まずはこちらの動画を見ていただきたい。
売れない芸人がスマブラ「下スマ」再現→10万RTされて人気急上昇。話題のガーリィレコードにネタ作りの秘密やゲーマー歴を聞いてみた【インタビュー】https://t.co/CWNy6tTcPX pic.twitter.com/xQPTFZ5ktf
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) July 18, 2017
※動画は改めて取材の際に撮影したもの(2017年7月18日 20:00に修正いたしました)
白手袋をカメラの前に動かして『大乱闘スマッシュブラザーズ』のマスターハンドを再現し、それに対抗して思いっきり開脚し、まったく意味のないフォックスの「下スマッシュ」をやる――。
今年3月、ファンによってTwitter上に投稿されたこのネタは、多くの人の笑いを、そして懐かしさを誘って爆発的に拡散し、実に10万以上もRTされた。
このネタをやっているのが、お笑い芸人「ガーリィレコード」だ。コンビを組むのは、ツッコミ担当のフェニックスさんとボケ担当の高井佳佑さん。いずれも1992年生まれの24歳。マスターハンドがフェニックスさんで、開脚しているのが高井さんだ。
ゲームに関するマニアックなネタづくりに日々取り組むガーリィレコードのふたり。いったい何が彼らを駆り立てるのだろうか? 彼らのゲーム愛について尋ねてみた。
取材、文/透明ランナー

最初は全然ウケなかった“ゲームネタ”

電ファミ編集部でもガーリィレコードさんと同世代が多いので、きっとやってきたゲームも近いだろうと思って、今日は楽しみにしていたんですよ。3月のツイート、めちゃくちゃ伸びてましたね。

あれもう4年前のネタの動画なんですけど、なぜかファンの方がこのタイミングで上げてくれて突然広まって。実はあのツイートが広まるまで、ゲームネタはほぼ封印してたんですよ。マジでパッタリ。

えっ、そうなんですか?

今は高井が藤原竜也さんのモノマネをするというネタをメインでやっていて。「デスノート漫才」とか。今年のニコニコ超会議にも「藤原竜也芸人」【※】として参加してました。
https://twitter.com/kurutteyagaru/status/875213740840329216
※藤原竜也芸人
ここでは、人気俳優・藤原竜也のモノマネをする芸人らによって結成された「藤原竜也軍団」を指している。メンバーは、ガーリィレコード・高井佳佑、ペレ草田、Gたかし、NOモーション・矢野ともゆき、乙・島山ノブヨシ。ニコニコ超会議2017にも登場し話題となった。動画は実写版『カイジ』のワンシーンのモノマネ。ちなみに高井氏のモノマネは、藤原氏も公認している。

なのでぶっちゃけゲームネタはもうだいぶ忘れてました。

マジで忘れてましたね。

ええええ(笑)、そんな。

たまーにやってましたけど、ネタじゃなくて一発ギャグ的な感じで。なので今年の3月にあのツイートがバズったときは、マジでびっくりしました。なんで今? みたいな。

地元の友人からも「見たよ!」って連絡がめちゃくちゃ来て、慌ててTwitter見たら3万リツイートくらいいってて、「何これ?バズってるじゃん!」と思ってひたすら焦ってました。
【全く意味のないガノンドロフ下スマッシュ】 pic.twitter.com/KujPlMbKeo
— ガーリィレコード フェニックス (@gr_phenix) March 31, 2017
※ガーリィレコード人気ネタ1:ガノンドロフの下スマッシュ
バズったツイートと同じく「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズより、ガノンドロフの下スマッシュ。技を出す前のファイティングポーズにも注目。
バズっても仕事は増えなかった…

最終的に11万リツイートまでいきました。Twitterのフォロワーもずいぶん増えたんじゃないですか?

そうですね。僕は1万9千人くらいまで増えました。……高井は?
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僕は……3900人……少ない……。

めっちゃ格差あるじゃないですか(笑)。

もう僕は駄目かもしれません。

いや、なんでネガティブなんだよ! 一応フォローをしておくと、動画ネタを載せてるのが僕のアカウント(@gr_phenix)だからです。
https://twitter.com/gr_phenix/status/848521852313939969
※ガーリィレコード人気ネタ2:『ゴールデンアイ 007』のチョップ
『ゴールデンアイ 007』にてしばし行われる、銃火器を使わない“チョップ縛り”対戦などで起きる微妙なすれ違いを再現。FPS視点と、やられた時の流血の工夫も見所。

最近はネタの動画を投稿するたびに1万RTくらいいくようになってますよね。 ゲーム関連の仕事バンバン来てるんじゃないですか?

いや全然ヒマです。こういう本格的なインタビューは、電ファミさんが初めてですね。
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ウェブメディアの取材めちゃくちゃ受けてるのかと思ってましたよ。それではせっかくなので、いろんな話を聞いていきたいと思います。
下スマのやりすぎで股関節が限界

と言いつつ、ゲーム関連の仕事は数少ないながらもあります。この前「ウメブラ」【※】っていうイベントに呼ばれました。ガチのスマブラの大会だと、めっちゃ細かいテクニックがすごくいっぱいあるんですよ。
ガーリィレコードのお二人来場中!会場中心のYogiboスペース横にて対戦可能です! pic.twitter.com/XvbhAdxHuf
— ウメブラ/関東スマブラオフ大会 (@UMBRHP) May 6, 2017
※ウメブラ
2014年から開催されているスマブラの有志大会。当初は小規模なものだったが、その規模は毎年拡大。2017年には500人以上の動員を記録した。(7月18日 19:20修正)

今までやってたスマブラはお遊びレベルだったんだなって、大会でちゃんとしたレベルのゲーマーさんたちと戦って思いました。

で、そのウメブラで、なぜか僕ら専用の対戦台ができてたんですよ。しかもその台だけの特殊ルールが、僕らが下スマッシュしたら相手が即バーストするという「下スマ即死ルール」で。

でもちゃんとみんな落ちてくれるんですよ。俺らが下スマやった瞬間に「ああ~落ちます」って言いながら。しかもそれでトントンか、ちょっと負け越すくらいでした。

いい人たちですね(笑)。

外国人のプレイヤーが来たんですけど、「下スマ即死ルール」をどう伝えればいいのか分からなくて。「ダウンスマッシュ! ダウンスマッシュ! ユーデッド!」みたいな。
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めっちゃ「ホワイ??」って言ってたよね。あんなに不思議そうな「ホワイ?」人生で初めて聞いたよ。

「ユーたち死なないのに何で俺たちは死ぬの?」みたいな。そりゃそうなりますよね。

その大会で参加者の人たちに「下スマやって!」とせがまれて、その動画が大量にTwitterに上げられて、一日で何十回もやりました。
ウメブラでのフォックス下スマッシュ
— ガーリィレコード フェニックス (@gr_phenix) May 10, 2017
高井脚どうしたW pic.twitter.com/UeDnqWlZxc

関節砕けるかと思った……。

一日に何下スマまでが限度か決めたほうがいいって。
【真三國無双 諸葛亮の無双乱舞】#ゲームモノマネ#真三國無双#ずっとなんか言ってる pic.twitter.com/DjueQKjOM2
— ガーリィレコード フェニックス (@gr_phenix) April 17, 2017
※ガーリィレコード人気ネタ3:諸葛亮の真無双乱舞
初期の「真・三國無双」シリーズにて、諸葛亮が「シャッシャッ」と声を上げつつ半浮きでスライドしながら敵をなぎ倒していく技のモノマネ。諸葛亮の半浮き状態は台車で再現。
身体を張ったゲームネタは「和太鼓」のおかげ?

それにしてもガーリィレコードさんって、かなり体を張ったネタが多いですよね。特に高井さん。

そうですね。僕も親や友達から「あれ大丈夫?」って言われるんですけど、なんか大丈夫なんですよね。
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「なんか大丈夫」(笑)。でも、「下スマ」なんて180度開脚してますよね。けど、その柔軟性はどこから来たんですか?

あれは和太鼓をやっていて……。

和太鼓?

はい、和太鼓。

俺、相方だからこのやりとり何回も聞いてるけどマジで意味分かんないよね。「柔らかいですよね?」「和太鼓です」って。

いや、和太鼓って股関節めっちゃ使うんですよ。2時間練習時間があったら30分を柔軟体操に費やすくらいの。なので柔軟は死ぬほどやりました。昔はもっと開いたんですけど。


すごいですけど、なんかもうよく分からないエピソードですね。

誰も和太鼓やってないから知らないし。

「クレムリン」の背中から落ちる動きも危なそうですけど、格闘技とかもやってないんですよね?
【ドンキーコングの敵キャラ、クレムリンがやられる様子】 pic.twitter.com/pmMEej1FKv
— ガーリィレコード フェニックス (@gr_phenix) April 1, 2017
※ガーリィレコード人気ネタ4:クレムリンがやられる様子
『スーパードンキーコング』に登場する敵キャラ「クレムリン軍団」の中でも、比較的大柄な“クラッシャ”がやられる様子を再現。プロレスラーお墨付きの、高井氏の完璧な受け身が見所。

ないです、ないです。僕はもう血をみるのが嫌いなので。でもプロレスラーで芸人もやっている先輩から「あの受け身はプロレスの基本的な受け身で、お前は完璧に出来てる」って言われて。

野生としか言いようがないな。
なんでお笑い芸人を目指したのか?

ガーリィレコードのお二人は、NSC(吉本興業の養成所)の同期なんですよね。

はい。養成所で出会って、2012年にガーリィレコードを結成して、現在6年目です。養成所っていろんな年代の人がいるんですけど、その中で数少ない高卒組という共通点があって。

フェニックスと組む前は僕はトリオで、彼はコンビでやっていたんですけど、何となくはお互いを知っていた感じです。

養成所に入ろうと思ったきっかけはなんですか?

17歳ころまでは普通に工業高校に行って資格をガンガン取って働くんだろうと思ってたんですけど、「自動車整備士は、もう儲からないよ」とどこかで聞いて、なるほどそうかと思って、そのままノリでNSCに入っちゃいました。
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まあ今は車が壊れないからな。

車が壊れないのが悪い。

高井さんは?

高3になるときに小学校の幼馴染に誘われたから、なんとなく行くかって感じで。でも北海道のド田舎なんでお笑いって吉本しか知らなくて、それでなんとなくNSCに入りました。
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高井の田舎、ほんとすごいんですよ。Google マップで見てほしいです。周りマジで畑しかない。

誰も知らないですよね、剣淵町(けんぶちちょう)【※】って。人口3000人しかいないんですが、ここで18年間生まれ育ちました。

「クラッシュ・オブ・クランのタウンホールレベル1の村みたいだな!」(フェニックス氏)

ほんとだ……何もない……。一面が田んぼでもうアメリカか! って感じですね。

旭川のちょっと北なんですけど、札幌とかの人には伝わらない。

ちょっとって、旭川から50kmくらい離れてますよね(笑)。

まあ、北海道の“ちょっと”はそのくらいですよ。
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去年、二人で初めて営業で高井の実家に行ってきたんですけど、ここを高井の親父のトラクターを借りて爆走してました。めっちゃ楽しかった!
ファミ通LIVEがきっかけで始めたゲームネタ

なるほど、ここで高井さんの野性の本能が育ったわけですね。ちなみにおふたりがゲームネタをやり始めたきっかけは何だったんですか?

2013年にファミ通LIVE 【※】の募集があって、高井がもともと1人で一発ギャグとして持っていた「クレムリンの背中から倒れるネタ」をやろうかっていうことになって。
※ファミ通LIVE
「週刊ファミ通」と「よしもと」のコラボによって誕生したニコ生番組。2011年から2014年まで毎週放送されていた。メインMCであるお笑いコンビの麒麟をはじめ、「週刊ファミ通」編集長のカミカゼ長田氏なども出演。お笑いとゲームを中心に、発売前の「週刊ファミ通」のチラ見せや、ゲームにまつわる企画コーナーが用意されていた。

ファミ通LIVEがきっかけだったんですね。最初やったときの周りの反響はどうでしたか?

当時は他の出演者と比べると無名も無名だったので、温かく受け入れてくれた感はありましたね。

初出演のとき2位だったっけ? 惜しかったよな。1位だったら好きなハード何でもくれるって言われてて。ああ~、Wii U欲しかったな……。

欲しすぎてそのあと結局普通に買っちゃったよ。

ちなみにフォックスの下スマは?

最初からなんとなく高井ができたんですよ、開脚。

はい、なんかできたので。
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野生の男ですからね。で、これ手袋つけてカメラに近づいたらマスターハンドいけるなと思って。それでネタができました。
【大乱闘スマッシュブラザーズ ルイージ横B】#ゲームモノマネ#反転横B暴発怖い pic.twitter.com/FsbcmjtI87
— ガーリィレコード フェニックス (@gr_phenix) April 4, 2017
※ガーリィレコード人気ネタ5:ルイージ横B
「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズより、ルイージの横B。アタマからロケットのように突っ込む技で、復帰時など横方向の移動距離稼ぎにも使われる。隙が大きい技だが、高井氏もやはり隙だらけで着地している。終点だったため、壁に刺さらなかっただけマシか。
「友達の数よりゲームソフトの数のほうが多かった」

おふたりとも1992年生まれ、現在24歳ということですが、どんなゲームをやってきたんですか?

一番覚えてるのは『激突トマラルク』【※】ですね。あれめっちゃ面白いですよね。昨日も同期が来て家でやってました。俺アーティストの方のL’Arc~en~Ciel知らなかったもん。ずっとトマラルクの専属バンドか何かだと思ってた。

(画像はAmazonより)

この間初めてやらされたけど、結構面白かったな。

2017年になって現役でやってる人がいるとは……。

あと、「ロックマンエグゼ」シリーズはめっちゃやってました。『ロックマンエグゼ4』【※】って全クリアすると2周目以降は対戦相手が変化して、敵も周を重ねるごとに強くなるんですけど、やりこみすぎてラスボスよりHP高くなっちゃって。

(画像はAmazonより)

やりすぎかよ。

モンハンも通算4000時間はいってますね。次長課長の井上聡さんに比べれば全然ですけど。友達の数よりゲームソフトの数のほうが多かったんじゃないですかね。まあ、友達の方は少数精鋭だったんです。
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そういうのは少数精鋭って言わないだろ。

(笑)。まあ、そのほうが楽しいですよね。

絶対そうですよ。気づいたらまたこのメンツかみたいな。いまだに付き合いあるやつ多いですね。

高井さんはどうですか?

父の影響でスーパーファミコンが家にあって、『聖剣伝説3』【※1】とか『クロノ・トリガー』【※2】とか『ドラクエⅥ』【※3】とか、物心ついた頃からやってました。

(画像はAmazonより)
※2 クロノ・トリガー
1995年にスクウェア(当時)より発売。「FF」坂口博信氏や「ドラクエ」堀井雄二氏、「ドラゴンボール」鳥山明氏らが手がけたRPGゲーム。国内外で非常に評価が高く、後にPS版やDS版なども発売され、スーパーファミコンのオリジナル版同様に人気を博した。
※3 ドラクエⅥ
『ドラゴンクエストVI 幻の大地』。1995年にエニックス(当時)より発売されたRPGゲーム。国内での売り上げは約320万本とされており、爆発的なヒットを記録した。前二作と合わせて「天空三部作」と呼ばれることも。

それらのゲーム、発売当時高井さん3歳ですけど、かなり早い頃から遊んでたんですね。

でも親が買ってきた『ドラクエⅥ』が中古っぽくて、途中でデータが消えちゃうんですよ。ダーマ神殿で転職できるかどうかってところで、いつもデータが消えちゃって。

一番楽しいところじゃん。

だから僕いまだにクリアしたことがないんですよ。ずっとクリアしたいなと思ってるんですけど。

クリアしてないのかよ!
最後に実演してもらった!

では最後に、せっかくなので、電ファミのためにネタを見せてもらってもいいですか?

あー、この床だとどうかな……。実はこの前テレビの収録で、こんな感じのところでネタやったんですよ。


ああ、この床だと痛いってことですか?

いや、僕は大丈夫だったんですけど、床が壊れちゃって。僕、今100キロあるんで。別の角度で3回やってほしいって言われて、3回やったら床が耐えられなくなっちゃって……。

コンクリート砕け散ってましたね。しかも新しくしたばっかりの部屋で。

でもそこは面白かったからセーフみたいな(笑)。

向こうも「うわあ~やべぇ!」とか言ってたけどね。

まあ床が壊れたら、なんとかします(笑)。それではやってもらいましょう。

任天堂が誇る人気シリーズ、「大乱闘スマッシュブラザーズ」より、対マスターハンド戦にて全く意味のないフォックス、下スマッシュ。

いーーーーやっ!!
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