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『パトレイバー』らしさとは特車二課の個性を引き出すこと。シリーズ初監督・出渕裕が語る『機動警察パトレイバー EZY』の変わらない日常

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「『パトレイバー』らしさ」とは、いったい何だろう。

『機動警察パトレイバー』(以下、『パトレイバー』)は、ロボットアニメでありながら、主役機イングラムが毎話のように大活躍するわけではない。華々しい新型機への乗り換えもなければ、ロボット同士がド派手に撃ちあうことも少ない。

それどころか、主役機はただ整備されて格納庫に置きっぱなし……なんて日常すら、『パトレイバー』ではお馴染みの光景だ。

ほかのロボットアニメとは異なる輝きを放つ『パトレイバー』は、1988年のOVAから始まり、コミック、テレビアニメ、劇場版とメディアの枠を超えて縦横無尽に駆け抜けてきた。そして、2026年を迎えた現在、本作は38周年を迎えている。

世代を超えて愛されている『パトレイバー』。本作をHEADGEAR【※】の一員として支えてきたのがメカニカルデザイナー・出渕裕氏である。そんな出渕氏が本シリーズで初めて「監督」として臨んだのが、現在公開中の劇場版『機動警察パトレイバー EZY』(以下、『EZY』)だ。

劇場公開の直前、電ファミニコゲーマーは出渕氏にインタビューを行える機会を得た。タイトル「EZY」に込められた意味、「『パトレイバー』らしさ」とは?、そして永井真理子さんによるエンディングテーマ実現の経緯など、『EZY』のあれこれを出渕監督にうかがった。

※HEADGEAR……『機動警察パトレイバー』を生み出したクリエイター集団。ゆうきまさみ(キャラクター原案)、出渕裕(メカニックデザイン)、伊藤和典(脚本)、高田明美(キャラクターデザイン)、押井守(監督)の5名で構成されている。

『機動警察パトレイバー EZY』出渕裕監督インタビュー:『パトレイバー』らしさとは特車二課の個性を引き出すこと_001

聞き手・編集/豊田恵吾
文/世界のザキヤマ
編集/竹中プレジデント
撮影/永山亘


劇場版『パトレイバー』で感じた作品としての強度

──本日はよろしくお願いいたします。『パトレイバー』は世代を超えて愛されている感覚があるのですが、38年前に出渕監督が「HEADGEAR」としてみなさんと本作を生み出すにあたって、もっとも意識されたことはどういった部分だったのでしょうか。

出渕裕氏(以下、出渕氏):
いちばん最初は、オリジナルアニメの企画をゆうきまさみさんと二人でやった「企画ごっこ」でした。その中でゆうきさんが出した案がおもしろくて、「これをなんとか形にできないかな」と動いたのがきっかけでした。

当初は、僕が所属していたパラレル・クリエーション【※1】の企画としてサンライズさんに持ち込んだのですが、結局その時は実現せず、一度引き上げまして。その後、改めて伊藤和典さんたちと一緒に練り直して、それをベースにバンダイさんとご一緒する形になりました。

当時はOVAの黎明期でしたが、30分のビデオが1本1万円以上と非常に高価だったんですね。それでは普及しないということで、ブロックバスター価格【※2】で展開することになったんです。その際、ある程度ネームバリューのあるクリエイターが集まって制作するならなんとかなるだろう、みたいな形でスタートすることができました。

あくまで「企画ごっこ」からスタートしていますから、当初は「1回でもアニメになるといいよね」くらいのノリだったんですよ。

それが劇場版やテレビアニメへと拡大していきました。バンダイさんからは「テレビ展開に合わせて模型も展開したい」と要望をいただいて。また、当時は東北新社に所属し、現在はジェンコにいらっしゃる真木さん(真木太郎氏)は「劇場版をやりたい」という意向を持っていらっしゃったんですね。そうしたみなさんの思いも交わり、いろいろな方向へと広がっていきました。

※1 パラレル・クリエーション……1982年ごろにSF作家の豊田有恒が主宰した創作集団。

※2 ブロックバスター価格……1980年代後半、本編内にCMを入れるなどの手法により、高価だったOVAを低価格で販売。初期OVAシリーズ『機動警察パトレイバー アーリーデイズ』は1本4800円。

『機動警察パトレイバー EZY』出渕裕監督インタビュー:『パトレイバー』らしさとは特車二課の個性を引き出すこと_002

──作品としての『パトレイバー』の強度、手ごたえを感じた瞬間はどのタイミングだったのでしょうか?

出渕氏:
手ごたえを感じたのは、劇場版1作目である『機動警察パトレイバー 劇場版』ではないでしょうか。

というのも、それ以前の初期OVAシリーズ(以下、『アーリーデイズ』)は、昨今では珍しいかもしれませんが、5話・6話を除き、各話完結のストーリーにしていたんですね。伊藤さん(伊藤和典氏)たちがそれまで手がけてきた『うる星やつら』『魔法の天使 クリィミーマミ』のフォーマットを取り入れたものでした。

当時のロボットアニメは、昔のスーパーロボットものとは違い、大河ドラマのように「全話を通してひとつのストーリーが連続していく形」が主流だったんです。だからこそ、『パトレイバー』の各話完結のオムニバス形式というフォーマットは、当時のロボットアニメとしては珍しかった気がします

でも、その枠組みがあったからこそ、いろいろなジャンルに踏み込むことができたんだと思います。この頃、80年台は、どちらかというとギャグやパロディの匂いが強かったものが多かった気もします。時代ですかね(笑)。

──一方で、劇場版では『パトレイバー』のシリアスな面が打ち出されました。

出渕氏:
ええ。それがいざ劇場版を上映してみたら「真面目なポリティカル・フィクションにもアプローチできるんだ」と気づかされました。おちゃらけやギャグでごまかさない、シリアスな展開もしっかり受け入れてくれる「作品の懐の深さ」を実感したんです。

そこから、テレビと劇場で「硬軟を使い分ける」ことができるなと思いました。テレビは一般のユーザーに認知してもらうためのものであり、ガンプラのように模型ファンへプラモデル展開を届ける役割もあります。

そうやってテレビで認知度を広げつつ、劇場版では「こんなこともできる」という可能性を追求する。テレビはソフト路線、映画はハード路線、という住み分けですね。

『機動警察パトレイバー EZY』出渕裕監督インタビュー:『パトレイバー』らしさとは特車二課の個性を引き出すこと_003

──『EZY(イズィー)』というタイトルは、出渕監督がつけられたのでしょうか?

出渕氏:
いえ、これは脚本の伊藤和典さんの発案ですね。データの単位で、ギガ、テラ、ペタのさらに上にExa(エクサ)、Zetta(ゼタ)、Yotta(ヨタ)があるのですが、その頭文字を取って『EZY』と名付けられました。

これまでの『パトレイバー』のさらに未来、その先にあるもの、というイメージです。決して「イージーに作っているから」とか、「出渕(イヅブチ)」からつけた名前ではありませんよ(笑)。

──(笑)。本作は劇場で公開されますが、オムニバス形式というのは劇場作品としては珍しいですよね。『アーリーデイズ』のセルフオマージュという考えだったのでしょうか?

出渕氏:
『EZY』については、最初に「映画ではありません」と言ってしまったんですよね。

というのも、『EZY』は初めから映画として作っているわけではないんです。あくまでテレビアニメのフォーマットとして制作していたものが、結果として劇場で流す方針になったと。でも、再発進のやり方として、最初はこの方式で良かったのかもしれません。

歴史の長い作品では、「DVDやBlu-rayを買って手元に置いておきたい」というコレクター性を持つファンの方々がまだたくさんいらっしゃると思いますので劇場で上映するタイミングで、同時にBlu-rayも販売することになりました。自分が監督した『宇宙戦艦ヤマト2199』と同じビジネススタイルですね。

──『File 1』の「トレンドは#第二小隊」というタイトルからは、時代性を強く感じました。時代性、現代性を取り入れるにあたって、意識されたことがあればお聞かせください。

出渕氏:
企画が立ち上がった10年ほど前、まだ連続した長尺のストーリーを想定していた初期段階では「AIをテーマにしよう」という案も出ていました。

ただ、その時点ですでにAIはほかの作品でも多く使われている題材でした。『EZY』の世界にもAIは存在しますが、30分ものに変更した際にAIをテーマの中心にするのは避けようと判断したんです。

ガジェットや周囲の状況も含め、『パトレイバー』はいつも「現代の10年後」と言いながら、実質的には「現代」を描く作品ですからね。だから、そのテーマを深掘りしすぎると自滅しそうな気がしたんですよ。

10年前の時点でもAIの話題はありましたが、当時想定した「これからAIはすごいことになる」というシミュレーションも、いまの状況から見れば「現実ですでに十分すごいことになっている」状態ですし。

──現実の進化スピードが早すぎると。

出渕氏:
完全に現実に追いつかれてしまっているんですよね。だから結果としては、AIをテーマの中心にしなくてよかったと思っています。

これからも加速度的に進歩していく技術を、作品のテーマや主軸に据えるのは危険だなと。近未来を描いているはずなのに、僕らが描いた未来のほうが現代より古く見えてしまう危険性がありました。そこは避けて正解だったと思います。

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出渕監督が考える「『パトレイバー』らしさ」とは?

──出渕監督は「『パトレイバー』らしさ」をどのように捉えていらっしゃいますか?

出渕氏:
「『パトレイバー』らしさ」とは、「特車二課のキャラクターたちの個性を引き出し、主役機イングラムも含めて彼らの日常を描く」ことに尽きると捉えています。伊藤(和典)さんなら「焼き魚定食」【※】と答えると思いますが、僕自身はそこにはそれ程こだわりを持っていません。

特車二課はメンバーチェンジしましたが、「公務員であり警察官という権力組織に属しながらも、どこかはみ出し者である」というファクターは同じです。彼らの個性をうまく描ければ、それが「『パトレイバー』らしさ」になるのかなと。

キャラクター設定は今作も伊藤さんが手掛けているため、ベースには伊藤さんのカラーがあります。先日、ご本人からは「いまはぶっちゃん(出渕氏)が育てているから」と言われましたが、それでも出発点は間違いなく伊藤さんです。

そこから「どう広げていくか」を意識しながら、自分なりに膨らませて描いています。そうした部分に、キャラクターたちの魅力が詰まっているとうれしいですね。

※焼き魚定食……脚本家の伊藤和典さんが『機動警察パトレイバー』の制作にあたって掲げたコンセプト。ド派手で非日常的なロボットアクションではなく、毎日食べても飽きない「定食」のように、キャラクターたちの日常や生活感、親しみやすさを重視した作風を指す。

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──当時からのファンとして、イングラムが続投して登場することに痺れました。本編中の30年間、改修を重ね、「イングラム・プラス」として運用され続けていることに、機体としての普遍性を感じたといいますか……。

出渕氏:
イングラム・プラスは、パッと見たときに「イングラム以外の何ものでもない」という仕上がりになっていると思います。デザイン的には肩のパーツや腰周りなど多少の変更は加えていますが、全体の印象は変わっていません。

もともと『パトレイバー』はおもちゃ販促の企画ではないため、「途中で新型機に乗り換える」というロボットアニメ特有の商業的なお約束はありませんでした。僕自身、「最初から最後まで(同じ機体で)がんばる」ほうが好みですしね。

『パトレイバー』はロボットものとして見られることが多いですが、振り返ってみると、いわゆる「ロボットもののセオリー」からはことごとく外れているかもしれません

大河ドラマのようにお話が続いたり、敵味方が新しいメカを出して撃ち合ったり……という作りではないですからね。なによりイングラムは稼働率が低く、活躍しなくてもストーリーが成立します。むしろ活躍させすぎるとよくなかったりしますし(笑)。

──なるほど。

出渕氏:
活躍させる理由を考えるのも大変なんです。それに、「そんな大事件、なかなか起こらないでしょ」と。

だからイングラムは、整備だけされて置きっぱなしなことも多いんですよね。ただ、その結果として、キャラクター主体の物語に注力できるのだと思います。

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──イングラムが、38年にわたって愛されることになると、当時は想像されていましたか?

出渕氏:
まったく想像もつきませんでした。リアル系ロボットでありながら、白黒の警察車両カラーで、パトランプや旭日章をつけ、さらに腕には「警視庁」と大きく書かれている。当時は「ギャグすれすれだな」と思っていました(笑)

でも、予想外に「かっこいい」と好評をいただいたんですね。もちろん不満ではなく、「そういうふうに受け入れてもらえるんだ」という意外な感覚でした。ただ、一度受け入れられると、それがスタンダードになり、かっこいいものとして定着していくんですよね。

このデザインが自分の中では、リアルロボットもののひとつのスタンダードになっていると感じています。ヒロイックなツインアイではなく、ゴーグル付きのデザインで……。そういった意味で「なかなかこれ以上のものは出にくいな」という感覚になってしまいましたね。

『EZY』第1話はテレビシリーズの「いつもの通常回」を切り取ったような構成

──『File 1』はキャラクターの説明がないまま始まります。視聴者が劇中のやり取りから登場人物の個性や関係性を知っていくという構成は珍しいですよね?

出渕氏:
「彼らはすでにそこにいる」という前提から始めよう、というのは伊藤和典さんの意向でした。

『アーリーデイズ』のように「泉野明の入隊」という導入イベントを今回は設けていません。そのため1話は、テレビシリーズの「いつもの通常回」を切り取ったような構成になっています。

続く2話の妄想話は変化球ですし、3話の撮影現場の話も、過去の『機動警察パトレイバー NEW OVA』第6話「視聴率90%」の系譜にありますが、今回はCGの活用でより大規模な見せ方が可能になりました。

視聴者が事前情報なしに特車二課の日常に放り込まれ、関係性を客観的に「覗き見」しながら、その世界へ入っていく。説明を省くこうした構造は、最近の作品では稀だと思います。

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──視聴者は、すでにできあがった彼らの日常に触れることになると。

出渕氏:
ただ、2話の妄想話がキャラクター紹介の役割も兼ねているんです。それぞれのリアクションなどを通して、視聴者が気付かないうちにキャラクター性をつかめるような仕組みにしています。

当初は、妄想シーンをさらに派手でわかりやすくしようという考えもありました。演出や美術、画面の見せ方をキャラクター各人の視点ごとに、全部ガラリと変えようかということも考えてみたんですね。

考えてはみたものの、さすがに現場が大変すぎるということで断念しました。ただ、いつもの『パトレイバー』のテイストとは違う方向性として、演出面に少しその名残があるんです。

──なるほど。2話には、これまでの『パトレイバー』とは異なる演出表現も多く見られました。たとえば、印象的なカットインの使い方ですとか。

出渕氏:
じつは『パトレイバー』って、本来はあまりカットインを多用しない作品なんですよ。富野(由悠季)監督が得意とされる「でも、私がっ!」というような、画面にキャラクターの顔が割り込んでくる劇的な演出ですね。

ただ、今回は「2話の特殊なノリなら許容できる」と判断し、意図的にカットインを採用しました。2話は、最初に監督をお願いするつもりだった片山くん(片山一良氏)の脚本がよかったんですよ。「この本なら京ちゃん(京田知己氏)に」と思い、絵コンテをお願いしました。仕上がったものが本当にすばらしく、いい形に収まりました。

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──3話では旧特車二課の面々が少しずつ登場してニヤリとしました。登場の塩梅はどのように決めたのでしょうか。

出渕氏:
「おなじみのメンバーは出しすぎない」というのが、伊藤さんとも共通した方針でした。

まだ新キャラクターが定着していない序盤に、後藤や野明が出てしまうと、ファンに馴染みがある分、視点が引っ張られて新キャラを食ってしまう懸念があったんです。ただ、味付けとして太田(太田功)と進士(進士幹泰)はコンビで出したほうがいいだろうと

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──進士が相変わらず太田のせいで胃を痛めていることが伝わってきました(笑)。

出渕氏:
遊馬(篠原遊馬)は言及こそされますが、ここで姿を出すまでではないという感覚です。

初代の彼らから見て、「今度の1号機のパイロットも女性か。泉(野明)と同じだな」と、ニッコリと温かく見守るような立ち位置での登場がベストなのかなと思っています。

──ちなみに、『EZY』を観たときに懐かしいような、新しいような、不思議な感覚があったんですね。出渕監督としては、本作をご覧になった人にどんな感情になってほしいと考えていらっしゃるのですか?

出渕氏:
こちらから「こんなふうに感じてほしい」と言うのはおこがましいかな、というのが正直なところです。

基本的に作品というものは、どのように捉えられたとしても、観た人の中で感じたことを優先していただければいいと思っているんですよ。

「こういう風に感じてください」と言うのは、漫才やコントで「いまのギャグのどこがおもしろかったのか」を自分で解説するようなものですからね。

だから「どう捉えてほしいか」ではなく、「観てくださった方がどう捉えてくれるのか」のほうに興味がありますね。

永井真理子さんのエンディングテーマ起用は出渕監督からのお願いだった

──『EZY』では海老川兼武さんと渭原敏明さんをメカニックデザインとして起用されています。監督から見て、おふたりのデザインはいかがですか?

出渕氏:
海老川くんと渭原くんは、本当に『パトレイバー』に向いていると思っていました。「新しくやるのだったら、彼らにお願いしたい」と。
 
ふたりとは以前からご縁があって、2018年の『フルメタル・パニック! Invisible Victory』で僕が絵コンテを2回ほど切ったんですよ。海老川くんも渭原くんも、その『フルメタ』でアーム・スレイブ(劇中の人型兵器)のメカデザインを手がけていて。

彼らのデザインを見たとき、自分のテイストとの強い親和性を感じました。なかには「ヘルダイバー【※】みたいだな」と思わせるようなものもありましたからね(笑)。

海老川くんに関しては、昔あったレイバーコンテストのような読者応募企画で、受賞者に名前があったんですよ。それで「『パトレイバー』が好きだったんだな」と気づいた経緯もありました。やはり、作品を好きな人に手掛けてもらうのが一番なんですよ

※ヘルダイバー……『パトレイバー』シリーズに登場する陸上自衛隊の空挺レイバー。出渕裕氏がデザインを手掛けた、無骨でミリタリーテイストの強い機体。

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──海老川さんのエピソードもまさにそうですが、お話をうかがっていると、出渕監督の人選に対するこだわりを感じます。

出渕氏:
監督の仕事とは、最終的には「適材適所」のスタッフィングだと考えています。自分のイメージに対し「この人ならいいものを出してくれる」と見極める役割ですね。

脚本やコンテも同様で、機械的にローテーションで回すのではなく、「この方向性ならこの人」と得意分野を見極めて依頼しています。

──どなたに任せるかで、作品の方向性が決まってくるわけですね。

出渕氏:
その最たる例が、樋口くん(樋口真嗣氏)にお願いした3話です。これは映画撮影を描くエピソードなのですが、アニメ制作者は実写の現場を完全には把握しきれません。

そこで、実写現場を知り尽くした樋口くんに「任せた!」とお願いしました。彼なら現場の空気感、スタッフがどんな言葉でやりとりしているのか、ガヤや助監督の動きも正確に描写してくれるんじゃないかと。

劇中の「怪獣映画を撮影している雰囲気」も含めて「彼しかいない」という適材適所の采配でしたね。

──人選というところでいえば、永井真理子さんのエンディングテーマ起用にはグッときました。当時、泉野明のイメージとして語られることもありましたから。

出渕氏:
じつは、今回のお話をいただいた際、「ぜひ永井真理子さんを起用してほしい」と僕からお願いしたんです。

成り立ちをお話すると、当時、作品のデザインを手掛けた田島照久さんが、永井さんのアルバムジャケットも担当されており、「新人の永井さんという女の子が、野明に似ている」と紹介されたのがきっかけです。見るとたしかに重なる部分があり、キャラクター原案のゆうきまさみさんもそこから彼女のファンになりました。

それに、ビジュアルだけでなく彼女の楽曲と歌がすごくよかった。ちょうど劇場版1作目の時期に、ロボット映画『ガンヘッド』の主題歌を永井さんが担当されていたのですが、当時から「是非こっちも歌ってほしいんだけどな……」と思っていたのは内緒です(笑)。

野明のモデルというわけではないのですが、「やはり永井さんは『パトレイバー』に合っている」という当時の想いがずっと根底にあったからこそ、今回オファーさせていただきました。

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──貴重なお話をありがとうございました。最後に、今回の記事をきっかけに『EZY』を観ようと思っている方々へ作品の見どころを含めて、メッセージをお願いします。

出渕氏:
『EZY』は、現在公開中の『File 1』から最後の『File 3』まで、どれも異なるベクトルで楽しく仕上げたつもりです。それぞれまったく違うアプローチをしているので、「自分はどのエピソードが好みか」という違いを楽しんでいただければと思います。

また、本作は「予備知識なしで観られる作品」でもあります。ちょっと当時のファン向けに昭和テイストを入れてますが「過去シリーズの未見」をハードルに感じる必要はまったくありません。勝手な願望ですが、その昭和テイストも一回りして新しく感じてもらえるといいなあ、って。

劇中に往年のキャラクターが登場した際も、知っている方は楽しめますし、知らない方は「このおじさんたちの若いころを見てみたい」と過去作に興味を持つきっかけにしていただければうれしいです。

『File 1』以降も、「続きが気になるから観てみよう」という気軽な感覚で十分です。予備知識がなくても独立して楽しめる作りにしていますので、ぜひ身構えず、軽い気持ちで劇場へお越しください。

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Ⓒ HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda
編集者
ロボット物とゲームBGM、ラーメンの食べ歩きが好き。中学で『アーマード・コア』に触れて以来のシリーズファン。無機質なBGMとブースター音の融合に精神的な安らぎを感じている。2014年よりゲームメディアにて、攻略やインタビュー、コラムなどを中心に活動。
編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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