さまざまなヒーローたちが活躍するマーベル作品を題材にした”4対4”の対戦格闘ゲーム『MARVEL Tōkon: Fighting Souls(マーベル 闘魂:ファイティングソウル)』が、5月1日からのEVO Japanに試遊出展している。
異例の「4対4」格闘ゲームというジャンルながら、その実ゲームとしてはかなり間口が広い。ひとことで言えば、マーベルファンがマーベルの「キャラゲー」として楽しむことをまず念頭に置かれて作られているタイトルだ。
本作が目指したのは、誰もが楽しめる「おもちゃ箱」のような豪華で賑やかな作品だという。そのため、格闘ゲームとしてはもちろん、マーベルファンにいかに楽しんでもらうかを念頭に置いたビジュアル表現やシステムなども多い。
4対4の枠組みでマーベルらしい、多くのヒーローが入り乱れて戦う賑やかでカオスな面白さを意識しつつ、一方で格闘ゲームの階段を一歩ずつ登らせようとする丁寧さもある。多数のヒーローを自由に”アッセンブル”できるというシステムは、ゲームとしての戦略性もキャラゲーとしての楽しさも備えたものだ。
今回はそんな本作を開発するアークシステムワークスの山中丈嗣プロデューサー、関根一利ディレクターに、EVO会場にてお話を伺ってきた。

取材・執筆/恵那
「4対4」のチーム格ゲーに「こんなことができるのか!?」と驚いて欲しい
──本作『マーベル闘魂:ファイティングソウル』は、”4人制チームマッチの格ゲー”という点が非常に特徴的ですよね。ほかを見渡しても例の少ないジャンルだと思いますが、最初から「これだ!」という確信があったのでしょうか?
山中丈嗣氏(以下、山中氏):
実は最初、どんなゲームなのかを伝えるのには苦心したんです。SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)さんやマーベルさんに企画書を持っていったのですが、「4対4やります、こんなゲームデザインです!」と書面でお伝えしても、いまいち伝わらないんですよ。「4対4って、何が起こるんだ……?」と。
我々はある程度格ゲーに慣れているので、システムの話を聞けばなんとなく頭の中でイメージできますが、普通の方はそうではありませんからね。
関根一利氏(以下、関根氏):
「なるほど、よくわからん!」となってしまうんですよね(笑)
──確かに「4人もキャラがいると、操作が難しすぎるのでは?」という懸念も出そうですね。
山中氏:
そこで「とにかく4キャラで動くバージョン」を作って見せてみることにしたんです。試作段階のものを持って行って実際に見せ、その上で「4対4」で行けるかどうかを判断していただこうと。「ダメだ」と言われたら、潔く3対3や2対2に戻す覚悟でした。
この試作段階のものを「プリプロダクション」と呼ぶのですが、この作成には通常の2〜3倍、1年半ほどの時間を費やしました。
──そこまで時間をかけて、もしNOと言われたら……。
山中氏:
もし「製品として成り立たない」と判断されていたらと、今の形はなかったと思います。ですが関根たちが頑張って良い形に整えてくれたおかげで、関係者にも確信を持ってもらうことができました。
「よし、4対4で振り切ろう!」と、一蓮托生で進む決意が固まった瞬間です。
関根氏:
極論を言えば、僕は「1対1」以外のタッグゲームは、すべて同じだと思ってるんですよ。要するに、2キャラでも3キャラでも、複数キャラの動きを覚えるのが大変なのは変わりません。だからこそ本作では、そうした操作負荷は徹底して抑えるつくりにしています。
その上で、「2対2」や「3対3」はすでにあるものですから、もっとユーザーさんをビックリさせたかったんですよ。僕が最初に「4対4やります!」と言ったとき、周囲は「できるのか!?」という反応でしたが、それは期待も含んでの驚きだったと思うんですよね。
──確かに、「4対4の格ゲー」という響きだけでワクワクしますね。「いったい何が起こるんだ!?」と。
関根氏:
ユーザーさんに向けて、そうしたフックを作りたかったんです。ゲームの面白さって、「こんなことができるのか!?」というところから出てくるものだと思います。4対4という言葉が出たときに、「意味分かんなすぎて、面白そうだな」と感じてもらいたいんです。
だからクリエイターとしては、見たことないものを作っていきたいですね。個人的にも無理と言われると熱くなるので、「4対4の格闘ゲーム? できらぁ!」みたいなノリもあったかと思います(笑)。
──その上で、4人いるけど「1キャラだけでも遊べる」仕組みを目指したわけですね。
関根氏:
そうですね。本作が目指した重要なポイントが、まさに「1キャラ覚えればゲームが成立する」ことでした。まずは1人で戦い、ゲームに慣れてきたら「2人目も触ってみようかな」と思える設計です。
最初から全てを強いるのではなく、8人のキャラが入り乱れるカオスさを楽しみながらも、ゲームとしては1キャラだけで成立させ、その先は自分のペースで習得してほしいと考えました。
山中氏:
関根が苦しみながらもうまく形にしてくれたおかげで、結果として最高に新しいものができたと思っています。
関根氏:
やっぱり新しいほうが絶対に面白いですからね。僕としてはユーザーの方にこれまでにない体験を届けて、驚いてもらえるのが一番嬉しいんです。
まずはマーベルの「キャラゲー」として、それから「格ゲー」へ進ませる、遊びやすさとカオスな面白さの両立
──私も実際に試遊してみて思ったのが、本作はまず「マーベルのキャラゲー」としての入り口を広く作られているという感覚です。そのうえで、格闘ゲームとしての深みへ誘導するような、現代的なトレンドの流れにあるゲームですよね。
山中氏:
そうしたこともあって、まず第一にビジュアル面の作り込みを徹底してやっています。ファンが最初に目にするのはグラフィックですから、そこを感じてもらえる「アークシステムワークスらしい絵作りをする」ことは重視しましたね。
関根氏:
ゲーム内容については、他ゲームとの差別化の意味も含めて、「おもちゃ箱のようなカオス感」を追求しました。マーベル作品といえば、いろいろなヒーローが入り乱れて戦うようなイメージがあると思うのですが、そうした賑やかさが本作の大きな特徴です。
最大8人が入り乱れる、4対4という他にあまり例のないシステムに挑戦しているのも、そうしたごった煮のカオスさを出すことを狙っています。
──さきほどもお話されていましたが、4対4というのは格闘ゲームとしてはかなり大胆な試みですよね。
関根氏:
まずは触った瞬間に「よく分からないけど、なんだか凄そうだぞ!」と感じて欲しかったんです。ただ、そのままの4対4ではゲームとしてはかなり無理があります。というのも、タッグゲームでは「複数のキャラクターを使いこなさなければならない」からです。
山中氏:
複数のキャラを練習しなければいけませんし、覚えることが多いんですよね。私も同意見なのですが、「最近のタッグゲームは習得コストが高すぎて、カジュアル層には厳しい」というのは、関根が最初から指摘していたポイントでした。
──だから本作では「1キャラだけ覚えればプレイできるゲームにしている」わけですね。
関根氏:
はい。最初は1人のメインキャラクターを動かすだけで十分プレイできて、その状態でも仲間はサポートとして戦いを盛り上げてくれるようになっています。それに慣れてきたら「2人目も操作してみようかな」と段階的にステップアップできるようにしました。
私としてはタッグゲームをより遊びやすく、みんなに触れやすいものにしていきたいと考えていたので、「最初から全員分を覚えなくていいよ」という作りにはかなり意識しました。
──まず「キャラゲー」としてプレイヤーをもてなし、「格ゲー」として着地させるのはそのあと、ということですね。
関根氏:
格ゲーにおけるタッグゲームっていうのはここ数十年ジャンルとしては硬直している状態で、ルールがずっと変わっていなかったんです。最初からメンバーが全員揃っていて、1人ずつ倒されていくという流れですね。
ですがこのアプローチを変えて、逆にゲームが進行することで「後から仲間が増えていく」という流れにすれば、ゲームとして遊びやすくしつつ、新しい遊び方を提示できるのではないかと思いました。
まあそんなことをしようとした結果、「一人で遊べるチーム戦」「入り口はカジュアルだけど奥は深い」「見た目は綺麗だけど画面はカオス」……といった相反する要素を、ひとつの形にまとめるのに苦労したわけなんですが(笑)。
山中氏:
プロデューサーの立場から見ても、関根は本当に苦労していたと思います。相反する目標に折り合いをつけて、両立させていく。そこは彼の腕の見せ所でしたし、私は彼を信じて「あいつならやってくれる」と尻を叩いて応援していました(笑)。
ペニー・パーカーは「KAWAII」の逆輸入を目指した
──今回の試遊では、初めてペニー・パーカーが試遊可能になりましたので、そちらについても少し伺えますか? たとえば、キャラとしてのコンセプトはどういったものだったのでしょうか?
関根氏:
彼女はスパイダーマンの系譜らしく、画面内を自在に動き回る機動力を持っています。最大の特徴は、スパイダードローンやボットといった多彩なガジェットを次々と繰り出して戦うスタイルです。
無数のガジェットを使いこなして、「ガチャガチャと遊べる楽しさ」をシンプルに追求しました。
──『闘魂』自体が、アメコミと日本アニメーションの融合を果たしているタイトルですが、ペニー・パーカーも日米の要素が入り混じったキャラですよね。
山中氏:
デザイン、技の演出、ボイスのすべてにおいて、我々なりの「本物の日本アニメ・アークらしさ」を改めて注ぎ込みました。海外から見た日本像を、日本の技術でさらにブラッシュアップさせた形です。
中でも一番大切にしたのは、万国共通で「可愛い」と言ってもらえることです。日本の「可愛い」と、世界に広まった「KAWAII」のニュアンスを融合させました。
関根氏:
いわば「KAWAIIの逆輸入」ですね(笑)。
山中氏:
彼女は天才技術者という設定なのですが、普段はどこにでもいる素朴な女の子でもあります。だからこそマーベル世界における天才たちと知的な会話をすることもできて、そうしたギャップも魅力だと思っていただけるように描いています。
今作にはストーリーが楽しめるエピソードモードもあるので、そのあたりでの活躍も楽しみにしていただければ嬉しいですね。
──「KAWAII」系で言うと、新キャラの「デンジャー」も魅力的です。アークさんの作品ではしばしば出てくる「ロボっ娘」のような系譜も感じました。
山中氏:
登場させるキャラクターの中に、みんなを驚かせる「サプライズ枠」を用意したいと思っていたのですが、そこで我々がぜひにと提案したのが、デンジャーというキャラをロボっ娘として登場させることだったんです。
『GUILTY GEAR』の頃からロボガール的なキャラはしばしば作ってきたので、我々としても好きですし、喜んでくれるファンの方が一定数いるだろうということもわかっていました。人間とは異なるロボットらしいギミックや動きは、バトルの面白さも広げられます。
──発表時には、原作のマーベルファンを中心に驚きの声が上がっていましたから、サプライズという意味では大成功ですね。
山中氏:
原作ではそれほど露出が多くなく、キャラクター性も固まりきっていない部分があったんです。なのでマーベルさんからも「アークさんの好きなように描いていいですよ」と、かなり自由に任せていただけたことが大きな決め手になりました。
関根氏:
もともとは「X-MENのトレーニングルームのAI」が擬人化した存在なんですよね。だから仲間の能力を熟知していて、それを具現化して戦うこともできる。そうしたユニークな設定もあったので、面白いバトルスタイルにできるだろうなと考えました。
手がウルヴァリンのような爪になったり、仲間の技を彷彿とさせるビームを出したりと、X-MENのモチーフを各所に散りばめつつ、バトルでは徹底して「カッコよさ」を追求しています。
──今後発表される未公開キャラクターの中にも、ファンを驚かせるような「サプライズ」は用意されていますか?
関根氏:
とにかく皆さんを「びっくりさせたい」という気持ちで選んでいます。なにせマーベルには8000体以上のキャラクターがいると言われていますから。
定番の人気キャラを望む声はもちろん大切にしていますが、同時に「人気はあるのに、まだゲームに登場したことがないキャラ」もたくさん存在します。そのあたりも勘案して、なるべく新しさを出していきたいとは思っていますね。
──誰が参戦するのか予想するのも、これからの楽しみのひとつですね。
関根氏:
いま出せるヒントとしては、デフォルトで用意しているチームの特徴ですね。すでに発表しているキャプテンアメリカ、ゴーストライダー、そしてドクター・ドゥームは、いずれもチームのリーダーになります。
例えばキャプテン・アメリカのチームなら「王道のヒーロー」が集まるでしょうし、ドクター・ドゥームならもちろんヴィランです。ゴーストライダーなら、ダークヒーロー的なメンバーが集まると思います。そのあたりから予想を膨らませていただけると面白いのではないでしょうか。
開発現場からの熱烈なプッシュで「アメコミ風」ビジュアルで遊べるシェーダーも実装
──本作は、ゲームのビジュアルをアメコミ風に切り替えられる「アメコミシェーダー」があると伺ったのですが、こちらについて詳しくお伺いできるでしょうか。
山中氏:
実はこのプロジェクト、最初に弊社から提出した企画書はアメコミ風のビジュアルだったんです。
最終的に今の「ジャパニメーション」スタイルに決まったのですが、開発チーム内の根強い原作ファンから「アメコミ風の質感でも遊びたい!」という猛烈なプッシュがありまして(笑)。
──開発現場からの熱い要望があったのですね。
山中氏:
そうなんです。熱烈に説得されまして、「そこまで言うならやろう、ファンもきっと喜ぶし」と実装を決めました。我々としてもユーザーファーストを大切にしているので、ファン目線を持つスタッフのこだわりを形にすることにしたんです。
そのため、もともと開発スケジュールには入っていなかったのですが、そのスタッフが凄まじい頑張りで作り上げてくれました。
関根氏:
キャプテン・アメリカのクラシックコスチュームを作っているのを見ていたら、気がついたときにはアメコミシェーダーまで出来上がっていた……という感じでしたね(笑)。
──こうしたファン目線の「遊び」は嬉しい機能ですね。その意味ではもう一点、試遊で気になったのが、選択したヒーローによって、自動でチーム名が生成される機能です。あれも面白いですよね。
関根氏:
リーダーが誰か、どのキャラをどんな順番で組み合わせるかによって単語の組み合わせが細かく変わる仕様になっています。使う単語も、マーベルヒーローにふさわしい単語を頑張って人力で考えているんですよね(笑)。
セリフとして読まれる際にどうアクセントをつけるか、という音声も細かく分けていて、単語ごとに5パターンくらいあったりします。
──すごいこだわりですね。ちなみに、個人的にお気に入りのキーワードやチーム名はありますか?
山中氏:
組み合わせによって、たまに「アホっぽくて面白い名前」になることもあって、僕は好きでしたね。例えば、アイアンマンやドクター・ドゥームといった知的なキャラばかり集めると、チーム名が「ジーニアス・ジーニアス」になったり(笑)。
関根氏:
「ジーニアス・ジーニアス」は開発チーム内でも人気でしたね(笑)。
山中氏:
「天才」を重ねすぎて、逆に天才っぽくないという(笑)。そういうアホっぽさが、僕ららしくて好きです。一方で、中二心をくすぐる格好いいワードがバシッと決まることもあって、そのギャップが楽しいですね。
関根氏:
中には「スゴイカワイイ」みたいなチーム名も出てきますから。ぜひ色々な組み合わせを探してみて欲しいです。
──格闘ゲームとしての面白さはもちろんですが、細かな演出などの、ナラティブ的な部分へのこだわりも強く感じますね。
関根氏:
まさに「マーベルのおもちゃ箱」をひっくり返したような密度を目指しました。ステージの背景などにも、ファンなら思わずニヤリとしてしまうようなイースターエッグを大量に仕込んでいます。
山中氏:
マーベルファンの方には、一番満足していただきたいですからね。そうしたこともあって、キャラクター同士の掛け合いもかなり重視しました。キャラによっても違いますが、従来のタイトルと比べてボイスの収録数が1.5倍から、2倍近くになっていたりします。
──そんなに!
関根氏:
厳密な話をすると、それくらいの数字でも収まらないかもしれません。というのも、今回は日本語と英語だけでなく、さらに10以上の言語に対応しているからです。
各言語で細かなニュアンスの調整も行っているので、多言語展開も含めた全体の密度は、正直に言って2倍ではきかないレベルです。そこは自信を持って「極限まで詰め込んだ」と言えますね。
誰もが楽しめる「おもちゃ箱」を目指したゲームを楽しんでほしい
──最後になりますが、ファンの方に向けて一言ずつコメントをいただけますでしょうか。
山中氏:
本作『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』は、コアな格闘ゲーマーの方はもちろん、普段は格闘ゲームを遊ばない方も、カジュアルに気持ちよく遊べるタイトルになっています。
ひとりでじっくり楽しめるシングルプレイモードも充実していますから、ぜひ一度手に取って遊んでみてください。8月7日発売、予約受付中です!
関根氏:
本作は、とにかくまず「キャラゲー」であり、その上で「格闘ゲーム」として、とにかく触って楽しいゲームを目指しています。「ユーザーのみなさんとアッセンブルして作る」ということも意識して、フィードバックをもとにさまざまな改善も進めているので、どんどん声をいただきたいです。
1人用でも対戦でも、とにかく楽しんでもらえればそれが一番いいかなと思っているので、ぜひ我々の作っている「おもちゃ箱」を覗きに来てください。一番大事なことなのでもう一度言いますが(笑)、8月7日発売です。ぜひ予約して遊んでください!(了)
4対4というチーム格闘ゲームでありつつ、一方で1キャラだけでもちゃんと遊べる。入り口はどこまでもカジュアルで、でもしっかりコアプレイヤーも楽しめるように。ビジュアルは綺麗だけど、キャラはごちゃごちゃと入り乱れたカオスにする。ジャパニメーションだけど、アメコミ風でもある。
本作『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』は、いくつもの相反するカオスを詰め込んだ、まさにおもちゃ箱のような作品だ。そしてだからこそ、「ゲームにこんなことができるのか!」というたくさんの驚きが詰まった作品だ。
誰もが楽しめるおもちゃ箱を目指したという本作は、格ゲーというジャンルに新たなファンを生み出してくれる予感もある。『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』は、今年2026年の8月7日に発売予定だ。









