初めて『オービタルズ』の映像を目にした時、「なんだこれは!?」と思った人は多いのではないだろうか。なぜならそこには、過ぎ去った時代の「セルアニメ」の風が濃厚に宿っていたからだ。
間違いなく3Dゲームのはずなのに、プレイ映像を見ると2Dのアニメキャラが動いているようにしか見えない。それも80-90年代頃の、セルアニメ風のキャラクターたちが。その「レトロアニメ」的作品世界は、凄まじくきめ細やかで、同時に活き活きとしている。
『オービタルズ』を開発するのは、東京に拠点のひとつを置くゲームスタジオ、Shapefarm。だが、同社は日本のゲーム会社ではなく、スタッフの多くも海外出身者だ。しかし、それゆえに彼らは「あふれるほどの愛」をもって、徹底的に日本アニメを目指したのだという。
本作を「日本のアニメで育った子供時代へのラブレター」だと話すクリエイティブディレクターのマルコス(Marcos Ramos)氏は、『らんま1/2』『エヴァ』『ドラゴンボール』など、多くのアニメ作品が『オービタルズ』の源泉になっているのだと語ってくれた。
今回、電ファミでは本作の開発に携わった4名のスタッフにインタビューを実施。日本アニメへの深い愛情とリスペクトから、「不完全なアナログの美」を目指した開発の舞台裏までのお話を伺ってきた。
本稿とは別に、インタビューの模様を収録した動画も公開されているので、こちらもあわせてご視聴いただければ幸いだ。


聞き手・執筆/恵那
ゲームとして「正しい」よりも、アニメとして「美しい」へ
──本作は3Dのゲーム表現と、2Dのアニメ表現が違和感なく融合していました。2Dと3Dをただ組み合わせるだけでは違和感が出そうなものですが、どのようにしてこれほどシームレスなアニメとゲームの融合ができたのでしょうか?
マルコス氏:
最初に始めたのは、とにかくたくさんのアニメを見ることでした。
ノートを手に座って、有名なシーンやエピソードを繰り返し見ました。1フレームずつ確認しながら、当時の手法を理解しようと努めたのです。
キャラクター関連だけでも、髪型や描画スタイルから当時のファッションのトレンドまで、細かく調べて、ひとつの手順書のようなものを作っていきました。だからアニメーションづくりは現代的なスタイルのものにはなっていません。
例えばライティングについても、物理的な正確さよりも「どう照らせば美しく見えるか」というアーティストの感覚を優先していますね。
ジェイコブ氏:
ライティングについてだと、ゲームエンジンに演算させるのではなくて、直接光を書き入れたりもしていますね。
──物理的な「正しさ」ではなくて、あくまでアニメ的な表現としての「美しさ」を選んだわけですね。
マルコス氏:
現代のコンピューターは、アニメーションを滑らかにし、全てを物理的に正確に処理しようとします。ですが私たちが目指していたのはその逆で、いかに映像の中に「人間の手によるミスやエラー」を取り込むか、ということでした。
一枚一枚が人の手で紙に描かれていた当時の感覚を再現するためには、コンピューターの正確さと戦わないといけなかったんです。そのために独自の技術を開発することもあれば、実際に紙と鉛筆で戦うこともありました。
ジェイコブ氏:
アートについては、厳格に守っているルールがいくつかあります。ひとつが、ゲーム内で動くものはすべて、アニメのフレームレートにあわせた12fpsか24fpsで動かすことです。
──だからキャラクターの動き方がこれほど「アニメっぽく」みえるわけですね。
ジェイコブ氏:
その他にも、動くものはすべてセルシェーダー【※】で、動かない背景は手書きのペイントシェーダー【※】で表現する、というのも、制作に課したルールのひとつです。キャラと背景の描き方を変えることで、両者の質感が変わり、アニメらしい特有の雰囲気が出るんです。
また、こうした描き分けをしたことは、思いがけずUIの面でも利点があることがわかりました。というのも、ゲーム中でプレイヤーが触れるものというのは基本的に動くものなので、それが背景から浮き上がることで、プレイヤーにとって「できること」が明確になったんです。
※セルシェーダーとペイントシェーダー
シェーダーは、3DCGで物体表面の色や質感、陰影などを描画するプログラムのこと。セルシェーダーは影色を段階化し、手描きアニメ調に見せる技法、ペイントシェーダーは筆のような塗り感で、絵画風に見せる技法。
「正確」なデジタルの中で、人間が生む「揺らぎ」を再現
──こうした工夫のひとつひとつが、あのアニメらしい手触りに繋がっているんですね。まだまだ他の工夫もたくさんあるんでしょうか?
ヨハネス氏:
80年代アニメ独特の質感を再現するため、当時の「フィルムカメラによる撮影工程」を3D上でシミュレートしています。開発の最初の1年間は、こうした「レトロ風に見せる」ための画面効果をどのように働かせるのかを研究するのに費やしました。
──というと、どういうものなのでしょうか?
ヨハネス氏:
たとえば、かつてのセルアニメは、背景の上にセル画を重ねて撮影していましたが、その際にセルの影が背景にわずかに写り込んだり、光源の点滅が干渉し合ったりといった物理的な現象が起きていました。
作業として正確ではなかったのですが、それによって生まれていた独特の質感というのも大きかったんです。そうしたアナログならではの「揺らぎ」を、ゲームエンジン上でひとつひとつ擬似的に再現する、という作業ですね。
──昔のセルアニメの技法をそのまま復活させるのではなく、現代のデジタル技術の中で「再現」するわけですね。具体的に、物理的に撮影していた当時と現代のデジタル制作での大きな違いはどんなものなのでしょうか?
ヨハネス氏:
よく言われるのは、セルの揺らぎなどですね。80年代のアニメは、セルを1枚ずつ重ねて撮影するため、再生するとセルのアウトラインがわずかに震えたり、中身のシェーディングが1コマごとに揺れたりしていました。
現代ではデジタルでやっているので、そうした揺らぎは起きなくなりましたが、実はそうしたハンドクラフト感こそ、セルアニメの”味”でもありました。それによって生まれていた効果を、いまはコンピューター上でシミュレートしています。
──そうした再現のなかで、技術的に特に難しかった作業などがあればお伺いできるでしょうか?
ヨハネス氏:
遠景を筆で描いたようなタッチに見せる「桑原フィルター」というものがあるのですが、そのリアルタイム処理に苦労しました。というのも、これは非常に計算負荷が高いので、通常のゲームではあまり使われないんです。
ゲームとして安定したフレームレートで描写できるようになるまで、最適化の作業には半年以上を費やすことになりました。
──レトロな見た目を作っているはずなのに、実際には大きなマシン負荷がかかっている、というのは逆説的で面白いですね。
めぐみ氏:
リアルタイムでの処理負荷にはかなり苦労しましたが、粘り強くブラッシュアップを重ねることでようやく実現できました。
──今回プレイしてみて驚いたのが、2Dのアニメカットからゲームプレイへの移行が、驚くほど滑らかだったことです。このカットシーンは外部のアニメスタジオ「STUDIO MASSKET」さんと制作されているとのことですが、どのような体制で進められたのでしょうか。
めぐみ氏:
まず私たちがストーリーと脚本を書き、それをマスケットさんにお渡しして絵コンテとアニメーションを作成して……という流れで進めていただいています。
制作進行を通さずとも、双方のテクニカルアーティストやコンセプトアーティストが直接コミュニケーションを取れるプラットフォームを構築したので、技術的な仕様やデザインの細部まで、リアルタイムに密な連携を取ることができました。

──なるほど、現場レベルで直接対話できる環境が、あのクオリティを支えているのですね。
めぐみ氏:
制作の早い段階で「このシーンはこの場所を使う」と決めたら、そのエリアのレイアウトを固定し、ゲーム制作側でもそれ以降は一切変更を加えないように制限をかけたりしていましたね。
ゲームのアセットをアニメ側でも活用してもらうなど、お互いのリソースを共有しながら、一つの作品としての統一感を追求しました。
一本の映画を見るような、「同じ時間を共有する体験」
──本作が最初に発表された際、レトロアニメをそのままゲームにしたようなアートワークに、かなり衝撃を受けた記憶があります。そもそも、本作が生まれたきっかけはなんだったのでしょうか?
マルコス氏:
企画が立ち上がった当初は、いろいろな選択肢がありました。ですが自分たちのゲームを自由に作れることになった時、最も情熱を持って取り組めるのが「レトロアニメのゲーム」を作ることだったのです。その方向性はチーム全体でもすぐに共有できました。
──最初に80年代・90年代のレトロアニメがあり、その後で協力プレイのコンセプトが加わったということでしょうか?
マルコス氏:
その順番です。最初に作っていたプロトタイプは、ゲームプレイ的にもビジュアル的にも、今とはまったく別のものでしたね。見下ろし型の、小さなロボットが走り回っているようなゲームだったんです。
私としてはもっとキャラクターの動きが見えるゲームにしたくて、カメラの距離や視点の場所をいろいろと変えたりしていたんです。
──いまの主人公たちは、プロト版ではまだ存在していなかったんですね。
マルコス氏:
試行錯誤する中で、「このキャラクターをアニメキャラのように描けないか?」という表現を模索するようになりました。結局のところ、自分が本当に情熱を傾けたいと望んでいることには抗えないという事かもしれません(笑)。
そこにあとからチームに加わったジェイコブが「もっとカメラを低くしたほうが表現しやすい」と言ってくれて、そこから現在の三人称視点の協力アドベンチャーゲームへと繋がりました。
ジェイコブ氏:
元々『オービタルズ』は2人専用のゲームではなく、1人でも2人でも遊べるものとして検討していたんです。ただ、私はもともと『It Takes Two』や『Split Fiction』などを手がけたHazelight Studiosにいたので、本作に関わることになったとき、ぜひその経験を活かしたいと思ったのです。
──2人専用の協力プレイゲームであることも、本作の重要な特徴ですよね。単に「協力」と言っても、シンプルな助け合いから役割分担、コミュニケーションなど、協力プレイにも多くの要素がありますが、『オービタルズ』が目指した最も核心的な体験はどんなものでしょうか?
ジェイコブ氏:
一番重視しているのは、「ゲームを一緒に遊ぶ人とどんな体験が作れるのか」ということです。私が望んでいるのは、プレイヤー同士がちょっかいを出し合いながら、一緒に笑えるような瞬間を作り出すことですね。
たとえば相方のヘマのせいで、2人とも道連れになって死んでしまって、それで爆笑する。そうしたコミュニケーションを積み重ねた体験が、やがて思い出になるのだと思います。
──今回プレイしているときもまさにそうしたプレイ感でした。思わず声が出てしまう作りだと思います。
ジェイコブ氏:
それからもうひとつ。『オービタルズ』が目指しているのは、友達といっしょに一本の映画を観るような、ひとつの時間を共有する体験です。このゲームは、アプリゲームのようにいつでも途中参加できて、いつでもやめられる、というものではありません。
始まりと終わりのあるひとつの物語をしっかり味わってもらい、その体験を後から振り返って「楽しかったよね」と言ってもらえるようなものを目指しています。協力プレイというのは、時間を共有する体験の一部なのです。
『らんま1/2』『ドラゴンボール』『エヴァ』『聖闘士星矢』。アニメへの愛から徹底した「体験の再現」を目指す
──お話を伺っていて、80年代・90年代のアニメへの愛と情熱が伝わってきました。『聖闘士星矢』の話が出ましたが、他にも強く影響を受けたタイトルはあるでしょうか?
マルコス氏:
たくさんの作品からインスピレーションを受けていますね。背景、キャラクター、乗り物、小道具のデザインまで、そのほとんどに特定の参照作品があります。
例えば、船や道具などのメカは、主にスタジオジブリの作品からですね。特に『風の谷のナウシカ』でナウシカが乗るメーヴェや劇中の飛行船は、つい触りたくなるようなデザインですよね。他にも、『ヴイナス戦記』からも大きな影響を受けています。
マルコス氏:
キャラクターについては、『美少女戦士セーラームーン』や『らんま1/2』ですね。あのキャラたちは、一目見ただけでどんな性格かすぐに分かります。非常に親しみやすく、シンプルでありながらコンセプトがはっきりしています。私はそんなキャラクターデザインが大好きなんです。
──言われてみると「確かに」という納得があります。
物語にも原型があって、初期の『ドラゴンボール』シリーズをイメージしています。バトルが中心になった『Z』より前に、奇想天外キャラクターたちと世界中を冒険しながら、摩訶不思議な物語が展開されていく、最初期の冒険譚の頃ですね。
物語としてはシリアスな側面もありつつ、ユーモアでうまくバランスを取っているところは日本の少年漫画らしいストーリー作りだと思いますし、そこはすごく参考にしました。
長くなって本当に申し訳ないのですが、『新世紀エヴァンゲリオン』を挙げないわけにはいきません。キャラクターの感情の揺れ動きだったり、後ろでちょっと描かれる恋愛描写だったり、見るたびに心に響きます。
かと思えば、人類のあり方、生き方を問うような哲学的なテーマまで持っていたりする。物語の運び方からビジュアルのカッコよさまで、あらゆるレベルが完璧で、私にとっては一番重要な参照元かもしれません。
──すごいですね。いくらでも喋っていただけそうだ。ヨハネスさんやめぐみさんはいかがでしょう? お気に入りのアニメなど……。
めぐみ氏:
その時代のアニメで言えば、私は『美少女戦士セーラームーン』が一番好きですね。もちろん『エヴァンゲリオン』も。『葬送のフリーレン』みたいな最近のアニメも好きですけど(笑)。
ヨハネス氏:
私も子供の頃、アニメが本当に大好きでした。『AKIRA』とか『攻殻機動隊』『王立宇宙軍 オネアミスの翼』……。もちろん今でも大好きです。
ジェイコブ氏:
『ドラゴンボール』の影響についてひとつ付け加えたいんですが、あれは冒険物語としてだけではなく、ひと目見ただけで分かる「ワクワク感」の演出もすごく参考にしています。初期の『ドラゴンボール』の世界観には、すごく感銘を受けているんです。
マルコス氏:
『ドラゴンボール』の世界観って、とにかく明るくて楽しい想像力に満ちているんですよ。複雑な背景があるわけではなくて、「世界の王様が犬だったらめっちゃクールじゃない?」くらいのノリなんです。「楽しそう」「絵として面白そう」というアイディアを、素直に追いかけています。
これは私たちのゲームにとってすごく重要です。現代のゲームの物語は、ロア(背景設定)の深さを競うようなところも一部にはあると思うのですが、『オービタルズ』はその逆を目指しています。この世界に入ってみたいと思えるような、純粋に楽しいファンタジーです。その雰囲気が重要で、物語はあとからついてくるんです。
価値判断が複雑な現代だからこそ、「純粋な希望」を描きたい
──『オービタルズ』のアートワークはアニメ風ですが、現代風のアニメではなく、あえて80年代・90年代のスタイルを選ばれています。現代アニメと比較して、レトロアニメならではの独自の魅力があるのでしょうか?
マルコス氏:
もちろん当時も今も様々なスタイルがあるので一概には言えないのですが、私個人としては、当時のアニメはすごく「希望に満ちていた」と思っています。登場人物たちに、シニカルな態度がないんです。
ジェイコブ氏:
目標に向かって一生懸命ですし、すごく純真なんですよね。

マルコス氏:
そうなんです。現代のアニメは、少しシニカルになりすぎていると感じるんです。もちろん昔からダークな作品もありましたが、少なくとも私は当時感じた「希望に満ちたメッセージ」を発信したいと思っています。仲間を信じ、自分を信じ、望むことはきっと成し遂げられる、という感覚ですね。
ですが今日そうした物語を作ろうとすると、「使い古された」物語に見えたり、あるいはひどく薄っぺらいものに見えてしまったりするんです。ですが、当時は純粋に希望に溢れた感覚で作品を作っていたのだと思います。
──確かに物事を「相対的に」見ようとする傾向は感じます。もちろん、悪いことばかりではないとも思うのですが。
ジェイコブ氏:
現代は「物事は必ずしも白黒つけられるものではない」ということに大きな価値を置いていますよね。世界はグレーであり、そのどちらにも言い分がある。そうした複雑さが評価されている時代だと思います。
でもだからこそ、あえてシンプルでわかりやすく、主人公たちのことは心の底から信じられる。そんな作品を作りたいと思っています。希望に満ち溢れた冒険の中で、純粋な気持ちに戻れるような感覚を伝えたいですね。
──愛の話だ……。ものすごくアニメ愛の話ですね。
マルコス氏:
あふれるほどの愛を注いできました(笑)
──プレイ中はゲームそのものだけでなく、タイトル画面やメニュー、UIに至るまで、すべてに本物の「アニメっぽさ」を感じました。すごいこだわりだと思うのですが、プレイヤーに注目してほしいお気に入りの箇所などはあるでしょうか?
ジェイコブ氏:
ゲームを起動してからのスタート画面や、その他の体験全体については、納得のいく形にするためにかなりの時間を費やしました。起動したその瞬間に、懐かしいあの時代にタイムスリップしたかのような体験を味わってほしかったんです。
マルコス氏:
私たちは単にレトロなゲームを作りたいのではなくて、子供の頃にアニメを見て興奮していたあの「感覚」を共有したいんです。それにはアニメの中身だけではなく、その周辺の要素が強く影響していると思っています。
例えばオープニングを見て本編が始まるのを待っている時間や、CMに入る前のアイキャッチも、アニメと同じくらい重要な体験だったと思います。

──確かに、テレビでアニメを見る時間というのは、「待つ」間も含めての時間ですね。
マルコス氏:
UI制作のための研究中に、いろいろな作品のアイキャッチをたくさん見返したのですが、実を言うと今でもすごくエキサイティングでした。ロゴの動き方や光の演出が、現代とは全然違って独特なんです。ですからそれを再現するために苦心しました。
アニメ『聖闘士星矢』のアイキャッチで、星矢が画面に向かってパンチを繰り出し、光が溢れ出すという演出があるんですが、あれがすごく好きだったので「これはぜひゲームに取り入れよう」と思いました。
『オービタルズ』は日本のアニメで育った子供時代へのラブレター
──本作はThe Game Awardsでの発表時にはすでに日本語の音声が入っているなど、日本でリリースすることに強い意識を持たれているように感じました。実際のところ、日本での展開についてどのような思いをお持ちなのでしょうか?
マルコス氏:
まず、私たちは日本に対して深い愛情を持っています。日本の文化、日本が生み出すあらゆるものに恋をしているんです。そしてだからこそ、浅い気持ちではなく最大限の敬意と努力を払わなければならないと思っています。
日本語音声の話もありましたが、少しでも『オービタルズ』を自分たちが本当に愛し親しんだものに近づけたいという気持ちで作っています。これは日本のアニメで育った、自分たちの子供時代へのラブレターなのです。
ジェイコブ氏:
「日本のスタジオのフリをして、日本のアニメを真似しよう!」と思っているわけはないことは改めてお伝えしておきたいですね。
マルコスも言っていましたが、これは私たちの子供時代の経験であり、私たちの成長の記録でもあります。まさに「ラブレター」なのです。
──Shapefarmさんは、もともと海外のスタジオですよね。それなのに、あえて東京にオフィスを構えていることに驚いたのですが、日本で開発することに、何か特別な意義を感じていらっしゃるのでしょうか?
ヨハネス氏:
Shapefarmが株式会社として登録されたのは2013年ですが、それ以前はフリーランスの集まりとして活動していました。本作『オービタルズ』の開発が始まるまでは、東京のさまざまなゲーム企業のプロジェクトに協力する「サポートスタジオ」として、長らく活動してきたという背景があります。
めぐみ氏:
もともと日本のクライアントさんが多かったこともありますが、一番の理由は、創業メンバーがみんな「日本が大好きだったから」なんですよ。日本に住んで、日本で会社を開こうという流れがスムーズに決まったんです。
三鷹のオフィスには約20名ほどのスタッフがいますが、みんな日本が大好きですね。どうしても日本で働きたかったからという理由で、ビザを取るために日本の大学に進学したっていう、筋金入りの方もいますね。それはフランス出身の方なんですけど、それくらい「日本に来る」ことを目標に人生を歩んできた仲間たちが、今ここに集まっています。
ヨハネス氏:
日本歴が非常に長いスタッフが多いですよね。最近日本に来た人ばかりではなく、10年以上住んでいるのが当たり前のような環境です。私自身も、日本に住んで18年になります。
──海外出身の方にこれほど日本への愛を語っていただけると、日本人としては嬉しいようなくすぐったいような気持ちになりますね。
マルコス氏:
日本の方から見れば、『オービタルズ』は外国人が中心のスタジオが作っているゲームだな、と見えるかもしれません。でもだからこそ、私たちがどれほど日本の文化にリスペクトを持っているかを、日本の皆さんにもお伝えしたいです。
私たちは自分たちが外部から来た人間であることを自覚しています。だからこそ、最大限の敬意を払い、全力を尽くして制作しなければならないと考えています。(了)
初めて触るはずなのに、どこかで見たことがある気がする。『オービタルズ』には、そうした既視感のある懐かしさが詰まっている。
今回のインタビューで伝わってきたのは、「とにかくアニメへの愛に溢れすぎている」という感覚だ。言葉にしてしまうと陳腐に聞こえてしまうが、だからこそまっすぐ伝えておきたい。本作はまさしく愛のゲームである。
強い愛情があったからこそ、中途半端を許さず徹底した研究し、その結果としてデジタル的な「正確さ」から離れ、アニメが手書きだった時代の「不完全なアナログの美」が追求されている。だからこそ本作はこれほどまでに懐かしさを喚起するのだろう。
本作『オービタルズ』は、今年2026年の夏に配信予定。古い記憶があるとき突然蘇ってくるような嬉しさを再び感じられるときを、楽しみに待ちたい。






