いま読まれている記事

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた。「巨大さ」というスケールをいかにプレイヤーに体験させるか、「迫力のある質量」をゲームに落とし込むには【Summer Game Fest Play Days 2026】

article-thumbnail-2606084z

1

2

「迫力のある質量」をゲームに落とし込む難しさ

──主人公が銃で立ち向かう一方で、巨大ロボットは大きな拳で敵ロボットを殴りますよね。あの体験も、なかなか他のゲームでは見ない感じがします。

上田氏:
質量や速度といったものを表現する……でも実際に作ってみると、それをゲームに落とし込むのは、なかなか難しいところがあります。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_007
画像はトレイラーからのキャプチャ

──「難しい」というのは、質量のある表現をゲームに落とし込むこと、ということですか。

上田氏:
表現については技術もアイデアもあるので、そこはさほど苦労しないんです。難しいのは、それを「ゲームとして成立させる」という部分ですね。

たいていのゲームは、その落とし込みを反射神経に委ねていると思っていて。じゃんけんは、グーとパーのどちらが勝つかは分かっています。だけど、「いっせーの」で同時に出すから、ゲームになる。

でも、質量を表現するためにスローに描くということは、相手がパーを出した、グーを出した、と分かったうえでゲームを成立させる、ということです。そこが難しいんです。

──なるほど、「ゲームになりづらい」ということなんですね。

上田氏:
そうですね。ゲームへの落とし込みを反射神経に委ねるのか、それとも別の何かにするのか。その選択が難しいと思います。

──確かに。たとえば巨大ロボットが右から殴りかかるとして、「次の攻撃は右から来る」と、すぐ分かってしまいますもんね。

上田氏:
そうですね。ですから、たいていのゲームデザインは、プレイヤーの瞬時の判断能力や、運の要素で形成されているものが多いと思います。その中で質量を伴う表現としてスローにする場合、それ以外に何かゲーム要素がないと、ゲームとして成立しにくい。そこは確実にありますね。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_008
画像はトレイラーからのキャプチャ

ロボットヘッドで各地を探索し、新たなボディに接続していく

──少し話が変わりますが、本作での「探索」をどう作っているのか、詳しくうかがいたいです。

上田氏:
映像にもありましたが、「ロボットヘッド」は飛行する乗り物として機能します。飛行する乗り物はある程度スピードが出るので、限られた空間だと、すぐに行き止まり、行けるところまで行けてしまう。かといって、そこで終わらせるわけにもいかない。それを実現するために、動的にレベル、ステージを読み替える、いわゆるオープンワールド的なシステムが必要だったんです。

広さを感じさせたり、外に見える島や建物といったところまで、ダイレクトに移動できる手段を持っている。それを、現実と同じように感じさせる、ということです。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_009

──あの巨大なロボットヘッドによる「移動」が探索を駆動すると。

上田氏:
そうです。基本のゲームフローは、まずロボットヘッドで移動して、各地域や各場所に残されている巨大ロボットの「ボディ」に接続する……というものです。

そのボディごとに、異なる性能や能力がある。それを用いて、戦闘なのか、パズルなのか、はたまたそれ以外なのか、そういったイベントが起きる。それを繰り返しながら、ゲームを進めていく、という形です。

──なるほど。一方で、映像にもあったように、主人公は地上に降りて、狭いところや地下を、人間サイズのスケールで探索することにもなるわけですね。

上田氏:
そうですね。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_010
画像はトレイラーからのキャプチャ

──そういえば、映像には戦車のような機械に主人公が乗っているシーンもありました。あれは巨大ロボットとは別の乗り物、というポジションなんでしょうか。

上田氏:
ああ、あれは実は敵なんです。敵なんですけど、その敵を利用することもできる、というシーンですね。
ゲームの基本の流れとしては、そういう形で進行していって、主人公たち──巨大ロボットと小さなロボット──とともに、壮大な時間を体験してもらう。そういう内容のゲームになっています。

──いまスケールの話で「時間」とおっしゃいましたが、大きさだけでなく「時間」を感じさせる、ということだと思います。そこには、どういう意図があるんでしょうか。

上田氏:
主人公たちが生身の人間ではない、というところも対応しています。ロボットやヒューマノイド、アンドロイドというのは、生身とは微妙に違う。だからこそできる「時間の表現」みたいなものを作っているんです。ただ、あまり話しすぎると物語のネタバレになってしまうので、そこまで詳しくは言えないんですけど。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_011
画像はトレイラーからのキャプチャ

いまシングルプレイゲームを作る価値

──以前、弊誌で実施したインタビューを読み返していて、上田さんのシングルプレイゲームに対するスタンスが面白いなと思っていたんです。マルチプレイゲームがこれだけ盛り上がっている中で、いまの時代にシングルプレイゲームを作る価値、そこで得られるべき体験とは何だと、お考えですか。

上田氏:
昔のシングルプレイゲームと、今のシングルプレイゲーム。体験そのものは、そんなに変わっていないと思うんです。

ただ最近は、むしろシングルプレイゲームの方が、ちょっと盛り上がりつつあるんじゃないか、という気はしますね。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_012
画像はトレイラーからのキャプチャ

──それは具体的に、どういうところから感じられますか。

上田氏:
SGFで発表されたものを見ても多いですし、一昔前に比べても多い。少しずつ、こちら(シングルプレイ)に戻りつつあるのかな、という感覚があります。データを取ったわけではなくて、あくまで個人的な印象ですけど。

──自分もシングルプレイ派なので、すごく嬉しいです。やはりこういう「入り込む」ような体験、ゲームでしか味わえない体験が、ここにあるのかなと。新しくてワクワクするものがあります。

上田氏:
そこはうまくいったのかもしれないですね。「面白そう」と感じてもらえた、という意味では──まだほんの一部ですけど──見せられたのは良かったなと。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_013
画像はトレイラーからのキャプチャ

「ないなら、作るしかない」

──さっきの反射神経の話もそうですが、普通のゲームのアプローチとは違うところで戦おうとしている。上田さんの作品は、他とは違う「鉱脈」を掘っている印象があります。

上田氏:
新鮮さというか……僕もゲームプレイヤーなので、自分が遊びたいものを作りたいんです。今はゲームがたくさん出ていますし、僕自身、ゲーム開発の経験もそれなりに積んできた。

だから大体のゲームは、ちょっと触ると「あの味だな」と分かってしまう。「この先こういう体験が続くんだろうな」「こういう展開になるんだろうな」と想像できてしまって、少しダレてしまうところもある。

そういう意外性のなさは、自分としては物足りない。だから、自分たちが作るものでは、そのパターン化してしまっているところを、少しでも崩せたらいいなと思っています。

──やはり最近は、上田さんでも──ゲームをよくプレイされていると思いますが──意外性を感じることは、少なくなっているんですか。

上田氏:
そうですね。新しいネタや新しいアイデアは、たとえばインディーゲームなどで最近盛り上がっていると思います。ただやはり、「意外性」という観点では……。

──だからこそ、「ないなら作るしかない」と。

上田氏:
そうですね。それが、自分たちが作るモチベーションでもあるので。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_014
画像はトレイラーからのキャプチャ

──お時間になりましたので、最後にちょっとした質問です。会場に「ロボットヘッド」の展示物がありましたが、あれは実物大の大きさなんでしょうか。

上田氏:
ああ、それはいい質問ですね(笑)。実は、実物よりも微妙に小さいんです。
キービジュアルを見てもらうと分かると思うんですが、こういうサイズ感なので、ちょっと小さめにしていると思います。

──そうなんですね(笑)。さっき登って写真を撮ったりしたんですが、「でっかいな」という感覚を身体で感じられて、いい展示だなと思いました。(了)


40分ほどのインタビューを終えて改めて、SGFで発表されたトレーラーは、本当にワクワクする映像だったと思う。

この時代に“意外性のある”シングルプレイ・オープンワールド・アクションアドベンチャーが遊べることに、感謝しなくてはならない……そんな感情を噛みしめる取材となった。

『gen ATLAS』はPC(Epic Games)、PS5、Xbox Series X|S向けに発売予定だ。

『ICO』『ワンダ』『トリコ』上田文人氏に、最新作『gen ATLAS』について詳しく聞いてきた【インタビュー】_017

1

2

デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ