いま読まれている記事

「指揮官様との距離感は“まるで学園物の初々しさ”。いきたいけど、いけない」──『NIKKE』アニス役の岡咲美保さんに、ネタバレ込みで演技のこだわりを聞く【『NIKKE』×『Stellar Blade』コラボ記念インタビュー】

article-thumbnail-20250619a

1

2

“炭酸水”への並々ならぬ熱量は、「アニスのアイデンティティ」

——サービス開始時から直近のストーリー収録まで含めて、アニスを演じてきた岡咲さんが注目してほしいと感じるシーンやセリフ、あるいはご自身が「ここはすごく楽しく演技ができたな」と印象に残るものがあれば、ぜひ教えてください。

岡咲さん:
演じた後に「面白かったなー」と思ったシーンとしては「ガルルルルル」とアニスが吠えるところとか、あとは炭酸水への並々ならぬ熱量、みたいなところですね(笑)。

最近も何回か“炭酸水”って言葉を収録したんですよ。多分、炭酸水がアニスのアイデンティティになったんだろうなと思います(笑)。

初期の収録ということもあり、自分としては「炭酸水」も「ガルルルルル」もそこまでオーバーに演じたつもりはなかったんですけど、自分でゲームをプレイしてみると、「結構出してるな」というのがわかったので、逆輸入じゃないですけど、「じゃあこれを超えていかなきゃ」という気持ちになりました。

より炭酸水ラブなアニスであったり、吠えるアニスであったり。そういった部分は「アニスの強みやな」と考えて、しっかりと出していきたいなと思っています。

あと、今回の『Stellar Blade』とのコラボでも実感したのですが、私はアニスの言葉選びが大好きなんです。これを言われたら相手は傷つくかも、と思うような話題でも、「でも相手も聞いてほしいんじゃないか」ってところに突っ込んでいくのが、一見幼く見えて、じつはすごく大人だなと思います。

先ほども触れましたが、ストーリー中に指揮官様が気になっている部分に切り込んでくれるのもアニスですし、切り込まれた側としても「じつはこれを話したかったんだ」という部分を、強く聞いているようでいて、意外と優しく聞いてくれているのがアニスなのかなと思います。

今回のコラボシナリオも含めて、そういう真面目に語るアニスのシーンというのはすごく好きですね。

——ちなみに、アニスは岡咲さんの素の部分とは近いキャラクターでしょうか、遠いキャラクターでしょうか?

岡咲さん:
たぶん近いと思います。たとえば、アニスってネオンみたいな子を泳がせておくんじゃなく、すぐ突っ込むじゃないですか。私も会話のテンポがはやめの人なので、仲がいいからこそではあるんですが、ああいうのを見逃さず、すぐに「ちょっと!」みたいなことを言ったりします(笑)。

私もアニスも語気がどちらかと強めで、ハキハキ喋るタイプです。「切り込んでいく」という特徴も、私自身「いま、ここは自分が行くべきだな」と思ったら、結構いくほうなので(笑)。もちろん、相手や状況は見ますけどね。

あと、アニスって結構ディスカッションが好きそうだと思うんです。相手を理解するためにアレコレと聞いていくところがある気がするのですが、私もわからないことに対して興味があればあるほど、グイグイ聞いちゃうタイプなので、そこも似ているなと思います。

——ご自身と似ているキャラクターというのは、演じにくかったりするのでしょうか?

岡咲さん:
客観視しづらい、みたいなことはあるかも知れませんが、演じやすいかどうかはキャラクターによって変わる気がします。

私は声優として、いわゆる“人外”のキャラクターや男の子をすごく演じやすいと昔から感じています。これは、自分が絶対なれない存在だからこそ、「この辺でふわふわ飛んでてくれたらうれしいな」とか「こういう男の子なのかな」とか、自分の理想像を客観視できるという意味で「自分と距離があると演じやすい」というケースもあります。

一方で、アニスに関しては同じ女性ですし、精神的な年齢もそれほど離れていないところもあり、ここまで近いとむしろ内面がシンクロしていたほうが演じやすいと思っています。

自分の中のアニスと「わかるよ~」とか「そういうことあるよね~」みたいに相談しながらできたほうがやりやすいので、そういう意味で自分とアニスは近くて助かっています。私はひとりっ子なんですが、「もしアニスみたいな子が妹やお姉ちゃんにいたら、性格はこんな感じだろうな」と想像できるので、きっと私とアニスは似てるんだと思います。

『Stellar Blade』×『NIKKE』コラボでも、アニスは「いつも通りの通常運転」。相手に切り込んだうえで寄り添う“大人らしさ”を見せる

——『Stellar Blade』と『NIKKE』は、両作品ともにSHIFT UPさんが制作されていて、『NIKKE』初の自社タイトルコラボとなっています。コラボシナリオを読まれた感想はいかがでしたか?

岡咲さん:
今回のコラボは世界観が結構シンクロしていて、シナリオを読んでいても「あれ、皆さん最初からこの世界にいましたか?」と思ってしまうぐらいの馴染み方をしていて、すごいなと思いました。

コラボなんですけど、敷居の高さみたいなものはほとんどないので、作品を片方しか知らない方でも、ストーリーに入っていきやすいように感じました。

また、コラボだからといって話がコメディよりになったり、様子見みたいに浅いところで話を広げることもなく、いつもの『NIKKE』の要素を描いてくださっていました。『NIKKE』のシナリオが好きでプレイされている方も喜んでくださるコラボになっているんじゃないかなと感じつつ、収録させていただきました。

——コラボにおけるアニスの活躍や見どころについて教えてください。

岡咲さん:
コラボでも、アニスは本当にいつも通りの通常運転だったなと思います。アニスがなにかヤバいことをしでかすこともなく、逆にすごくヒーロー的な存在になるような立ち回りでもなかったのですが、『Stellar Blade』のキャラクターに対してもわりと積極的に話しかけていて「えらいぞアニス」と思ってました(笑)。

コラボシナリオでは、100年以上に渡って芸術や文化を守っていたお爺さんが出てくるのですが、そのお爺さんに対するアニスの接し方がすごくよかったんです。

表現が難しいのですが、政治的な要素であったり、「ニケがここまで切り込むのはマズいんじゃないか」とか、すべてを救えるわけではない中で「救えないものにそこまで情をかけていいのか」とか。そういうところで身を引いたり割り切った態度を取るのではなく、相手と同じ目線でしゃべりかけていたのが印象的でした。

ストーリーを進めるうえでも、「仲間・敵・未知なる存在」とさまざまな認識が入り混じる状況を、アニスが潤滑油として繋げてくれていて、そういうところが「アニスえらいな」と思いました。

——コラボシナリオはシリアスな部分が多い印象ですが、そんな中でアニスは潤滑油として目立つ存在だったということでしょうか。

岡咲さん:
そうですね。「アニスがいないと会話がスムーズに進まなそうだな」というのはすごく思いました。

重いシナリオではありつつも、「大人だからこそ切り込まない」のではなく、切り込んだうえで「そうよね」と寄り添うという、アニスらしい大人らしさや立ち回りみたいなところはちゃんとやってくれていると思います。

——ちなみに、『NIKKE』のストーリーでアニスがウンファ殿とのやりとりで見せた“口喧嘩”みたいなものは、今回のコラボでも見られるのでしょうか?

岡咲さん:
口喧嘩というか「あえて思ってもいないことを口にする」みたいなことを言う機会はありました。京都の人に聞かれたら怒られるかもしれないんですが、たまに「京都で言われた○○という言葉は、じつは全然違う意味だった」みたいなのがあるじゃないですか。

そういう、アニス節と言いますか、「へ~、それはそれはお強いこと~」みたいなセリフは演じさせていただきました。

——『Stellar Blade』といえば、岡咲さんと同じ事務所の松岡美里さんが「リリー」役で出演されていますよね。

岡咲さん:
はい! そうですよね!!

——(笑)。岡咲さんと松岡さんはすごく仲がいいとうかがっていて……。本コラボについてはまだお話されていないとのことで、今後おふたりでそういった話もされるのかなと思うのですが。

岡咲さん:
一緒にゲームへ出られることにすごくビックリしましたし、うれしかったです。

美里(松岡さん)が私のことをなんて言ってるかはわからないんですけど(笑)、事務所の同期として2017年から一緒にやっていて、でも同じ作品に出る機会はいままでありませんでした。

ですので、今回「お、美里じゃーん!」というのは、私も収録前から思っていました。でも、アニメとちがって個別収録ということもあり、相手がどういう芝居をやってくるかはわからなかったので、美里の言う通り、まだお互い話せてないですね。

——コラボシナリオの中で、リリーとアニスの絡みというのはあるんでしょうか?

岡咲さん:
はい。アニスは満遍なくみんなとしゃべっていたので、リリーとガッツリ絡むというわけではなかったんですけど、演じている私としては「あ、ここは美里がしゃべってるんやな」という、うれしさも感じながら収録させていただきました(笑)。

——ファンとしては、そこもまた聞きどころになるのではないかと思います。

岡咲さん:
そうですね、中身というか、声優さん同士の関係性まで知ってくださってる方からすると、結構珍しい共演なのかなと思います。

直近ストーリーにおけるラピから指揮官様への“猛攻”を受けて、アニスはどうする!?

——話がコラボから逸れてしまうんですが、先ほどアニスは指揮官様へのラブの表現が非常にストレートだというお話がありました。一方で、最近のメインストーリーにおけるラピって……すごいじゃないですか。

岡咲さん:
あはは(笑)。はい、そうですね。

——最近のラピを横で見ているアニス、を演じている岡咲さんの目線から、ラピはどのように見えていますか? また、岡咲さんの中で「アニスってこう思ってるんじゃないの?」といった想像があれば、あわせておうかがいできるとうれしいです。

岡咲さん:
複雑です(笑)。でもラピって、そういう感情表現をずっと自分のなかで閉じ込めていた子だし、我慢していた子なんですよね。アニスはそれを一番近くで見ていて「もっと出しちゃいなさいよ」と、友達として助言することもあって。私は、アニスには世話焼きなところがあるからこそ、茶々もよく入れるんじゃないかなと思っています。

でも、ラピに対してはいつも通り茶々入れしちゃったあとで「あー、なんか背中押しちゃったな」といいますか……。負けヒロインまではいかないにしても、そういうサービス精神がアニスにはあって、でもラピはなかなか積極的に行かない子なので、いいバランスになっていたんですけど……。

最近はラピがすごく積極的に感情を出してくるから、「アレ?」みたいなのはありますよね。でも、じゃあ張り合って素直に出していくのがアニス流の戦い方なのか? と思うと、それは違う気もしていて。「どうアプローチする?」というのは難しいですよね。

フラットな目線で見ようとすると、ラピってすごく正統派で、ヒロインとして指揮官様の一番近くにいる、変な言い方ですけど“正妻”感はちょっとあるんですよね。

アニス、負けちゃうのかな~(笑)。いや、勝ち負けじゃないんですけど。

『NIKKE』×『ステラーブレイド』コラボ記念、岡咲美保さんインタビュー:アニス役を演じるこだわりを聞いてみた_017
(画像は『NIKKE』公式サイトより)

——(笑)。さきほど話題に挙がったように、メインストーリーではアニスが部隊を離れ、過去との決別をしようとしている様子が描かれています。覚悟を決めたアニスは、アプローチもパワーアップするんじゃないかと勝手に妄想しているのですが、いかがでしょうか。

岡咲さん:
その可能性も、全然あると思いますよ。自分に自信が付いたり、いまの自分の場所の大切さを見つめなおして、「やっぱり私はここでやっていくんだ」という覚悟が決まったら。よりストレートに、茶化さずに発言して……いくのかなぁ?

でも、カウンターズっていまの絶妙なバランスでチームワークが成り立っているかもしれないので、「恋敵」みたいな感じがどんどん増していくとそれはそれでちょっと不安ですよね。

ネオンひとりじゃまとめきれないだろうし、平和に、足並みを揃えてやっていきたいですね(笑)。

誰かのために動くことの多かったアニスが、初めて“自分の未来のため”に動き出した

——アニスの魅力はストーリーとともに変化するタイプではなく、「一貫して等身大のリアルさを貫いている」点にあると思います。一方で、メインストーリーでは上司であるマスタングに「過去の問題を解決したい」と申し出るなど、変化が見て取れる場面があります。

アニスは変わらないようでいて、じつは仲間や指揮官の影響を受けているようにも感じられますが、岡咲さんはアニスのこういった変化に対して、どのように演技の調整などをされているのでしょうか。

岡咲さん:
そうですね。「じつはシナリオごとにアニスが成長しているな」というのは、私としてもすごく感じていました。

最初ほど相手に噛みつくこともなくなりましたし、ネオンに対しても初期は「本当にイラついているのかな?」という様子だったところから、いまはアニスが噛みつくからこそネオンもいいところを発揮できる、コンビ芸みたいになってきています。

指揮官様への想いも、ほかのニケたちへの仲間意識も、より素直に出せるようになってきていると思います。

ただ、最新のシナリオがあまりにも「新たなアニスの一面」すぎて、その後どうなるのか私もわかっていないため、非常にドキドキしながら演じている、というのが正直なところです(笑)。

でもやっぱり、あそこを離れた時点で、あの宣言をした時点で、アニスの中では覚悟が決まっているんだろうな、と私は思っています。もちろん葛藤しながら動いている部分もあるんですけど、いつもより切れ味は鋭くなっているような気がします。

アニスって、自分のために動くことがあまりなかったと思うんです。ラピの背中を押したり、カウンターズのみんなに変なことを言われて腹が立つから、自分が代表して喧嘩を売る、みたいな。

そんな中で、自分の未来のために、自分の想いのために動くアニスというのは初めてに近いので、安定感みたいなものは、もしかしたらないのかもしれないです。「こう言われたらこう出る」というアニスの強さみたいなものは抑えめになって、自分の本心からの言葉を待って発言しているように感じます。セリフも、三点リーダーがすごく多かったなという印象があります。「…○○」みたいな。

アイドル時代の元メンバーと向き合う中で、「過去のアニスってこうだったのかな」「こういう位置だったのかな」「いま、ちょっと気まずいのかな」みたいなところも感じながら、演じさせていただきました。

——細かなところまでお話いただき、ありがとうございました。では最後に、今回のコラボを楽しみにされている『NIKKE』のプレイヤー、『Stellar Blade』ファンに向けて、岡咲さんからメッセージをお願いします。

岡咲さん:
指揮官様、いつも『NIKKE』をプレイしていただきありがとうございます。

今回のコラボを通じて、『Stellar Blade』のユーザーさんにも『NIKKE』を知っていただければと思いますし、指揮官様にも『Stellar Blade』の世界観をすごく深く知ってもらえる機会になると思います。シナリオもいつも通り、重さもあり、面白さもあるものになっています。

アニスもたくさんしゃべっています! キャラクターが増えてもたくさんしゃべらせていただいているので、アニス好きの指揮官様にも、ぜひ遊んでいただけたらと思っています。

念願の自社コラボとのことで、気合もたっぷり入っているかと思いますので、楽しんでください。よろしくお願いします。(了)


岡咲美保さんのアニス愛はしっかり伝わっただろうか?

わずか一時間足らずのインタビューであったが、岡咲さんの『NIKKE』とアニスに対する並々ならぬ情熱がほとばしる、非常に濃密な内容となった。

弊誌では、『NIKKE』および『Stellar Blade』の声優への単独インタビューを、合計4本に渡って掲載予定だ。興味のある方はぜひこちらもチェックしていただきたい。

『NIKKE』と『Stellar Blade』のコラボは双方のタイトルで6月12日よりそれぞれ配信中。『NIKKE』では7月2日までの三週間に渡ってイベントが実施され、『Stellar Blade』では『NIKKE』コンテンツを含めたDLCが発売中だ。

1

2

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ