』に共通していますね。
金山氏:
エリアチェンジしただけで、急に敵の強さが跳ね上がって「やばいやばい」と全力で逃げ帰るような(笑)。しかも『FFXI』だと、そうやって自分ひとりが必死に逃げ帰っても、エリアの出口に敵が大量に溜まってしまって、その直後に入ってきた無関係な別プレイヤーが瞬殺されてしまうというオマケ付きでしたから。
藤戸氏:
意図しないMPKですね(笑)。
金山氏:
でもやっぱり、そういう理不尽さも含めて楽しかったですよね。『ダフネ』でも、そういった予測不能な体験を感じてほしいというのが根底にあります。
藤戸氏:
すごくよくわかります。低レベル向けのエリアを移動していたら、巨大な羊のノートリアスモンスターがドシンドシンと足音を響かせてこっちへ向かってきて、「なんだあれ?」と思いながら好奇心で軽く触ってみたら瞬殺される、みたいな。
金山氏:
最初は絶対に手が出ないけれど、強くなってからあとで倒す、というリベンジ展開は最高ですよね。
じつは『ダフネ』の草原にも、まさにそういうエリアボス的な敵キャラをつねに徘徊させたかったんですよ。クエストで大怪鳥という巨大なモンスターが出現するのですが、本当はつねに上空をリアルタイムで飛んでいて、プレイヤーを見かけると急降下して襲ってくるという設計にしたかったんです。
技術的、工数的なハードルが高くて泣く泣く断念したのですが、いずれ実現したいですね。
藤戸氏:
ロマンがありますよね。「あいつ、いつになったら倒せるんだろ」とか。
──『ダフネ』は、すごく強いボスと遭遇して「これは死にバトルかな」と思って負けたらふつうにゲームオーバーになった、という展開も多いですよね(笑)。
金山氏:
そういう理不尽な罠は、できる限り作らないように気をつけてはいるんですけども(笑)。
藤戸氏:
『ファイナルファンタジー』シリーズでは、イベント的に全滅するバトルがよくあったので、「この戦闘、本当に負けていいやつかな?」と疑心暗鬼になる感覚はたしかにあります。
金山氏:
「このダメージの通り方、もしかして工夫すれば倒せるのか?」みたいな。
藤戸氏:
そうやってジタバタしていると、敵から非道な量のダメージが飛んできたり(笑)。
金山氏:
「あ、やっぱりこれは負けイベントなんだな」と安心してそのまま死ぬと、ふつうにゲームオーバーになってタイトルに戻されるという(笑)。
藤戸氏:
(笑)。そういう意味では、やっぱり作りやノリがすごく似ていますね。もういっそのことドリコムさんが「FFXI-2」を作ったらいいんじゃないですか(笑)。
金山氏:
(笑)では『ダフネ』が落ち着いたあとに……って、そのころには私、もうおじいちゃんになっているかもしれません(笑)。
──ぜひ、その前段階としてコラボ第2弾も期待したいです。登場キャラクターには、まだ『FFXI』の人気種族、タルタルがいないですし(笑)。
金山氏:
そうですね。気が早いかもしれないですけど、今回のコラボをお客様に好評で受け止めてもらえたら、どんどん追加していきたいです。まだ実現できていないアイデアもいっぱいありますから。
ただ、コラボをやるたびに『FFXI』のジョブが増えていったら、とんでもないことになりそうですが。
藤戸氏:
いま、全部で22ジョブありますからね。そうやってコラボのたびに増えていって、いずれ『ダフネ』が『FFXI』にどんどん侵食されて、最終的には『FFXI』そのものになる、というのはどうでしょうか?(笑)
金山氏:
以前、『ブレイド&バスタード』コラボをおこなったときも、実施後に「これは絶対に第2弾をやったほうがいい」という話が自然に持ち上がって、実際に第2弾を実現したんですね。今回の『FFXI』コラボも、それくらいお客様に愛されて、いつか定例化していくことになったら良いですよね。
──『ダフネ』ともコラボした『ブレイド&バスタード』はアニメ化も決定しました。アニメの放映タイミングでは、再々コラボを望む声が高まりそうですね。
金山氏:
やりたいアイデアは山ほどあるのですが、リソースをどう確保すればいいのかが本当に悩ましくて……。とにかく開発者が足りないんです。
藤戸氏:
それはとてもよくわかります。『FFXI』も非常に古いシステムとプログラムで動いているので、その構造を熟知している人間でないと、新しい要素を何ひとつ作ることができないんです。
かと言って、いまの時代に新しく入ってきた優秀な開発者に、20年以上前のレガシーな専用技術をゼロから学んでもらうのは、キャリアを考えてもナンセンスじゃないですか。
だからこそ、古い仕組みそのものを現代風に作り変えないと、いずれ誰も手を加えられなくなってしまう。そこが『FFXI』の目下最大の課題です。
金山氏:
独自のこだわりやピーキーなシステムを突き詰めれば突き詰めるほど、開発作業はどうしても属人的な「職人技」になってしまいますし、コードのレガシー化も防げません。
結果として、もしそのゲームが大きな収益を上げられたとしても、将来的にそれをメンテナンスして引き継いでいける人がどこにもいない、という壁に突き当たってしまうんですよね。
藤戸氏:
「その職人さんが現場にいるうちに、どこまで形にできるか」という時間との勝負になってしまいますから。
金山氏:
まさに、その巨匠にしか作れないような、唯一無二の伝統工芸の壺を作っている世界観に近いかもしれません(笑)。
藤戸氏:
本当に、人間国宝のようなベテランたちが作っている状態です(笑)。
そして当然、年齢を重ねて退職される方も増えてきているので、システムがどんどんブラックボックス化してしまう。
そうしたクローズドな技術は、できるだけいまのうちにオープンにしていかないと本当にマズいと思っています。最近はAI技術がすさまじい勢いで進化を遂げていますから、それらを活用して、レガシーな古い仕組みを現代のコードに変換するようなアプローチも、真剣に模索していかなければいけないのかなと。
──ただ、『FFXI』は立ち上げの開発筆頭メンバーである田中弘道さん、石井浩一さんたちが離れたあとも、こうして今日までサービスが継続しています。属人性はありつつも、そのバトンは間違いなく引き継がれているのだと感じています。
藤戸氏:
そうですね、本当にギリギリのところで受け継いできました。……うーん、でもやっぱり、これから先を考えると、まだまだ難しい宿題が山積みですね。
──今回の相性のよさを見ると、ドリコムとスクウェア・エニックスで新たな共同プロジェクトが立ち上がってもおかしくないのかなと。
金山氏:
昔のゲームの楽しかったコアの部分を抽象化して、現代に再構築する作業は、ドリコムが一定得意とするところだと思っています。ですから『FFXI』についても、現代の最新フォーマットでありながら、当時の体験や手触りのまま新しく蘇る、といった試みは純粋におもしろそうですよね。
藤戸氏:
いいですね。非常に夢があります(笑)。
──ちなみに今回の『ダフネ』と『FFXI』のコラボ期間は6週間とのことですが、ユーザーからの反響や声が大きくなれば、期間を延長する可能性などはあるのでしょうか。
金山氏:
一度決まったスケジュールがあるため期間そのものの延長は難しいかもしれませんが、熱いご要望をたくさんいただければ、どこか別のタイミングで復刻開催を検討することは十分にあり得ると思います。
とにかく楽しんでいただきたいですし、もちろんSNSなどでさまざまなご意見を交わして盛り上がってほしいです。
『FFXI』の膨大な歴史の中から、今回のコラボに向けてどの要素や体験を切り出すべきか、プレイヤーの皆さんごとにこだわりや好みがあると思います。
私たちは「今回はここを全力で切り出して、このように表現しました」という形で提示していますので、そこも含めていろいろと語り合っていただければうれしいですね。
──それでは最後に、今回のコラボの見どころを教えていただきつつ、おふたりからファンの皆さんへメッセージをお願いします。
金山氏:
もう、思いの丈は語り尽くした気がします(笑)。
藤戸氏:
『FFXI』は20周年のときに、サイゲームズさんの『グランブルーファンタジー』とコラボさせていただいているので、他社さんとのコラボは2回目になるのですが、それぞれ形式がまったく異なります。ある意味、「最新の技術と表現で描かれた『FFXI』」を見られる絶好の機会だと思っています。
ファンの皆さんはぜひ見逃さずに触ってみてほしいですし、これを機にまた『FFXI』のヴァナ・ディールにも戻ってきてくれるとうれしいです。
金山氏:
昔『FFXI』のプレイヤーだったという方にとっては、あのときの冒険の記憶が鮮烈に呼び起こされるような、大小さまざまなこだわりをゲーム内に散りばめました。
どのディテールに胸を熱くするかは、本当に人それぞれだと思います。もし少しでもピンと来たものがあれば、SNSなどで何かしらの反応をいただけると開発一同の励みになります。
そうしてコラボを目一杯楽しんでいただいたら、また『FFXI』を遊びに行ってみる、といった双方向の行き来が生まれたら、こんなにうれしいことはありません。<了>
期間限定のコラボに、これほどの熱意を持って膨大な量のコンテンツを詰め込む──。
一見すると常識では考えられないほどの”狂気”とも思えるこだわり。その正体こそが、「システムより先に、体験がある」という両氏に共通したモノづくりの哲学だった。
かつて多くのプレイヤーを震え上がらせた唐突な全滅も、容赦のない理不尽な死すらも、そこでは「驚きと冒険の体験」として緻密に設計されている。そしてそのこだわりは、金山氏がいちプレイヤーとして味わい、藤戸氏が作り手として形作ってきた、『FFXI』の熱狂の原体験に根ざしている。
『ダフネ』と『FFXI』。誕生した時代もゲームとしての姿形も違えど、ふたりがその先に見据え、プレイヤーへ届けようとするものの本質は、驚くほど同じだった。
作り手の哲学が妥協なく注ぎ込まれた、この6週間。あのころに心を震わせた冒険者も、いままさに奈落を往く者も、その手でぜひ、この体験を確かめてほしい。





