いま読まれている記事

『鉄拳』の原田勝弘氏がSNKへ! 新スタジオ”VS Studio SNK”代表に就任──「新たな対戦ゲームを作りたい」ゲームへの情熱、心の火が消えていない方なら50歳超えでもスタジオの門を叩いてほしい【緊急インタビュー】

article-thumbnail-2605122d

1

2

SNKとのシナジー、原田氏が生み出す新作とは?

──ここからは読者が知りたいような質問をぶつけさせてください。SNKだからこそできること、SNKというブランドの強みを原田さんはどう分析されていますか。また、『餓狼伝説』『ザ・キング・オブ・ファイターズ』『サムライスピリッツ』など、SNKの既存IPへの関与方針も含め、新スタジオとしてどう差別化、活用していこうと考えているのでしょうか。

『鉄拳』シリーズ原田勝弘氏インタビュー|新会社VS Studio SNKでの意気込み_009

原田氏:
現段階でどういうものを作るのかとか、どう絡むのかというところまで、皆さんにお話しできる段階ではないんですよね。僕のキャリアからすると、SNKさんとは相性がいいと思っています。また、小田さんとも話したのですが、お互いに似たジャンルのゲームを作ってきたように見えて、じつはナレッジはぜんぜん違っていたりするんです。

先ほどお話したように、いままで自分が培ってきたナレッジや経験をいい意味で交換したり、シナジーとして活かせるんじゃないかということを僕自身は期待しているし、小田さんも期待してくださっていると思います。そこをうまく世の中に押し出していけたらおもしろいと思いますね。

僕自身もSNKさんのIPに好きなものがたくさんあるので、個人的には「あれもいいな、これもいいな」というのはあるんですけど、「それをいますぐ作ります」というわけでもないんです。具体的なところまではお話できませんが、どこかのタイミングで言える日が来ますので(笑)。僕自身はおもしろいことができるんじゃないかなと。……漠然とした答えですみません。

──今後どんなゲームを、どんな環境で作っていきたいと考えていますか。

原田氏:
これまで格闘ゲームのほかにも、プロデュースという意味ではいろいろなジャンルのゲームに携わっているんですよね。ただ、やはり得手不得手はありますし、市場から期待されることであったりとか、SNKさんからも期待されるものは必ずあると思います。

そういう意味で言うと、僕は人と対戦するゲームですとか、そういうところは外せないと思っていて、自分自身もそれを追求したいという思いはすごく強いです。対人・対戦ものですかね。必ずしもジャンルをひとつに絞るわけではないにしても、対戦ものの作品は作りたいですね。

ゲーム作りの環境に関しては、若いクリエイターの人もいっしょに参加して作ってもらいたいという思いは強くありますが、一方でいまの45歳以上ぐらいのシニアと呼ばれるような世代の開発者も、僕は宝だと思っています。下手したら今年、来年定年しちゃうような人も含めてすごいベテランの人を僕のもとに集めて、ベテランパワーと若い人との組み合わせで、いい作品ができたらいいなという構想があります。

──SNKの立ち上げ中のプロジェクトに原田さんが関わっていくことはあるのでしょうか。

原田氏:
個人的な思いで言うとやりたい気持ちはありますが、SNKさんのものなのであまり勝手なことは言えないですね(笑)。いま現在、何か決まっていることを隠しているわけじゃなくて、本当にそこはないです。……ないですけど、昔から雑談レベルでは盛り上がる話題ですよね(笑)。

小田氏:
そうですよね。ただ原田さんはすばらしいキャリアの方なので、さまざまなところからいろいろな要望が来ていたと思いますし、これからも来ると思っています。そこを全部聞くわけにはいきませんから、そういった点をうまく整理していくサポートはSNKでできたらいいと思っています。

原田氏:
90年代だったら気軽に手を出したんでしょうけど、いまは開発を始めると4~5年は当たり前のようにかかるので、簡単には言えないですね。

──『餓狼伝説 City of the Wolves』の突き抜けたコラボレーションが続々と実現していますが、原田さんの感想を聞かせてください。

『鉄拳』シリーズ原田勝弘氏インタビュー|新会社VS Studio SNKでの意気込み_010

原田氏:
僕と同じような世代の方はご存じだと思うんですけど、自社とかグループじゃないIPをゲストとして最初に迎えた格闘ゲームは、僕が携わっていた某格闘ゲームなんですよね。初代プレイステーションのときにそれをやって、いまとなってはよくあるコラボですが、当時は「なぜ?」という声も多かったんです。その後もいろいろなシリーズタイトルや格闘ゲームではないジャンルも含めて、まったく関係がない他社さんキャラクターなどもゲストで入れるという施策をやってきた側でした。

そんな僕から見ると、『餓狼伝説 City of the Wolves』のゲストキャラクターは「ようやくみんなもこういうことをやり出したか」という安心感を覚えるというか(笑)。「つぎに何が出るか、予想できない」ことが、とてもおもしろいことだと思っています。心理的抵抗がある人もいれば、「それおもしろい!」と思ってくれる人もいますよね。

いろいろな見かたがありますが、慣れてくると「つぎは誰が出るんだろう?」というワクワク感に変わってくる。『北斗の拳』のケンシロウ参戦については相当びっくりした側で、よく冗談で「ケンシロウを出せたらなぁ」みたいなことを言ってたときもあったぐらいなんです。「あ、本当にやっちゃうんだ」とイチファンとして楽しく見ています。

『鉄拳』シリーズ原田勝弘氏インタビュー|新会社VS Studio SNKでの意気込み_011

──世界でヒットさせるためにどう戦っていくのか、ビジョンをお聞かせください。

原田氏:
これは難しいですね。僕らがゲーム開発者としてやり始めたのが90年代。90年代はおもしろい時期で、ポリゴンという新しい技術が出てきた時代でもあるんですけど、そのころは「いいゲームを作れば売れる」という、ピュアな時代でもありました。

ビデオゲームのワールドワイドの売れ方というのは、単にいいゲームだけじゃなくて、届け方とか、よく言われるマーケティングやプロモーションのうまさみたいなものでも差はつきます。ですので一概に「こうやれば絶対売れる」というのはなくて、複合要素でしか売れなくなってきていて、かなり難しい時代になっていると思います。ただ、作品そのものにある程度、芯が通ってないと売れないことも間違いありません。

物作りとして90年代のころとは違う、ネットワーク時代の「いまゼロから作り始めるならどうすればいいだろう?」という再構築を、みんなで知恵を出しつつ、新しい体験ができるゲームができたら、と考えています。自分ひとりの力でやってきたわけじゃないですし、自分たちのナレッジだけで売れるわけでもないと思うので、新しい売り方はむしろSNKさんといっしょに模索していければと思っています。

──これまで培われた経験を、新スタジオでどう活かしていきたいとお考えですか?

原田氏:
経験、ナレッジはすごく重要なんですが、これまでの成功体験と経験にとらわれてしまうと、新しいテクノロジーやパッと出てきたものに対して、すぐ対応もできないし、学習もできなくなってしまいます。価値観を変えるところはどんどん変えていこう、アップデートしていこう、という意識は必要です。開発はもともとテクノロジーなわけですから、それらの進化に合わせて自分たちの価値観もアップデートしながらやるというのは、とても重要だと思っています。

いままでの経験はベースとして役立てたいと思っていますが、また新たに勉強したいという気持ちが大きいですね。新しい勉強と探求をしたくて新しい環境でやるわけですから、いままでどおりのやり方や作り方ではなく、お客さんが「どういうものを求めているのか」を改めて見直して作りたいと考えています。

『鉄拳』シリーズ原田勝弘氏インタビュー|新会社VS Studio SNKでの意気込み_012

──『鉄拳』を世界一に導いた経験がSNKでどのようなシナジーを生むと予測されていますか。

原田氏:
これについては偉そうなことを言えない気がしていて。当時は「すごいものを背負ってやっている」、「自分がチームを率いてやっているんだ」ぐらいの感じを出していましたけど、実際はものすごくたくさんの人にお世話になったうえで結果に繋がっているわけですよね。僕ひとりが来て「こうやればうまくいきますよ」なんておこがましい話があるかと、客観的に思っています。

成功体験みたいなところに対しては、セオリーとか法則は見えないのですが、勘どころとして「ここはこうだよね」というのが、自分の心の中の宝として間違いなくあると思っています。そういうところは共有していきたいですし、逆に小田さんたちからいろいろな話を聞きたいですね。もともと雑談レベルで「いっしょにやるんだったらこうなったらおもしろいよね」と言っていたわけですから、どちらかというとノウハウ、ナレッジよりも好奇心とか「こうなったらおもしろいよね」という気持ちのほうが重要だったりするんですよね。

そういったワクワク感は、この年齢になるとなかなか出てこないじゃないですか。いまワクワクしているというのがとても重要で、そちらのほうが意味合いとして大きい。いままでの実績を偉そうに語ったり、「こんなことをしていました」といったことではなく、「これからこんなことができそうだよね」というワクワク感のほうが重要だと思っています。

──手がけるタイトルの規模感についてはいかがですか?

原田氏:
規模感を言ったら金額感もバレるから言えないですよね(笑)。

小田氏:
映画10個分とか?

原田氏:
その言い方はジャンルとしては新しいですね(笑)。VSスタジオの理念は、「Beyond tradition, crafted to perfection」。日本語にすると「伝統に挑み、極限を創る」です。要は「できるだけやっぱりいいもの作ろうぜ」なわけで、規模に関わらず作品の中身に集中して取り組みたいと思っています。

たとえばAAAタイトルの定義って難しいですよね。お金をかければAAAなのかと言えばそんなことはなくて。最近はインディータイトルもすごく支持されていて、メジャーな賞を受賞しているタイトルも出てきている。この動向を見ると、AAAとかインディーという括りじゃないというか、「作っている人がどれだけ本気で好きでやっているかどうか」が伝わる時代だと思っているので、そこで勝負したいですね。

──こういう人材に来てほしい、というのはありますか。

原田氏:
ここにいるメディアの方とかは、いい意味で有効活用できるというか。僕はいままでゲームセンターでがっつりゲームをやっている人やハイスコアラーの人をスカウトしていたんです。ビデオゲームに対する情熱や好奇心がスキル以上に重要だと思っています。もちろんスキルも重要ですが、2.5番目とか3番目くらいかな。年齢関係なく、いろいろなゲームの知識があったり、いろいろなクリエイターと話しています、という人は開発者として向いているんじゃないかと思っています。

スキルという意味でいうと、若くてパワーのある人たちは当然雇いたいですけど、注目しているのはベテラン。世の中的には下り坂と言われたり定年を迎えそうな人も、開発者としては非常にいいものを持っていると思うんです。加えて20~30代の人たちって、ほかのスタッフとぶつかることが多いんですよね。年齢を重ねるといい意味で丸くなって、実のある会議ができるようになるというか。そういう意味でベテランはスキルを持っているけど人間的に丸くなっているので、かなり優秀ですよね。そういうベテランの人を積極的に採用したいと思っています。業界は長いけど情熱を失っていない人は、Xなどでぜひ連絡してください!

──(笑)。SNKに深く関わるようになって驚いたことや、エピソードがあれば教えてください。

原田氏:
まだぜんぜん深く関わってないです(笑)。じつはこのフロアも初めて来た? という感じで。ただ、SNKさんは歴史ある会社なので、切り取る年代で見え方がすごく違うんですよね。僕はずっとネオジオのイメージだったんですけど、いまはどちらかというと老舗のゲームメーカーなのに第二の創業期を迎えているような印象もあります。

SNKという名前自体は伝統があるんですけど、新しいSNKになろうとしてるんだなっていうのは外から見ていてもそう思いましたし、少し関わるようになってから見ても、改めていまからもう1回SNKを始めるんだと、いい意味で感じています。僕がごいっしょしたいと思ったのは、その点も大きいですね。

新たに創業しようとしているんだなという感覚とか、その先に見ているものが刹那的じゃないんですよね。4~5年先だけでいいわけではなく、その先のことまでしっかり見据えてることが確信できました。ゲームど真ん中で、ゲームを真正面から捉えて「ビデオゲームというものでやっていくんだ」っていう心意気をSNKさんから感じました。

──原田さんはXでも人気がありますが、SNSでの個人発信や交流、コミュニティとの関わりは今後も続けていかれるのでしょうか。

原田氏:
コミュニティだったりマーケットですよね、市場にいるユーザーの温度感は、間接的に誰かからデータでもらうとか、レポートで見てればいいってもんじゃないと個人的に思っていて。数字面やバズり方の曲線だけ見て物事を判断するのは性に合わないので。

実際の温度感を感じつつ、マジョリティの意見だけじゃなくてマイノリティ的な意見もしっかりと拾うと、たまに心に刺さったりするものがあるんです。そういった意見が、ものを作るときの仕様のヒントになったり、アイデアのもとになることがたまにあって。手きびしい意見を受けたら刺激されて「だったらもうちょっとやってやろうじゃないか!」という気持ちになれることもあります。以前ほどの頻度かはわからないですが、コミュニティとは今後とも接触していきたいですね。

『鉄拳』シリーズ原田勝弘氏インタビュー|新会社VS Studio SNKでの意気込み_013

──昨今のeスポーツや格闘ゲームシーンについてどのようにご覧になっていますか。

原田氏:
eスポーツシーンは、業界がシステマチックに生み出したものではなくて、僕らが作ってきたタイトルにファンがついて、そのファンが自発的に行ってきた大会やイベントの延長線上にあるものだと思っています。

もちろん、公式が大会・トーナメントなどもやっていますが、コミュニティが盛り上がることで小さかった大会がどんどん大きくなり、うねりのようになってeスポーツ化したという背景があると思うんですよね。

eスポーツは20年前じゃ考えられないぐらいの規模になっていますし、いまも拡大し続けているので、チャンスはたくさんあると思っています。僕自身はいまのeスポーツシーンは、「ここまで来たか」という気持ちで見ています。

ただ、一方で課題はたくさんありまして……。それはコミュニティ側の課題というよりはゲームを作っている側、メーカー側の責任だったり、どうコミュニティをサポートしていくかとか。そこは金銭面だけで測れる内容でもないですし、そういった部分にどうアプローチしていくのかが今後の課題だと思っています。どんなゲームを作るにしてもコミュニティとの協力関係は構築していきたいですね。

──いろいろとありがとうございました。最後にみなさんの今後の動向に注目している人たちへ、それぞれメッセージをお願いします。

米盛氏:
先ほど言ったことが根底にあって、「まっさらな新しいスタジオでおもしろいものができたらいいな」とワクワクしてます。やってみたいことはいろいろとありますので、自分も楽しみですが、皆さんも楽しみにしていただければと思います。

小田氏:
原田さんはじめ、これから集まっていただく仲間たちのクリエイティブを阻害せず、うまく活かしていただけるような環境作りを我々SNKでお手伝いし、バックアップしたいと考えています。

スタジオの立ち上げ直後はいろいろとたいへんだと思いますが、1日でも早く開発に着手できる状況に持っていけるよう、しっかりと支えていきます。いまは期待しかないですね。

原田氏:
どういうものを作るのかは現段階では言えなくて、特定のジャンルにぎゅっと絞っているわけではないのですが、やはり自分のベースには「対戦」という軸があります。友だちやコミュニティの人たちと対戦ゲームをするのは楽しいじゃないですか。その本筋は僕らの得意とするところなので、本筋を外さないようなものを作っていきたいと思っています。

僕もかつて突然VRのタイトルを作ったりしたこともありましたけど、「何が来るのかな?」と期待していただければと思います。また、「ちょっと俺も参加させろ」という方がいたらぜひ門を叩いてください。情熱があっていろんなゲームの知識がある方を、僕らは求めています。もうそろそろ引退を考えているけど「じつは心の火はまだ消えていません」という方もぜひお声がけいただければと思います。今後とも我々の動向に注目、応援をお願いします。(了)

1

2

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ