「泣く」という要素をフォーカスした『CRYSTAR -クライスタ-』、『クライマキナ/CRYMACHINA』に続く、『クライ』シリーズ最新作『クライムライト/CRYMELIGHT』(以下、『クライムライト』)。
『クライムライト』は、死後の世界を舞台に、罪を背負った少女たちがそれぞれの過去と向き合い、自由を求めて戦うローグライクアクションゲーム。
『不思議の国のアリス』をモチーフにした、ダークで幻想的な世界観が特徴の本作は、豪華クリエイター陣が開発に名を連ねている。
本稿では、コンポーザー(主題歌・BGM)を担当する削除(さくじょ)氏、キャラクターデザインを務めた夜汽車(よぎしゃ)氏、プロット/ストーリー監修の久弥直樹氏、シナリオを手がけた華南恋(かなん れん)氏のインタビューをお届けする。
聞き手・文/豊田恵吾
コンポーザー 削除氏インタビュー:「フレーズが降りてくるみたいな作り方はもうやめた」
──削除さんが『クライ』シリーズの楽曲を手がけるのは『クライムライト』で3作目ですから、やはり慣れてきている部分も多いのでしょうか。
削除氏:
『クライ』シリーズは3作に携わっていますが、プレイしながら音楽を付けたのは今回が初めてなんです。これまでも事前にプレイはしていたんですけど、今回は環境がかなり整っていたんですね。プレイしながら音楽を付けられるようになったんですね。
リアルタイムに開発データの更新を見ながら、それを動画にしてそのまま音を付けるという作業ができたので、すごくやりやすいんです。「想像でなんとかする」ではなくて、「シーンにバッチリの音がついた」というイメージです。
──リアルタイムでやり取りできたことにより、たとえば「5秒後に振り返るシーンがあったときに、その動きに合わせて曲をはめる」といったことも可能だったのですか?
削除氏:
できました。これまでそういうシーンが必要なときは動画をいただいたりしていましたが、『クライムライト』では実際のゲームで確認できる環境だったんです。
「ここに合わせて音を付けないといけないな」と思ったらもうその場で付けられるので、すごくやりやすかったですね。チェックに出すときも、そのシーンで動画を作って置いておけば、「ここに配置するんだな」と開発側にも共有できるんです。
──なるほど。本作ではコンポーザーでの参加ということですが、具体的にはどのレベルまで担当されているのでしょう。
削除氏:
主題歌とBGMはすべて担当し、主題歌は作詞にも関わっています。ごく一部、ジングルに相当するものもありますが、おおむね『クライマキナ』のときと同じです。
──主題歌のこだわりをぜひ聞かせてください。
削除氏:
こだわりまみれでがんばりました。激アツの内容になっています。PVで一部が流れますが、製品版をぜひお楽しみにしていただければと。
──作詞にも関わっていらっしゃるとのことでしたが……。
削除氏:
歌詞はプロデューサーのたくみさん(『クライムライト』のプロデューサーを務める礒部たくみ氏)とふたりで作りました。
最近の歌を作るときのポリシーというか、「歌はこう作るとよりいいんだな」というゲーム楽曲としての気づきがあって。歌は当然、歌詞が大事なわけです。歌詞があってこその歌なんですが、歌詞が音優先だと意味がないというか、何のための歌詞なのかよくわからなくなってしまうんです。
僕はコンポーザーなので、ゲームの資料を渡されても雰囲気で書くことしかできないわけですよね。だったら「プロデューサーさんにまず文章を書かせよう」と気づき、歌詞のもとになるような文章を書いてもらったんです。
──ゲームを象徴する単語やキーワードではなく、歌詞のようなものだったのですか?
削除氏:
音なしで歌詞っぽく文章を書いてもらったんですね。そうしたらたくみさんの文章がめちゃくちゃうまくて(笑)。
その文章に合わせてメロディを考え、「このフレーズめっちゃいいな」というところをサビにするという作業を行いました。今回のサビは本当にすばらしく、メロディとしてはもちろん、ゲームのワードとしてもすごくいい。
具体的な作業としては、たくみさんが用意してくれたラフをもとに、そこから音楽に合うように文章を再構成していきました。メロディも同時に考えて、埋まらなかったところは僕が考えて足していったので、本当にふたりで作った感じなんです。
ゲームの世界観と合うようにファンタジーでワンダーランドな雰囲気を重視しつつ、いくらか不穏な感じも入れて……。すごく手間をかけたので、完成までに9ヵ月くらいかかりました。
──歌作りに関する気づきがあったとのことですが、何か大きなきっかけがあったのでしょうか?
削除氏:
昨年、ボーカル楽曲を手がけたときに、すごく研究したんですね。
その際、ヒットしている曲は「フレーズのイントネーション感」、「リズムとアクセントとメロがすべて合致」していて、それを実現するには歌詞から作るしかないと感じたんです。
歌詞からメロディを作れば絶対に合うので、そこからバックサウンドを付ければいい。バックサウンド側は音楽理論の知識があればなんとでもなり、そこはBGMも全部自分が担当しているくらいなので自信がありました。
あとは「いかに歌詞自体をよくするか」。ただ、歌詞をよくするにはゲームを知らなきゃいけないのですが、ゲームを作るのは自分ではないので「ゲームをよく知っている人にお願いしよう」という流れになったんです。
──なるほど。ご自身の中での当たり前や常識を一度壊したわけですね。
削除氏:
そうですね。昨年の仕事で大きな変化があって、さらなる実践としての今回の楽曲、という感じです。
──ご自身の中で『クライ』シリーズの曲作りにおいて意識されていることはありますか?
削除氏:
発売ベースで言うと1作目の『クライスタ』が8年前で、『クライマキナ』が3年前になりますよね。けっこう時間が経っているので、自分の音楽作りに対するコンセプトも変化してきているんです。
それもあって、「一貫してこうしています」というのはないかもしれません。ただ、今回はある意味『クライスタ』とは共通点があるんですよ。『クライマキナ』は少し違うので、そちらとは共通点を持たせないようにしているところがあります。
おもしろいことに、実際に音楽を作っていると勝手に『クライスタ』に寄っていくんです。どういう曲が合うのかを確認するため自分が過去に作った曲を置いてテストをするんですが、意外と『クライスタ』の曲を置いてもいけるところがありました。
たとえば、ステージ1のBGMは『クライスタ』を踏襲していて、まったく同じにならないようにしつつも雰囲気は感じられるようになっています。
そういう意味ではシリーズ感を意識していて、『クライ』シリーズのメインテーマではある程度共通して使っているフレーズもあります。
──曲を作る際、ご自身の中でこれまで蓄積されてきたものがうまく合致して浮かび上がってくるようなイメージなのでしょうか。それとも、「フレーズが降りてくる」というものなのでしょうか?
削除氏:
正直なところ、「フレーズが降りてくるみたいな作り方はもうやめた」というか(笑)。
ただ「降りてくるフレーズ」っていうのはやはり強くて、「降りてきて忘れないフレーズは最強」なんです。忘れないっていうのがすごく大事ですよね。フレーズが降りてきたとして、よくみんな「メモを取る」って言うじゃないですか。でも、僕は「メモを取らないほうがいい」と思っているんです。
──それはどういった理由からなのでしょうか?
削除氏:
メモを取ると記録が残るじゃないですか。「メモを取らないと忘れてしまうようなフレーズ」って、けっきょくは弱いんです。なので、あえてメモを取らず、そのフレーズをいつまで忘れないかを確認します。最強のフレーズは1年経っても忘れていなくて、ずっと頭に残っているんです。いいフレーズを思いついたら、「それを忘れないかどうかが振るいにかける作業」だと思って放置します。忘れるようなフレーズは、理論から考えて曲を作ったときにふつうに思い浮かぶんです。
ただ、フレーズが降りてくるというのが「いいメロディだから降りてきた」のか、「そのシーンに合わせたいから降りてきたのか」という話はあります。ゲーム画面を見て降りてきたら、そのまま当てて伴奏を付けてやればいいわけであって、それは理論で考えてメロディを作るのと作業的にはあまり変わらないんです。だから、結局のところ計算だなって思っています。
画面が赤だったら「このキーで」、不穏さを出したいから「スケールをいじって」、飽きさせたくないからこのあとに「すぐ転調して」みたいなものを計算しておきます。プレイしたときに、「最初の30秒がゲームの画面を認識するまでは大事だろう」ということで30秒は画面と合わせますが、1分後は知りません(笑)。
──(笑)。キャラクターから影響を受けることもあるのでしょうか?
削除氏:
今回はキャラに曲を付ける感じではないですね。『クライスタ』ではキャラごとに旋律が決まっていましたが、あれは僕が勝手にやっていたんです。
本作では『クライスタ』のフレーバー、旋律の引用などはあるのですが、それはちゃんと意味があるので、ぜひメロディを聴き比べてみてください。
──最後に、改めて楽曲の聴きどころと、本作の発売を楽しみにされてる方へメッセージをお願いします。
削除氏:
曲はどれもがんばっていますので、全部聴いていただきたいです。いちばんがんばったのはやはり主題歌です。『クライスタ』、『クライマキナ』もイカれた曲がいっぱいありましたけど、あのときは若かったですからね。
『クライスタ』発売から約8年、『クライマキナ』発売から約3年経っています。人間は時間をかけて学び成長する、その進化を見てもらいたいですね。
冷静に音楽を聴き比べると、本作は間違いなく密度が高いはずです。『クライ』シリーズを3作品担当したということで、また新たな『クライ』の音楽の進化を見ていただけたらと思います。
キャラクターデザイン 夜汽車氏インタビュー:「初めてのゲームの仕事で身についた1枚絵ではないという考え方や技術」
──夜汽車さんはゲームの仕事が今回が初めてとうかがいました。どのような経緯でお話があったのでしょうか?
夜汽車氏:
フリューさんからお声がけをいただきました。私はおとぎ話をモチーフにした題材が好きでこれまでも制作していたので、今回のお話をいただいたときはとてもうれしかったです。
実際にゲームに触ったのは体験版配信時だったのですが、私が描いたイラストがそのまま動いていることがうれしいですし、お茶会会場のグラフィックが本当にかわいくて、初めての経験なのですごく感激しました。
──シリーズ3作目ということで、デザインで意識されたことがあればお聞かせください。
夜汽車氏:
『クライスタ』はリウイチさん、『クライマキナ』ではろるあさんがキャラクターデザインを務めていらっしゃいましたので、「ひと目でわかる個性の強い方が担当されている」という印象がありました。私もわりと個性強めな感じなので、本作でお声がけをいただいたのかなと(笑)。
『クライスタ』をプレイしたのですが、まず「キャラクターがかわいい!」というのが第一印象で、『クライムライト』もかわいくダークな世界観だからこそ、衣装の華やかさやフリル感がより一層映えて見えるようにデザインしました。
ただメアリに関しては「アリスとは明確に差をつけたい」というオーダーをいただいたんです。そのため、私としては珍しくストンとしたシルエットのシンプルなデザインにしました。ふだんとは異なるシンプルなアプローチでしたが、とても良い引き算のデザインになったと感じています。

──『クライ』シリーズはタイトルにあるように、「泣く」ところがひとつのキーワードになっていますが、自身のキャラが「泣く」ということでイメージされたことはありますか?
夜汽車氏:
泣くというテーマで描くのは初めての経験でしたので、とても難しかったですね。
泣くという表情差分にも、ちょっと泣いたり、ガチで泣いたり、うれし泣きしたりそれぞれ細かく作っていて、キャラクターが涙を流すということを意識してデザインしたことがなかったので、すごく悩んで苦労しました。
でもそれぞれの泣き方にも性格や個性が反映されたんじゃないかな、と思っています。
──もっとも重視されて描いたのはどういったところなのでしょうか。
夜汽車氏:
ベースになっているのが『不思議の国のアリス』の世界観ですので、ご存じの方が世界中にたくさんいらっしゃる作品ですよね。
あの世界観を大切にしてキャラに落とし込みつつ、『クライ』シリーズを継承したキャラクターでもあり、新規性を感じられるデザインを意識しました。
また、作中のデザインにはちょっと不穏な「見立て」の要素も仕込んでいます。
たとえば、白兎のお腹から見えている綿を内臓っぽく見立ててみたり礒部さんといろいろとご相談しながら、グロテスクになりすぎない絶妙な塩梅でダークな要素をデザインに落とし込んでいきました。
直接的な怖さを見せるのではなく、一見するとかわいらしい全体のデザインの中に、よく見たら不気味とか違和感を潜ませるアプローチを取り入れたことで、いびつでダークな世界観をより表現したい意図があります。
──実際にゲームで泣いているシーンを見たときの感想はいかがでしたか?
夜汽車氏:
PVを見て自分の想像以上に泣き顔がかわいいし、悲痛さも伝わってきて、やっと泣き顔の表現方法の正解を自分も見つけられたように感じます。
──キャラクターを生み出すうえでもっとも難しかったのは?
夜汽車氏:
デザインでいちばん頭を悩ませたのは、やっぱり主人公のアリスでした。
最初に描いたキャラクターだったので、顔の描き方や色味をどうするかでかなり迷いました。じつは設定資料で描いたアリスよりも、実際のゲーム画面のアリスのほうが幼い印象になっています。
ゲーム内で動くアリスの初稿の段階で、シリーズの重圧も感じてしまってたのか、自分のタッチや方向に悩んでしまって、開発の皆さんにご相談しました。その際に「これまでの作品は意識せず夜汽車さんのタッチや色使いを全開にして描いてください」と背中を押していただいて、そこから吹っ切れて描き直して、いまのアリスに着地することができました。
最初の1キャラが着地できればあとは流れに乗って描けた感じです。絵描きって長年描いててもプレッシャーで迷走するので、アドバイスはありがたいですね。
──本作では『不思議の国のアリス』がモチーフとしてありますが、イメージとしてはつかみやすかったのでしょうか?
夜汽車氏:
もともと私が手がけているデザインと親和性がありましたので、デザイン自体はすんなりと。アリスに関しては、3つほどデザイン案を出し、その中からフリューさんに選んでいただきました。そのデザイン案をもとに髪型を5つぐらい用意して、現在のアリスを決定した感じです。
──ゲームという媒体ですから、動くもの、立体になるものとして、デザイン方法を変えたところなどはあったのでしょうか?
夜汽車氏:
そこはとくに意識せず、ふだんどおりの進め方をしました。
ただ、本作をプレイさせてもらったときに、キャラクターの表情が豊かで、すごく動くことには驚きました。ゲームを遊んでいただいたときに、共感できるキャラクターになっていると思います。
モンスターのデザインも、世界観と地続きのような形でデザインさせていただきました。どのモンスターも個性が強くなっていますので、そちらも楽しんでいただければと。
──モンスターのデザインも初めての経験だったのですか?
夜汽車氏:
モンスターも初めてデザインしました。ですので、最初から最後までずっと楽しみながら描くことができました。体験版でも出てくる、トランプ兵のモンスターを最初にデザインしています。
──モンスターは「どう動くのか」をイメージしながら作るのがより難しそうですね。
夜汽車氏:
ゲームのお仕事が初めてということで、ゲームの中でどう動くのかがまったく想像がついていなかったんですね。ですので、磯部さんにいろいろとアドバイスをいただきました。
全体的に見どころを作るというか、上半身側を見たとき、下側を見たときなど、どの方向から見てもそれぞれバランスよくなるように意識しています。
あとは、ボスのボツ案がけっこうありまして(笑)。5つほどデザインした中から選んでいただいたのですが、描くのは難しかったですね。ラスボス以外はけっこうすんなりと描けたのですが、ラスボスは本当に苦労しました。
──デザイナーという職業はインプットも大事だと思うのですが、ふだんからアンテナを張るように意識されているのでしょうか?
夜汽車氏:
いろいろなものを観察するようにしています。歩いているときもそうなので、一種の職業病みたいな感じかもしれません。
ただ街を歩いていても目が行くところがあるんですよね。資料を見るだけではなく、外に出てさまざまなものを見て……。とくに、色をチェックしていますね。
今日もここへ来る途中にずっといろいろなものを見ていましたし(笑)。
──ゲームという媒体ならではの作業で印象的だったことがあればお聞かせください。
夜汽車氏:
ミニキャラクターのの三面図も描いてるのですが、それがすごく難しかったです。先ほどお話したように、ゲームですからさまざまな方向からキャラクターが見られるんですよね。
いままでの仕事では「キャラクターがくるっと回る状態」を想像することがなかったんです。左右対称ではないキャラクターだと、「こっちを向いたら逆を向いてるのか」といった気づきもありました。
ですので、デザイナーとしてひと皮剥けた感じがします。ただ1枚の絵を描くだけではなく、ゲームに沿った絵を描くという考え方や技術が身についたというか。とても勉強になったので、今後に活かしたいですね。
──最後に、本作の発売を楽しみにされてる方へメッセージをお願いします。
夜汽車氏:
本作では世界観を重視しながら、登場キャラクターとモンスターのデザインを担当させていただきました。より濃く深い世界観になっていると思いますので、ぜひゲームを遊んでいただけたらと思います。
プロット・ストーリー監修 久弥直樹氏インタビュー:「シリーズで『クライムライト』がいちばん尖っているかも」
──久弥さんは『クライ』シリーズすべてを手がけていますが、本作でもっとも重視したことはどういったところだったのでしょうか?
久弥直樹氏(以下、久弥氏):
『クライムライト』では自分の中にかなり明確にラストシーンのイメージがあり、そのラストに向けてどんなキャラクターたちが登場し、どんな物語を繰り広げていくのかを考え、構築していくという方法でプロットを作成しました。そのラストシーンをどうすれば印象深く伝えることができるのか、という部分にいちばん重点を置いています。
──本作はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』がモチーフになっていますが、意識されたことがあればお聞かせください。
久弥氏:
本作のビジュアルを『不思議の国のアリス』で統一するということに関しては、じつは最初お話しをいただいたときすでにフリューさんの中で決まっていて、そのことが前提のスタートになっています。
ただ、主人公がアリスモチーフであることやビジュアルイメージ以外は自由に設定して書いてください、とのことでしたので、逆にストーリーやプロットではそこまで『不思議の国のアリス』にこだわらず、むしろあまり意識しすぎないように心がけました。
──『クライ』シリーズ3作目ということで、やりやすかった部分、逆に難しかった部分があればお聞かせください。
久弥氏:
『クライスタ』と『クライマキナ』を比べていただけるとわかるように、もともとあまりシリーズっぽくないこともあり、『クライ』シリーズだからという理由で特別意識はしないようにしています。
──「『クライ』シリーズらしさ」をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか?
久弥氏:
『クライ』シリーズは自分の中で絶対にこうだ、という明確な決まりがあるわけではなく、むしろプロット作成中にフリューさんから「『クライスタ』のようにキャラクターの心をもっと掻き乱してほしい」と要望があって、なるほどと気づかされることもありました。
物語の捉え方は人それぞれですが、ただ、「クライ」に涙を流すという意味があり、それがシリーズ最初期の原点でしたので、その部分は大切にしていきたいと考えています。
──『クライ』シリーズは心の成長がシナリオで表現されている印象があります。『クライムライト』はどのようなテーマを掲げてプロットを構築されていったのでしょうか?
久弥氏:
本作のテーマはネタバレになってしまうため、まだはっきりとはお答えできないのですが、主人公のアリスはあまり「泣く」タイプでも「叫ぶ」タイプでもなく、だからこそどんな成長を見せ、どんな『クライ』シリーズになるのかを見守っていただけるようなプロットになっているかと思います。
──『クライ』シリーズは尖った表現が多い印象があります。『クライムライト』で重視した表現があればお聞かせください。
久弥氏:
たしかに……もしかすると3作品の中で『クライムライト』がいちばん尖っているかもしれません。設定やプロットの時点でもかなり尖らせていたつもりだったのですが、それをシナリオの華南さんがさらに尖らせたことでなかなかの内容になっています。見どころをいまお話しするのは難しいので、そこはぜひゲームをプレイしてたしかめてみてください。
──久弥さんのプロットをもとに華南 恋さんがシナリオを書き上げたということですが、どのようなやり取りを経て完成まで導いていったのでしょうか?
久弥氏:
こちらで書かせていただいたプロットやキャラの設定をもとに、華南さんにはかなり深い部分まで内容を掘り下げていただき、さらに独自の解釈も加えていただいて、本当に魅力的なシナリオになっていると思います。
そのあとは、執筆いただいたシナリオに追加や修正のご提案をさせていただいた形になります。
──『クライムライト』ではキャラクターデザインを夜汽車さんが手がけ、音楽は『クライスタ』、『クライマキナ』に引き続き、削除さんが担当されています。キャラクター、楽曲から影響を受けた部分はあったのでしょうか?
久弥氏:
そういえば、フリューさんとの打ち合わせのたびにチェシャのデザインがかわいいという話をしていたことを思い出しました。イラストをもとにイメージを膨らませるというよりは、このキャラがどんなイラストになるんだろうという期待や楽しみのほうが大きかったです。
削除さんの音楽も同様で、削除さんならきっとこのシーンやあのシーンにぴったりな曲を書いていただけるに違いない、という確信しかありませんでした。
──最後に、本作を楽しみにされている方々へメッセージをお願いします。
久弥氏:
いまはまだ物語の内容にあまり触れることができずもどかしいのですが、『クライ』シリーズを遊んでいただいたユーザーの方の期待を裏切らない作品になっているかと思います。みなさんのもとにお届けできるそのときまで、『クライムライト』を楽しみにお待ちいただけるとうれしいです。
シナリオ 華南恋氏インタビュー:「ただ悲しいから泣くだけではない。さまざまな理由で、アリスたちは涙を流す」
──久弥さんのプロットがあり、そこからシナリオを手がけられたということですが、どのような点を重視されてシナリオを構築されていったのでしょうか?
華南恋氏(以下、華南氏):
ほかの方のプロットをもとにシナリオを作成する場合、いつも気を付けているのは「プロットの意図」を大切にすることですね。
プロットから実際のシナリオにするうえで、エピソードを膨らませたり、キャラクターどうしの掛け合いを描いていくのですが、その際にもとのプロットでは、この部分はユーザーにどのような感情で受け止めてほしいのか、キャラの見せたい部分はどこなのか、設定を説明するシーンなのか、キャラの絆を深めるシーンなのか、など……。
そういった意図を考えながら、自分なりの解釈もくわえ、シナリオを執筆していくことは苦労することもありますが、楽しいです。
物語の展開や、キャラクターのセリフなどで詰まることもありますが、そういう場合はプロット・設定を読み返して、キャラクターどうしにゲームとは関係ないやりとり(いっしょに食事に行くならどこに行くとか、服を見立ててあげているとか)を考えることで、キャラの理解と解釈を深めたりもします。
逆に自分が書いたプロットを他のライターさんに書いてもらう場合などもありますが、その場合はなるべくシーンの意図やキャラの心情、感情動線などがわかりやすくなるように心がけています。
──久弥さんのプロットを読んでの感想と、シナリオに落とし込むうえで、もっとも大事にされたことをお聞かせください。
華南氏:
まず、美しい物語だな、と感じました。
登場する女の子たちが背負っている想いや願い、そしてそこから生まれてしまう罪。彼女たちが受ける罰と、それぞれがその罪と向き合っていく過程……それらがとても丁寧に描かれていました。
だからこそ、シナリオに落とし込む際は「物語を語るため」になりすぎないように気をつけました。
物語のためにアリスたちがいるのではなく、アリスたち少女の生き様、紡ぐ絆、重ねていく想い、それが結果として物語になっていくように、キャラクターの心情や、やりとりをできる限り丁寧に描こうと思いました。
そして、ゲームである以上、誰よりもまずプレイヤーキャラクターである「アリス」を魅力的に描くことを重視しています。
アリスはちょっとクセにある少女ですが、そこがとてもかわいらしい子だと思っています。不思議の国で出会うさまざまな出来事や仲間、そして敵に、アリスは何を感じて、どんな反応をして、どんなふうに泣いて、どんなふうに笑うのか……。アリスの気持ちはどんなふうに動いていくのが「アリスらしい」のか。
久弥さんのプロットをもとに、精一杯「アリス」と対話して、描き上げましたので、どうぞ、アリスをかわいがってくださいませ。
──ゲームという媒体でのシナリオ作成は、ほか媒体でのシナリオ作成とは異なる部分があるのでしょうか? ゲームという媒体だからこそ、意識されたことがあればお聞かせください。
華南氏:
ゲーム、アニメ、マンガ、小説など、媒体が違うと、読む人が得られる情報量や情報の種類に差がありますので、そこはどんな媒体でもその媒体ごとに適した描き方ができるように気をつけています。
ゲームでいえば、何よりも「立ち絵」、「声」がありますので、表情や声の演技について書き込むことはほぼありません。声優さんへの演技希望や、立ち絵の演出希望などを枠外に書くことはありますが、ゲーム画面のテキストに表示されることはないです。
基本的にアニメーションは特別なシーン以外にはないのと、今回は地の文をあまり使わず、セリフが主体で物語が進んでいくため、なるべく「セリフ」と「SE」だけで何が起きているかわかるように気をつけています。
あとはゲーム画面になった際の見やすさでしょうか。改行位置やセリフの文字数で、「なんか毎回テキストウィンドウがびっちり」みたいにならないようにはしてます。会話のテンポもよくしたいので。
──過去の『クライ』シリーズの物語は意識されましたか? シリーズ作から踏襲すべきこと、変えなければいけないことをどう定められたのでしょうか?
華南氏:
ここはちょっとネタバレになってしまうかもしれないので、どこまで語っていいものなのか難しいのですが……。
『クライ』シリーズの物語は意識して執筆しています。変えなければならないこと、というのは定めていません。
けれど『クライ』シリーズの「泣いて強くなる」、「女の子どうしの友情」、「罪と罰」といったテーマ性を踏襲することは守りながら、物語を紡ぎました。
──『不思議の国のアリス』がモチーフになっていますが、原典のなにを取り入れ、なにを変えようと考えられたのでしょうか?
華南氏:
プロットにもとからあった部分以外では、原典から取り入れた部分は「言葉遊び」的な部分でしょうか。原典にも韻を踏んだり、言葉遊び的な要素が多々あるので、アリスたちの会話にそういった雰囲気やテンポ、軽妙さを取り入れたいな、と思いました。
もともと、グリム童話やマザーグースなど、おとぎ話にはダークな要素があることが多いと感じていますので、シナリオを構築するうえで難しさはとくに感じませんでした。
かわいいけどこわい、美しいけど恐ろしい。それらの要素は「女の子」の中では、違和感なく同居する要素であり、魅力です。ゴシックロリィタや幻想文学など、女の子の持つメルヒェンにはある種のほの暗さを伴うものがあり、影があるからこそ、光はより強く輝く。そういったコントラストが生み出されると思います。
──「泣く」というシリーズ共通のテーマに関して、意識されたことがあればお聞かせください。
華南氏:
「泣く」というのが本シリーズにとって重要なことであるため、すべてのキャラクターに対して、「涙」を流すシーンは意味があり、印象的になるように心がけました。
ただ悲しいから泣くだけではない。さみしさ、辛さ、後悔、愛しさ、切なさ、絶望、懺悔……さまざまな理由で、アリスたちは涙を流します。
それは再び立ち上がり、歩き出すため。もっと強くなるため。「涙に意味を持たせたい」、それを考えながらシーンを構築しました。
──シナリオ執筆にあたり、キャラクターデザイン、楽曲からインスピレーションを受けたものはあったのでしょうか?
華南氏:
まずは「かわいい!」、「きれい!」ですね。
もともと、ゴシックやロリィタ、スチームパンクファッションなどが好きなので、キャラクターデザインを見たときは、ものすごくテンションが上がりました。キャラデザでいちばん好きなのは、マッドです。
キャラクターイメージから受けた影響はあります。キャラの掛け合いなどで、とくに影響が強いですね。「この子、こういう顔でしれっとこういうこと言いそう」、「こういう趣味があったらおもしろそう」みたいな感じです。
音楽は、執筆の際にふんわりと「このシーン、こういう曲かな」というイメージをすることはあります。イメージに近い曲をクライスタで聴いてから執筆したり、ということもしていました。
──お話できる範囲で、シナリオの見どころをお聞かせください。
華南氏:
個人的に推しなのは、やっぱりアリスとメアリの関係性です。
不思議の国で出会った、まったく違うふたりの女の子が、少しずつ互いのことをわかりあい、お互いの罪を知り、絆を深めていく過程を見届けていただけますと幸いです。
あとローグライトということで、死に戻りの際にも過去を思い出すようなシーンが発生するのですが、アリスのことをいっぱい知ってほしいので、できたら全部見ていただきたいです。
──最後に、本作を楽しみにされている方々へメッセージをお願いします。
華南氏:
ようこそ、不思議の国(ワンダーランド)へ。
ここは罪人(つみびと)のみが訪れることのできる死者の国。
罪に与えられるのは罰だけなのか、罪を犯してでも叶えたいと望んだ願いの行く末は──。
アリス、メアリ、チェシャ、マッド、マーチ、シロ……彼女たちの願いと罪のたどり着く先を、どうか見届けてくださいませ。
涙の果てには、愛があると信じて──。
あなたの未来に、自由と希望があらんことを。













