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「世界を救う」よりも、「俺が恋した、死体の女の子を生き返らせる!」──『バイオ』のふたりが作るピュアなゾンビの恋物語は、“今の若者”の願いと呼応していた。『ステューピッド・ネバー・ダイズ』プロデューサー・小林裕幸氏/ディレクター・佐々木栄一郎氏インタビュー【TGS2026】

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TGAの反響が良すぎて「ジュリアが操作できる」と誤解された。設定・ストーリー・セリフが先、絵は後

──反響は体感的にどんな感じだったんでしょうか。

小林氏:
去年の12月The Game Awards【※】での発表の際、めちゃくちゃ反響がよかったんです。反響がよすぎて、ヒロインのジュリアがプレイアブルキャラだと思われてしまったんです。これはまずいと思いました。

※The Game Awards
毎年12月に開催される、世界的なゲームの祭典・授賞式。新作の発表やトレーラー公開の場としても注目される。

なので、その誤解を解いていかなければならないと考え、3月のファーストトレーラーでは、一切喋らないし動かないという状態を見せて「もう死んでるよ」と。インタビューでもずっと「ジュリアはプレイアブルキャラではありません」と伝えていました。

──他のインタビューでも、ヒロインのデザインはグローバルに人気になるよう何度も何度もブラッシュアップしたと伺っています。実際に世界中のユーザーに気に入られ「この子も操作できるんだ」と期待されるほどになったわけですが、どのようにして、皆に愛されるデザインにたどり着いたのでしょうか。

小林氏:
我々としては、すべてのキャラクターを好きになってもらいたいなと思っているんです。バイクガールのベッシーとか、アセリノもそうだし、ゴイルも、博士も、みんな個性的に描けていて、好きになってもらいたいと思っています。「嫌味がないキャラ」にしたいよね、と。

『ステューピッド・ネバー・ダイ』小林裕幸氏・佐々木栄一郎氏インタビュー:物語のエンジンは、“個人的な欲望”_009
ベッシー
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アセリノ
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ゴイル
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フランク博士

ジュリアは女子大生という設定で、みんなに慕われて、友達が多いような子にしたかったんです。チアガールでアメフトを応援しているけど、スナイパーライフルが使えて、射撃のコンテストで優勝できる。スナイパーライフルの使い方はおじいちゃんに教えてもらって、おじいちゃん子で──そういったふうに積み上げている設定なんです。

じつは、設定とストーリーが先で、絵は後なんです。キャラクターの絵が先に存在する作品もあると思いますが、うちはどちらかというと設定が先でした。

今回作った順番でいうと、設定、ストーリー、セリフが先で、絵に行きました。デイビィも先に「こんなキャラクターの性格のゾンビにしよう」と決めてからデザインにしたので、文字が先だったんです。

『ステューピッド・ネバー・ダイ』小林裕幸氏・佐々木栄一郎氏インタビュー:物語のエンジンは、“個人的な欲望”_013
ジュリア

主題歌はデイビィとジュリアのデュエット。プロフィールを見ずに「声だけ」で選んだオーディション

──ところで、歌についてもお聞きしたいのですが、製品版が発売された後にも新しい曲が出てくる予定はあるのでしょうか?

小林氏:
本作にはオープニングとエンディングに、オリジナルの歌モノの楽曲があるんです。サブスクと通常の販売も含め、発売前に音楽方面を展開しています。歌も、すごく納得のいく出来になりました。

佐々木氏:
そうですね。

小林氏:
エンディングの楽曲はさすがにゲームができてから制作しましたが、オープニングが「ゲームができる前に主題歌を作っちゃった」という感じでした。主題歌をデイビィとジュリアが歌っているような感じでデュエットにしたかったので、オーディションでデイビィっぽい歌い手を探しました。

佐々木氏:
そして、その人に、デイビィっぽくなるまでめちゃくちゃ練習してもらいました。

小林氏:
歌手も10人ぐらいの候補の方から、デイビィっぽい方をオーディションで選んだんです。かつ、デイビィの気持ちを表現した歌詞を作って、それを練習してもらったりしました。ジュリアも同じように選考して、けっこう厳選に厳選を重ねて歌手の方は決定しました。

佐々木氏:
「デイビィはもうちょっと青臭く歌ってください」みたいな感じです。

小林氏:
デイビィのキャラクター的にも、歌がうますぎてもダメですしね。

『ステューピッド・ネバー・ダイ』小林裕幸氏・佐々木栄一郎氏インタビュー:物語のエンジンは、“個人的な欲望”_014

──つまりオーディションの時点でも、デイビィに近い青臭い演技を求めていたわけですね。

小林氏:
声質とかボーカルに求めるものはそうです。だから見た目は気にしない。僕らは歌手の方の見た目を知らないんです。声しか知らない。あえてプロフィールを見ずに、声だけで選考しました。

──たしかに、ユーザーも声でしかわからないですものね。面白い採用方法ですね。

小林氏:
ジュリアをイメージした歌手の方は、最初から上手でしたね。元気な方で、練習はそんな必要なかったです。

──もともと何か活動されていた方なんですか?

小林氏:
元々プロとしてそれぞれソロで活動されている方をオーディションで選んで、本作のためのユニットとして歌っていただいているので、初ユニットなんです。

──オーディションには何人ぐらい集まったんでしょうか。

小林氏:
前段階として何人いたかはわからないのですが、我々は10人ぐらいの方の声を聞きました。サウンドの制作会社さんに「こういうことをやりたいです」とお願いして、そこで探してもらったんです。

『ステューピッド・ネバー・ダイ』小林裕幸氏・佐々木栄一郎氏インタビュー:物語のエンジンは、“個人的な欲望”_015

「あれ、ジュリアは死んでないの?」トレーラーの謎と、スマホデータで「片思いを加速させる」仕掛け

──ちなみに、彼の恋は成就するものなんでしょうか……。

小林氏:
それはネタバレになっちゃうから、言えません!(笑)。お楽しみにしててください。

本作については「死んでいるジュリアを生き返らせるため」という物語でずっと紹介してきましたが、このあいだ9月4日に公開したトレーラーは、ジュリアがハンドガンでデイビィをヘッドショットしているんです。なぜ撃っているのか、という部分は、ユーザーのみなさまの想像にお任せしようと思い、何も伝えていません。

ヘッドショットのシーンも、ジュリアの素敵な笑顔も映し出されますし、最後にはジュリアがどこかに吹っ飛ばされながら「デイビィ!」「ジュリア!」という、よくある王道のハリウッド映画みたいなやりとりも入れたりしています。

「あれ、ジュリアは死んでないの?」というクエスチョンになるトレーラーを作った、という感じです。どうなるかは発売を楽しみにしていてください。

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(画像はStupid Never Dies | Third Trailerより)

──個人的には、彼がずっと死体を愛し続けた結果、どうなってしまうのかを想像してしまうんです。

小林氏:
そうなんですよ。人って、知れば知るほど好きになるじゃないですか。だから、ストーリーを考えるときに「死体を愛する」ってやっぱりありえないんです。

でも、デイビィは純粋に見た目だけでジュリアに惚れる。そこから片思いを加速させるには、彼女を知らないといけませんよね。

そこで、生きていた時のスマホデータを使うことにしました。デイビィは最初、彼女の名前を知らないんです。スマホデータを解析して「ジュリアっていう名前なんだ」「こんな写真が、こんな自撮り動画があった」「こんな友達とのやり取りがあった」そうして、どんどんジュリアを知っていく。

こうして、スマホを通してジュリアを知るんです。

もうひとつ言うと、ティザー映像で先に動いて喋っているジュリアを出したのは、ユーザーの皆さんにも彼女を好きになってもらうためなんです。

いきなり凍っていたら好きになれませんから、元気に歌って素敵な笑顔を見せるジュリアを出して、「この子が死んでいるなら、生き返らせたいよね」と思っていただきたい。ユーザーのみなさんの感情を持っていくための、まず生きている姿を見せるという作戦込みで、ミュージックビデオを作ったというのもあるんです。

──こんなにかわいくて元気な子が……ということですね。

小林氏:
「死んでいるのを助けたい」とプレイヤーの方が思うには、やっぱり動いている姿を見せなければいけません。

──その喪失感から「助けたい」というデイビィの気持ちに、ユーザーの気持ちを重ねるための仕掛けなんですね。

小林氏:
だから、タイトル画面からミュージックビデオが見れるんです。この映像はYouTubeでも公開しています。先に動いている姿を見せないと、ゲームの最初には死んでいる、凍っている姿しか見えないので。

デイビィのモチーフはグリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロング。「憎めない、かわいい」ゾンビとCEROの線引き

──好きになってもらうという点では、デイビィのビジュアルにも愛嬌がありますよね。ゾンビは一般的におどろおどろしい、腐敗しきったイメージがありますが、ゲロを吐いたりしても憎めない、かわいらしいというか。どこにこだわって、こういった愛着を持てるようなデザインにしたのでしょうか。

佐々木氏:
そこは重要視したポイントです。

デイビィのデザインモチーフは、僕が大好きなパンクロックバンド、グリーン・デイのボーカルのビリー・ジョー・アームストロングなんです。彼はおっさんになった今も現役でやっていますが、いつ見ても「ガキだな〜!」というか……憎まれ口ばっかり歌っているんですけど、「憎めないな、なんかかわいいな」と思うんです。なので、彼のそこらへんのテイストを頂戴しています。

表情ひとつとっても、めちゃくちゃ何度も何度もアーティストにリテイクを依頼しました。

小林氏:
顔は難航した……! 表情は大変だった……。

佐々木氏:
「ここちょっと違うな〜……」みたいな。大変でしたね。

『ステューピッド・ネバー・ダイ』小林裕幸氏・佐々木栄一郎氏インタビュー:物語のエンジンは、“個人的な欲望”_017

──表情がすごく豊かですよね。ジュリアを見つめてのろけている時の顔とか、すごく人間らしい。表情を専用に調整するアーティストさんがいらっしゃるんでしょうか?

小林氏:
表情集を作って、それを動かしています。フェイシャルアニメは、役者さんが動いているのを、さらに手でアニメーションを足して動かしています。

ある意味ディズニーアニメみたいに誇張させないといけないのですが、単純に人から表情を撮っただけだとあんな表情はできません。フォトリアルの、ただの本当に実写の顔だけだと足りないので、アニメーターさんが手を入れてやってくれています。

──ちなみに、表情は何種類ぐらいあるんでしょうか。

小林氏:
カットシーンは役者さんに本当にセリフごと喋ってもらって、顔を全部撮っているんです。それをカットシーンで再現しているので、パターンというよりも撮ったものをカットシーンごとに使っているようなイメージです。

ゲーム的な表情パターンだと、喜怒哀楽いろんな種類があります。

佐々木氏:
基本的には、それをセリフとか状況に合わせていい具合に混ぜたりしています。

小林氏:
基礎パターンがあって、それをブレンドして表示したりしています。

『ステューピッド・ネバー・ダイ』小林裕幸氏・佐々木栄一郎氏インタビュー:物語のエンジンは、“個人的な欲望”_018

──表情を監修する際には「もっとグリーン・デイっぽく!」といった指示もあったりしたのでしょうか?

小林氏:
デイビィは佐々木の好みだから、よっぽど変なことがなければ、僕はもう任せていました。

佐々木氏:
エロとグロを気をつけていれば大丈夫だったので……。「エログロは絶対ダメ、CERO Zにはするな!」とは言っていました。

──下ネタはやるけど、そこは守るというラインだったんですね。

小林氏:
はい。もともと、CERO Zにはしたくなかったんです。

──なるほど、そのバランス調整は結構難しいと思うのですが、いかがでしょうか。

小林氏:
新規IPでZはかなり尖っているので……そこはちょっとね。CERO Dを目指していたのですが、本作は意外とグラフィックがポップなのでCERO Cの判定が出てよかったです。

──それこそ血の色も、赤というよりは絵の具みたいですよね。

小林氏:
演出によっては、赤の血も出たりします。でも、グロテスクにはしてないですね。

佐々木氏:
鮮血な感じにはしていないんです。

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──日本の皆さん、世界中の皆さん、楽しみにしている方々、これから知っていく皆さんに、一言メッセージをお願いします。

小林氏:
体験版の配信が、やっとできました。

ゲームショーなどで試遊台を出していないのには、理由があるんです。このゲームは新しいゲームなので、10分や15分だと、面白さと新しさがわからないんです。体験版では2時間遊べるので、そこでじっくりこのゲームのアクションのシステムや新しさ、世界観、アート、演出、サウンドを味わってもらいたいです。

ぜひ体験版をプレイして、面白かったらぜひ製品版を購入してくださるとうれしいです。よろしくお願いします。

佐々木氏:
僕は、ゾンビが好きなやつらが作った「新しいゾンビの世界観」、価値観を楽しんでいただきたいです。「いい意味で古き良き時代のアクションゲームの匂いがするね」って、いろんな方に言ってもらうんです。これを僕は褒め言葉だと受け取っています。

「古き良き」なかでもユニークな成長やいろんな遊びが詰まっている、まさに新しいアクションRPGだと自信を持って言えるゲームになったと思いますので、ぜひ遊んでみてください。

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ゲームショーには試遊を出展せず、開発陣があえて2時間の体験版を強く勧めるのは「10分、15分では、このゲームの面白さも新しさもわからない」という理由だ。アクションの手触り、世界観、アート、演出、サウンドを、腰を据えて確かめてほしいという誘いでもある。

肝心のデイビィの恋の結末は、明かされなかった。ジュリアがデイビィを撃つトレーラーの意味も「あれ、ジュリアは死んでないの?」という問いのままだ。

本作は体験版が配信中、近日中にパッチの配信も予定しているとのことだ。

ゾンビ好きが作った、新しいゾンビの価値観。その手触りと伏せられた恋の行方は、10月22日の発売とその先でたしかめてほしい。

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編集・ライター
『MOTHER2』でひらがなを覚え、ゲームと育った生粋のRPG好き。キャラメイクや物語が分岐するTRPG的な体験を好む生態。『Divinity: Original Sin 2』の有志翻訳を経て、『バルダーズ・ゲート3』を独力で全訳し完走。『ゴースト・オブ・ツシマ』の舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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