このゲーム、初めて遊んでいるのに「懐かしい」。
今このビジュアルを見た人の大半は同じ「懐かしさ」を感じるんじゃないかと思う。最近のアニメにはない、80-90年代のセルアニメ特有の、いい意味で綺麗すぎない手描き感。
風圧をモノともしない髪型、キラキラで大きな目、ド派手な色彩など、挙げたらキリがないが、レトロアニメ特有のこの“味”に触れる機会は、令和の時代では少なくなってきたのではないだろうか。

ぐっとときめいてしまったあなたに朗報がある。
本作『オービタルズ』は、この「日本の80年代アニメ」がフル3Dゲームとしてそのまま動く。
きびきびしているのに大仰な主人公の動作や、未来的なのに妙に古臭い、レトロフューチャー味あふれる乗り物。小学校をズル休みしながらアニマックスにかじりついていた頃の記憶が、思わずフラッシュバックしてしまう。
古き良き様式美がそのままに、けれどまったく違和感なく最新のゲームに溶け込んでしまっているさまは、まどろみの中で古い夢でも見ているような不思議さだ。
しかも本作、分割された画面を相方と共有する『It Takes Two』スタイルの2人専用協力ゲームなのだが、このプレイフィールもすごくいい。遊んでいると、とにかく”つい”声が出てしまう……というより、あの手この手でお互いが声を出さないといけない状況を作ってくる。これが楽しい。
クリアにはとにかく声掛け必須で、「死にゲーか?」と思うほどに油断するとすぐ死ぬ。「ほら、いまいま!」「お前他人事だと思ってるなよ!(半ギレ)」と、ついついマジになって叫んじゃう。下手でも楽しい……というか、相方が下手なほど面白い。
今回はそんな『オービタルズ』を先行プレイする機会を頂いたので、「日本のレトロアニメ」へのリスペクトがたっぷり詰まった本作を紹介していく。
セルアニメ絵のキャラが、そのまま「3D」の世界で自由に動かせる
『オービタルズ』はふたりの主人公・マキとオムラが、崩壊の危機に陥った故郷の宇宙ステーションを救うため、助けを求めて宇宙へ旅立つという冒険譚だ。
ストーリーラインは王道そのもの。眼の前に待ち受ける銀河を巡る冒険に胸を高鳴らせながら、オープニングのアニメシーンに熱中する。マキとオムラも「昔のアニメの主人公」という感じの元気いっぱいの少年少女で、掛け合いを聞いているのも楽しい。

……とアニメに没頭していると、何かおかしい。
「ん?マキちゃんが動かなくなった」
会話が途切れたと思ったら、主人公たちがその場で固まってしまっているのだ。
「あれ、どうしたのマキちゃん……」と困惑していると、「もうゲーム画面です」とスタッフの方が笑顔で教えてくれた。
?!????!
この驚き、実際に見ていただかないといまひとつ伝わらないと思うんですが、アニメのカットシーンから3Dのゲーム画面への移行があまりにも自然で、しばらく気づかなかったのだ。
一緒にプレイしていた相方も固まっていたので、オープニング映像ではものすごく生き生きしていたオムラとマキのふたりが、急に生気を失って棒立ちしていた。

スタッフさんに促されるように、おそるおそるキャラクターを触ってみると、腕を振り上げながらズンズンと進んでいくマキちゃん。NPCや家具にインタラクトしてみると、全部オーバーリアクションをとってくれる。
この光景にピンときた。「なんか、『アラレちゃん』みたい」
水平に腕を伸ばして走り去る動きや、屈託の無い純粋なマキちゃんの姿は、これ絶対『アラレちゃん』の“キーンポーズ”を意識してますよね!と思うと、勝手に興奮してしまった。
このゲーム、いたるところにデジャヴが潜んでいる……!
キャラを動かしているだけでもなんだか楽しい。一挙手一投足がぜんぶアニメっぽいのだ。歩いても走っても、アニメ絵が立体になって動いてる(!?)という変な感覚がする。た、楽しい……!
特に気になったのが“ジャンプ”。なんだか自分が普段遊んでいるゲームのジャンプとちょっと感覚が違う。なんなんだろう……と考えていると気づいた。微妙になめらかではないのだ。
一般的なゲームなら、ジャンプは物理演算などによって滑らかな放物線を描き、そのまま自然に地面へと戻ってくるはずだ。
しかし本作は、ジャンプの上昇・滞空・落下といった一連の動きを連続的に補完するのではなく、ポーズごとにわずかな“間”が挿入されている感じがある。そのため動きは微妙なカクツキを帯びていて、そのリズムがものすごくアニメっぽいのだ。
要するに、3Dのモデルを動かしてるという感覚じゃなくて、アニメイラストを動かしてる感覚になるのだ。
なんだか楽しくなってしまい、アホみたいに同じ場所で何回もジャンプするアラレちゃん、もといマキちゃんが爆誕していた。
おまけに背景のNPCや家具に至るまで、そのすべてがフル3D空間のはずなのに、主人公たちがそこに入った瞬間にアニメのワンシーンみたいになる。『ドラクエ』リメイクシリーズのHD-2Dみたいなドット絵とはまた違った形で、3D空間の中に2Dのキャラが融合している。
このゲーム、「レトロアニメ」の解像度が高すぎる
本作をプレイしてわかったことがある。このゲームの開発者たち、絶対とんでもない「日本の80年代アニメオタク」だ(偏見)。このゲーム、どこまでもあまりにそれっぽすぎるレトロアニメ感を出してくるのだ。
たとえばオープニングもそのひとつ。昔のアニメ、例えるなら初代『聖闘士星矢』なんかで見られる、デカデカと迫ってくるタイトルロゴと言えば伝わるだろうか。
レトロアニメのベタベタな演出に、「アニメが今から始まるよ!!よいこはテレビの前に集合!」という開発者の声を感じて、思わずニヤッとしてしまった。

本作は「ビジュアルがレトロ風」なだけではなくて、キャラクターから世界観まで、ありとあらゆるものが「レトロアニメ」をイメージさせようとしているのだ。
ゲーム開始前のメニューやオプションといった細かなUIも「どこかで見たことが……?」となるし、そもそも世界観も妙に懐かしい感じがする。未来のはずなんだけれど、妙に古臭さを感じるレトロフューチャーな機械がたくさん出てきて、『AKIRA』や『ドラゴンボール』なんかを思い出してしまう。

それはゲーム内で扱うツールにも見られる。加圧された水流を噴射する「リキッドランチャー」や、高濃度の熱線を放って障害物を破壊できる「ビームキャノン」といった道具は、格好良いのにどこか可愛いらしさを残した「日本の80年代アニメ」特有のデザイン。
おまけに使い古されたような名前のシンプルさが実に良い。おしゃれな名前を書き連ねられたところで、「用途は?」となってしまうところ、「ビームキャノン」はどうだ。光線が出る大砲。うん、実にわかりやすい。

あと、いまさらだけどキャラクタービジュアルも理解りすぎじゃないですか?
低身長にダボダボパンツ、元気ハツラツで純粋な女の子のマキちゃん。高身長でシュッとした表情がメロい眼鏡男子のオムラ。
昨今のアニメではもう絶滅危惧種なんじゃないかという気がするくらい、少年少女が全身全霊で応援できそうなこの感じ、なんかめっちゃ見覚えあるような気がしません?

そのほかにも、昔懐かしのブラウン管でファミコンのミニゲームが遊べたりと、無邪気にゲームやアニメを楽しんでいた頃に「本気で戻りたい…」となるほど、どこを切り取ってもレトロを再現したこだわりが詰まっていた。
速すぎる死、一寸先は闇、お前がトチると俺も死ぬ。だからついつい声が出ちゃう
このゲーム、遊んでいると”ついつい”声が出ちゃう。
というより、半分「声を出させられてる」ような感覚なんだけど、とにかく相方とやんややんやと騒ぎながらプレイしてしまう。
冒頭でも少し紹介した通り、本作は2人専用の協力プレイゲーム。お互いのできることが場面場面で少しずつ違っていて、たとえば片方が船を操縦し、相方はビームで障害物を除去……といったように、プレイ内容が非対称になっている。
片方がうまく船を操縦できていても、射撃手がノーコンだと撃墜されてしまうし、逆もまた然り。片方がヘマをすると、大抵もう片方も道連れになって死ぬのだ。ふたりは運命共同体である。
つまりこのゲーム、たくさん死ぬ。そこらの死にゲーよりも早く死がやってくる。
死にゲーよりも早く死ねるんだけど、復帰も爆速で早く、事故って相方が宇宙の藻屑になったと思った次の瞬間には復帰している。ドリフのコントみたいな速度感なので、ムカつきよりも笑いの神のほうが先にやってくる。
そして死を避けるためにはお互いの声掛けが必須。ゲーム中にはパズルみたいなものから音ゲー、アクション風味のものまで色々な仕掛けがあるのだけど、毎回きちんと役割分担が必要になっているので、声掛けしないわけには行かない。
でもそういうの苦手だからな〜と思ってる方もご安心ください。死が急速に迫ってくる瞬間、生を実感するまもなく「助けて!」の声が出ます。
復帰があまりに早いので、気を取り直す間も無く再び事故を起こし、相方から「さっきから他人事だと思ってない??(半ギレ)」と問い詰められ、「いやさっきから先にミスって死んでるのそっちでしょ!」と顔を真っ赤にしながら大声を張り上げるカオスな空間ができあがる。
お互い仕事を忘れて没頭してしまうワチャワチャ感がまた楽しく、声を掛け合うコミュニケーションを、ゲーム側が必然のものとして成立させている。
こうした大人気ないワチャワチャプレイを重ねていくうちに、越えられるかどうかの試練を乗り越えた瞬間、試遊を見ていたスタッフさんを含め、その場にいた全員から思わず「お〜!」という声が漏れていた。そのくらい、ついついみんな声が出てしまう。
操作は筆者が確認していた限りでは2ボタンの同時押しや方向キーによる移動など、いたってシンプル。そのためゲームに触れたことがない家族やパートナーはもちろん、ゲームに慣れた友人とも気軽に遊べるだけの歯応えもある。
時には揉めることもあるだろうが、絶妙な難易度にヒリヒリしながらクリアした先では、お互いの距離が縮まっていることを、筆者が実際に体験してきたので保証しよう。
本作が発売されたら、気心の知れた友人はもちろん、これから距離を縮めたい相手を誘ってプレイしてみてはいかがだろうか。今よりもう少し仲が良くなるかもしれない。









