「迫力のある質量」をゲームに落とし込む難しさ
──主人公が銃で立ち向かう一方で、巨大ロボットは大きな拳で敵ロボットを殴りますよね。あの体験も、なかなか他のゲームでは見ない感じがします。
上田氏:
質量や速度といったものを表現する……でも実際に作ってみると、それをゲームに落とし込むのは、なかなか難しいところがあります。

──「難しい」というのは、質量のある表現をゲームに落とし込むこと、ということですか。
上田氏:
表現については技術もアイデアもあるので、そこはさほど苦労しないんです。難しいのは、それを「ゲームとして成立させる」という部分ですね。
たいていのゲームは、その落とし込みを反射神経に委ねていると思っていて。じゃんけんは、グーとパーのどちらが勝つかは分かっています。だけど、「いっせーの」で同時に出すから、ゲームになる。
でも、質量を表現するためにスローに描くということは、相手がパーを出した、グーを出した、と分かったうえでゲームを成立させる、ということです。そこが難しいんです。
──なるほど、「ゲームになりづらい」ということなんですね。
上田氏:
そうですね。ゲームへの落とし込みを反射神経に委ねるのか、それとも別の何かにするのか。その選択が難しいと思います。
──確かに。たとえば巨大ロボットが右から殴りかかるとして、「次の攻撃は右から来る」と、すぐ分かってしまいますもんね。
上田氏:
そうですね。ですから、たいていのゲームデザインは、プレイヤーの瞬時の判断能力や、運の要素で形成されているものが多いと思います。その中で質量を伴う表現としてスローにする場合、それ以外に何かゲーム要素がないと、ゲームとして成立しにくい。そこは確実にありますね。

ロボットヘッドで各地を探索し、新たなボディに接続していく
──少し話が変わりますが、本作での「探索」をどう作っているのか、詳しくうかがいたいです。
上田氏:
映像にもありましたが、「ロボットヘッド」は飛行する乗り物として機能します。飛行する乗り物はある程度スピードが出るので、限られた空間だと、すぐに行き止まり、行けるところまで行けてしまう。かといって、そこで終わらせるわけにもいかない。それを実現するために、動的にレベル、ステージを読み替える、いわゆるオープンワールド的なシステムが必要だったんです。
広さを感じさせたり、外に見える島や建物といったところまで、ダイレクトに移動できる手段を持っている。それを、現実と同じように感じさせる、ということです。
──あの巨大なロボットヘッドによる「移動」が探索を駆動すると。
上田氏:
そうです。基本のゲームフローは、まずロボットヘッドで移動して、各地域や各場所に残されている巨大ロボットの「ボディ」に接続する……というものです。
そのボディごとに、異なる性能や能力がある。それを用いて、戦闘なのか、パズルなのか、はたまたそれ以外なのか、そういったイベントが起きる。それを繰り返しながら、ゲームを進めていく、という形です。
──なるほど。一方で、映像にもあったように、主人公は地上に降りて、狭いところや地下を、人間サイズのスケールで探索することにもなるわけですね。
上田氏:
そうですね。

──そういえば、映像には戦車のような機械に主人公が乗っているシーンもありました。あれは巨大ロボットとは別の乗り物、というポジションなんでしょうか。
上田氏:
ああ、あれは実は敵なんです。敵なんですけど、その敵を利用することもできる、というシーンですね。
ゲームの基本の流れとしては、そういう形で進行していって、主人公たち──巨大ロボットと小さなロボット──とともに、壮大な時間を体験してもらう。そういう内容のゲームになっています。
──いまスケールの話で「時間」とおっしゃいましたが、大きさだけでなく「時間」を感じさせる、ということだと思います。そこには、どういう意図があるんでしょうか。
上田氏:
主人公たちが生身の人間ではない、というところも対応しています。ロボットやヒューマノイド、アンドロイドというのは、生身とは微妙に違う。だからこそできる「時間の表現」みたいなものを作っているんです。ただ、あまり話しすぎると物語のネタバレになってしまうので、そこまで詳しくは言えないんですけど。

いまシングルプレイゲームを作る価値
──以前、弊誌で実施したインタビューを読み返していて、上田さんのシングルプレイゲームに対するスタンスが面白いなと思っていたんです。マルチプレイゲームがこれだけ盛り上がっている中で、いまの時代にシングルプレイゲームを作る価値、そこで得られるべき体験とは何だと、お考えですか。
上田氏:
昔のシングルプレイゲームと、今のシングルプレイゲーム。体験そのものは、そんなに変わっていないと思うんです。
ただ最近は、むしろシングルプレイゲームの方が、ちょっと盛り上がりつつあるんじゃないか、という気はしますね。

──それは具体的に、どういうところから感じられますか。
上田氏:
SGFで発表されたものを見ても多いですし、一昔前に比べても多い。少しずつ、こちら(シングルプレイ)に戻りつつあるのかな、という感覚があります。データを取ったわけではなくて、あくまで個人的な印象ですけど。
──自分もシングルプレイ派なので、すごく嬉しいです。やはりこういう「入り込む」ような体験、ゲームでしか味わえない体験が、ここにあるのかなと。新しくてワクワクするものがあります。
上田氏:
そこはうまくいったのかもしれないですね。「面白そう」と感じてもらえた、という意味では──まだほんの一部ですけど──見せられたのは良かったなと。

「ないなら、作るしかない」
──さっきの反射神経の話もそうですが、普通のゲームのアプローチとは違うところで戦おうとしている。上田さんの作品は、他とは違う「鉱脈」を掘っている印象があります。
上田氏:
新鮮さというか……僕もゲームプレイヤーなので、自分が遊びたいものを作りたいんです。今はゲームがたくさん出ていますし、僕自身、ゲーム開発の経験もそれなりに積んできた。
だから大体のゲームは、ちょっと触ると「あの味だな」と分かってしまう。「この先こういう体験が続くんだろうな」「こういう展開になるんだろうな」と想像できてしまって、少しダレてしまうところもある。
そういう意外性のなさは、自分としては物足りない。だから、自分たちが作るものでは、そのパターン化してしまっているところを、少しでも崩せたらいいなと思っています。
──やはり最近は、上田さんでも──ゲームをよくプレイされていると思いますが──意外性を感じることは、少なくなっているんですか。
上田氏:
そうですね。新しいネタや新しいアイデアは、たとえばインディーゲームなどで最近盛り上がっていると思います。ただやはり、「意外性」という観点では……。
──だからこそ、「ないなら作るしかない」と。
上田氏:
そうですね。それが、自分たちが作るモチベーションでもあるので。

──お時間になりましたので、最後にちょっとした質問です。会場に「ロボットヘッド」の展示物がありましたが、あれは実物大の大きさなんでしょうか。
上田氏:
ああ、それはいい質問ですね(笑)。実は、実物よりも微妙に小さいんです。
キービジュアルを見てもらうと分かると思うんですが、こういうサイズ感なので、ちょっと小さめにしていると思います。
──そうなんですね(笑)。さっき登って写真を撮ったりしたんですが、「でっかいな」という感覚を身体で感じられて、いい展示だなと思いました。(了)
Summer Game Fest Play Days会場に展示されていた巨大ロボットヘッド。背面から登れるようになっていた
40分ほどのインタビューを終えて改めて、SGFで発表されたトレーラーは、本当にワクワクする映像だったと思う。
この時代に“意外性のある”シングルプレイ・オープンワールド・アクションアドベンチャーが遊べることに、感謝しなくてはならない……そんな感情を噛みしめる取材となった。
『gen ATLAS』はPC(Epic Games)、PS5、Xbox Series X|S向けに発売予定だ。




