いま読まれている記事

【小島秀夫×杉田智和 対談】「杉田さんが “杉田さん” を演じているときがいちばん好き」──『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者

article-thumbnail-260318a

文明が崩壊し、分断された人類を「つなぐ」ために北米大陸を横断したサム・ポーター・ブリッジズの旅を描いた『DEATH STRANDING』(デス・ストランディング)。

その待望の続編となる『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(以下、『デス・ストランディング2』)では、再び孤高の運び屋サムが未知なる領域へと足を踏み入れる。

本作のサムには「ドールマン」という相棒がいる。生きた人間ではなく、サムの腰にぶら下がる「生ける人形」という異色の存在であり、過酷な旅路においてもっとも近くで言葉を交わすナビゲーター。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_001

その日本語吹替を担当するのは、小島秀夫監督が全幅の信頼を寄せる声優・杉田智和さんだ。収録されたセリフ数は主人公のサムをもしのぐ2000ラインに達したという。

今回、メディア合同インタビューという形式ながら、電ファミはおふたりの対談を取材する機会に恵まれた。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_002
左から小島秀夫監督、杉田智和さん

プレイヤーの心に寄り添う「ドールマン」という特異なキャラクターに、いかにして「杉田智和」という個性を宿したのか。妥協なき収録現場を振り返る。

聞き手/豊田恵吾
文/柳本マリエ
撮影/松本祐亮


「自由度」と「ナビゲート」の狭間で磨き上げたドールマン

──小島監督の作品の大きな魅力のひとつに、極限のシリアスな世界の中に放り込まれるユーモアや遊び心があるかと思います。その最たる例がドールマンの存在だと感じておりまして、監督はこの「緊張と緩和」のバランスをどのように計算されているのでしょうか。
また、ドールマンは主人公のサムに次いでセリフ量が多かったとのことですが、杉田さんはどのような演技を心がけていたのか、それぞれおうかがいできますでしょうか。

小島秀夫監督(以下、小島監督):
ライン(セリフ)数は、吐息などを入れるとやはりサム役の津田健次郎さんが多いですが、じつは純粋なライン数では杉田さんがいちばん多いです。収録日数27日間、拘束時間60時間、2000ラインほど収録させてもらいました。しかもひとりで録ることが多かったですよね。

次が津田さんで、その次がフラジャイル役の水樹奈々さん。ちなみに全体の出演者数は66名で、収録には10ヵ月(103日間)ほどかかっています。

──吹き替え収録にそこまでの労力と日数をかけるというのはなかなかありませんよね。

小島監督:
そうですね。質問をいただいた「緊張と緩和」についてですが、ドールマンはプレイヤーをサポートする役割も担っているので、最初は猛烈にしゃべらせていたんですよ。たとえば川があったらサムが川を渡る前に「そこは流されるぞ」といったように。そうやってすごく丁寧にナビゲートしていたのですが、そうするとプレイヤーの自由がなくなってしまうんです

ギャグもプレイヤー視点だと、ゲーム中に自分が注力しているものから意識を逸らされるとダメージになることもあるので、バランスについては最後まで悩みました。杉田さんには申し訳ないけど最後は何度も変えていたので収録数が増えてしまいました。

──本当にギリギリまで調整されたんですね。

小島監督:
これは声優さんだけでなく元の俳優さんもそうですが、ゲームの仕様(右に敵がいる、いなくなるなど)が修正されるとセリフも変えないといけません。その都度録り直しになるので、なかなか終わらず、時間がかかりました。

──杉田さんはドールマンを演じるうえでどのようなことを心がけていたのでしょうか。

杉田智和さん(以下、杉田さん):
英語版のドールマン(元の言語)に込められている情報を学び取って日本語に吹き替えていくのですが、その「原音を立てること」を心がけています。それを超越してはいけないと思っているので、セリフに間があったらその行間の意味を自分の中で探って答えを出し、テスト収録の段階で提案していました。作り上げる作業でしたが、特に苦には感じなかったですね。

小島監督:
まず英語版を先に録るんですよ。日本語だけでなくほかの言語も英語版に合わせてセリフの尺が決まります。ドールマンでいうと「英語版を担当されたジョナサン・ルーミーさんの尺に合わせて、いかに杉田さんを出すか」が難しかったですね。僕の中では英語版のドールマンと杉田さんのドールマンはだいぶ変えました。

杉田さんのドールマンはこのへんを飛んでるけど、ジョナサンのドールマンはもうちょっと低いですね。

──(笑)。

小島監督:
ジョナサンに「アドリブOK」と言ったら、ずっとしゃべり続けてしまってシーンが長くなるということもあり、いろいろ試しながら最終的にいまのドールマンが完成しました。

──監督からすると、ドールマンは思い入れ深いキャラクターですか?

小島監督:
重要な役ですね。プレイヤーとともに旅をするサポーターで、いちばん近いところにいる存在なので。杉田さんと旅をしたという感じです。ルーも含めてですね。

英語版の尺を守りつつ、“杉田智和”という個性を宿す挑戦

──おふたりはかなり長いお付き合いだと思うのですが、監督が思う杉田さんのお好きなところや尊敬しているところ、逆に杉田さんが監督に対してどう感じていらっしゃるかをお聞かせください。

小島監督:
杉田さんとはもう18年くらい……? 息子がもともと杉田さんのファンでキャスティングに加わっていただいたことがきっかけでした。

杉田さんのいいところはたくさんありますよ。七色の声でさまざまな役を演じられていますが、僕が好きなのは「杉田さんを演じているとき」なんです。僕にとっては吹き替えではなく、「杉田さんが出てくる」というか。声優さんにこんなこと言うと失礼なのかもしれませんが。

当然ドールマンの声を当てているんですけど、その声のニュアンスやしゃべり方は杉田さんにしかできない。そういう人はなかなかいないじゃないですか。キャラクターにマッチした声もできるけど、ドールマンについては最初から杉田さんに「ジョナサンは崩していい」とお伝えしました。

さっきも言ったように尺は変えられないですが、その中で自由にやっていただいたと。だから英語版とはけっこう違うことを言っていたりするんですよ。

──かなり振れ幅が広いと感じていました。

小島監督:
僕が子どものときの映画などの吹き替え版は、ほぼ違うことを言っていたので、そんな感じです。とはいえトーンは決めておかないとブレてしまうので、そこを定めることが難しかったですね。だいたいカットシーンでトーンを決めるのですが、そこでも決まらず。最初は試行錯誤していました。

──中心を決めておかないと、どっちに振るか迷ってしまうんですね。

小島監督:
ドールマンは会話のあいだに入ってくるため、キャラが立ちすぎるとそっちに意識がいってしまうので難しいポジションなんです。いろいろ試しましたよね。もう少し人形っぽい感じにしてみたり、原音に合わせてみたり。

杉田さん:
やりましたね。

小島監督:
前作では杉田さんに合う役がなかったのでちょっとしか出番がなかったんです。だから今回はどうしても杉田さんに出てほしかった。みんながほしい杉田さんですね。

──杉田さんは監督に対してどう感じていらっしゃいますか?

杉田さん:
小学校高学年くらいのころから「小島監督の作品を遊ぶことが大人としてのステータス」だと思っていました。まだ子どもだったので、たとえばパチンコの看板の「パ」の字が消えていたりするような、知らない世界がいっぱい広がっていたんです。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_003

一同:
(笑)。

杉田さん:
映画がベースでありながらも、「遊んでおもしろいゲームを作る」ということを常に念頭におかれていると感じます。自分が出演する側になったときも、やはりその存在をすごくリスペクトしています。

僕が出演している作品も細かくチェックしてくださっていたり、著名なVTuberさんの放送を見られていたり、ゲームに限らずさまざまなところから吸収されているんだと感じますね。柔軟な発想とそれを実現するハイエンドなクリエイションが同居している稀有な存在だと思っています。ほかの人にはできないですよ。

「息子の推し」から始まった18年の絆

──先ほど、杉田さんから「小島監督の作品をプレイして大人になり、今度は出演する側になった」というお話がありましたが今回の収録で初めて知ったお互いの新しい一面みたいなものはありますか?

小島監督:
「初めて知ったこと」は、ないですよね。

杉田さん:
それでいうと小島監督はアニメから映画まで本当に幅広く見ていらっしゃるので、「それを今でもインプットし続けて、絶やしていない」という点では、常に新しい発見があります。

小島監督:
杉田さんは変わらないですね。お互い歳は取りましたけど、最初に会ったときの感じのままですよね。僕はもう、信頼のおける人としか組まないんですよ(笑)。

──『メタルギアソリッド ピースウォーカー』【※】(以下、『ピースウォーカー』)にて、小島監督が杉田さんにオファーされたきっかけは、どういったものだったのでしょうか?

※『メタルギアソリッド ピースウォーカー』
2010年にプレイステーション・ポータブル向けに発売されたステルスアクションゲーム。1974年のコスタリカを舞台に、伝説の兵士ネイキッド・スネークが自らの軍隊を組織していく過程を描く。杉田さんは、主人公の右腕となる副官「カズヒラ・ミラー」役として出演。本作での共演が、小島監督と杉田氏の長きにわたる信頼関係の起点となった。

小島監督:
きっかけは息子です。子どもが小さいときはディズニーやピクサーなどの吹き替え作品を劇場で観る機会も多いじゃないですか。そうすると悪役として津田さんが出てきたりして。でもだんだんと吹き替えを観る機会が減り、新しい声優さんを探せなくなっていました。昔はテレビをつければ海外ドラマなどは吹き替えのほうが多かったですけど、いまは字幕が多いですよね。深夜アニメもなかなか追うことができず。

そんなとき、アニメ好きの息子に「誰が好きなん?」と聞いたら「杉田さんと水樹さん」だと。水樹さんのCDを一緒に買いに行ったり、アニメイトにも行ったりしました(笑)。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_004

杉田さんについては僕が『銀魂』を観ていなかったので存じ上げなかったんですけど、実際に『ピースウォーカー』で演じてもらったら大成功でした。そういう人とはずっと組みたいわけです。だから、その人のために役を作ることもある。

だけど最近は海外の俳優さんを起用させてもらうことが多いので、国内の俳優さんや杉田さんのために「ゼロから役を作る」ということが難しくなってきています。『ピースウォーカー』のときなどはパフォーマンスキャプチャーではなかったのでできたんですけどね。そこはちょっと寂しいところです。

昔は日本語を先に録っていましたが、いまは逆になっているので、新しい人を探すのが難しいんです。信頼のおける人たちと組みつつ、新しい人を入れて活性化させていかないといけないといけないので。それはノーマン・リーダスさんレア・セドゥさんも同じです。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_005

──プレイヤー視点だと、ドールマンを演じている杉田さんが思うままに(自由に)しゃべっているように聞こえるのですが、どのような調整をされているのでしょうか?

杉田さん:
そう見せているんです。「原音に込められた情報から逸脱しないこと」を心がけながら、決められた尺は絶対に守っています。そのうえで演者が楽しんで自由にやっているように思ってもらえたほうが、プレイヤーも余計な力が入らずに済みますよね。ゲームを遊ぶのに「座学が必要だ」、「心構えが必要だ」なんて言われたら疲れてしまうじゃないですか。

だからこそドールマンという存在があいだに入り、ゲームをわかりやすく、入りやすい空気にすることが大事なんです。ドールマンというキャラクターはすでに完成しているので、僕自身が「こうしてやろう」とエゴを出す必要はありません。それよりも、原音に込められた情報からなにを学び取るか、どう感じ取るかを大切にしています

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_006

小島監督:
昔は日本語版だけ尺を長くすることもできたんですよ。でも今は英語版や日本語版だけでなく、何ヵ国語にも対応する決まりがあり、それに合わせないといけないので難しいんです。だから「(尺や制約を守りつつ)ドールマンでありながら杉田さんを出せ」というのは、けっこう無茶なことなんですよ(笑)。

憧れから出演者へ、ゲーマー・杉田智和が語る小島作品の本質

──杉田さんにおうかがいさせてください。先ほど若かりしころに小島監督作品を遊び「ほかにはない突出した才能」を感じられたとのことおっしゃっておりましたが、声優さんに対するディレクションなどでも感じることはありますか?

杉田さん:
現場の「雰囲気作り」からそれが発揮されているんです。たとえば、「今作の舞台はこちらです」、「なので、コスタリカ産のコーヒーが用意されています」とか。ひとつひとつにちゃんと意味があり、それが自然と馴染んでいるというのは、なかなかできないことかなと。

誕生日をお祝いするイベントシーンを録るときも、出演者全員で録ったんですよ。

──全員でですか!?

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_007

杉田さん:
「(その場に)いない人がいるとかわいそうだ」と、本当に全員で録りました。ヒッグス役の三上哲さんが音頭をとってくれて、本当に誕生日をお祝いしている空気になっていましたね。

小島監督:
10ヵ月も収録をしていると、ドラマシリーズを作るみたいなものでしょ。それは仲良くなりますよね。

杉田さん:
そういう “いい空気” ができあがっていくんです。たとえば津田さんとはほかの現場でも一緒になりますけど、話す機会がとても増えました。 今では一緒にオリジナルのコンテンツを動かすぐらいには距離が縮まっています。

──よろしければ、「ゲーマー・杉田智和」さんの意見もおうかがいさせてください。 『デス・ストランディング2』を遊ばれたと思いますが、ゲーマー杉田さんから見て、その感想をひと言いただけないでしょうか。

杉田さん:
「俺はゲーマーだ」と自分で言っているわけでもないですが、ゲーマーですかね(笑)。もちろん好きです。

前作も今作も実際に遊んでいますが、やはりおもしろいですね。サプライズがあると構えていても、いざ直面すると純粋に驚かされる。そういった驚きや喜びという感情を常に抱きつつも、同時に深く考えさせられる内容になっています

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_008

私自身も年齢を重ね、かつては若い主人公やその仲間に近い視点で作品を体験してきました。しかし、今では親や師匠といった役を演じる機会も増え、自分の中に新しい視点が追加されています。そうすると、キャラクターから受ける印象もまた変わってくるんです。

どれだけグラフィックが美しくなり、音が進化しても、その根底にあるのは「遊んでおもしろいものを作る」のが小島監督だということです。そこはこれから先も、ずっと変わらないものだと思っています。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_009

ゲームの進行に合わせてキャラクターが変化していく過酷な録り直し

──先ほど、決められた尺の中で「杉田さんらしさを入れる」というお話がありました。前提として原音の俳優さんに寄り添う部分があるかと思いますが、具体的にはどういうディレクションをされていたのでしょうか。

杉田さん:
柔軟に対応してもらいました。

小島監督:
たとえばテスト収録で「杉田さんならどうしますか?」と聞いて、それがよければ採用します。それは杉田さんだけでなくすべての人に対して同じで、津田さんもそうですし、「こんなのどうですか?」と皆さん提案してくれるんですよ。

──では現場で「とりあえずやってみてください」ということもあるのでしょうか。

小島監督:
それはないですね。パフォーマンスキャプチャーでも同じですが、「今回はこういう役なのでこういうふうにやってください」という事前の計画はあります。その中で、やりながら「ちょっとこう変えましょうか」や「こうしたい」という要望があればやってもらい、それがよければ採用します。アフレコの場合はテイクをいっぱい録って、よいものを選ぶことができますからね。

──ちなみに、「こういうキャラクターなんです」という情報は、声優さんはどの段階で知らされるのでしょうか。

杉田さん:
キャラクターの資料もありますし、そもそも原音がありますからね。最初にトレーラーやカットシーンの映像を現場で見て、それから収録ブースに入り、原音を聞きながらテスト収録をするという流れです。

小島監督:
最初の1回目、2回目の収録でキャラクターを決めるんですよ。これが難しいところで、ここで決まらないと長引いてしまう。もっと言うと、俳優さんが演技をしている段階ではゲームの後半部分がまだできあがっていないんです。だから途中でキャラクターが変わったりして、もう1回録り直しになることもあります。

──すごいですね。

小島監督:
昔はそればっかりやってましたね。ただドールマンはちょっと特殊なんですよ。カットシーンは同じなんですけど、ゲーム中のセリフもあるので。「どういう状況でそのセリフを言うか」という想定があまりできないんです。音楽が鳴っているときもあれば、そうでないときもある。それがけっこう難しい。

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_010

録って入れてみたけれど、変なところで音が鳴るならカットするのか、あるいはもう1回違うテンションで録るのか、という選択があります。だから「なんだこれは」というセリフひとつでも、さまざまなバリエーションで録るのですが、読み分けしてもそれでも足りない部分が出てきます。

とはいえ日本語だけファイルを増やすと、何十ヵ国語にも翻訳されているのであとで怒られてしまうんです(笑)。僕らが管理できないところへ行ってしまうので、ちゃんと決め事があるんですよ。非常に難しいんですけど、杉田さんが出るんだったら、やっぱり「杉田さんかどうかわからない」ままじゃアカンでしょ。

だからといって、最終的にそんなに無茶苦茶なことはしませんでしたよね。最初は僕、無茶苦茶しようと思ってたんですけど(笑)。

一同:
(笑)。

──『ピースウォーカー』のカズは、かなり無茶苦茶だったように思います(笑)。

小島監督:
カズはいまだに人気がありますよね。『ピースウォーカー』はPSP用だったので、ターゲット層を10代に下げたんですよ。脚本からすべてそういうノリだったんです。

その次の『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』【※】(以下、グラウンド・ゼロズ)でいきなり暗くなり、ターゲット層を35歳ぐらいに上げたので怒られましたけど(笑)。だから最初が『グラウンド・ゼロズ』のトーンだったら、カズは杉田さんじゃなかった気がします。

※『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』
2014年発売。『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』へと続く、プロローグが描かれた作品。1975年の米軍基地を舞台に、潜入任務を通じた救出劇が描かれる。『ピースウォーカー』の明るいトーンから一転し、非常にシリアスかつ衝撃的な展開が特徴。

──記憶に残っているアドリブがあれば教えていただけますでしょうか。

小島監督:
先ほどと重複してしまいますが、アドリブはそんなにないですよ 。原音の俳優さんではやっていますけど、吹き替えは尺が決まっているので。最初の「待たせたな」は、僕がやってくれと頼んでやってもらっているので、杉田さんに罪はないです(笑)

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_011

杉田さん:
「いかにわかりやすくするか」を常に念頭に置いて演じています。だからこそテスト収録があって、自分で作り上げてきたものを提示する 。そこにディレクションが加わって完成に近づいていくというのはあると思います 。

人ありきで言うのであれば、たとえば「次に出てくる医師役の小林ゆうさんだとこう来るのだろうな」という想像はするんですけど予測なんかつかないんですよ(笑)。

小島監督:
小林さんはすごかったです。久しぶりだったんで、もう破壊力がすごかったですね(笑)。小林さんはアドリブというより、もう違うセリフをしゃべってますよね。

ただ、これははっきり言いますけど、杉田さんも津田さんも水樹さんも小林さんも大塚さんも本当はなにも言わなくてもいけるんですよ。彼らはなんの指示もなくてもしっかり演じてくれるんです。その中でいろいろやってもらって、判断しています。

杉田さん:
柔軟な発想のもと作り上げていく現場であるということですかね。

──最後に3月19日にリリースされるPC版を遊ばれる方へ、本作の魅力を改めてお伝えいただけますか。

小島監督:
PCプレイヤーは非常にコアな方が多く、僕の子どもそうですが、低価格なものから大作まで幅広く遊んでいるんですよ。そうした方々の多様な環境に応えるべく、最新のグラフィックボードへの対応はもちろん、フレームレートなどの細かな設定ができるようになっています。キーボード派の方はそのまま、コントローラー派の方は「DualSense」を繋げば、専用のハプティックフィードバックによる振動体験を楽しんでいただけます。ぜひその感触を味わってほしいですね。

発売から時間をかけたぶん、ユーザーの皆様からのフィードバックや不具合に対応し、新要素も追加しています。たとえば、謎のプレートゲートを通ったときの「寿司の映像」があったじゃないですか。じつはもっと多くの映像を用意していたのですが、当時は容量の都合でカットせざるを得ませんでした。今回は、それらの映像もすべて入れています。

全部は無理だったんですけど、そういう細かい要素がいっぱいあります。プレイステーション5版もアップデートされますので、ぜひもう一度立ち上げていただいて、PCしか持っていないという方は、この機会にぜひ遊んでください。

杉田さん:
小島監督の作品には、たとえ内容を知っていても驚きや喜びを感じる体験が詰まっています。PC版でもう一度遊ぶのもいいですし、PC版から入ってあとからプレイステーション5版に触れるのもいい。あるいは『デス・ストランディング2』を遊んでから『1』に戻ったっていい。遊び方に制限なんてありません。皆さんの好きなスタイルで、この世界に触れていただければと思います。(了)

【小島秀夫×杉田智和 対談】『デス・ストランディング2』小島監督が明かす、杉田智和という唯一無二の表現者_012

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ