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【宮本茂氏インタビュー】映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』の制作を通して感じた“映画だからできること”とは?

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「ゲームをそのまま映画にしたって面白くない」

──任天堂の宮本茂氏が、映画に対してこのように考えていたことは、あまり知られていない。

それでも映画を作ることを決断し、前作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は世界的な大ヒットを記録。
その二作目となる『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』は、前作をさらに凌ぐ勢いで快進撃を続けており、世界累計興行収入はすでに約1121億円を突破。2026年の映画興行で世界1位を独走している。

日本公開2日前となる4月22日、東京・有楽町にて実施されたメディア合同インタビューで、宮本茂氏はフォックス・マクラウドを採用した舞台裏、ローカライズではなくイチから作り上げた「日本語版」の制作裏話、そして「任天堂劇団」というキャラクター観について、独自の言葉で語った。

宮本茂が語る、映画だからこそできた表現とは──『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』インタビュー_001
ご存知、任天堂の宮本茂氏

取材/世界のザキヤマ
編集/kawasaki

──冒頭からフルスロットルで、前作以上に各キャラクターそれぞれに見せ場がある群像劇的な構成が印象的でした。脚本や物語の見せ方は、どのように固まっていったのでしょうか。

宮本氏:
基本的には脚本家がアメリカにいて、メインの脚本家がいるんですが、スタッフクレジットを見ると僕の知らない人まで脚本に名前があるというぐらい、サブの脚本をやってる方もおられるんです。

マット・フォーゲルさんというメインの脚本家と、1作目を作る間、多分6年以上、いろんなことをやり取りしながら作ってきたんです。今回も同じくマットさんがリードで入って、いくつかの粗筋を出してくれました。

宮本茂が語る、映画だからこそできた表現とは──『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』インタビュー_002

映画の1作目は、「ゲームの映画化って何が面白いんだろう?」というところから始まっています。
僕としては「ゲームをそのまま映画にしたって面白くないですよ」と思っていて。ゲームを遊んでいる人が面白いから結果面白いわけで、映画で語っても面白いもんじゃない、と。

そういうところからスタートして、いろんなことをやった後、意外とゲームと同じ流れになったなというのが1作目の映画なんですよ。

そうするとやっぱりゲームと同じ流れなので、マリオの世界の紹介がメインになってくるんですね。
このキャラクターはこういう人ですよ、とか。そもそもキノコ王国はどこにあるの、とか。説明することにすごく時間を取った。

で、今回のギャラクシーでは、もう自己紹介が終わっているから、初めて見る人も含め「楽しかったらいい」って開き直って。じゃあ、キャラクターをもっと描いていこう! という大まかな方針が決まったんです。
そこでマットさんから、「ピーチが自分の出生の秘密に興味を持つ」「私は何者かしら」というのをコアに作ろう、というアイデアが出ました。

宮本茂が語る、映画だからこそできた表現とは──『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』インタビュー_003

一方で、1作目でちっちゃくなったクッパが出てこないのは、期待外れだろう、と。
あのちっちゃくなったクッパはどうなったんだ? という話が1つあります。

もう1つは、ヨッシーを出しちゃったので、ヨッシーは出てこないとダメというのがあって。それらを脚本で全部うまくまとめていく作業を主に行っていきました。これが意外と楽しくて、だいぶ話し込んでしまいました。

ピーチが自分の出生の秘密に興味を持つ。マリオがそれをどんな風に気遣ったら程よい恋愛観ができるのかな、みたいなことがあって、1人ずつのセリフの密度と目的が決まってくる。
で、ちっちゃくなったクッパは基本的にどうなりたいのかということと、クッパという悪役がいて、その悪役をマリオが倒すという話ではないんですと僕はずっと言ってて。

「スーパーマリオ劇団」というのがあって、そこに悪役をやる役としてクッパがいるけど、友達になる可能性だってある。劇によっては完全な憎いボス、凶悪なヴィランではなくて、マリオの仲間の中でヴィラン役をする役者として会ってほしいということが1つあるので、ただの悪役にしたくないというのもあった。

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で、ヨッシーはどうしてもマリオをやる上では出したかったんですけど、1作目で出番がなかった。ジャングル王国へ行く途中の旅の途中にヨッシーアイランドを通るんですよ。あそこでもう何匹か出てるんですけど、それをどうしても使いたいので、卵で出しました。

じゃあニューヨークに残ったヨッシーは、というと。前作を見た人はよく知ってるので、ニューヨークに残ったヨッシーはどんな事件に発展するのか、じゃあもうヨッシーのニューヨークだけで1本作ろうかとかね、ニューヨークであの事件に巻き込まれるヨッシーで1本作ろうかみたいな話とか、いろいろあって落ち着いた。

そういう意味でなんですかね、1作目で振ったこととか、それぞれの人の役割を任天堂らしく作り込んでいくというのはいっぱいあって、すごい面白かった。作ってて楽しかったです。

そういうのをマットさんと戻しながら練っていくんですね。
ちょっとずつ作りながら隙間をまた埋めていくという作業で、割とアニメーションで良かったなと思っていて、ある程度のブロックを作って間を埋めていくとか、その間にセリフを直していくみたいなことが割と自由にできるので、とても楽しく仕事をしました。

──「フォックス・マクラウド」の参加、本当に驚きました。マリオシリーズ以外のIPキャラクターを登場させる判断は、どのような経緯で生まれたのでしょうか。また、宮本さんご自身が強く推されたキャラクターがいれば教えてください。

宮本氏:
ゲームというジャンルでは、「キャラクターは混ぜない」ということを結構厳しく決めてきたんですよ。今までそうして運営してきたんです。

それはやっぱり、ミッキーマウスはディズニーの世界に1匹しかいないということに、ウォルト・ディズニーさんもこだわっていて、どうしても仕方なく同時に2つのアトラクションがあったら2人いないとしょうがないけど、同じ場所に2人は出ないみたいなことを決めていたんだと思うんですね。

そういうのがあって、任天堂でもやっぱりいろんなゲームのキャラクターが混在はしないということがあって。

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唯一、スマブラを作る時に「仕方ない」と。あれは、いろいろ考えた結果の「おもちゃ箱」だったんです。
任天堂のキャラクターがいっぱい入ってるおもちゃ箱があって、よく見ると元々人形という設定なんですね。だからおもちゃ箱なんでオッケーということで、スマブラだけは混在オッケーと言ってきたんです。

ここへ来て、ピクミンについては唯一例外で、どのキャラクターと混在しても
良いって決めようと思って。それをまず掟破りの1つとして。

任天堂にはいろんなタレントがいて。今までゲームの仕組みをいろいろ考えて、そのゲームの仕組みに1番あったキャラクターを使うということをやってきた。だから、ゼルダになるかマリオになるかわからないものを考えてるんですよ、ゲームの仕組みって。

この仕組みはゼルダでやった方がいいとか、これはマリオでやった方がいいとか、これは新しいキャラクター作った方がいいと、といった風に開発をしてきたので。
今回、これから映画に発展していくなら、「任天堂劇団」で誰がどんなふうに出たらいいかと、共演もあるということで、少し緩めてもいいんじゃないかな? と思って。

今回はなんでもありじゃなくて「ギャラクシー」です。ギャラクシーで優秀なパイロットはフォックスだっていう、これはイルミネーションの方から言ってきて。

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普通に外部ライセンスしているんなら、そう言われた時点でノーって言うんですけど、一緒に作っているので、いや、ありかもわからんな? と思って。それで、あるとしたらどんな出方が嬉しいかというのを積極的にやっていきましたけど、ちゃんと出てるのはフォックスだけで。

で、推しは実は堂々と出てる。ピクミンはいつも端っこに置いてたんですけど、今回は真ん中に出てくるという。これからピクミンは世界中のあちこちにいるという設定だからです。

──改めてになりますが、本作は「スーパーマリオギャラクシー」というタイトルを冠しつつ、マリオシリーズのさまざまな要素が詰め込まれています。タイトルにギャラクシーをつけた理由や、メインのストーリーがギャラクシー関連になった意図・経緯を教えていただけますか。

宮本氏:
ギャラクシーを、っていう話は、1作目を作ってる時からあったんですよ。ただ、2作目をギャラクシーベースでやろうというところまでは決まってなくて。

ただ、ピーチが「自分はどっかから飛んできたのよ」っていうのがあった。ピーチはどこから来たんだろう、ニューヨークから来たんではないよな、ということで、じゃあ土管はどこに繋がってんのかなという話をしていて、多分宇宙のどっかですよねということになって。

だから1作目を見てお気づきになった方もいるかもしれませんけど、ピーチが空を見て、ギャラクシーのことをちらっと言うんですよ。今回はもっと「宇宙にはたくさんのギャラクシーがあるんだよ」という言い方を。
そういう意味では、「次はギャラクシーに行くかな」という予感はなんとなくあったけど、そのときはまだはっきり決まってなかった。

そうして、脚本の方からハッキリと「タイトルをギャラクシーにしたらどうか」という話が出てきて。

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僕らはそのマリオ、キノコ王国のマリオは次どっちへ展開したらいいのかはっきり決まってなかったんですけど、その話を聞いて「そうか!」って。ニューヨークからキノコ王国というステージに行ったって。そこにドンキーコングのジャングルも取り込んでいって、マリオ劇団としては結構いい舞台ができた。

この映画の世界を広げるにあたって、「オデッセイ」的に横に広がるんではなくて、縦に広がる「ギャラクシー」というのはすごく腑に落ちていて、それで決まりました。

だから広げていくのがピーチのお話で、それがギャラクシーにという流れと、それは任天堂の次のゲームの世界なので、他のシリーズを全部取り込んできても、それは任天堂劇団としてはもうオールキャストで楽しんでもらえばいいという順番でこういうものができていった。

──今回、クッパは悪役を演じるキャストというお話もありましたが、クッパJr.が登場したことで、良き父親としての、悪役じゃない面が描かれました。家族関係を描く上で意識されたことや、クッパとクッパJr.の関係でお好きなシーンがあれば教えてください。

宮本氏:
さっきもちょっとお話しした、クッパはただの悪役ではないということで。マリオ劇団の中での主に悪役担当という人なので、可愛いところがあってほしいな、許せるところがあってほしいなってずっと思ってたんですけど、今回はもういきなりちっちゃくなって。

一旦マリオの仲間になって一緒に冒険したらどうかというところで、一緒に冒険するけど、やっぱり最後は悪役として戻ってきてほしいというところにジュニアの話ができて。そこに、ちっちゃくなったクッパが戻って友達になるという流れが、すごくいい。

もっと他にもお気に入りのシーンがたくさんありますが、ネタバレになってしまいますので見てのお楽しみということで(笑)。

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──前作同様、今作にも多くの小ネタやファンサービス的な要素が盛り込まれていると感じました。限られた上映時間の中で、物語の展開と小ネタの取捨選択はどのように詰めていったのでしょうか。

宮本氏:
これはもうイルミネーションの力ですね。イルミネーションの人たち、監督を含め、僕らよりもスーパーマリオのことをよく知っている人たちがずらっと並んでいて。

もう1つは、ちっちゃいユニットで作るんですね。部分的なもので、例えば3分が30個集まると90分になる。そのユニットの差し替えをしながら、そこからもう僕の作り方とすごく似ていて、ほとんど無駄なものを作らないんですよ。
ただ、その差し替えや並び替えがたまにあったりして、本当に密度を高く作り込むというのがイルミネーションのテクニックで。

そこと、映画館に子供を連れていく親が、連れていった責任として座っているとか、親が結構感動する話になっているけど子供が退屈しているとか、そういうことのないようにしたいなとずっと思ってきたので。
息をつかせる暇なくバーっと行って90分で終わると決めて作っているのがすごく良かったと思います。

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──制作中に何度もご覧になってきたと思いますが、実際に完成したものをご覧になった時、宮本さんはどう感じられましたか。また、改めてご覧になって、ゲームとは違う映画という表現形態だからこそできたと感じたことがあれば教えてください。

宮本氏:
ゲームを作るときに1番難しいのは、作っていると客観性がなくなることだと思っていて、どっぷり入ってしまうんですよね。もう3年間そのゲームの世界にどっぷり入った開発者と、同じ感覚で初めての人が遊ぶわけないので、そこを気を付けて作りましょうということをよく言っているんです。

映画に対しては僕まだ素人なので、結構見れば見るほど入り込んでしまって。客観性をどうやって保つのかということをすごく意識しました。

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ただ、やっぱりゲームと同じで、7割ぐらい行ったところで、ほぼほぼ完成するな、これで十分なネタが揃ったなという時期があって、それが大体7割ぐらい進んだところなんですね。
そこは結構ゲームに近いなと思っていて。クリスさんも同じような感じで、「これで行ける」と思うタイミングが結構同じ頃にありました。

映画だからこそできることもいっぱいありますよね。ゲームは期待通りのリアクションじゃないと、とんでもない方向に行くとついていけないんですけど、映画はまあ、全く裏切ることができますよね。それが映画の1番楽しいところでもあるんですけど。

あとはセリフである程度心情が語れるということで。だから多分、ピーチが「マリオ」って言って、マリオがわーっと走っていって、「握手」って言うじゃないですか。ああいうことってゲームでは絶対できないんですよ。「握手」って言った後の気まずさをこう表すのに、ちょっと遠慮したかなという。

ああいうところがやっぱりゲームではやらないので。脚本で練っているとすごく楽しくて、絵を見ながらベストのセリフを作るというのはすごく楽しくやりました。

最終的に出来上がって、皆さんと一緒に劇場で見た時に、なかなか大きなスクリーンで、ドルビーのサウンドも全部入って見ることってないんですよね。どっちかというと開発中はテレビ画面で見ているし、透かしが入っていたりして完全な状態で見れないんですけど、最終試写の時は結構感動しまして。

40年間作ってきたものの思い出みたいなところで、こう、目が熱くはならないんですけど、なんかキャラが出てくるたびに、ちょっと嬉しいなと思うこともすごくあって。だから、任天堂のゲームを遊んできてくれた人は、それぐらいの思い出があるので、絶対楽しんでもらえるなと思いました。

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──前作の映画公開前は、海外で大ヒットしているなか、海外の批評家からの評価が低かったといったお話をされていました。今回も同様に海外で大ヒットしているという状況のなか、日本公開を前にした宮本さんの心境と、前作のヒットを受けて制作体制で変わったことや影響があったことがあれば教えてください。

宮本氏:
状況がとても似ているというのはそうですよね。
実は、評論家の人たちの1作目への評論は「それもあるな」と思っていたんですよ。

で、今度はちょっと違うだろうと思ったら、前回より厳しかったので、不思議やなと思って。ここではこう言わんとこ。とても不思議だなと思って。
なんか映画業界をもっともっと盛り上げようと思って他のジャンルから入ってきて頑張っている割に、映画業界を盛り上げる人たちが消極的やなというのはとても不思議なんですけど(笑)。

この映画は7~80か国向けにローカライズしているんですよ。で、日本語版は1作目の時はもう脚本の段階から日本語で書いて、英語と同時進行した。でも今回は、英語で脚本ができたものを日本語で書き直しているんです。だから、ローカライズしているんじゃなくて、日本語版を作っているんですよ。

しかも海外で公開されてから3週間遅れるので、これでどんと数字に追い打ちをかけたから、日本担当の僕としてはクリスさんに申し訳ないというプレッシャーがすごいありますけども、見てもらったお客さんの反応を見ると、マリオのことが大好きな人たちは、本当にマリオのことが大好きな人たちが作っているものを普通に受け入れてもらっていて。これは日本でもちゃんと受け入れられるなと。

もう1つは、前回見ていない人でも、マリオを知らない人でも、前回よりかなり映画として楽しんでもらえるものができているなと思うので、日本公開をとても楽しみにしているところです。

<了>

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ライター
ロボット物とゲームBGMとラーメンの食べ歩きが好き。ソシャゲ記事の執筆が多めです。(株)F5代表。

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