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残暑にホラゲはいかが?『バイオ7』『死印』『レイジングループ』…2017年“旬のホラゲ”厳選5作品を熱烈レビュー。各作品オススメ層も合わせて分析!【ホラゲ2017夏】

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 夏といえばホラー。涼を取るため恐怖を求める。いつの頃からか、日本にはそんな習慣が永きに渡り定着している。アミューズメント施設に行けば最新のお化け屋敷が花盛りだし、怪談ライブだって盛り上がる。

 むろん、ゲーム業界も例外ではない。昨年、電ファミでは大掛かりなホラーゲームの特集を組み、様々な角度からゲームとホラーのあり方を検証した。

なぜこの夏「ホラーゲーム」を総力特集? いま電ファミ編集部が覚える“危機感”について

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 筆者もホラー好きの一人として企画に参加したかったのだが、タイミングが合わず機を逸してしまった。そこで今回は、リベンジの意味も込めて、筆者がホラゲ企画をお届けしたい。

 今年(2017年)発売されたホラーゲームの中から、筆者が特にオススメの5本を厳選して紹介してみたい。タイトルは、『バイオハザード7』『デッドハウス 再生』『クリーピング・テラー』『死印』、そして『レイジングループ』

 中には説明不要なほどメジャーなものもあるが、各作品がどんなタイプのホラーゲームなのか、ホラーゲームとしての新しさはどこにあるのか、どんなプレイヤーにオススメなのか──を軸に、筆者なりの観点から紹介、「恐怖度」「ゲーム性」「新規性」を独断と偏見で5つ星評価する。この夏、良質な恐怖を求めているホラーゲーム好きの読者は、ぜひ参考にしてみてほしい。

文/御簾納直彦


【2017夏おすすめホラゲ1】『バイオハザード7』

 いわずとしれた、カプコンのサバイバルホラー最新作。テーマは、ズバリ「原点回帰」

 昨今の『バイオハザード』はホラー要素を残しつつも、どちらかというと、アクション要素やスタイリッシュな格好良さに重きを置いている傾向にあった。そのため、アクション好きのファンには好評を持って迎え入れられたが、純粋なホラーを求めるファンからはいささか物足りないと評されることもあったことは事実だ。

 『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『バイオハザード7』)では、そんな声に応える意味も込めて、「恐怖」に焦点を絞った初代『バイオハザード』を彷彿させるデザインになっている。『5』、『6』やスピンアウト作品に標準装備されていたCO-OP機能(協力プレイ)はなく、純粋にストーリーを楽しませることに注力している。

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「恐怖」に焦点を当てて制作された『バイオハザード7』は、シリーズの中でも屈指の怖さ
(画像はCAPCOM公式サイトより)

ポイント1:VRとの組み合わせで増幅する恐怖

 なんといっても、PS VRに全編対応している部分が前衛的だ。ヘッドマウントディスプレイを装着した瞬間、プレイヤーはおどろおどろしい館の中にダイブし、襲い来る脅威へと立ち向かうことになる。

 『バイオハザード7』の前身とも言えるテクニカルデモ『KITCHEN』の映像を目撃したとき、筆者は「これまでのホラーゲームにはない、質の異なる恐怖」を感じていたが、E3 2016で『バイオハザード7』をPS VRで体験し、その考えは間違っていなかったと確信した。

 不気味なほどの静寂に包まれた館内に足音だけが鳴り響く恐怖、いつ襲い掛かってくる分からないクリーチャーにビクビク怯えながら先に進む恐怖。そして、実際にクリーチャーと対峙しなければならない恐怖。

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アイソレートビューが深い没入感を生み出す
(画像はCAPCOM公式サイトより)

 これら既存の恐怖体験が、HMDを通すだけで、モニター越しの「ゲーム体験」から「実体験」に近い生々しい感覚へと変化する。もちろん、VRでプレイすれば没入感は何倍にもなるが、現状、PS VRの品薄が続いているため、VRを持ってないという方は、まずVR無しでプレイしてみるのも選択肢としては十分にありだ。

 また、アイソレートビュー(一人称視点)の導入も、ナンバリングの「バイオハザード」としては初の試みであり、チャレンジャブルな部分だろう。ホラーと一人称視点のマッチングに良さが、見事に恐怖へと直結している。

ポイント2:名作ホラーからのオマージュ

 実際にプレイしてみると分かるが、本作は「バイオハザード」らしさを随所に感じさせつつも、名作ホラー映画からのオマージュを感じられる作りになっている。

 有名な食卓のシーンからは、トビー・フーパーの傑作『悪魔のいけにえ』を連想した人も多いだろう。

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『悪魔のいけにえ』(1974)
(画像はAmazonより)

 「バイオハザード」好きな人、最近は離れていたけど初期の「バイオハザード」が好きだった人、「バイオハザード」はプレイしたことないけどホラー作品が好きな人に、本作をオススメしたい。つまり、ホラー好きであれば、まずはプレイしてみてくれ、というのが筆者の気持ちだ。

総評:アクションゲームとしても一級品!

『バイオハザード7』

恐怖度:★★★★★

ゲーム性:★★★★★

新規性:★★★★★

 

【コメント】

 はっきりいって筆者は、『バイオハザード7』は文句の付けどころのない作品だと思っている。ホラーゲームとしても、アクションゲームとしても一級品だ。

 難易度は決して低くないが、理不尽に難しいわけではなく、トライアンドエラーでプレイヤースキルが徐々に鍛えられていくので、クリア時の達成感もある。

 ある程度ゲームに親しんでいる方ならば、ぜひ一度足を踏み入れてみてほしい。

【2017夏おすすめホラゲ2】『デッドハウス 再生』

 本作は、レイニーフロッグが5月31日にリリースしたPS4、Wii U用ダウンロードソフト。

 『バイオハザード7』とはベクトルが異なるが、『デッドハウス 再生』(以下、『デッドハウス 再生』)も、初期「バイオハザード」や『アローン・イン・ザ・ダーク』をはじめとする90年代のホラーアクションゲームを強く意識した作品だ。プレイステーションやセガサターンが隆盛を誇っていた頃の、ローポリゴンによるグラフィックスを見事に再現しており、随所にこだわりが見られる意欲作である。

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この廊下、どこかで見たことが……?
(画像は任天堂公式サイトより)

ポイント1:「経験値システム」の採用

 このタイプの作品には珍しく、経験値システムを採用している。敵を倒したり、ドアを開けたりといったアクションを行うことで経験値が溜まっていき、ステータスを強化できるようになる。

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(画像は任天堂公式サイトより)

 つまり、初見ではなかなか倒せなかった敵でも、ステータスを上昇させることにより、楽々と倒すことができるようになるという、RPGのような立ち回りも可能なわけだ。マップは自動生成になっており、プレイするたびに変化する。ローテーションのような戦略ではクリアすることはできず、プレイヤー側にもそれなりにスキルを要求されるため、歯ごたえもある。

ポイント2:PS初期ユーザーにドストライク

 20後半から30後半くらいの、初代プレイステーションをリアルタイムで通ってきた世代にはドストライク。荒いポリゴンや初期「バイオハザード」のラジコン操作などは、現代の感覚でプレイするとさすがに苦しいが、その時代を生きてきた人間からすれば、思わず「これだこれ!」と膝を打ちたくなるような郷愁感。

 正直言って、ホラーとして怖いかどうかと聞かれると返答に困ってしまうが、ギャグとシリアスの間を狙っているような、ギリギリラインのファニーっぽさは「分かる人だけ分かればいい」という潔さすら感じて心地良い。完全に人を選ぶ作品ではあるが、その分、ハマる人はハマる魅力があるのは間違いないだろう。

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(画像は任天堂公式サイトより)

総評:90年代ホラーアクションゲームを現代に!

『デッドハウス 再生』

 

恐怖度:★★★

ゲーム性:★★★

新規性:★★★★

 

【コメント】

 “90年代ホラーアクションゲームを現代に蘇らせる”という試みは、間違いなく成功している。経験値のシステムを導入することによって、ただの懐古向けタイトルに終始していない部分も好印象だ。

 ただ、基本アクションは初代『バイオハザード』をベースとしていることもあり、その部分に関して目新しさはない。とはいえ、“コンセプトを理解してプレイすること前提”ともいえるタイトルなので、その辺りは逆に旨味とも言えるのだが。

【2017夏おすすめホラゲ3】『クリーピング・テラー』 

 日活のゲームレーベル「SUSHI TYPHOON GAMES」の第二弾タイトルとして発表されたのが、ニンテンドー3DS用ホラーアドベンチャーゲーム『クリーピング・テラー』だ。

 往年の名作『クロックタワー』や『トワイライトシンドローム』を彷彿させる横スクロールアクションゲームで、プレイヤーは主人公の少女アリサを操作し、襲い来る怪物の魔の手から逃れつつ、館からの脱出を試みる。

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(画像は「CREEPING TERROR 」(クリーピング・テラー)より)

ポイント1:「立体視」機能を活かしたステージ 

 『クロックタワー』のスピリットを随所に感じさせつつも、明かりにスマホのライトを使うという、時代に即したテーマをゲームシステムに違和感なく落とし込んでいる点が秀逸。スマホはバッテリーが限られているため、ゼロになると真っ暗になり、視界が一気に悪くなる。バッテリーはステージに落ちているものの、決して豊富に用意されているわけではないため、ライトの使い所にも頭を使わせる。

 また、迫りくる怪物からの逃走劇も緊張感を高める要素として一役買っており、攻撃手段が豊富に用意されていないからこそ、プレイヤーは一挙手一投足に気を配る必要があるのだ。

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(画像はSUSHI TYPHOON GAMES 第2弾「CREEPING TERROR (クリーピング・テラー) 」より)

 3DSならではの“立体視”の恩恵を高いレベルで受けられることも特筆すべき部分だ。特に、プレイヤーが縦に進む場面は、ぜひ立体視をオンにしてプレイしてほしい。ステージのリアルな奥行きを感じられるハズだ。ニンテンドー2DSも発売された今、立体視の機能を使っている人がどれだけいるかは分からないが、本作を100パーセント楽しみたいのなら、ぜひとも立体視を活用してほしい。

ポイント2:アラサースラッシャー映画好きにドンズバ

 グラフィックスのテイストが『クロックタワー』や『トワイライトシンドローム』に近いこともあるため、ストライクゾーンは、90年代のホラーゲームに慣れ親しんできた世代。つまり、アラサー以上かと思われる。

 アクティブに攻撃を仕掛けていくタイプの作品ではないため、ステージの状況や手持ちのアイテムをどう活かしてピンチを切り抜けるか、その思考にカタルシスを得られるプレイヤーには文句なしにオススメだ。また、本作は『13日の金曜日』をはじめとするスラッシャー映画からの影響も随所取り入れられているので、ホラー映画好きの方にも注目してほしい。

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(画像は「CREEPING TERROR 」(クリーピング・テラー)より)

総評:懐かしさにニヤリ

『クリーピング・テラー』

 

恐怖度:★★★★

ゲーム性:★★★★★

新規性:★★

 

【コメント】

 こちらも、コンセプトは『デッドハウス』に通じるものがある。『デッドハウス』が『バイオハザード』へのリスペクトに溢れているように、『クリーピング・テラー』も『クロックタワー』へのリスペクトを随所に感じた。

 90年代のホラーゲームに慣れ親しんだ世代がメインのターゲットであるため、飛び抜けた新規性を求めるというよりは、当時の雰囲気を楽しんだり、現代なりの解釈にニヤリとする楽しみ方が正しいのかもしれない。

【2017夏おすすめホラゲ4】『死印』 

 『迷宮クロスブラッド』や『剣の街の異邦人』など、良質なダンジョンRPGを生み出し続けてきた、エクスペリエンス初のホラーアドベンチャーゲーム『死印』

 同社初の本格ホラーゲームということで、発表当時から大きな注目を集めてきた。エクスペリエンスらしいダンジョン探索の要素は残しつつ、都市伝説の生々しい恐怖を見事に描いている。

 小学校、樹海、神社、公園など、身近な場所(樹海は違うが)が心霊スポットのダンジョンとして登場し、それらの場所で起こる恐怖や悲劇を、秀逸な描写で表現。エクスペリエンスタイトルの新たな可能性を垣間見た一作である。

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(画像はPS Vita『死印』第1弾PVより)

ポイント1:“一発死”の緊張感

 心霊スポットの探索・調査は、既存のダンジョンRPGをベースにしたものであるため、一見したらさして珍しいものではない。しかし、そこに生死をかけた選択「デッドリーチョイス」が加わることで、プレイフィールが一気に引き締まるものになる。死に直結する本システムは、選択次第でゲームオーバーにも繋がってしまう無慈悲なものだからだ。

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(画像は死印公式サイトより)

 ダンジョンのラストには「怪異」との対決も控えている。対面式の戦闘画面ではあるが、いわゆる普通のRPG的な戦闘ではなく、キーアイテムを選択しながら怪異と対峙するというシステムを採用。アイテムの選択を間違えると、形勢は不利に傾き、あっという間に殺されてしまうこともある。選択を誤るたび、徐々に怪異が近づいてくる演出は焦りと恐怖をこれでもかというほど煽る。この恐怖、緊張感は、まさに本作ならではの感覚と言えるだろう。

ポイント2:ジャパニーズ・ホラー好きにうってつけ

 エクスペリエンスらしいダンジョン探索の要素も多分に含まれているため、同社のダンジョンRPGを好んでプレイしてきた人にオススメ。また、身近な場所で起こる恐怖を題材にしていることもあり、ジャパニーズ・ホラーや都市伝説が好きな人にもうってつけだ。

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(画像はPlayStation Storeより)

 エクスペリエンスの作品というと骨太なイメージがあるが、本作は──筆者がプレイした限り──高難易度な内容ではないので(決して易しいわけではないが)、本作でエクスペリエンス作品デビューを飾ってみるのも良いと思う。どちらかというと腰を据えてじっくりプレイするタイプの作品なので、休日を使って一気にプレイしてみるのもオツなものかもしれない。

総評:恐怖の度合いはトップクラス

『死印』

 

恐怖度:★★★★★

ゲーム性:★★★★

新規性:★★★

 

【コメント】

 身近な場所が心霊スポットとして登場するだけで、恐怖の質がここまで変わるのか、ということを思い知らされた作品。今回紹介した5作品の中でも、個人的に恐怖の度合いはトップクラス。本文でも書いたが、この恐怖に「デッドリーチョイス」が加わった時の圧迫感は相当なものだった。

 エクスペリエンスの新たな一面を、こんな形で見られるとは思わなかった。突飛なゲーム性ではないが、最初から最後まで圧倒的な没入感で楽しませてくれた傑作だ。

【2017夏おすすめホラゲ5】『レイジングループ』

 『レイジングループ』の初出は、2015年12月にリリースされたスマホ向けアプリ。『人狼』をテーマにした完成度の高いシナリオやゲーム性がクチコミで徐々に広がり、アドベンチャーゲームファンを中心に大きな盛り上がりを見せた。

 その後、2017年には全編フルボイス化されたPS Vita版、PS4版、さらにNintendo Switch版と続き、ほぼ全ての現行機でプレイできるようになった。今後は、PC版も配信予定。

 旅行者の房石陽明が、ひょんなことから訪れることになった集落「休水」にて、物語は大きく動き出す。集落内で発生した霧の中、陽明が目撃した謎の生物や、凄惨な殺人事件。事件の謎を解く鍵は、村の伝統である「黄泉忌みの宴」。果たして、その真相は……。

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霧の立ち込める真夜中、陽明が見たものは…
(画像は『レイジングループ』 プロモーションビデオより)

ポイント1:一風変わったゲームシステム

 テキストをベースにしたホラーアドベンチャーゲームは数あれど、シナリオと『人狼』をここまで巧みに融合させたゲームはそう多くない。16名の登場人物が織りなす命がけの『人狼』は、息が詰まるほどの緊迫感だ。

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一癖も二癖もある個性的なキャラクターたち
(画像はレイジングループ公式サイトより)

 また本作は、システムも一風変わっている。ストーリーを進めていくうえで、プレイヤーは死と引き換えに「KEY」を手に入れることになるが、先に進むためには、その「KEY」を手に入れたのち、過去の選択肢に戻る必要がある。つまり、ゲームオーバーを通過しないと、生き残る選択肢を選べないのだ。

 選択肢を選ぶことで死を回避できるゲームは多いが、「死が確定」しているゲームはなかなかないだろう。最初プレイした時は思わず面をくらったが、プレイを進めるにつれ、これが『レイジングループ』の持ち味なのだと理解したし、既存のテキストアドベンチャーゲームにはないシステムの妙だと感じた。

 面白いのは、ゲームオーバーになるたびに、マスコットキャラクター(?)の「ひつじ」が、本作のシステムをメタ的な視点で語ってくること。インパクト大の出で立ちや、ラフな口調が、本編とは良い意味で相容れない。このギャップもまた、演出の上手さなのだろう。

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インパクトありまくりの「ひつじ」。こいつ、いったい何者?
(画像はレイジングループ公式サイトより)

ポイント2:『人狼』未経験でも十分楽しめる!

 『人狼』未経験の人は、『人狼』と聞いて身構えてしまうかもしれないが、ストーリーの流れで、最低限の『人狼』知識が自然と頭に流れ込んでくるので、知らない人にも問題なくオススメできる。

 むしろ、『人狼』を知るきっかけとして本作をプレイしてもらっても良いくらいだ。また、休水の人々の、土着性を感じさせる怪しさも特筆すべき要素。どいつもこいつも一癖あり、どこか信用できない。まさに『人狼』のシチュエーションそのものだ。

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(画像は『レイジングループ』 プロモーションビデオより)

 『人狼』のファンは、彼らの嘘を見抜く思考力を刺激されるし、土着性や民俗学の要素を匂わせる世界観やストーリーは、『人狼』を抜きにしても魅力的だ。

 これらの要素にピンと来た方は、ぜひチェックしてほしい。

総評:じわりじわりと迫る恐怖

『レイジングループ』

 

恐怖度:★★★

ゲーム性:★★★★

新規性:★★★★

 

【コメント】

 『人狼』とテキストアドベンチャーを融合させることで、新たなスタイルを確立させたセンスが素晴らしい。「KEY」を使って選択肢をアンロックするシステムも、「やられたっ!」という感じ。ショック要素よりも、じわりじわりと迫ってくる気持ちの悪い恐怖は、本作ならではの怖さだ。

 また、「ひつじ」のような、ウィットに富んだキャラクターが普通に登場してくる突飛さも、非常に大きなインパクト。『人狼』を知らなくても問題なく楽しめる、敷居の低さも嬉しい。

ホラゲファンよ、このジャンルをもっと盛り上げるべく、どんどん買おう!

 ホラーゲームはその性質上、どうしてもユーザー層が限られてしまうため、パブリッシャーとしては「パッケージ販売の大作タイトルをリリースする」という動きがなかなか取りづらいかもしれない。数年前まで展開していた定番のホラーゲームがピタリと動きを止めているのも、上記のような理由があるからだろう。ゆえに、ホラーゲームというジャンル自体が、昔に比べ、やや縮小傾向にあるといえる。

 とはいえ、昨今ではダウンロード販売が広く定着しているため、小規模な野心作が数多く登場していることは喜ばしい。
 PCでリリースされた『Friday the 13th: The Game』や『返校 Detention』などは、その良い例だろう。コンシューマに関しても、インディータイトルに注力する流れが年々高まってきているので、あっと驚くようなホラーゲームが突如登場する可能性もある。
 今回紹介した『デッドハウス』、『クリーピング・テラー』、『レイジングループ』は、ダウンロード専売タイトルだ。パッケージ販売がメインの市場ならば、これらのタイトルは登場していなったかもしれない。

 もちろん、ホラーゲームの大作が完全に勢いを失ったわけではない。最近のトピックとしては、『サイコブレイク2』の発表がホラーファンを喜ばせた。完全なホラーと言えるかは微妙なところではあるが『The Last of Us Part II』も期待大のタイトルである。

 また、無視できないのはVRの存在だ。『バイオハザード7』の登場は、あらゆる意味で衝撃的だった。全編VR対応することによって、ホラーゲームの存在価値を一段も二段も押し上げた功績は、評価に値するものに違いない。VRとホラーの相性が抜群に良いことは『バイオハザード7』で証明されたので、後に続くタイトルがどんなアプローチをしてくるのか、個人的にも興味深いところだ。

 少し元気のなかった数年前に比べ、今再びホラーゲームにスポットが当たりつつある。DL専売での実績が高く評価されるなど、開発者側にとって動きやすい状況がもっと加速すれば、皆が待ち望むような大作ホラータイトルの再始動だってありえるし、大掛かりな新規ホラーゲームの登場だってありえる。
 今回の企画記事が、ホラーゲームの明るい未来へと繋がれば、こんなに嬉しいことはない。

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 電ファミでは、『サイレントヒル』、『SIREN』の開発者・外山圭一郎氏と「零」シリーズの開発者・柴田誠氏のインタビューも掲載しています。両ゲームクリエイターが語った「不快感を設計する」哲学とは?

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「4Gamer.net」、「Gamer」、「AUTOMATON」を中心に執筆活動中のフリーランス。
取材、レビュー、企画物の記事を書き続け、気がつけばライターデビューからもうすぐ10年であることに最近気がついた。イノベーティブを感じられる作品であれば、取り敢えず何でもプレイしてみる気質。セガサターンは今でも心のオアシス。
Twitter:@MisunoNaohiko

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