※記事内容の一部に今回のコラボイベントのネタバレを含みます。閲覧する際にはご注意ください。
2025年6月12日より、韓国のゲーム開発会社「SHIFT UP」が手がける人気タイトル『勝利の女神:NIKKE』(以下、『NIKKE』)と『Stellar Blade』によるコラボが開催中だ。
自社タイトル同士のコラボなだけあって、気合も入りまくり。お互いの作品に、それぞれのキャラクターが登場しあう双方向性のものとなっている。
『NIKKE』には、『Stellar Blade』に登場するイヴ、レイヴン、リリーの3名がニケの世界に降臨。新ニケとしてガチャに登場するだけではなく、コラボストーリーも展開されている。
そして、このコラボストーリーで、『Stellar Blade』のキャラクターと同様に物語の中心人物として描かれ、活躍を見せてくれているのが、プリバティというニケなのである。

今回のコラボを記念して、電ファミニコゲーマーでは「コラボイベントで活躍するキャラを演じる声優さん」にスポットを当てたインタビュー企画を実施。
コラボイベントの見どころはもちろん、担当キャラクターへの印象や、演じるうえで意識していることなど、いわゆる“中の人”の目線から、キャラクターの魅力に迫るべく、お話をうかがった。
この記事でお話をお聞きしているのは、声優の竹達彩奈さん。『勝利の女神:NIKKE』屈指のツンデレキャラと言えるプリバティを演じている。
竹達さんといえば、これまで数多くのツンデレキャラを演じてこられた「ツンデレキャラの名手」とも言える存在だ。インタビューの中では、竹達さん自身がツンデレキャラを演じる際に大事にしていることや、特有の難しさについても話が波及していった。
コラボイベントで活躍を見せてくれるプリバディの魅力はもちろん、竹達さんのツンデレキャラ演技論についても語られているため、ぜひ楽しんでいただきたい。
年相応な、かわいらしいプリバティの姿を楽しんでほしい
──現在展開中の『NIKKE』と『Stellar Blade』コラボでは、竹達さんが演じるプリバティの活躍が描かれるとお聞きしています(インタビュー実施は6月初旬)。ストーリーの中でプリバティはどのように描かれているのでしょうか?
竹達さん:
メインストーリーで描かれるプリバティって、「お仕事」と「本来の自分」を切り分けて「軍人としての役割をまっとうしなきゃ」という気持ちが前面に出ている子だと思うんです。
でも、彼女個人の本当の気持ちとしては「困っている人を助けたい」や「もっと親切にしてあげたい」という優しさも持っているんですね。
今回のコラボイベントではその気持ちがあふれ出ていて、彼女の優しさが見えるお話になっていると思います。
──なるほど。演じるうえでも「優しさ」は意識されたんでしょうか。
竹達さん:
そうですね。でも、プリバティはツンデレな子なので、なかなか素直になれないというか……(笑)。
ツンツンはしているんですけど「困っているなら私に任せなさいよ!」みたいにサポートしてあげようとしているのは、演じている側としても感じました。
──つまり、ふだん(メインストーリー)とはちょっと違うプリバティの姿が見れるというわけですね。
竹達さん:
今回のコラボイベントでは、プリバティの感情の起伏のようなものが、わかりやすくセリフの中で表現されていました。
物語自体は切ないお話になっていて、ツラいシーンとかもあるんですけれど、そんな中でも必死に生きるプリバティの一生懸命さが伝わるはずです。
いつも以上にたくさんセリフを収録させていただいたので、場面ごとのプリバティの感情の振れ幅にもぜひ注目してほしいです。
──竹達さんが思う「今回のコラボイベントでプリバティの見どころはここ」というシーンがあったら、ぜひ教えてください。
竹達さん:
お話がひと段落したあとの後日談パートですね。
指揮官といっしょに展覧会にお出かけすることになるんですが、建前上は「命令されたから仕方なく」みたいな振る舞いをしつつ、本人としてはデートのような気持ちでいて……。でも、デートじゃないことに気づいてがっかりしちゃうんです。
その感情の変化が、すごくわかりやすくセリフの中で表現されているので、ぜひ楽しんでいただきたいです。年相応な、かわいらしいプリバティの姿を見ることができると思います。
プリバティは、ニケとして、軍人として葛藤を抱えている
──プリバティは『NIKKE』リリース初期から登場しており、演じる竹達さんとのお付き合いも長いものとなっています。最初に収録されたのは数年前になると思いますが、プリバティを演じるうえで意識されたことについて教えてください。
竹達さん:
プリバティは、仕事中は任務に忠実に、真面目にがんばる女の子ですよね。そのため、演技としてもかためというか、かっちりした雰囲気を意識してお芝居をさせてもらいました。
でも、ときどき見せる素の表情というか、彼女本来のかわいらしさはすごく魅力的に感じました。ですから、オンとオフの切り替えがしっかりしている子というのをイメージしていましたね。
──たしかにオン(仕事モード)とオフ(素の状態)で受ける印象に差がありますよね。
竹達さん:
プリバティは、基本的には仕事を第一に考えている女の子なので、逆にオフの場面では素の表情を出せればいいなと思って、そこは演じ分けをしています。
その差をしっかり伝えるためにも、プリバティが所属している組織に対する誇りや、与えられた任務に対して「真面目に取り組む」気持ちを強く出すことは、意識しています。
──プリバティは、人間ではない存在「ニケ」でありながら、それを隠して人間として振る舞わなければいけないという、苦悩を抱えているキャラクターですよね。そういった、葛藤や苦悩といった部分も演技の中で意識されたのでしょうか。
竹達さん:
じつは、いちばん最初にセリフを拝見したときや、演じているときは彼女のそういう苦悩についてはあまり見えてはいなかったんです。でも、何度か収録を重ねていくうちに、そういう葛藤をすごく感じるようになりました。
それこそ、今回のコラボのお話を演じたときも、彼女の人間性というか「ツラい、苦しい。でも仕事だから私がやらなきゃ」といった葛藤の部分が見えてきたかなと思います。

──ちなみに、収録する際には開発側から「こう演じてほしい」というお願いはあったのでしょうか?
竹達さん:
最初は、いまのプリバティよりもかわいいところを押し出して演じていました。それに対して「年齢感を少し上げてほしい」というディレクション(指示)をいただいて。
そこからは、ちょっと大人っぽく、かっちりした雰囲気を強めに出せるよう意識して演じるようになりました。
──本作の開発は韓国のため、原案となるストーリー、セリフはもともと日本語ではありません。それが翻訳されて、竹達さんが演じる台本となっていると思うのですが、演じる際に難しいと感じた部分はあったのでしょうか。
竹達さん:
やはり翻訳されているものですので、原語での表現と日本語としての表現の差、ニュアンスとかの違いもあって、演じるうえで難しいと感じることはありました。日本語として不自然なところは、セリフを調整してもらいながら収録をしていった覚えがあります。
「ツン」で嫌な気持ちになってもらえることで、「デレた」ときのかわいさが最大化される
──竹達さん自身、これまで多くのツンデレキャラを演じられてきたと思います。プリバティを演じる際に、「ツン」と「デレ」の表現についてはどのように意識されたのでしょう。
竹達さん:
プリバティは「ツンツン」要素がかなり強い子なので、お芝居するときも最大限「ツン」強めで演じていますね。
彼女の場合、立場上どうしても厳しくあたらないといけないこともあるので、「ツン」がアイデンティティーになっているくらいかもしれません。でも、「ツン」が多い分、「デレた」ときのかわいさはすごくある子だと思うんです!
──すごくわかります。プリバティの「デレ」は破壊力がすごいです。
竹達さん:
これは私のイメージですけど、「デレ」のときのプリバティってあわあわしている感じが強いんです。
赤面しながら、瞳孔がすごく開いてて、口がすごい大きく開いて、てんやわんやしていて……ちょっとほっといたら自爆しちゃう(笑)。そういうかわいさなんですよね。「てんやわんやかわいい」みたいな。
──ちょっと気になったのですが、竹達さんはツンデレキャラを演じる際、いまのお話にあがったような「ツン」や「デレ」の割合や「デレの雰囲気」など、どのようにアプローチされていくのですか?
竹達さん:
それは作品によってケースバイケースですね。収録現場でディレクションがあって一緒に作っていくこともあれば、原作がある作品なら事前に原作からイメージをかためて収録に臨むこともあります。
ツンデレキャラって、言葉と気持ちが一致してないんですよね。ですから、演じる側としては「表向きの言葉」と「裏にある気持ち」を汲み取る必要があるのが、難しいところだと思っています。
──たしかに。ツンデレキャラは言葉と感情が一致していないセリフが多いですよね。
竹達さん:
たとえば、素直な子を演じるときは、作品のストーリーやセリフの中から感じとれる「喜怒哀楽の感情表現」をまっすぐに演じればいいんです。でも、ツンデレの子は素直じゃないので、どうしても偏屈に見えてしまう部分が出てきてしまいます。
その偏屈さから、どれだけユーザーの方に期待してもらえるか。どう演技したら嫌な気持ちになってもらえて、デレたときのかわいさが最大化されるのか。先のストーリーがわかっているときには、そのあたりも考えて調整はしています。
──まさに職人技ですね……。
竹達さん:
とくにスマホのゲームは、登場するキャラクターが多く、ひとつのお話が短いこともあって、どうしても見ているみなさんに伝わる情報って少ないじゃないですか。
でも、描かれているシーン以外でも、彼女たちは生きていて生活をしています。そういう見えない情報を、どれだけ自分の中で想像して芝居に還元できるか。ゲームのキャラクターを演じるうえでの難しいところだと思います。
──なるほど。そこに加えて、表と裏のあるツンデレキャラを演じるというのは、さらに難度が上がると思うのですが……。
竹達さん:
そうなんです! アニメの場合は、原作があったり、アニメーションによる動きもあって、たとえ描写が省略されても情報を補完しやすい部分はあります。でもゲームは、場合によっては立ち絵と表情の変化という、限られた表現の中で情報を伝えていくじゃないですか。
それこそ、メインストーリー序盤にあった、指揮官の仲間(マリアン)を捕まえようとするシーンのプリバティの「射殺してもいいとの命令を受けています」というセリフもそうですよね。あの短い場面の前後での感情の動きについては、ゲームの中だけだとどうしても表面上しか見えないと思うんです。
でも、プレイヤーのみなさんは、そういう見えない部分を無意識に想像して、情報を補完してくださってるんですよね。ですから、その補完をどれだけ芝居でお手伝いできるかというのが、ゲームのキャラクターを演じるうえで大事なことだと思っています。
今回のコラボイベントでは、少し大人になったプリバティが描かれている
──メインストーリーでの初登場シーンから、メイドになったり、今回のコラボで年相応な姿を見せるようになったり、プリバティ自身、指揮官のもとで成長や変化をしているキャラクターだと思います。これまでの収録を振り返ってみて、プリバティの変化について感じる部分はありますでしょうか?
竹達さん:
先ほどお話した、指揮官の仲間を捕まえようとするシーンは、プリバティ自身にとってもきっと衝撃的な出来事で、思うところもたくさんあったと思うんです。
それを経て、「何が正しくて何が違うのか」というのを、自分の目で確かめて、ちゃんと行動で示していこうと責任感が芽生えた感じはありますよね。
ですから、いまの彼女は「命令されたら従う」だけではなく、自分で考えて行動することもできるようになったというか……少し大人になったんだと思います。プリバティ自身、つねに成長している女の子だというのは、今回コラボイベントのストーリーを演じさせていただいて感じたところです。
──プリバティは人気投票でも上位にランクインする人気キャラクターですので、コラボイベントで描かれているプリバティの成長を喜ぶ指揮官も多いと思います。では最後に、今回のコラボを楽しみにしているプレイヤーの方や竹達さんのファンの方へ向けて、メッセージをお願いします。
竹達さん:
今回、ふたつの作品がコラボということで。お互いの作品の素敵なところや魅力、キャラクターのかわいらしいところ、性格とかがストーリーの中にぎゅっと詰まっていて、すごく素敵に仕上がっていると思います。
楽しいだけじゃなくて、演じるうえで私自身も(ニケの世界観について)考えさせられることがありました。やっぱり「考えさせられる」っていうのは、すごく大事なことだと思っているんです。
だから、遊んでくださった皆さんにも楽しんでいただきつつ、余韻というか、ちょっと切なくなるその瞬間に、ご自分が何を思ったか。どう動いて、どう生きていきたいかとか。そういうことを考えるきっかけになったらうれしいです。