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「指揮官様との距離感は“まるで学園物の初々しさ”。いきたいけど、いけない」──『NIKKE』アニス役の岡咲美保さんに、ネタバレ込みで演技のこだわりを聞く【『NIKKE』×『Stellar Blade』コラボ記念インタビュー】

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記事の内容は主に声優の個人的な感想を取材し、一部のインタビュー内容はネタバレに関連しているので、慎重に閲覧してください。

2024年12月、『勝利の女神:NIKKE』(以下、『NIKKE』)と『Stellar Blade』のコラボが発表され、多くのユーザーから驚きと、それ以上の喜びをもって迎えられた。

『Stellar Blade』では、謎の生命体との戦いの果てで荒廃した地球を舞台とし、人のようで人ではないヒューマノイドたちが地球を取り戻すべく、過酷な戦いに身を投じる。

……と、このようにあらすじを表現してみると、『NIKKE』をご存じの方であれば、両作品がその世界観設定のレベルから、非常に高い親和性があることも明らかだろう。もちろん「セクシーで肉感的なキャラクター」という、両作品に共通する魅力も忘れてはならない。

6月に弊誌で公開したインタビューでも、両作品の“表現方法”の類似がコラボ実現のひとつの要因となったことが語られている。

そんな『NIKKE』と『Stellar Blade』のコラボに欠かしてはならないのが、キャラクターを演じ、その存在に魂を吹き込む声優の皆様だ。

弊誌では、『NIKKE』と『Stellar Blade』それぞれからおふたりずつ、合計4名の声優へ単独インタビューを実施し、それぞれの作品に対する感想や、自身の演じるキャラクターへの思い入れをうかがった。本稿では、『NIKKE』においてアニス役を演じる岡咲美保さんへのインタビューの様子をお届けする。

『NIKKE』×『ステラーブレイド』コラボ記念、岡咲美保さんインタビュー:アニス役を演じるこだわりを聞いてみた_001
(画像は【勝利の女神:NIKKE】ティーザーPV│YouTubeより)

アニスを「指揮官様が“噛みついてほしかった”と思う部分へ噛みついてくれる、ある意味でありがたいキャラクター」と語る岡咲さんにとって、アニスはご自身とも近しい部分を多く感じる存在なのだと言う。

『Stellar Blade』の世界においても健在だという“アニス節”や、『NIKKE』の直近のストーリーで判明したアニスの「元アイドル」という衝撃的な設定への感想などを、作品への思い入れたっぷりに語ってくださったので、ぜひ最後までお楽しみいただきたい。

弊誌では、『NIKKE』および『Stellar Blade』の声優への単独インタビューを、合計4本に渡って掲載予定だ。興味のある方はぜひこちらもチェックしていただきたい。

聞き手/豊田圭吾
文/うきゅう

「私、地声がアニスなんだ」。

——2022年のリリース以来、岡咲さんは『NIKKE』でアニスを演じ続けていますが、周囲からの反響や感想としてはどのようなものがありましたか?

岡咲美保さん(以下、岡咲さん):
2年ほど前、『NIKKE』のハーフアニバーサリーをお祝いする動画に出演させていただいた際、そのコメント欄に「地声がアニスだ」と書いてくださった方がいて……。「私って、地声がアニスなんだ」と思ったことを覚えています(笑)。

自分としてはキャラクターのかわいらしさや、皮肉をギャグのように言うときと真剣に言うときの使い分けなどを意識しているつもりではあったんですが、コメントされた指揮官様は「まさにアニス」、「アニスになるべき」という、良い意味で「地声がアニス」と言ってくださっていて(笑)。

「あ、うれしい」と思いました(笑)。

指揮官様からもアニス役として私のことを受け止めてくださっているんだな、というのをハーフアニバーサリーの時点から感じていたので、そういった声を「うれしいな」と思いながら引き続き演じさせていただいています。

周囲の反響という話だと、私が生きていくなかで、ふと『NIKKE』のことが目に入る機会が増えたと思っているんですね。

街を歩いていて、コンビニで実施されている『NIKKE』のくじを見かけたり、私がよくいくゲームセンターにアニスをはじめとしたさまざまなニケたちの景品が置かれていたり、秋葉原で大きく看板が飾られていたり。

年々、多くの指揮官様に『NIKKE』が広がっているな、というのを感じます。

——アニスを演じるうえで岡咲さんが大事にされているのはどういった部分なのでしょうか? 意識されて演じたことなどがあればお聞かせください。

岡咲さん:
私はアニスのことを「指揮官にとって寄り添いやすいニケ」だと思っています。難しい用語や重い話、展開に対して「ちょっと待ってよ」と突っかかってくれる子なんですね。

ラピとくらべても、アニスは不満や悲しみなどをしっかりと出しますし、ユーザーとしても指揮官としても、「そこに噛みついてほしかった」という部分へ噛みついてくれる、ある意味ではありがたいキャラクターなんじゃないかと思っています。

アニスは、愛もあるし「一度、懐まで迎え入れたらそれを絶対に守る」みたいなところもあって、私の考える“女性らしい女性”だなと思いますね。

ニケとして、完全には人間のようでないんだけど、「ニケになりきれていない」という微妙なバランス感覚の塩梅みたいなものも、ずっと大事にしています。

一方でギャグが挟まることもありますし、皮肉をいうことも多いです。その皮肉も、本気で言っているときとラピとかをからかうときとで、ぜんぜんテンションが違います。

「アニスは、嫌な子だわ」と思われないように、ほかのキャラクターをからかっているときの噛みつき方が、あくまでも“じゃれ合い”として受け取ってもらえるように、私としても「いまのはじゃれ合いだな、いまのは本気で噛みついてるな」というのを分けて演じるようにしています。

岡咲さんからアニスへの第一印象は“黄色”。「元気でかわいい担当なのかな、と思って台本を見たら『あ、結構噛みつく〜』」

——アニス役を演じるなかで、どのようにそのキャラクター性をつかんでいったのかを教えてください。たとえば、ゲーム制作陣から「こういうキャラクターでお願いします」というものを指定されたのでしょうか。それとも岡咲さんがアニスと向き合いながら、キャラクターを作っていったのでしょうか。

岡咲さん:
ある意味、私は指揮官様と同じテンポでアニスのことを知っていったのかも知れないな、と思っています。

『NIKKE』の収録は、あらかじめすべての結末などを教えられるわけではなく、あくまでもその時々のシナリオを読ませていただいたうえで「何か気になることがあれば聞いてください」という形式で進んでいったんですね。

なので、アニスへの第一印象はそのビジュアルでした。最初の3人、カウンターズの中の黄色だから、ビタミン的な存在というか、元気でかわいい担当なのかなと思ったんですが、台本を見てみると「あ、結構噛みつく~」って(笑)。

『NIKKE』×『ステラーブレイド』コラボ記念、岡咲美保さんインタビュー:アニス役を演じるこだわりを聞いてみた_004
▲『NIKKE』正式サービス前のビジュアル(画像は【勝利の女神:NIKKE】ティーザーPVより)

意外と一番切り込んだりもして、難しそうな子というか、リアルな子だなと感じました。「見た目から受け取っていた印象と違うな」というところから収録が始まって、いま振り返ってみると、初回では正直キャラクターをつかみ切れていなかったのだと思います。

シナリオを2年以上にわたって演じさせていただくうえで、私の中でも「アニスってこういう子なんだ」というのがわかってきたところがあります。ですので、指揮官様と一緒に、作品を追いながらアニスのことを理解してきた気がしていますね。

——アニスのセリフを聞いていると、指揮官様のことが大好きで、その気持ちがあふれているように感じます。岡咲さんはアニスの「指揮官様ラブ」をどのように表現していこうと思って演じられたのでしょうか。

岡咲さん:
アニスは指揮官様とニケという立場の違いを一番感じさせないキャラクターなのかな、と思っています。

たとえば、ラピは指揮官様に対する上下関係というか、「ニケとしての振る舞い」と好意というものを両立しつつがんばっているように思いますが、アニスはまるで学園物の「好きな人に対する距離感」ですよね。「いきたいけど、いけない」という初々しさというか。

初めて好きな人ができて、うまく覚悟が決まっていない感じ。私はそこが「リアルだな」と思います。指揮官様とニケ、というよりは、グループの中に好きな男性がいて、でも自分以外にもその人のことが好きなんだろうなって女の子もいて。その子のこともチラチラ見つつ、自分もいけるときは行く。

そういうバランス感覚を持った、素直な子なんだろうなと思っています。

「あ、こんな顔していいんだ!」アニスの“顔芸”を受けて、さらに幅広くなる岡咲さんの演技

——『NIKKE』のような運営型のゲームでキャラクターを演じるときは、アニメでキャラクターを演じるときと比べて、どのような違いがあるのでしょうか。

岡咲さん:
アニメとの違いで一番大きいのは、「尺がない」ことですね。キャラクターが口パクしている時間とか、1話のなかでの“ご当番”回とか。そういった縛りが少ないので、演じるうえでの自由度は高いと思います。

キャラの表情をあとから付けてくださるという都合上、最初のうちはキャラクターの様子を想像するのが難しかったんです。でも、だんだんと「このときはこういう表情を付けてくださったんだな」とわかってきて、演技もやりやすくなりました。

アニスには顔芸もあり「あ、こんな顔していいんだ! じゃあもっとふざけてみよう」とか(笑)、指揮官様の反応もたまに見させていただいて、「アニスが吠えててかわいかった」みたいに、アニスが噛みつく様子も受け入れてもらえてるのがわかると、「じゃあもっとやってみよう」とか。

アニスに関しては、最初から自由にやらせていただいていたんですけど、より受け入れてもらえている部分を押し出したり、ふざけるところはふざけてみたり。「このセリフにはこんな顔を付けていただけるんじゃないかな」みたいなことを想像しながら、最近は収録させてもらっています。

——アニスと言えば、カウンターズのメンバーとして、『NIKKE』のメインストーリーの中心でリリース当初から戦ってきたキャラクターですが、直近のストーリーでは心境の変化であったり、部隊を離れて過去との決着を付けようとするなど、重めのお話が展開しています。

アニスを演じられている岡咲さんの視点として、過去と現在での「アニスの変化」をどのように捉えているのでしょうか。

岡咲さん:
私もアニスが元アイドルだって知らなかったので、その話が出てきたとき「マジ!?」と、ちょっと面白く思ってしまいました(笑)。

でもふたを開けてみると、やっぱりアニスは真面目なので、自身の過去にもすごく真剣に向き合っていたし、メンバーへの思いもある。それをずっと胸の内に閉じ込めながらカウンターズとしてやってきたんだな、というところも知ることできて……。

なんだろう、身につまされるといいますか。自分の人生を振り返って、「あのとき、ああできていればよかったな」と戻れない過去を考えることって、私を含めて誰しもあると思うんです。けど、過去と向き合うときって、一番カッコ悪い自分が出てくるじゃないですか。

きっと、アニスも変な汗をかきながら、でもがんばって自分の調子を崩さないように、あくまでもアニスのテンポで過去と向き合っているんだと思いますし、私も「そのバランスを支えながら演じてあげたい」と考えていました。

一方で、アニス自身の根っこの部分は、アイドル時代もいまも変わっていないと、演者としては感じています。

「そこはそこ」と見ないふりをして進むんじゃなくて、ちゃんと見ていたからこそ、きっとアニスは戻ってくるんだなと思いますし、それを自分で宣言するぐらいの覚悟を持って、一度場を離れたんじゃないかなと想像しています。

アニスはアニスの道をずっとやっていて、だから変わったというよりは、過去と向き合う中で自分の輪郭をより強く認識した結果としてどうなるのか、というのが楽しみですね。

——ストーリーの中では、アイドル時代の元メンバーたちとの交流も描かれました。岡咲さんは、元メンバーを前にしたアニスをどのように演じられたのでしょうか?

岡咲さん:
アイドルの元メンバーに話しかける台本を見て、カウンターズや指揮官様に対するいつものアニスと同じテンポで演じられる語彙、言葉選びだな、とは思ったんですが、そのテンポでやってしまうのは「さみしい」というか……。

もっと、「見たことのないアニス」を感じたいなと思い、元部活仲間というか、「昔の共同体に対する顔」を出すようにして、指揮官様を意識しない、私にとって、より素に近いアニスをやってみました。

「そうすべきだ」というほどの自信はなかったんですが、音響監督さんも制作さんもOKを出してくださったので、きっとよかったんだと思います。自分でも探り探りの段階ではあったんですが、「怪我をする覚悟」を出してみた感じですね。

それまでのアニスは一歩うしろで腕を組みながら、ネオンとかが無茶を言うのに対して「はぁ」「あぶないんじゃない?」と茶々を入れることが多かったんですが、今回はアニスが先陣を切っていろいろと話を進めているので、その違いを意識しつつ演じていました。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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