『ICO』『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』で知られる上田文人氏が率いるゲームスタジオgenDESIGNの最新作、『gen ATLAS』(ジェン アトラス)が「Summer Game Fest 2026」にて発表された。2024年に「PROJECT: ROBOT」としてお披露目されていたタイトルが正式発表となったかたちだ。
発表された最新映像では、砂に覆われた世界で主人公が銃を撃ったり、巨大ロボット同士が戦ったりするシーンが印象的だった。ストアページの説明によれば、本作のジャンルは「シングルプレイ・オープンワールド・アクションアドベンチャー」とのことだが、その全貌は未だ謎に包まれている。
電ファミ編集部では、2026年6月6日から6月8日にかけてアメリカ・ロサンゼルスで開催された「Summer Game Fest Play Days」にて、上田文人氏へのインタビューの機会を得ることができた。また現地では特別に、SGFで発表されたトレーラーよりも「少しだけ詳細な」映像をお見せいただけた。本稿ではその貴重な内容をお伝えしていく。
狙い通りの「意外性」
──今回『gen ATLAS』の最新トレーラーを発表して、ユーザーや周囲からの反響はいかがでしたか。
上田氏:
まだそこまでちゃんと調べきれていないので、ある程度情報が集まり次第レポートにまとめてもらい、これから見る、という形ではあります。ただ、「意外だ」という感想は、今回のインタビューでもよく言われますね。意外性がある、と。
──本当に、いままでにない新しい体験が味わえそうだ、と期待が高まる映像でした。
上田氏:
そういう狙いでもあったので、狙い通りにできたのかなと。
──今回のトレーラー制作にもかなりの手間ひまをかけられたそうですね。この場で特別にお見せいただいた映像と合わせて、気合を感じました。
上田氏:
Epicさんの協力のもと、映像制作スタジオにお願いして、こちらも全面的に協力しながら作った映像ではあります。
でも、自分たちが作ったものなので、「ここはきっちり見せたい」「こういう風にやりたい」というのはあります。だから、当然といえば当然かなと思うんですけど。
──改めて、『gen ATLAS』の制作のきっかけからうかがえればと思います。
上田氏:
テーマとしては、「巨大ロボット」と「壮大な時間軸」みたいなものがあります。
これまでの『ICO』『ワンダ』『トリコ』では、お城とか遺跡とか、ちょっとファンタジー寄りの作品が多かったと思うんです。せっかくgenDESIGNとして独立して──『トリコ』のディレクション自体はgenDESIGNでやっていたんですけど──まったくのゼロから作るのは、今回が初めて。それであれば、これまでと少し毛色の違う、方向性の違うものを作りたい。それが始めたきっかけでした。
僕自身もゲームプレイヤーなので、過去作と似たような毛色のアイデアもあったんです。でも、それだとちょっと「想定内」というか、作り手としても「また同じような世界観を作るのか」となる。意外性がない。だから、プレイヤーとして考えたときに「よりワクワクするのはどっちだろう」「こっちだろう」ということで、本作の制作を進めてきました。
──そこからもう完全に狙い通りに、意外性を印象づけることができたわけですね。
EpicとのパートナーシップとUnreal Engine
──Epicさんとのパートナーシップは、どういう経緯だったんですか。
上田氏:
ちょうどgenDESIGNとして独立したタイミングあたりでお話をいただいて。使っているゲームエンジン、Unreal Engineもそうですし、そのあたりも含めて、もろもろ良いお話をいただけたんです。
──Epicさんによるパブリッシングが発表されたとき、かなり画期的というか、開発者ファーストな条件があったと思います。その条件や開発環境には、どんなメリットがありましたか。
上田氏:
公表されている契約条件とは別に、Unreal Engineの技術的なサポートがあります。それに、「こうした方がいい」「ああしないといけない」といった、そういうオーダーがEpicさんからはないんです。
自分たちがやりたい、本当に作りたいものを作れている。そういう意味では、すごく恵まれているかなと思います。
──開発期間でいうと、どれくらいになりますか。
上田氏:
Epicさんとご一緒したことを発表したのが、2020年だったと思います。そこからずっとこのタイトルを作っていますから、今のところ6年ですね。
──今回のゲームのコアが固まったのは、わりと早い段階からだったんですか。
上田氏:
そうですね。ゲームのコア自体は開発の序盤からさほど変わっていません。あとは技術研究や技術開発、スタジオそのものの体制構築も含めてここまで来たので、少し時間がかかってしまいましたね。
──さっきお見せいただいた映像で、ロボットのパンチで橋がすごい勢いで破壊されていて……ああいう体験が味わえる、と思うとすごくワクワクしました。あの表現をするのにも、やはり高度な技術が要りますよね。
上田氏:
これまでも、ああいう表現ができなくはなかったと思います。ただ、ゲームエンジンがあるということは、最初からいろんな道具が揃った状態でスタートできる、ということです。
自分たちで道具から作る必要がなくて、その上に載せる「自分たちのゲームならではの作業」に注力できる。そこはメリットでしたね。
──Unreal Engineを使うことで、基礎的な部分ではいわば楽ができていると。
上田氏:
そうですね。それまでだと、たとえばカメラのレンズのシミュレーションのようなものも、自分たちで研究して開発しないといけなかった。
元から自分たちが作る以上のものがあるというのは、ありがたい。そのぶん、クリエイティブな作業に時間を割けています。
人間サイズと巨大ロボットの対比が生む、「スケール」
──ここからはゲームデザインや体験の話に移りたいです。上田さんはこれまで、ひと味違う体験、他がやっていない体験をデザインされてきました。今回の『gen ATLAS』では、プレイヤーに何を体験させたいですか。
上田氏:
先ほども言いましたが、やっぱり「巨大ロボット」というテーマ、そして「スケール」ですね。壮大なスケールを、プレイヤーには感じてほしい。
巨大ロボットが出てくるゲームは他にもあると思いますが、違うのはやっぱりスケール。人間サイズの主人公と、巨大なロボットという「対比」です。
たとえば、巨大ロボットをビハインドビューで操作して、人間と同じ速度で移動できるのであれば、キャラクターが人間に差し替わっても、たいしてゲームデザインは変わらないと思うんです。
でも、そういうことではない。巨大なものは巨大なものとして、しっかり描く。そこをテーマにしているんです。
──なるほど、すごく腑に落ちました。いわゆる「ロボゲー」ではない、ということですね。
上田氏:
そうですね。

──ロボットを操作するのではなく、小さな人間サイズの主人公がいて、巨大なロボットがいるからこそ「こんなにデカいんだ」という対比が、否応なく生まれる。言われてみれば、確かにそうです。
上田氏:
ただ、それを成立させるには、モーションの技術や、レンダリングの技術といったノウハウの上に成り立っている必要があります。
もともと『ワンダ』や『トリコ』でも「巨大なものを表現する」というノウハウは溜まっていたので、そことの親和性というか、説得力があるのかなと思います。
──映像だけでも、「巨大」とはこういうことか、と実感しました。「ロボットってこんなにデカいんだ」と。
上田文人作品についに登場した「銃」
──体験という意味では、上田さんの作品でついに「銃」が撃てるようになったのが印象的でした。あれには、どういう意図があるんでしょうか。

上田氏:
常に銃を撃ちながら進む、いわゆるFPSやサードパーソン・シューティングとは、ちょっと違うと思います。あくまで、この環境に存在する「障壁」と相対するための手段。武器は単なる武器なんです。
たとえば『ICO』では棒を持っていましたし、『ワンダ』では弓や剣を持っていた。でも、それはファンタジー世界だからそうだったのであって、その世界に銃が出てくるのはおかしいですよね。
今回はSci-Fiな世界観なので、銃が出てくるのは不自然ではない、むしろ自然なこと。だから、特に違和感なく取り入れられました。
──トレーラーで銃を撃っているシーンを見たとき、いわゆるシューターとは感覚が違う気がして、不思議に思ったんです。「銃を撃つゲームの、銃の撃ち方」じゃない……という感じがして。
上田氏:
なるほど。確かに、たくさんいる敵に対してエイムでピンポイントに狙う、というよりは、もう少し大雑把な作りにはなっているかもしれません。
──そこにも、上田さんの”手触り”が反映されている気がします。ワクワクしたもののひとつでした。
上田氏:
ありがとうございます。




