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戦車同士の重厚バトルにヒーローシューター要素を融合? 複雑さとカジュアルさ、相反するものを組み合わせて「間口は広く、懐は深く」を目指した『World of Tanks: HEAT』の挑戦を聞く

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Wargamingの『World of Tanks』といえば、実在した戦車同士による車輌戦を楽しめる重厚肉厚なタクティカルシューターとして、コアなゲーム体験を望むゲーマーたちに広く支持されてきたシリーズだ。

だが、その名を冠しつつも大きく方向性を変えた新作タイトルが、今年の5月に登場した。それが、車輌同士の戦闘という軸はそのまま、「ヒーローシューター」的な要素を加えた『World of Tanks: HEAT』だ。

本作には、「エージェント」と呼ばれるキャラクターが存在しており、各車輌はそれぞれ彼らに紐づけられている。エージェントたちにはロールやアビリティが用意されており、プレイに際しては戦車本体の性能に加えて、そうした能力の使い方も重要になる。

「重そう」「複雑そう」といったイメージが付きがちな戦車のゲームに、カジュアルかつスピーディという印象のヒーローシューター。相反するふたつの要素をなぜ、そしてどうやって結びつけたのか。

今回電ファミでは、本作のプロダクトディレクターであるArtyom Yantsevich氏にメールインタビューを実施する機会を得たので、『World of Tanks』シリーズの新たな挑戦についてのお話を伺ってきた。

『World of Tanks: HEAT』インタビュー|戦車バトル×ヒーローシューターはどうせいて生まれた?_001
『World of Tanks: HEAT』プロダクトディレクター:Artyom Yantsevich氏

取材・執筆/恵那

『HEAT』が目指したのは従来の『World of Tanks』に縛られない自由さ。テンポが速くアクション性の高い体験のために、「ヒーローシューター」要素が加わった

──『World of Tanks: HEAT』は、既存の『World of Tanks』とは大きく異なる要素を持つタイトルですが、ベースとなっているのはいずれも「戦車戦」です。本作を本編のアップデートや別モードではなく、独立した新作として開発したのはなぜなのでしょうか。

Yantsevich氏:
両作はどちらも戦車同士の戦闘を基盤としています。しかし『World of Tanks: HEAT』は、当初からまったく異なるプレイビジョンのもとに設計されました。本作の目標は、エージェント、アビリティ、チーム内のシナジー、そしてダイナミックに変化する戦場の状況を中心に構築された、よりテンポが速く、よりアクション性の高い体験を生み出すことでした。

だからこそ、『World of Tanks: HEAT』を独立したタイトルとして開発したのです。そうすることで、オリジナルの『World of Tanks』に対する期待や設計上の基盤に縛られることなく、新しいゲームプレイシステム、進行構造、そして「架空の歴史設定」を自由に探求できるようになりました。

このアプローチによって、両作は戦車同士の戦いという私たちの情熱を維持しながらも、それぞれ異なるプレイヤー層やゲームプレイの好みに応えることができます。

『World of Tanks: HEAT』インタビュー|戦車バトル×ヒーローシューターはどうせいて生まれた?_002
画像はSteam:World of Tanksより

──本作が取り込んだ「ヒーローシューター」というジャンルは競合タイトルも多く、プレイヤーの期待値も高いものだと思います。その中で、あえて『World of Tanks』にそうした要素を融合させることに、どのような可能性を感じたのでしょうか。

Yantsevich氏:
私たちの目標は、決して従来型のヒーローシューターを作ることではありませんでした。『HEAT』は何よりもまず、装甲車輌とその独自のゲームプレイ特性を中心に構築された「タクティカルシューター」です。

私たちにとって重要だったのは、これが戦車戦闘の戦略的な奥深さに、「ロールベースのゲームプレイ」「チーム連携」「エージェントごとの個性」を組み合わせる機会だったということです。「エージェントシステム」によって、体験の中心に車輌を据えたまま、異なる戦術的な選択肢やプレイスタイルを導入できます。だからこそ、従来の戦車ゲームとも既存のヒーローシューターとも異なる、新鮮な戦車戦闘の形を作り出せると考えています。

知識と経験を活かせる戦術的な戦車体験を保ちつつ、史実的な厳密さから離れて、オリジナルの『World of Tanks』に収まらない自由さを

──『World of Tanks』の名前を冠する以上、シリーズらしさを期待するプレイヤーも多いと思いますが、本作はかなり大胆に方向性を変えています。その中で、「ここだけは変えてはいけない」と考えていた部分はあるのでしょうか?

Yantsevich氏:
私たちが残したいと考えていた最も重要な要素のひとつが、ゲームの核となる「車輌戦闘体験」です。「装甲厚」「砲弾との相互作用」「跳弾」「ポジショニング」、そして「戦車ごとの強みと弱み」を理解すること。これらは今もゲームプレイの根幹を成しています。

同時に、「強力な戦闘マシンを乗りこなす感覚」も維持したいと考えていました。たしかに『HEAT』には「エージェント」や「アビリティ」といった新しいシステムが導入されています。しかし体験の核は今も、戦車の特性を理解し、戦術的な判断を下し、チームメイトと協力して相手を打ち破ることを中心に構築されています。

──では逆に、本作を「新しいゲーム」として成立させるために、従来の『World of Tanks』から大きく再解釈したり、あえて優先度を下げたのはどんな要素でしたか?

Yantsevich氏:
従来の『World of Tanks』のゲームプレイと比べて、私たちはスピードや機動力といった、アクション性の高い戦闘をより強く重視しました。各マッチは、積極的なプレイやチームワーク、戦術的なアビリティの活用の機会がより多い、ダイナミックなものになるよう設計されています。

また、厳密な「史実性」からも距離を置きました。本作では「架空の歴史設定」によって、オリジナルのゲームの枠組みには必ずしも収まらない実験的な車輌、技術、ゲームプレイコンセプトを探求する自由度が高まっています。

──戦車戦らしい重厚な戦術性や複雑さと、ヒーローシューターらしいカジュアルさやテンポの速さは、ひとつのゲームの中で両立させるのはなかなか難しいのではないかと思います。本作では、両者のバランスをどのようにとっているのでしょうか。

Yantsevich氏:
私たちは、戦車戦闘メカニクスを体験の基盤として維持しています。そのうえで、それらをより学びやすく、参加しやすいものにすることで、このバランスにアプローチしています。だから新規プレイヤーは、すべてのシステムをすぐに習熟する必要がなくても、すばやくアクションを楽しみ、チームに貢献できるのです。

同時に、「装甲の相互作用」「弾種」「車輌のロール」「ポジショニング」「チームシナジー」といったより深いメカニクスは、経験豊富なプレイヤーにさらなる熟達の余地を提供しています。つまり私たちの目標は、入口は取り組みやすく、けれど時間をかけるほど意味のある奥深さが感じられる体験を作ることです。

『World of Tanks: HEAT』インタビュー|戦車バトル×ヒーローシューターはどうせいて生まれた?_003
画像はSteam:World of Tanksより

──『World of Tanks: HEAT』が目指したゲーム体験を簡単にまとめると、どのように言えるのでしょうか?

Yantsevich氏:
本作は、3つの中核となる柱から構築されています。1つ目は、戦車という戦闘マシンの「力強さと存在感」です。2つ目は、「人と機械のシナジー」、つまりエージェントと戦車の連携によって、独自の戦術的機会や記憶に残る瞬間を生み出すことです。そして最後の3つ目が、「チームとして優位に立つこと」。プレイヤー同士が協力し、適応し、戦略とチームワークによって相手を上回ることを促します。

私たちの目標を総括してお話しすると、遊びやすく刺激的で、かつ習熟するほどにやりがいを感じられる、テンポの速い戦車戦闘の体験を届けること、になるでしょう。

エージェントは「人と機械のシナジー」を繋ぐもの。単なるアビリティセットではなく、ゲームプレイとナラティブを包括して結びつける

──多くのヒーローシューターでは、キャラクター本人をプレイヤーが操作するため、キャラクターがそのままゲームの「顔」になりますが、本作の場合、実際に操作するのはあくまで戦車です。エージェントという存在を単なる「能力のひとつ」ではなく、キャラクターとして成立させるために意識している設計はありますか?

Yantsevich氏:
「エージェント」というシステムは、戦車戦闘に独自の戦術的アビリティを導入する、という初期段階の探求から発展しました。開発を進める中でわかったのが、こうしたアビリティをエージェントを通じて提示することで、ゲームプレイとビジュアル上の個性、ナラティブテーマなどが、より強く結びつけられるということでした。

先ほどもお話しした通り、「人と機械のシナジー」という柱が、私たちのデザイン哲学の中で大きな部分を占めています。ですからエージェントは、単なるアビリティの集合ではありません。それぞれが異なる個性、プレイスタイル、そして戦闘へのアプローチを表しています。

エージェントを設計する際には、「ゲームプレイ上のロール」「車輌のアイデンティティ」「ビジュアルデザイン」「キャラクターの人格」をまとめて検討し、全体として一貫性があり、記憶に残る存在になるようにしています。

──既存の『World of Tanks』プレイヤーと、ヒーローシューターやアクションゲームから入ってくる新規プレイヤーでは、本作に向ける期待の方向も大きく異なると思います。それぞれのプレイヤーに向けて、どのように応えようとしているのでしょうか?

Yantsevich氏:
まず新規プレイヤーに対しては、始めた直後から楽しめるよう、「遊びやすさ」「分かりやすい進行」「直感的なゲームプレイシステム」を重視しています。チュートリアルやAI戦、視覚的な学習ツールといった機能は、プレイヤーがゲームのメカニクスを段階的に理解する助けになります。

一方、戦車戦の経験豊富なプレイヤーに向けては、「装甲の相互作用」「弾種の選択」「車輌ビルド」「戦術的な意思決定」「チームシナジー」に関わる、より深いシステムの開発を続けています。私たちはゲームへの関わり方に複数の層を用意することで、どちらのプレイヤーもそれぞれの方法で本作を楽しめるようにすることを目標にしています。

『World of Tanks: HEAT』インタビュー|戦車バトル×ヒーローシューターはどうせいて生まれた?_004
画像はSteam:World of Tanksより

エージェントと戦車の組み合わせが、明確なロールやゲーム体験の一貫性を生み出す

──本作では、エージェントと戦車を自由に組み合わせられる方式ではなく、エージェントごとに使用できる戦車が紐づけられています。固定した方式にしたのはなぜなのでしょうか。

Yantsevich氏:
この判断も、本作の中核となる柱のひとつである「人と機械のシナジー」という私たちの哲学と密接に結びついています。エージェントと車輌を一体で設計することで、より強いゲームプレイ上のアイデンティティや明確なロール、そして一貫性のある体験を作ることができます。

また、この構造は、バランスの一貫性を保つ助けにもなります。それぞれのエージェントと車輌の組み合わせが、明確な違いと目的を持ったものとして感じられるようにしているのです。

──各エージェントと戦車との組み合わせについては、どのような基準で決めているのでしょうか。

Yantsevich氏:
まず、そのエージェントに担わせたい「ゲームプレイ上のロール」と「戦術的な目的」から検討を始めます。そこから、そのロールを最もよく支える車輌特性は何か、そしてエージェントのアビリティが戦車の強みをどのように強化し、補完できるかを見ていきます。

また、エージェントの性格やビジュアル上の個性、全体的なテーマの一貫性も考慮します。目標は、エージェントとそのマシンとの間に強いつながりを作ること。その組み合わせが、メカニクス面でもクリエイティブ面でも自然に感じられるようにすることです。

「リリースは始まりにすぎない」。フィードバックに積極的に向き合いつつ、コンテンツやゲームモードの拡張を目指す

──ローンチ以降、すでに多くのプレイヤーが本作に触れているかと思いますが、プレイヤーからの反応はいかがでしたか? 特に印象に残っている反応や、今後の改善につながりそうな声があれば教えてください。

Yantsevich氏:
全体として、プレイヤーの反応には大いに励まされています。テスト期間中、そしてリリース後を通じて、多くのプレイヤーが本作のテンポの速い戦闘やエージェントシステム、そして戦車戦闘への独自のアプローチに好意的な反応を示してくれました。

同時に、プレイヤーからのフィードバックは引き続き非常に貴重です。私たちはバランスや進行、ローカライズ品質などに関するフィードバックを積極的に確認しており、すでにいくつかの領域で改善に着手しています。リリースは私たちにとって始まりにすぎません。だから今後も、プレイヤーからのフィードバックとゲームプレイデータの両方に基づいて、体験を磨き続けていきます。

『World of Tanks: HEAT』インタビュー|戦車バトル×ヒーローシューターはどうせいて生まれた?_005
画像はSteam:World of Tanksより

──今後のアップデートやコンテンツの追加について、どのようなことを重要視されているでしょうか。現段階でお話しいただけるビジョンがあればお聞かせください。

Yantsevich氏:
リリース時点では、「8人のエージェント」「15輌の車輌」「8つのマップ」「4つのPvPモード」を用意していました。ですが、私たちはリリースを本作の旅の始まりにすぎないと考えています。

今後は、新しいエージェント、車輌、シーズナルコンテンツ、ゲームプレイ機能によって本作を継続的に拡張していく予定です。また、追加のゲームモードや、より大規模な戦闘体験についても検討しています。いつものように、プレイヤーからのフィードバックは、今後のアップデートの優先順位を決め、本作の方向性を形作るうえで重要な役割を果たすでしょう。

アプローチは変えても、戦車への愛は変わらない

──最後に『World of Tanks: HEAT』のプレイヤーさん、または『World of Tanks』のファンの方に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

Yantsevich氏:
すでに『World of Tanks: HEAT』に参加してくださっている皆さん、サポート、フィードバック、そして熱意をありがとうございます。プレイヤーの皆さんが本作を探求し、さまざまなエージェントや車輌を試し、コミュニティで体験を共有してくださる様子を見ることは、チームにとって非常に大きな励みになっています。

長年にわたり『World of Tanks』を支えてくださっているファンの皆さんにも、これまで示してくださった情熱とご支援に感謝したいと思います。『World of Tanks: HEAT』は、テンポの速いアクションとチームベースのゲームプレイにより強く焦点を当てた、異なるアプローチを取っています。しかし、戦車戦闘への愛と、強力なマシンを乗りこなす奥深さに基づいている点は変わりません。(了)


知識と経験の積み重ねによる重厚な戦車戦のプレイ体験を残しつつ、『HEAT』はよりスピーディでアクション性の高いゲームを目指す。

新規はすぐ楽しめ、熟練者はメカニクスの中に深く沈んでゆける。いわゆる「間口は広く、懐は深く」を目指した設計だが、キャラクターとしてのエージェントを導入したことで、ビジュアルやナラティブといったイメージが、ゲームプレイの中に直接結びつきやすくなったことも興味深いタイトルだ。

またインタビューではコミュニティからのフィードバックについて積極的に対応する姿勢を見せていたが、実際に少し前、彼らがプレイヤーたちから受けた要望についての改善案を、Yantsevich氏自身が紹介する動画なども公開されている。

「リリースは始まりにすぎない」という言葉の通り、本作はまだリリースされたばかりであり、まだ展開の余地は広い。予想もできなかったふたつの要素の融合が今後どのような展開を見せてくれるのか、本作がこれから目指す先が楽しみだ。

編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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