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「描きたかったものは、世界一特別な恋」──赤坂アカが手がける初のビデオゲーム『カミとミコ』。謎解きと物語がシステムとして完全一致している意欲作はいかにして生み出されたのか?【開発者インタビュー】

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「とにかくミコを好きになれるようなお話で」というオーダーで生み出された読み切りマンガ『カミとミコ 地球一の女の子』

── 集英社ゲームズから、制作を進めていく中でお願いされたことはあったのですか?

ミヤザキ氏:
じつは、こちらからお願いしたことはありません。作られたものに対して、たとえば謎解き部分はSCRAPさんが作られていますが、素人目で見て「これはちょっとわかりにくいかもしれません」、「こちらのほうがもっとミコちゃんはかわいいかもしれないです」といったクオリティーチェックをさせていただきました。

──プロモーションも集英社ゲームズが担当されていて、マンガ展開も含めておもしろい施策を行われていましたよね?

ミヤザキ氏:
ブラウザゲームということもあって、できることとできないことがありました。「それを逆手に取って密にコミュニケーションを取る方法」がないかと考えたとき、SCRAPさんがメルマガをユーザー向けに発信されていて、メルマガ文化が浸透していることに目をつけたんですね。開発の裏側をクローズドで、しかもすごい密度でお伝えすることができるので、開発陣の裏側を届ける「カミ様レター」という形でメルマガ展開をさせていただきました。

SCRAPファンのお客様は皆さんマナーがすばらしく、ネタバレをしないですし、SNSに書いたりしないんですよね。逆に「もうネタバレオーケーですよ」とお伝えすると、「今回の加藤さんのあのコメントがおもしろすぎた」といった反応をしてもらえて。熱量が高い方々に受け取っていただけたのだと思います。

赤坂アカ×SCRAP×集英社ゲームズ『カミとミコ』開発者インタビュー:描きたかったものは、世界一特別な恋_022

──読み切りマンガの展開もユニークですよね。ゲーム発売前に実施するというのも珍しいなと。

ミヤザキ氏:
『カミとミコ』の体験版を去年リリースしたのですが、そこに合わせる形で赤坂先生のファンの方々にお知らせしたいと考え、読み切りマンガの企画を打ち立てました。週刊ヤングジャンプ編集部にお願いしたところ、ご快諾いただいて実現したという流れです。

『カミとミコ』の体験版を遊んでからマンガを読んだり、マンガを読んだうえで体験版をプレイすると、よりミコのキャラクターがつかめますので、ミコを好きになってもらえたのではないかと感じています。

読み切りマンガの原作を赤坂先生にオーダーさせていただいたときは、「とにかくミコを好きになれるようなお話でお願いします」とご依頼しました。実際、体験版をプレイした方々からも、「体験版をやってマンガを読んでいないのだったら読もう、マンガを読んでゲームをやっていないのだったらゲームをやろう」といったコメントもいただけてうれしかったですね。

── マンガの内容も尖っているなと。言葉が通じないキャラクターを最後まで貫かれるとは思わなかったので……。

赤坂先生:
「世界一特別な女の子」のしゃべる言葉って違うんだなって(笑)。でもこれは、ゲーム本編があるという安心感があってこそできたことですね。

「どこまで物語を出す?」、「どこまでヒントを出す?」手探りしながら遊んでいくゲームは、作っている方も「手探りの連続」だった

── プレイさせていただいて、約38年前にPC98で遊んだ『プリンセスメーカー』をプレイしたときの感覚を思い出したんですよね。言葉を交わさずに「見届ける」という部分であったり、ディスプレイ越しに娘を育成して、思い通りにならなかったり、思い通りになったりというところが感覚として似ているなと。これまでお話を聞いて、いろいろと腑に落ちました。

赤坂先生:
ゲームを作っているときの、手探り感はえげつなかったです(笑)。作品として成立するかどうかのスレスレを攻めている感じがありましたし。ただ、僕の頭の中では「きっと大丈夫」という確信があって、ほかにはないタイプの作品になったと思います。

ジャンルとしてはノベルゲーム・アドベンチャーゲームといったところに一応収まるかもしれないですが、遊んでもらうと「なんだこの手探りの連続は」となるというか(笑)。いままでにないものを作っている確信だらけでしたね。これはSCRAPじゃなかったらこうはなってないだろうと思いますし。

加藤氏:
「手探り感」っていい言葉ですね。我々が手探りでゲームを作らねばならなかった理由は、「プレイヤーも手探りをしながら遊んでいく」ゲームだったからなんです。謎解き界では「モヤッとした」と言うと100パーセント悪口なんですけど、『カミとミコ』は「モヤッとの積み重ねの中、正解にたどり着く」という図式なので、我々としても作りながら「どこまで物語を出す?」、「どこまでヒントを出す?」、「どこまで正解に対しての距離感を表現する?」ということを、ずっと手探りし続けていました。

そのため、脚本を書き終わった赤坂さんが「はぁ、俺の仕事終わった!」と言ったあとに、僕らから膨大な量の仕事をお願いすることになるんですけれど(笑)。それは何かというと、デバッグを経て出てきた言葉を、全部テキストにもう一回組み直さないといけなかったからです。

「手探りを言語化していく」作業がのちに必要になったので、僕も手探りだったし、正解が見えないなかですごいストレスでしたが、それに応えたテキストが赤坂さんから送られてくるし、それが届くと社内プレイの評価がガンと上がるんですよ。やっぱりこれは必要な作業なんだなと思って、それをくり返していったんです。「手探りをひたすらくり返していくことを選んだ」という感じです。

── お話を聞けば聞くほど特異な作り方をされているゲームというか、赤坂先生と加藤さんの関係性があったからこそ生み出せた作品ですね。

赤坂先生:
それは本当にそうだと思います。

── ディレクターと作家という、クリエイティブを行う人間がふたりいるにも関わらず、ここまで綺麗にやり取りできるケースというのも稀だと思います。

赤坂先生:
加藤さんもクリエイターだからできたというか……。クリエイターどうしが暴走、みたいなところは否めないかもしれませんが(笑)。

加藤氏:
作りながらおもしろいと思っていたのは、週に何回も連絡を取って「こうでこうで」と打ち合わせをしながら進めたわけじゃないんですよね。ボールを渡したあと、1ヵ月くらい沈黙があってから突然ドカンと投げつけられるという(笑)。こっちはこっちで1~2ヵ月かけて作業してガーッて構築したやつをバーンと投げつけて(笑)。ボールのやり取りはしてるけど、キャッチボールでもなんでもない(笑)。ドーン、ドーンと投げつけ合うみたいな。

赤坂先生:
打ち合わせでは「わかりました」しか言っていませんからね(笑)。実際に加藤さんがたくさん提案をしてくれたので、「これをこうしたい」と言われたら「じゃあやりましょう」しか返さなかったというか。そのときに「じゃあ、ここはこういうアプローチで行こう」みたいな話はもちろんするんですけれど、「よくしよう」っていう熱がものすごく高くて、楽しく仕事ができました。

赤坂アカ×SCRAP×集英社ゲームズ『カミとミコ』開発者インタビュー:描きたかったものは、世界一特別な恋_023

──数年規模でその熱量を持ち続けられるというのも、なかなかないことだと思います。ゲーム制作は時間がかかりますから「これが本当におもしろいのか」とわからなくなったり、不安も出てきますから。

加藤氏:
不安はありましたけど、最初にできた物語のプロットがすばらしかったっていうのと、「物語とこのシステムが絶対に合う」という確信自体は揺るがなかったですね。あとはもう手探りしていけば、そして時間さえかければ、よいものになると思いながら作っていました。

赤坂先生:
不安というより、「大丈夫かな?」という心配が勝っていまいた(笑)。体は大丈夫ですか、とか。

── 赤坂先生がビデオゲームを手がけるのが初ということで、バンドのデビューアルバムが最高傑作になることが多いのと同じように、初期衝動が詰め込まれている印象があります。

赤坂先生:
それはあったかもしれません。実際、気持ちよく完成できたんですよね。制作中、初期衝動みたいなやつがガツーンと出て、作っている最中に「もう出えへん、もう出えへん!」みたいな感じになっていたので(笑)。制作期間的にもちょうどいい長さだったと思いますし、いい感じに全部凝縮できたと思います。

赤坂アカ×SCRAP×集英社ゲームズ『カミとミコ』開発者インタビュー:描きたかったものは、世界一特別な恋_024

── 発売後のユーザーの反響が気になりますよね。

赤坂先生:
いやー、「僕が書いたシナリオがダメだったらどうしよう」っていう気持ちがいちばん強いかもしれないです。楽しみは楽しみなんですけど、僕はエゴサをしないので、周りの人が世間の反応を教えてくれればいいと思っています。

本作の見所は「ドット絵のクオリティ」。魅力的なキャラはもちろん、時代や状況が一発で伝わるピクセルアートの背景も必見

──この機会に伝えておきたい本作のほかの見どころがあればぜひお聞かせください。

加藤氏:
ドット絵のクオリティです。キャラクターは赤坂さんの原画があってのドット化ですから、そこは当然ながら見てほしいところなんですが、それ以外の各時代の背景の雰囲気もすごくよくできています。

背景を見た瞬間に「この時代はこういう状況なんだ。人類はこんな感じなのか」ということが視覚的にパッとわかる。背景のドット絵が脚本をすごく引き立てているんです。全部の背景が謎めいているんですよね。今回ドット絵をお願いしたのはピクセルアーティストの石田芙月さん(X:@fuzuzu)という方なんですけれど、石田さんもゲームの魅力に寄与する大きな掛け算のうちのひとつになってくれたと思っています。

── ドット制作は、赤坂先生からラフが届いたあと、それをSCRAPで整えてから石田さんに渡していたのですか?

加藤氏:
いや、「はいっ」って転送していました(笑)。

赤坂先生:
「どうやって描くとドットが打ちやすいんだろう?」とラフを描くときに考えていたのですが、途中であることに気づいたんです。上がってくるドットの色指定があまりにも独特に色数縛りをしている、と。ドット絵の時代は色数が少なすぎて色の数との戦いでもあったわけですが、『カミとミコ』もきっちりとそれをやっているんです。

「なんで?」って思ったんですけど(笑)、そのこだわりを聞いて「じゃあそれでやりましょう」と。絵描きとしてすごいなと思いました。

── え? あえて色数を絞っているのですか?

SCRAP広報:
補足させていただきますと、作品の統一感というか、時代ごとに色味を変えていたんです。「原始時代と現代では使う色が変わってくる」というのを再現なくやってしまうと、パッと見たときに『カミとミコ』というゲームの全体イメージがブレてしまう可能性があったんですね。ですので、「64色というパレットの中で全章を作り切る」というディレクションをしております。

加藤氏:
統一感が出ることによって、限られた情報量だからこそプレイヤーの思考が多くなる、ということが結果として起こったと思っています。世界の匂いまでは本来は表現できないけれど、あえて情報量を落とすことによって、想像できる幅が広がった。そういうことを表現していただいたドット絵でしたね。

ミヤザキ氏:
プロモーションについて僕からひとつお話させてください。SCRAPさんとの取り組みだからこそできるプロモーション施策にチャレンジしていまして、特装版にもオリジナルの謎を作って入れています。また、発売記念の特製謎解き「ミコのカミ様探し」を『カミとミコ』公式Xで展開していますので、そちらもぜひ楽しんでください。

赤坂アカ×SCRAP×集英社ゲームズ『カミとミコ』開発者インタビュー:描きたかったものは、世界一特別な恋_025

── ありがとうございます。では最後に、『カミとミコ』を楽しんでいる方々、これから遊ぼうと考えていらっしゃる方々へ、それぞれメッセージをお願いします。

ミヤザキ氏:
『カミとミコ』は、ミコというヒロインが時代によって変わっていくという新しい体験が魅力のひとつとなっていますので、ぜひプレイしてこの新しさを感じてもらいたいです。原始時代から始まって現代にいたるまで、プレイヤーが相対するのはずっとミコなんですが、彼女は時代によって立場も考え方も変わっていきます。これはマンガやアニメといった、ほかのメディアだと難しいヒロインの描き方だと思っているので、その新しさをぜひ感じていただきたいです。

先ほどの話と重複しますが、ゲーム以外のところでもSCRAPさんらしいことをたくさん用意しています。発売後もトークショウの開催を予定していますので、公式Xやメルマガなどで情報を入手していただきながら『カミとミコ』の世界をお楽しみください。

加藤氏:
ゲームを全部遊び終わったあとに、皆さんがどういうゲームだと感じられるのかはまだわからないですが、僕は『カミとミコ』は「すごく希望に満ちたゲーム」だと思っています。「なんでもない日常からとんでもない発見をする」ことをやっていくのですが、プレイヤーがゲーム内の行動によって「これまで人類が、何もない場所から発明していまがあるんだ」とか、「日常に起こる困難を乗り越えるために努力した人がいて現在がある」ということがわかる、希望の物語だと思っています。

ゲームのエンディングを見たら、皆さんきっといろいろなことを思うだろうし、いろんな意見が出てくると思いますが、根底にはすごくきちんとした希望が描かれているんです。赤坂さんの物語の主軸の中には紛れもなく希望があります。ゲーム内のテキストは約16万字あるのですが、16万字の言葉のすべてに希望が書かれているんです。それをサポートするための謎やシステムが、「あなたも目の前の何かを動かすことによって、きっとすごいことに気づけますよ」っていうメッセージが内包されているんです。

赤坂先生:
いまの言葉を聞いて、ちょっとエピローグを書き足したくなった(笑)。

加藤氏:
なんだと(笑)。

赤坂先生:
プロデューサーさんいつまで間に合いますか(笑)。

加藤氏:
(笑)。希望って、軽々しくいろいろなところで言われる言葉ですけれど、それが体現されている、言葉だけじゃなくてビジュアルやシステム、謎や言葉のすべてに希望が練り込まれているようなゲームだと思うので、『カミとミコ』をぜひ楽しんでいただければと思います。

赤坂先生:
この作品で描きたかったのは、ミコというキャラクターを知ってもらうことです。長い時間をかけて、「人類が生まれてどこに行くのか」を見てきた少女は、僕の中ではとても魅力的なヒロインになりました。特別な恋愛、世界一特別な恋っていうものをきっと描けた作品になっているので、ぜひとも皆さん『カミとミコ』に会いに来てください。よろしくお願いします。(了)

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

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